トランパス (交通プリペイドカード)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
トランパスは、名古屋鉄道・名鉄バス・名鉄東部交通・名鉄西部観光バス・名古屋市交通局・名古屋臨海高速鉄道(あおなみ線)・愛知高速交通(リニモ)で共通利用できるストアードフェアシステムの名称である。
目次 |
[編集] カードの名称
以下の導入事業者がトランパス対応カードを販売している。
- 名古屋鉄道・名鉄バス・愛知高速交通(リニモ):SFパノラマカード(但し、愛知高速交通のカードの図柄はオリジナルのものである。)
- 名古屋市交通局:バス・地下鉄共通大人用ユリカ
- 名古屋臨海高速鉄道(あおなみ線):あおなみカード
[編集] 利用方法
[編集] 鉄道
カードを自動改札機に直接投入して入・出場する。入場時に入場情報をカードに書き込み、出場時に乗車した区間の運賃を精算する。また、名鉄⇔地下鉄の間を直通列車などで移動する場合は出場時に名鉄・地下鉄の合計額を一度に引き落とす(但し、運賃は境目となる駅で再度初乗りから計算し直すため、境目の駅で途中下車しても精算額は同じである。)。いずれの場合もカード残額がその隣の駅までの最低運賃に満たないと入場できない。なお、出場の際に経路が複数存在する場合は、運賃が一番安くなる経路を用いて精算される。
また、自動券売機や有人の発券窓口での乗車券の購入や、自動精算機での乗り越し精算にも利用できる。但し、複数人や子供が利用する場合やトランパス非対応駅で出場しようとする場合は、あらかじめ自動券売機で乗車券と引き換え、乗車券で入場する必要がある。
なお、2007年3月18日から導入するPASMOはトランパスと同様の利用方法である(Suicaも同日よりトランパスと同様の利用方法に変更)。
[編集] バス
社局により利用方法が異なる。
- 名鉄バスの場合は、乗車時に乗車口にあるカード読み取り機にカードを通し(この時整理券を取る必要はない)、降車時に運賃箱のカード精算機にカードを通す。その際にカードを通した際の整理券番号が表示され、乗車された区間の運賃が差し引かれる。
- 名古屋市営バス(以下市バス)の場合は、乗車時(基幹2号系統は降車時)に運賃箱のカード精算機にカードを通すと乗車運賃が差し引かれる。但し、高速1号系統については高速道路を通るため10円の加算運賃制度を導入しており、高速道路区間を利用しない場合は乗車時に運転士に申告しなければならない(大半の利用者が高速道路区間を利用するため、何も言わないと高速道路区間前で降りる場合でも自動的に高速料金(10円)を加算した運賃が差し引かれてしまう。)。また、運転士に申し出る事で高速料金だけをカードから差し引く事も可能である。
なお、カードの残額が不足した場合は別のカードや現金を追加して利用する(積み増しの項を参照)。
[編集] プレミアム
トランパスは、他の私鉄系ストアードフェアカードとは異なり、利用可能金額にプレミアムが付くという特徴がある。これは回数券の代替を目的としているため、名古屋鉄道以外の導入事業者は回数券を発売していない。但し、名古屋市交通局ではユリカ発売と引き換えに回数券の発売を中止した(当時はトランパス発足前だった)が、名鉄においても全線へのトランパス導入完了後に回数券の発売を中止する可能性はある。
プレミアムの金額は以下の通りである。
発売金額 | 発売社局 | 利用可能 金額 |
払い戻し | ||
名 | 市 | あ | |||
500円 | ○ | ○ | ○ | 500円 | 不可 |
1,000円 | ○ | ○ | ○ | 1,000円 | 不可 |
2,000円 | ○ | ○ | ○ | 2,200円 | 可 |
3,000円 | ○ | ○ | ○ | 3,300円 | 可 |
