宇宙戦争 (H・G・ウェルズ)
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宇宙戦争(原題The War of the Worlds)はイギリスの作家H・G・ウェルズが1898年に発表したSF小説。20世紀の初めに火星人が地球に到来し武力で侵略する様子を、英国人男性による回顧録の形で書かれた作品であり、SF作品の古典的名作として知られている。小説冒頭や本文中で語られているように、他の民族に対して破壊行為を働いてきたヨーロッパ人に対する文明批判が如実に見られる。
後にアメリカ合衆国でラジオドラマ化された際にはあまりの迫真さに多くの聴取者が実際の緊急報道番組と勘違いしたことから大騒動を引き起こし(メディア展開の項で後述)、その後も何度か映像化されていること、またタコの姿をしたイラストが有名であることから、タコ型宇宙人が強力な機動兵器を持ち込んで地球(主に合衆国)で侵略行動をするという一般的認識がある作品でもある。また、数々のパロディ(パスティシュ)作品やこれをモチーフにした作品が数多く製作されている。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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目次 |
[編集] 前日譚
本作以前に発表された『水晶の卵』(The Crystal Egg)というH・G・ウェルズの短編がある。ロンドンの骨董店の店頭にあった卵形の水晶に不可思議な風景が見えるのを、その店の主人が発見した。知り合いの科学者が調査した結果、火星の風景と火星人の姿が映しだされており、逆に火星人からもこちらの様子が見えると判断され、火星人が地球の偵察のために送り込んだ物体であろうと思われた。しかし、さらに研究を進めようとした矢先、骨董店主人の死亡後に水晶は誰かに売られて行方不明となり、研究は頓挫する。ここに登場する火星人は人間に比較的近い形である。
[編集] あらすじ
火星表面で大規模な爆発が何度も観測され話題になってから6年後、イングランドのウィンチェスター上空で流れ星が観測され、直径30ヤード(27.4メートル)ほどの円筒が落下した。「わたし」を含めた見物人が群がる中、円筒の蓋が開いて醜悪な生物が現れる。<代表団>が近づいたとたん、目に見えない熱線が人々を焼き払った。
流れ星は次々に来襲し、家より背が高い3本脚の戦闘機械が登場、破壊の限りを尽くす。「わたし」は妻を引き連れ馬車で逃げるが、途中ではぐれてしまう。到着した英国軍も殺戮にあうが、砲撃で戦闘機械の1体に被害を与え、一旦は撃退に成功する。しかし火星人は液体のような黒い毒ガスと熱線を使う攻撃に戦法を変更し、軍を撃破してロンドンへと向かう。ロンドン市民はパニック状態で逃げ惑い、「わたし」の弟も暴漢に襲われていた女性らを助け、馬車と蒸気船で脱出した。
「わたし」は、知り合った副牧師と共に逃避行を続けるが、廃屋に数日間閉じ込められ極限状態におちいって副牧師を殴り倒したり、火星人にあと一歩で捕まりそうになったりするものの、なんとか生き延びる。15日目、様子がおかしいのに気づき外に出ると、火星人らは姿を消していた。
「わたし」は以前出逢った砲兵と再会し、人類が負けた事と将来の事について話し合う。砲兵と別れたあと静寂に包まれたロンドンに入った「わたし」は、そこで戦闘機械を見つける。ついに死を決意し近づいていくが、そこでみたものは腐敗した火星人の死体だった。火星人を倒したのは人間の武器や策略ではなく、太古に造物主が創造した微生物であった。微生物に対する免疫がない火星人は地球に襲来し、呼吸し、飲食し始めた時から死にゆく運命だったのである。
やがて人々は舞い戻り、復興が始まる。「わたし」は約4週間ぶりに自宅に戻り、そこで妻と再会する。
[編集] メディア展開
[編集] ラジオドラマ『宇宙戦争』事件
ラジオドラマとして放送された『宇宙戦争』が全米で聴衆にパニックを引き起こしたことはあまりにも有名である。あまりにも反響が大きく、これがもとでフィクションを放送する場合に一定の規制をかける法律が制定されたほどである。
