噴火
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噴火(ふんか、eruption)とは、火山からマグマなどが噴き出すこと。火山活動の一つでマグマの性質によって規模や形態にさまざまなものがある。気象庁では、火口から固形物が水平あるいは垂直距離でおよそ100~300mの範囲を越したものを「噴火」として記録することになっている。
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[編集] 噴出物の成分による影響
火山の噴火の形は、噴出するマグマの流動性や揮発物成分の量によって大きく変わる。揮発成分の量はマグマの噴出力を左右し、揮発分が多いほど火山灰や溶岩を高く吹き上げる大きな爆発となる。
- 流動性が高く揮発物成分が少ない場合:ハワイ火山の噴火のように静かに溶岩流が流れつづける。
- 流動性が高く揮発物成分が多い場合:前回の三原山(伊豆大島)噴火の初期のように、溶岩がカーテンのように高く幅広く噴出する。
- 流動性が低く揮発物成分が少ない場合:昭和新山の噴火のように、大きな爆発や溶岩流出は無く溶岩円頂丘が形成される。
- 流動性が低く揮発物成分が多い場合:浅間山や桜島のような爆発的な噴火になる。
なお1回の噴火は、短時間で終わる場合もあれば数ヶ月以上続く場合もある。長期間の噴火では、時間の経過と共に噴火の様式が変わることがある。たとえば、始めのうちは揮発成分が多く溶岩や火山灰を高く吹き上ていても、途中から揮発成分が減り火山灰を吹き上げることができなくなり、ガスと溶岩の破片の混合物が火口から斜面を流れ下る(火砕流)。噴火の後半には揮発成分が抜けてしまい溶岩を流出させて終わる。浅間山の天明の大噴火の例を示す。
- 大量の火山灰を空高く噴出→揮発成分が減り地上を火砕流が襲う(鎌原火砕流)→溶岩を流出(鬼押し出し)
[編集] 噴出物の量による影響
成分の影響以外に噴出物の量や噴出速度によって、噴火の形体や被害の大きさが激しく異なる。極端な例を2例挙げる。
[編集] ラカギガル割れ目噴火
2の条件で1回の噴出量が桁違いに大きい場合、噴出されたガスが地球を覆い異常気象による不作などを引き起こす。
1783年アイスランドのラキ火山の噴火(ラカギガル割れ目噴火)の場合、火口列の長さは25kmに及び多量の溶岩を噴出したが、人里から離れていたので溶岩による被害は軽微であった。しかし有毒な火山ガスが大量に放出され、アイスランドの家畜の50%、人口の20%が失われた。また成層圏まで上昇した火山ガス起源の霧(硫酸ミスト等)が北半球を覆い、地上に達する日射量が減少して世界的に気温が低下した。
日本では同年に発生した浅間山の大噴火(天明の大噴火)の影響と重なり、東北地方で膨大な数の餓死者を出した天明の大飢饉を引き起こした。
[編集] 阿蘇カルデラや姶良カルデラの噴火
4の条件で1回の噴出量が桁違いに大きい場合、長径数km~十数kmのカルデラを形成するような非常に大規模な噴火となる。
日本列島においては阿蘇カルデラや姶良カルデラ(桜島以北の錦江湾全体)が代表的な事例として知られている。
大型カルデラを形成するような噴火では、1回の噴火で厚さ数m~100m以上・半径数十km以上に及ぶ火砕流と、日本列島の半分以上を覆うような広域テフラが噴出されることが多い。
このような噴火を起こすカルデラは阿蘇カルデラ以南の九州地方と東北・北海道地域によく見られる。
この状況を現在にシミュレーションしたのがベストセラー『死都日本』(関連図書参照)。
[編集] 火山噴火のタイプ
噴火は様々な条件下で種々の形をとる。火山学者はこれを代表的なタイプに分類し、命名している。
[編集] 洪水玄武岩
洪水玄武岩は数千万年に1回程度発生する。地表が大規模に割れ大量の溶岩が短期間に地表に供給される。例えばインドのデカン高原の玄武岩面積は日本全土の約1.5倍に相当する。発生原因について、最近プルームテクトニクスで議論されている。
[編集] ハワイ式噴火
キラウエア、マウナケアなどハワイ島の火山でよくみられる噴火形式。流動性が高く揮発成分が少ないマグマが起こす噴火。爆発は起こらず、大量の液体状の溶岩が高速で流出する。
[編集] ストロンボリ式噴火
イタリアのストロンボリ火山でよくみられる噴火形式。ハワイ式より少し流動性の低いマグマが間歇的に小爆発を繰り返し、火山弾を放出する。液体状の溶岩流も見られる。
