国鉄コキ50000形貨車
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コキ50000形(こき50000がた)とは、国鉄がフレートライナー輸送用として1971年(昭和46年)度から1976年(昭和51年)度にかけて製造した貨車(コンテナ車)である。なお、車掌室付きの緩急車コキフ50000形についてもここで解説する。
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[編集] 概要
名神・東名高速道路を嚆矢とする高速道路網の整備が進展し、長距離トラックの貨物輸送量が増加した状況にかんがみ、国鉄は1966年(昭和41年)にコキ10000系コンテナ車を投入し、列車の高速化で対抗した。さらに1969年(昭和44年)4月には、トラックとの協同輸送方式を採り入れた「フレートライナー」方式の営業体制を発足させた。これは物流業者が自ら荷主となって鉄道コンテナ貨物の営業を行い、列車は「夕刻集荷・翌朝配達」の定時定形輸送を行う輸送方式である。
このため、列車の高速化・トラックの輸送単位に適合したコンテナの投入が図られ、同年に10t(20ft)コンテナと、コキ10000系の専用車コキ19000形が製作された。
フレートライナー方式の拡大にあたっては、コンテナ車の積載能力向上と大量投入のための製作費低減が課題とされた。これを受け、10t(20ft)コンテナを3個積載でき、夕刻→翌朝の定時定形輸送のため、夜行旅客列車と並行ダイヤで運用可能な最高速度95km/hのコンテナ車コキ9200形が1970年(昭和45年)に試作され、各種試験に供された。
試験の成果を基に1971年(昭和46年)から量産された車両がコキ50000形・コキフ50000形である。電磁ブレーキ等の装備をもたないため最高速度はコキ10000系より下がったが、製作コスト・保守コストが低く、牽引機関車を選ばず運用の制約が小さいことから、容積を拡大し雑貨類の積載を容易にした新規格の5t(12ft)コンテナC20系列とともに、フレートライナー列車に充当するため大量に製作された。
本系列は1976年(昭和51年)までに総計3631両が製作され、輸送体系の変遷により種々の改造を受けながらも、後発のコキ100系とともに現在も広汎に使用されている。
[編集] 構造
台枠はコキ5500形やコキ10000系と同様な魚腹形側梁であるが、20ftコンテナを3個積載できるよう台枠長さが延長され、車体長は19600mmに大型化された。台枠上のコンテナ緊締装置は5tコンテナ(10ft,12ft)用を左右5組、20ftコンテナ用を左右3組装備し、使用しないときは台枠外側下方に折り畳む構造である。これにより、専用車両によらず各種コンテナの積載が可能となった。外部塗色はコキ5500形と同一の赤3号(レンガ色)である。車体の一端に手ブレーキ付きの手すりとそれを操作する係員用のデッキ、デッキへの昇降用ステップを有する。コキ10000系のような台車オイルダンパプロテクタは設置しない。
積車時の総重量は最大60t(軸重15t)として設計され、運用線区は幹線に限定される。荷重はコキ50000形が37t、コキフ50000形が28tである。
緩急車コキフ50000形はコキフ10000形と同様、デッキ側にコンテナ1個分の車掌室を設け、コンテナ緊締装置は5tコンテナ(10ft,12ft)用を左右4組、20ftコンテナ用を左右2組装備する。車両の両端どちらが列車最後部になっても運用できるよう、デッキのない側にも手すりを設け2組の尾灯を装備している。
台車はコキ5500形後期形のTR216形を基に開発されたTR223形である。台車軸距を拡大し、増加した荷重に対応するため車軸は14t軸を用いている。ブレーキ装置はKU弁を採用したCL方式(応荷重式自動空気ブレーキ)で、電磁ブレーキによらない制動性能の確保を図った。最高速度は95km/hである。後年、一部の車両はブレーキ装置の改造により最高速度は100km/h(250000番台)、110km/h(350000番台)とされた(後述)。
[編集] 形式・番台毎の概要
[編集] 新製車
[編集] コキ50000形
- 一般車(50000~53275)
- 1971年(昭和46年)から1974年(昭和49年)までに3276両が製造された。初年度生産の275両(50000~50274)と以降製造の車両とでは、台枠側面ブレーキコック操作穴の個数が異なるなど外観・仕様の差異がある。後年、コキフ50000形の車掌室を撤去し本形式に編入する改造を実施した車両は一般車の続番で付番されている。
- 各種改造の詳細については後述する。
- 15tコンテナ対応車(150001~150004)
- 1972年(昭和47年)に5両が製造された。車体中央に30ft(15t)コンテナ用緊締装置を1組増設した他は、一般車と同じ仕様である。福山通運が計画した15t(30ft)コンテナの輸送用に製作され、コンテナ共々試験に供されたが、実用には移行せず計画は中止された。その後は一般車と混用して運用されている。