5,000円 | ○ | ○ | ○ | 5,600円 | 可 |
- 「名」:名鉄・名鉄バス・リニモ
- 「市」:名古屋市営地下鉄(以下地下鉄)・市バス
- 「あ」:あおなみ線
- トランパス対応カードは券面に「トランパス」ロゴが印刷される
- 500円券は贈答・記念品用
- 小人用ユリカはトランパスに対応していない(地下鉄・市バスと名鉄バス(名鉄東部交通・名鉄西部観光バスを含む)のみ有効)
[編集] 積み増し
トランパスは、各社局規定の残高以下になった場合、自動券売機に現在使用中のカードを挿入し、2,200円分(購入金額2,000円)・3,300円分(同3,000円)・5,600円分(同5,000円)のカードを購入すると、今まで使用していたカードの残高を新たに購入したカードの残高に加算する事ができる。これを「積み増し」と言う。
積み増しが可能となる残高は下記の通りである。
- 地下鉄各駅:310円以下
- 名鉄電車各駅:690円以下(但し、5,600円分(購入金額5,000円)のカードに積み増しする場合は、1,500円以下から可能。)
- リニモ各駅:500円以下
なお、元のカードの残高は新しく購入するカードに引き継がれ、元のカードと新しく購入したカードが2枚重なって出てくる。 元のカードは回収されないので、誤って新しいカードを捨ててしまわないよう注意が必要。 その際、元のカードの裏面最後に「増済」と印字され残高が二重線で消される。対して、新たに購入したカードの表面には「積増」表示がされ、元のカードの残額と購入したカードの利用可能額を合算した金額が裏面に印字される。
但し、あおなみ線各駅においては自動改札機がカード2枚の同時投入に対応しているため、自動券売機は積み増しに対応しない。このため、残高が初乗り運賃に満たない場合、乗車駅ではその合計が初乗り運賃以上になる2枚のカードを重ねて自動改札機に投入して入場し、降車駅では入場時に使用した2枚のカードを重ねて自動改札機に投入して出場する。なお、残高が0円になった元のカードは回収されない。これは他の共通カード(パスネット、スルッとKANSAIなど)とは異なる使用方法である。
[編集] 乗り継ぎ割引
以下の場合、乗り継ぎ割引が受けられる。
割引額は右表の通りである。
|
|
- ※Xと表示:条件を満たしていれば次回乗車で割引
- ※C(名鉄バス同士ではW)と表示:今回の乗車で割引
- ※■と表示:割引されない
[編集] 特殊な取り扱い
[編集] 払い戻し
トランパス対応カードは、発売額が2,000円以上のカードに限りトランパスが利用可能な駅窓口で払い戻しの取り扱いをする。払い戻しの計算は、まず残額から発売時に付けたプレミアム額(例:ユリカ5600なら600円)を差し引き、さらに手数料として200円を除いた残額が返金される。なお、発売額が500円と1,000円のカードは払い戻しできない。
[編集] カードで引き換えた乗車券が不要になった場合
トランパス対応カードを自動券売機に挿入して乗車券に引き換えた後に当該乗車券が不要になった場合、現金では払い戻しの取り扱いができないため、引き換えた乗車券の金額をカードに戻してカードの再発行をする。その際は手数料が必要となる。
[編集] 印字満杯
トランパスカードの裏面には乗降記録が印字されるが、1枚のカードに最高43回までの乗降記録を印字する事が可能である。43回乗車した後も残額がある場合、44回目にあたる場所には「印字満杯」と印字され、それ以降そのカードでは自動改札機に投入する事ができないため、駅の自動券売機又は窓口でカードの再発行を受ける。再発行によって印字満杯カードの残額が新しいカードに引き継がれ、再び残額を使用する事ができる様になる。
[編集] 0円券