[編集] ブルカノ式噴火
ストロンボリ火山に近いブルカノ火山でよくみられる噴火形式。粘性が高い安山岩質マグマの場合に多く、近年における桜島や浅間山の噴火に相当。爆発に伴って火山灰、火山礫、火山岩塊を大量に噴出する。溶岩流は、半ば固化した塊状溶岩(ブロックラバー)となって流動速度は遅い。ブルカノという名称は、英語の「Volcano(火山)」の語源となった。
[編集] プリニー式噴火
ローマ時代のポンペイを埋めたことで有名な西暦79年ヴェスヴィオ火山噴火の形式。この噴火を詳細に観察し後世に記録を残したプリニウスにちなんでプリニー式と命名された。基本的にはブルカノ式の大規模なものである。火山灰や軽石などから構成される噴煙柱は成層圏に達する。この噴煙柱が崩壊すると、大規模な火砕流が発生し広範囲に被害を及ぼす。
[編集] ウルトラブルカノ式噴火
高温マグマが直接関与しない大規模な水蒸気爆発。1888年の小磐梯山における山体崩壊の原因のひとつと考えられている。
[編集] 噴火の場所
火山は噴出する場所、特に水の存在によって噴火の形が大きく変わる。
- 海底深くで火山が噴火した場合、高い水圧で爆発は起こらず、水で急冷された溶岩は特徴的な枕状溶岩となる。
- 水面近くの噴火や、マグマが地下の浅い所で地下水と出あった時は、水が瞬時に沸騰し爆発的なマグマ水蒸気爆発を起こす。
- 巨大な氷河の下で火山が噴火した場合 1 と同様な形態となるが、噴火の規模が大きく氷床を解かしてしまった場合、氷河の下に巨大な湖が出来、氷河の壁は大量の水の重さを支えきれずに、決壊し、家や橋まで流してしまう大規模な洪水が発生する。この大洪水をアイスランド語でJoekulhlaups(ヨークルハウプス)と呼ぶ。(アイスランドの火山)
[編集] 火山噴火の歴史
[編集] 日本
以下、記録に残る噴火
- 685年 浅間山
- 1596年 浅間山
- 1640年 北海道駒ヶ岳の噴火で山体崩壊。
- 1707年 富士山 (宝永噴火)
- 1741年 北海道の渡島大島で寛保岳が噴火。津波災害を起こす。
- 1783年 浅間山(天明の大噴火)
- 1792年 普賢岳の噴火と山体崩壊。→ 島原大変肥後迷惑参照
- 1914年 桜島噴火で大隅半島とつながる
- 1915年 焼岳噴火で梓川をせき止め大正池ができる
- 1944年-1945年 有珠山噴火で昭和新山ができる
- 1946年、1952年 明神礁 (海底火山)の噴火。一時、島が出現。
- 1977年 有珠山
- 1979年 御嶽山で水蒸気爆発
- 1983年 三宅島
- 1986年 伊豆大島三原山、全島避難
- 1989年 伊豆半島伊東市東方沖海底で噴火
- 1991年 雲仙普賢岳、平成新山ができる
- 2000年 有珠山、三宅島で全島避難
- 2004年 浅間山
[編集] 海外
- 約7万4000年前 スマトラ島のトバ火山。ここ10万年 (200万年?) では最大級の噴火。トバ湖はこの噴火で生じたカルデラ湖。→ 地球史年表参照。
- 前1600年頃 エーゲ海のサントリーニ島。
- 79年 古代ローマ、ヴェスヴィオ火山。ポンペイが埋没。
- 1783年 アイスランドのラキ火山。
- 1814年 フィリピン・ルソン島のマヨン山。ふもとの街で1,200人の死者。
- 1815年 インドネシア・スンバワ島のタンボラ山。9万人以上の犠牲者。
- 1902年 西インド諸島・マルティニーク島のプレー山。火砕流がサン・ピエールの町を襲い32,000人あまりが死亡。
- 1919年 インドネシアのケルート山。ラハールが発生し5,100人の死者。
- 1930年 インドネシア・ジャワ島のムラピ山。約1,300人の死者。
- 1980年5月18日 アメリカのセント・ヘレンズ山。山体崩壊。
- 1985年11月13日 コロンビアのネバド・デル・ルイス山。死者21,500名。
- 1991年6月 フィリピンのピナトゥボ山。20世紀最大規模。
[編集] 関連項目
[編集] 関連図書
- 『日本噴火志』(震災予防調査会報告書第86号、87号)1918 大森房吉編 日本の火山の噴火の記録を火山ごとに年代順に記載
[編集] 外部リンク
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