[編集] コキフ50000形
- 1971年(昭和46年)から1976(昭和51年)までに350両(50000~50349)が製造された。台枠上の車掌室ユニットは当初、コキフ10000形とほぼ同一のものを設置したが、1972年(昭和47年)製の車両は2重窓などの寒地対策が追加され、1973年(昭和48年)製以降は難燃化仕様を施すなどの仕様の差異がある。
- 台車は当初、コキ50000形と同一のTR223形を装備した。車掌の乗務環境改善のため、製作途中から車掌室側の台車のみバネの柔らかいTR223A形に変更したが効果は少なく、後に大半の車両はコキ10000形などから供出した空気バネ台車TR203形に交換された。
- 1985年(昭和60年)に貨物列車の車掌乗務が廃止されると、車掌室を撤去しコキ50000形に編入する改造が1987年(昭和62年)から実施され、1989年(平成元年)までに全車が改造され区分消滅した。本形式にはコキフ10000形からの改造編入車(59000番台)があるが、これは1994年(平成6年)まで残存している。
- 各種改造の詳細については後述する。
[編集] 改造車
[編集] 国鉄時代
- コキフ50000形の台車交換(51000番台)
- 車掌の乗務環境改善のため、コキフ50000形の台車交換改造を1979年(昭和54年)から実施した。当時余剰となっていたコキ10000形の他、ワキ10000形・ワキ8000形などから空気バネ台車TR203形台車を供出し、交換した。基礎ブレーキ装置も台車に適合したものに換装されている。
- 台車の許容最大重量が54tしかないため積載能力が抑えられ、5t(10ft,12ft) コンテナは3個、10t(20ft) コンテナは1個の積載となった。コキ10000系と同様、台枠の台車直上部に台車オイルダンパのプロテクタを設置している。車両番号は「原番号+1000」の基準で付番された。
- ※台車交換後のコキ10000形はレール輸送用長物車チキ5200形に改造されている。
- コキフ10000形の編入改造(59000番台)
- 車掌の乗務環境改善のため上記の台車交換と並行して行われた改造で、1979年(昭和54年)に余剰のコキフ10000形から14両が改造された。
- 改造は種車の電磁ブレーキを撤去して、外部塗色を赤3号とした。車体長はコキ10000系と同一で、5t(10ft,12ft)コンテナ3個の積載が可能。車両番号は「原番号+49000」の基準で付番された。1両のみ寒冷地仕様の10500番台から改造された車両があり、59500番台を付番している。
- ブレーキ装置指令変換弁追加改造(250000番台)

- 従来、最大1000tであったコンテナ列車の輸送力を1200tに増強するため、ブレーキ装置の改造を実施した。ブレーキシリンダ圧力の立ち上がりを早める指令変換弁[1]を追加して反応速度を早め、空走時間の短縮を図った。
- コキ50000形一般車の最高速度は95km/hであるが、1000tまでの列車に限り牽引機関車を限定の上でコキ10000形と同じ100km/h走行が可能である。
- 1985年(昭和60年)・1986年(昭和61年)に391両(コキ50000形370両、コキフ50000形21両[2])が改造された。改造後の車両番号は「原番号+200000」の基準で付番されている。
- 当初の車体色は一般車と同じ赤3号であったが、JR貨物の発足後は識別とイメージアップのため全車が淡緑色に変更された。現在も一部はコキ100系とともに高速運用に使用されているが、大半は一般車と共通に使用されている。
- ^ 指令変換弁の採用にあっては、1984年(昭和59年)にコキ5500形24両を改造して試験が行われた。試験終了後、全車がコキ60000形の先行改造車として再改造されている。
- ^ コキフ50000形250000番台は後年、全車が車掌室を撤去してコキ50000形250000番台(4両)コキ50000形258000番台(17両)に改造されている。
[編集] JR貨物時代
- 車掌室撤去改造(コキフ50000形→コキ50000形、53276~53413)
- 1985年(昭和60年)に貨物列車の車掌乗務が廃止され、用途のなくなったコキフ50000形が余剰となった。輸送力向上に鑑み、本形式の車掌室を撤去してコキ50000形に編入する改造が1987年(昭和62年)から実施された。
- 本形式には空気バネ台車TR203形を装備した車両が多く、台車の許容重量が小さいため、改造に際しては極力オリジナルのTR223形へ再交換された。車端部の手すりは一般車と同一のものに変更され、TR203形台車を装備していた74両は基礎ブレーキ装置も一般車仕様に復元された。