カードの残額が1乗車目の乗車区間の金額と同じ場合、残額が差し引かれたカードの残高はなくなるが、乗り継ぎ割引が適用される場合、そのカードを使って2乗車目で乗り継ぎ割引を受ける事ができる。例えば、1乗車目で残額200円のカードで市バスに乗車するとする。乗車した時点でカードの残額は0円となるが、裏面には「乗継有効」と印字され、乗り継ぎ割引が有効である情報が記録された状態になる(俗に「0円券」)。2乗車目に地下鉄に乗車する時には、駅の自動券売機で0円券を先に投入した後に他のトランパス又は現金を追加する事で乗り継ぎ割引が適用された運賃で乗車券を購入する事ができる。この取り扱いは地下鉄とあおなみ線など乗り継ぎ割引が適用される乗車方法すべてで有効である。ちなみに、乗り継ぎ割引が適用された後の0円券の裏面には「乗継完了」と印字され、カードとしての役目を全うする。
[編集] 敬老パスで名鉄線へ乗り越した場合の扱い
敬老パスなどの地下鉄全線無料パスで名鉄線へ乗り越した場合、トランパス対応駅では当該パスとトランパス対応カードで名鉄線区間の運賃を支払う事ができるが、トランパス未対応の駅の場合はカードを用いる事ができないので、名鉄線区間の運賃は全額現金にて精算する事になる。
なお、「(市バス・)地下鉄(共通)一日乗車券」や「ドニチエコきっぷ」など、名鉄線では使えないカードで名鉄線へ乗り越した場合、当該名鉄線区間は全額現金にて精算となる。
[編集] 誤って非対応駅まで乗車してしまった場合
トランパスで入場したが、降車駅がトランパス非対応だった場合、トランパス対応カードでは精算する事ができない。この場合、乗車した列車の車掌又は降車駅の駅係員にトランパス対応カードを提示の上現金で精算して証明書を発行してもらい、次回利用する前までにその証明書と誤入場したトランパス対応カードを対応駅の改札窓口へ提示してキャンセル処理を受ける必要がある(詳細は下記)。
また、名古屋市交通局発行の昼間割引ユリカはトランパスに非対応であるため、昼間割引ユリカで誤って名鉄線へ乗り出してしまった場合も、乗車した列車の車掌又は到着駅(無人駅ではインターホンで管理駅)の係員へ申し出て、現金にて名鉄線区間の運賃を精算の上、証明書を受け取り、次回地下鉄利用時までに地下鉄駅の改札窓口へユリカと証明書を提示し地下鉄区間の運賃を精算する事により、再びユリカの使用が可能となる。
[編集] キャンセル処理
トランパスで入場したが、何らかの事情でカードを用いずに出場した場合、カードの入場記録を消す必要がある(キャンセル処理)。これは駅窓口にある端末で行うもので、改札口の駅員に申し出る事で処理を受ける事ができる。入場記録が残ったまま(キャンセル処理をせずに)出場すると次回からそのカードを使用する事ができないので、必ず処理を受ける様にする。なお、この取り扱いはバスではできない(精算処理が1回で完結するため、処理の必要がない。)。
[編集] 再発行
カード内の磁気情報が乱れてしまった時や、折れ曲がるなどしてカードリーダーに通す事ができなくなった場合、裏面の残額がはっきりと判る場合のみ、駅窓口に申し出る事でカードの再発行を受ける事ができる。カードの表面には再発行した事を示す記号([再])が印字される。地下鉄では使えないバス昼間割引ユリカでも駅窓口に申し出る事で再発行を受ける事ができる(バス昼間割引ユリカは地下鉄駅のみで取り扱い)。使用できなくなったカードは、カードの再発行と引き換えに回収され、返却されない。なお、無人駅ではカードの再発行ができないので、トランパス対応有人駅の改札窓口へ申し出るか、インターホンで管理駅係員に問い合わせる必要がある。
[編集] 45回目の印字