そのラジオドラマは、1938年10月30日に、アメリカのCBSネットワークにおけるマーキュリー劇場という番組で放送された。宇宙人が地球(アメリカ)に攻めてきたという内容である。現場からの報告など、実際のニュース放送のような形で放送された。そのため、多くの市民が現実に起きている出来事と勘違いし、パニックを引き起こしたのである。しかも、その作品をプロデュースしたのは、オーソン・ウェルズであった。
CBSのマーキュリー劇場は聴取率が非常に低い不人気番組だった(『宇宙戦争』前週の聴取率は3.6%)が、当時アメリカ国民の3人に1人以上が聴取していた国民的人気を誇る裏番組に不人気歌手が登場し、多くの人が局を変えた瞬間、たまたま火星人によるニュージャージー州襲撃のくだりが放送されたことも、パニックに拍車を掛けた原因の一つであるといわれている。
放送後、非常に多くの訴訟がオーソン・ウェルズを含む製作者に対して行われたが、全て棄却または無罪となっている(番組放送中、何度も「これはドラマである」旨の放送をしていたため。なお、警察は暴徒の襲撃に備え番組終了後にラジオ局を緊急警備した)。
なお、翌年エクアドルにおいて同様のドラマが放送されたが、この時は放送後暴徒化した民衆によって出演者6名を含む21名が殺害され、プロデューサーは投獄されている。
また、このパニックを題材にしたTVムービー作品『アメリカを震撼させた夜』も作成されている。
更なる詳細は、宇宙戦争 (ラジオ)を参照のこと。
[編集] ジョージ・パルの宇宙戦争(映画)
1953年9月、アメリカで映画「宇宙戦争」が公開された。製作はSF映画の製作者として名高いジョージ・パル。舞台は20世紀半ばのカリフォルニアになり、火星人の戦闘機械は1本の触角を生やした、エイのような空飛ぶ円盤型として登場する。廃屋で火星人に追い詰められるエピソードや暴徒の襲撃など原作にあるエピソードが、85分のアメリカ映画用としてうまく変更し挿入されている。1953年のアカデミー特殊効果賞受賞。
1988年から1990年にかけて、映画の続編にあたるTVシリーズ「War of the Worlds」がアメリカで放映された。日本でも『新・宇宙戦争』のタイトルでビデオが発売された他、『エイリアン・ウォーズ』のタイトルで放映もされている。
スタッフ
キャスト
- フォレスター博士:ジーン・バリー
- シルビア:アン・ロビンソン
- マン将軍:レス・トレメイン
[編集] ジェフ・ウェインの宇宙戦争(音楽:LP盤)
1978年にジェフ・ウェイン(Jeff Wayne:作曲、アレンジ、指揮、プロデュース)により、LPレコード盤2枚組で発売された。世界で1300万枚を売り上げ、イギリスの音楽チャートでは連続260週以上ランクインした。英国作曲家協会のアイヴァー・ノヴェロ・アウォード(Ivor Novello Awards)で2部門を受賞した。同封された16ページのブックレット(日本版)には見開きでオリジナル・イラストレーションが描かれている。(2005年発売のCD盤ブックレットは46ページ)
内容は、原作に忠実なストーリー構成で、朗読を中心に音楽で場面をつなぐロックオペラ調の作品。 参加アーチストは、デヴィッド・エセックス、ジャスティン・ヘイワード(ムーディー・ブルース)、フィル・ライノット(シン・リジィ)、ジュリー・コーヴィントンなど。 収録曲の「戦争前夜」(THE EVE OF THE WAR)と「永遠の秋」(FOREVER AUTUMN)はシングルカットされている。
[編集] インデペンデンス・デイ
ローランド・エメリッヒ監督、ウィル・スミス主演による映画。1996年7月2日公開。 多数のCGを駆使し、アクションも多数あったことが観客に受け大ヒットした。内容が宇宙戦争と酷似した箇所が多数存在する。
[編集] スピルバーグの宇宙戦争(映画)
巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ、ダコタ・ファニング主演により再び映画化。 公開は2005年6月29日。全世界世界同時上映公開となる。共演、ティム・ロビンス、ミランダ・オットー、ジャスティン・チャットウィン、ダニエル・フランゼーゼ他。 映画の原題は『War of the Worlds』(ウェルズの小説は“The War of The Worlds”)、邦題も『宇宙戦争』である。この映画は舞台を現代に設定し、1人の平凡な父親の目を通して描く。劇中に登場する「トライポッド」のデザイン、それが発する不気味で不快な音、物語の結末、などを見ても、原作の味わいを活かそうとする努力が読みとれ、監督はウェルズにオマージュを捧げていることがわかる。しかし、設定上ウェルズの原作とはかなり違い、また平凡な主人公の1人視点のみでストーリーが進行していくのと、原作通りの“あっけない”ラストに、娯楽作だと期待していた観客からは不評ではあったが、原作ファンにとっては好評であった。
また、公開に先駆けてのワールドプレミアが、『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』の海賊版が公開前に出回るなど問題になったために、当初の予定であった日本武道館から六本木の映画館に変更された。
余談であるが、映画の中ではテレビ朝日の中継シーンがあったり、「大阪では(トライポッドを)何体か倒したらしい」というセリフがあり、日本は「ゴジラ」などと言った怪獣映画を多数製作しているところから、監督がある程度敬意を表した「くすぐり」かもしれない。
[編集] パスティシュ
[編集] シャーロック・ホームズの宇宙戦争
マンリー・W・ウェルマン&ウェイド・ウェルマン著。 コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズ、『失われた世界』シリーズ(チャレンジャー教授一行)とH・G・ウェルズの『宇宙戦争』、『水晶の卵』を融合して作り出したパスティシュ小説。
[編集] 続リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン(アメコミ)
アラン・ムーアの原作によるアメリカン・コミック。日本ではジャイブから正・続の2巻が刊行されており、「続」の巻でウェルズの宇宙戦争のパスティシュが試みられている。火星から飛来した飛行物体と三脚型の歩行機械に対して、英国を秘密裏に防衛するために組織された怪人連盟の面々(アラン・クォーターメイン、ミナ・ハーカー、ネモ船長、ジキル博士とハイド氏、透明人間グリフィン)が、戦いを挑む。
[編集] エジソンの火星征服
1898年にP・G・サービスより書かれたH・G・ウェルズの『宇宙戦争』の後日譚。発明王トーマス・エジソンをはじめとして19世紀の人々が協力して火星に攻め込む小説。
[編集] トリポッド(三本足)シリーズ
1967年~1968年にジョン・クリストファーによりジュブナイルの3部作『鋼鉄の巨人』(The White Mountains)、『銀河系の征服者』(The City of Gold and Lead)、『もえる黄金都市』 (The Pool of Fire)が出版されている。三本足のロボット「トリポッド」に征服された地球が舞台。1982年に前日譚が発表され、現在では4部作となっている。
[編集] 火星人類の逆襲
1988年に発表された、SF作家横田順彌 によるパスティシュ小説。英国襲撃から13年後、今度は日本に襲来した火星人類に、明治の武侠作家・押川春浪を筆頭とするバンカラ集団天狗倶楽部が立ち向かう。
[編集] 第二次宇宙戦争 マルス1938
伊吹秀明による架空戦記的な『宇宙戦争』の後日譚小説。 ISBN 4584178887
[編集] 新宇宙戦争(アメリカテレビドラマ)
アメリカで1988年に『WAR OF THE WORLDS』のタイトルのテレビドラマ。ジョージ・パルの宇宙戦争の後日譚。日本では「エイリアン・ウォーズ」とのタイトルで放送され、ビデオは7巻販売された。内容は実は火星人が死んでおらず仮死状態であり、放射線により微生物が死んだために蘇り、人間側の秘密組織と火星人の秘密組織が争うというもの。
[編集] マーズ・アタック!
1996年に製作されたティム・バートン監督のSFコメディ映画。火星人襲来をコミカルに描いている。登場する火星人は人間型だが巨大な頭脳が特徴で、全てCGで描かれている。ラストは意外な方法で火星人が殲滅される。