- 137両が改造され、コキ50000形一般車の続番(53276~53413)に付番された。指令変換弁装備車(250000番台)から改造された4両は「一般車の続番+200000」の基準で付番されている。
- 車掌室撤去改造(コキフ50000形→コキ50000形、58000番台)
- 上記の改造でTR223形台車の在庫が途中で払底し、TR203形台車のまま改造編入された車両である。1987年(昭和62年)から206両(58000~58205)が改造された。番号は落成順に58000から付番され、原番号との関連はない。指令変換弁装備車(250000番台)から改造された17両は「改造後の続番+200000」の基準で付番されている。
- 台車の許容重量が小さいため、車体中央の緊締装置が撤去され、荷重は28tとされた。積載能力は5t(10ft,12ft) コンテナ4個、10t(20ft) コンテナ2個である。車端部の手すりは識別のため、平板張りのまま残された。
- 積載効率の悪さと台車の保守が煩雑であることから淘汰の対象となり、1994年(平成6年)までに全車が廃車され区分消滅した。
- 電磁ブレーキ化改造(350000番台)
- 1988年(昭和63年)3月ダイヤ改正で設定された最高速度110km/hのコンテナ列車「スーパーライナー」(東京貨物ターミナル-東広島)に充当するため、1987年(昭和62年)にコキ50000形から45両(350000~350044)が改造された。
- ブレーキ装置をコキ10000系と同様のCLE方式(応荷重式電磁自動空気ブレーキ)に改造している。また、台車の基礎ブレーキ装置も一部変更が加えられ、形式をTR223C形として区別された。
- 識別のため、車体色は黄かん色(湘南電車のオレンジ色)に変更された。番号は落成順に350000から付番され、原番号との関連はない。
- 本区分は新系列コンテナ車投入までの暫定的な措置であり、コキ100系が投入されると一時期は250000番代との共通運用に転用された。現在は関東地区内での限定運用とされ、川崎市のゴミ収集列車「クリーン川崎号」などに用いられている。
- 台車交換
- JR貨物移行直後から、台車枠の亀裂が多発し、1993年(平成5年)には羽越本線で台車枠破損による脱線事故が発生した。これを受け、JR貨物では1994年(平成6年)までに全車両の台車を対策型のTR223F形台車に交換した。台車枠は識別のため、灰色としている。
- さらにその後、台車からの微振動に起因する荷ずれなどの問題に対応するため、2001年(平成13年)より、台車枠と各軸受の間に防振ゴムを挿入し、軸受の一つ(4位)に接地装置を取り付けたTR223G形台車への改造を全車に実施した。
- クールコンテナシステム対応改造(57000番台)
- 集中電源方式の冷凍コンテナ専用車として、1988年(昭和63年)・1989年(平成元年)にコキ50000形から23両が改造された。編成で運用され、機能の差異で57000番台・57100番台に区分される。
- 改造項目はコンテナ電源の引き通し回路新設が主である。塗装は青20号に変更され、車体には『COOL EXPRESS』のロゴマークが描かれていた。
- 57000番台は電源コンテナ積載車で、5両(57000~57004)が改造された。G30A形・ZG形各電源コンテナを中央に搭載し、自車および各車に積載する専用の冷凍コンテナR27A形(→F27A形に改番)・UF15A形1000番台・UF26A形1000番台・UF27A形1000番台に給電する設備を持つ。
- 57100番台は57000番台から電源の供給を受け、自車に積載した冷凍コンテナに配電する機能をもつ。18両(57100~57107,57110~57119)が改造された。
- 本区分は57100番台2両+57000番台1両+57100番台2両の5両ユニットで首都圏-北海道間で運用された。個別電源を装備する冷凍コンテナの投入により本システムでの輸送は終了し、1996年(平成8年)に一般車への復元改造が行われ、車号も改造前に戻された。
- ※1988年(昭和63年)12月に事故で1編成5両が廃車となり、1989年(平成元年)に補充の改造を行っている。
[編集] 他用途への改造
- チキ900形
- スライドバンボディシステム方式のインターモーダル用試作貨車。長物車に分類される。1988年(昭和63年)にコキ50000形一般車から1両が改造された。
- チキ100形
- チキ900形の量産車。1988年(昭和63年)にコキ50000形一般車から5両が改造された。
[編集] 現況
コキフ50000形や積載効率に難があった58000番台はすでに淘汰され、57000番台は一般車に復元されたが、それ以外のグループは現在もコキ100系とともに、コンテナ車の主力形式として各地で使用されている。
[編集] 関連商品
Nゲージ鉄道模型としてTOMIX(トミーテック)から数種類発売されている。またプラレールやBトレインショーティーでも製品化されている。