稀なケースであるが、カードが前記の印字満杯の状態で、且つ乗り継ぎ割引が適用される0円券の場合に発生するものである。43回目の印字で1乗車目が乗り継ぎ割引が有効な場合に、カード裏面の43回目の下に「乗継有効」と印字される。2乗車目の時に乗継有効のカードを先に挿入した後に他のトランパスや現金を追加する事で乗り継ぎ割引が適用された運賃の乗車券を購入する事ができるが、「乗継完了」の印字は「乗継有効」の下の45回目にあたる場所に印字される。これがカード裏面に印字できる最高回数である。
[編集] 利用可能な交通機関
- ※但し、有人駅であれば窓口でも精算が可能。
- 名鉄バス
- 名鉄東部交通
- 西尾営業所管内の自社バス路線に限る。
- 名鉄西部観光バス
- 国府宮・一宮地区の自社バス路線に限る。
- 名古屋市交通局
- 名古屋臨海高速鉄道
- 西名古屋港線(あおなみ線)(全駅)
- 愛知高速交通
- 東部丘陵線(リニモ)(全駅)
- ※名古屋ガイドウェイバス志段味線(ゆとりーとライン)はトランパス未加盟のため、SFパノラマカードとあおなみカードは利用できない。但しユリカと名鉄バスカードは使用可能である。
[編集] 今後の導入予定線区
- 名古屋鉄道
[編集] 路線廃止に伴う過去の利用可能線区
- 2003年3月27日〜2006年3月31日
- 2003年3月27日〜2006年9月30日
- 2003年3月27日〜2006年11月30日
- 名鉄バス - 犬山駅・明治村・リトルワールドの相互で発着する路線と新鵜沼駅発着の路線(岐阜バスコミュニティに路線譲渡と譲渡しなかった一部区間の路線廃止をしたため)
[編集] ICカード化
トランパスは接触型の磁気カードシステムである。しかし、非接触型ICカードになれば消耗品費や保守費の低減などのメリットがあり動向が注目されていたが、名古屋鉄道(名鉄グループの豊橋鉄道を含む)や名古屋市交通局でも2010年までにICカードシステムを導入する事が2006年に明らかになった(名鉄・交通局間は共通利用を前提)。ICカードシステム化で今後トランパス独自のプレミアム制度がどう変化するかや、新規導入するバス会社がどこまで拡大するかが注目される。
なお、東海地方では2004年に静岡県の遠州鉄道が鉄道・バス共通のICカードシステム「ナイスパス」を導入したのを皮切りに、JR東海も在来線向けのICカードシステム「TOICA」を2006年11月25日から名古屋都市圏で導入し、2007年度中に静岡駅を中心としたエリアでも導入を予定している。また、2006年12月1日からは岐阜県の岐阜バスで「ayuca」が導入された。
さらに、2007年4月1日からは関西民鉄の「PiTaPa」も近鉄の名古屋地区の路線の各駅(但し内部線・八王子線・養老線と志摩線の一部の駅を除く)に導入され、また静岡県の静岡鉄道としずてつジャストラインで導入している「LuLuCa」も同年秋に名古屋を飛び越してPiTaPa・ICOCAとの相互利用を予定している。
[編集] 課題
関東でのSuica・PASMO(2007年3月18日以降)、近畿でのICOCA・PiTaPaの普及・導入やこれらシステムの相互運用実施も進捗している事もあり、トランパスもJR東海や近鉄と共通利用できるシステムを望む声があるが、この課題の解決にはまだかなりの時間が掛かるものと思われる。これはJRや近鉄の利用者の多くが比較的長距離区間を移動する事、プレミアムが付くため料金精算について事業者間の協議が相当時間必要である事、また共通利用のためにプレミアムのないカード(ちなみに、関東のパスネットや、関西のJスルーカード、スルッとKANSAIにはプレミアムが付かない。)を発行しても多数の利用者にとってはそのカードを選択する理由に乏しい(プレミアムのある事がカード購入の重要な動機である)事、さらに名古屋圏は他地域と独立した経済圏であって、他都市圏のシステムと互換性がある事によってメリットの得られる利用者が相対的に少なく、即ち費用対効果も低いのではないかと考えられる事もシステム共通化の進捗を遅くしていると考えられる。