新幹線車両
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新幹線車両では、新幹線の車両について扱う。
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[編集] 概要
0系や100系など国鉄時代の東海道・山陽新幹線車両では車体の素材に普通鋼が使われていたためやや重かったが、東北・上越新幹線用の200系からは耐雪装備による重量増加を抑えるためアルミニウムが用いられて軽量化が図られた。国鉄民営化後に開発された新幹線車両はアルミニウム車体が一般化、さらにアルミ材の加工手法の発達により、製作費のコストダウンとさらなる軽量化の両立が図られた。この結果、近年の車両は国鉄時代に開発された初期新幹線車両より著しく軽量化されている。
現在の新幹線車両の価格は、1両あたり概ね2~3億円と言われている。なお、新幹線車両の製作を行っているメーカーは現在、日本車輌製造・川崎重工業・日立製作所・近畿車輛(JR西日本のみ)・東急車輛製造(JR東日本のみ)の5社である。
一方で、JR発足以降積極的に行われた高速化に伴い、走行中のパンタグラフと架線の接触や風切り音による騒音の発生や、接触部の著しい消耗などが問題とされた。このため、0系では2両おきに付いていたパンタグラフが300系では8両毎に1つに減ったほか、500系では翼型と呼ばれるT字型の特殊なパンタグラフが設置されるなど改良されて、集電効率も向上した。また、ふくろうの羽ばたく音が他の鳥と比べ静かであることをヒントに、パンタグラフに流線型の突起物を取り付けるなどの改良も加えられた。その他、高速でのトンネルの突入時のトンネル内部の急激な気圧変化による騒音(トンネル微気圧波)の発生を抑えるための、走行時の空気の流動性やトンネル進入時の面積変化率を考えた先端車両の開発などが行われているため、初期の0系に比べ先頭車先端部が長く伸ばされるとともに、通常の電車とは著しく異なった形態(鋭い流線型やカモノハシのような形)を呈する傾向にある。
新幹線においても定期的な車両整備を要する事から、沿線各地には車両基地が置かれている(検査項目についての詳細は鉄道車両の検査を参照の事)。
[編集] 営業用車両
東海道新幹線は開業時から1975年までは12両編成、その後は16両編成が原則となっているが、その他の区間では様々な編成が見られる。プラットホームの長さなどの関係で、山陽・東北(盛岡以南)では16両、それ以外では12両~16両が最長となっている。
- 0系
- 山陽新幹線(1964年営業運転開始、1999年9月18日に東海道新幹線から引退)
- 東海道・山陽新幹線の初代車両。東海道新幹線開業時から1986年まで、マイナーチェンジを重ねながら長期に亘って製造された。現在は6両編成に短縮、塗装変更の上、主に長距離の山陽「こだま」で使用されている(4両編成もあったが既に消滅)。
- 100系
- 山陽新幹線(1985年営業運転開始、2003年9月16日に東海道新幹線から引退)
- 東海道・山陽新幹線では唯一2階建車両を2または4両連結していた(一部は登場直後のみ2階建て車両を含まない12両編成。また東海道新幹線からの撤退時に2階建車両は消滅、現在は食堂車が浜松工場と博多総合車両所に保存されている)。現在は4両、または6両編成に短縮、塗装変更の上、主に短距離の山陽「こだま」、4両編成グリーン車なしの山陽「こだま」で使用されている。
- 300系
- 東海道・山陽新幹線(1992年営業運転開始)
- 「のぞみ」の運転開始に伴い登場した270km/h運転対応車。0系1000・2000番台の置き換え用として製造された。全70編成。東海道の臨時「のぞみ」東海道の「ひかり」「こだま」で使用されている。
- 500系
- 東海道・山陽新幹線(1997年営業運転開始)
- 「のぞみ」の山陽新幹線区間における300km/h運転を行うために登場。JR西日本の独自開発。製造コストの高さや、300系(および後の700系)と座席配置などが違うことによる東海道新幹線での運用上の都合の悪さから全9編成と少数生産に留まった。2009年までに東海道新幹線からの撤退が予定されている。時刻表で「500系のぞみ」と書かれている列車で使用されている。
- 700系
- 東海道・山陽新幹線(1999年営業運転開始)
- 100系の置き換え用として製造された車両。285km/h運転対応車。JR東海・JR西日本の共同開発に移行。多くの定期「のぞみ」「ひかり」で使用されている。
- 台湾高速鉄道でも本形式を基にした700T型が使用される。
- 800系
- 九州新幹線(2004年営業運転開始)
- 九州新幹線開業に伴い製造された車両。6両編成でベースは700系。「つばめ」で使用されている。
- N700系
- 東海道・山陽新幹線(2007年夏営業運転開始予定)
- 次世代型の新幹線車両で、700系と同様JR東海・JR西日本の共同開発。300・500系の置き換え用車両でもある。500系と同じく300km/h(山陽)/270km/h(東海道)運転が行われる。
- 200系
- 東北・上越新幹線(1982年営業運転開始)
- 東北・上越新幹線の初代車両。2006年時点で多くは廃車されたが、一部が延命工事と塗装変更を施され現存。登場時12両、現在は10両編成(他に13両または16両編成(2階建て車両1両または2両を含む)、8両編成などもあった)。全ての「とき」「たにがわ」で使用されている他、一部の「やまびこ」「なすの」でも使用されている。
- 400系
- 山形新幹線(1992年営業運転開始)
- 山形新幹線への直通運転を行うための車両。最初のミニ新幹線用車両。登場時6両、現在は7両編成。かつては200系K編成と連結して東北新幹線内を走行していたが、現在はE4系のみとの連結運行。「つばさ」の大部分で使用されている。早朝や深夜の「なすの」でも使用されている。
- E1系
- 上越新幹線 Max(1994年営業運転開始、1997年までは東北新幹線でも運行)
- 輸送力の強化を狙って登場した総2階建車両。12両編成という長さのためにミニ新幹線車両との併結ができないなどの理由により少数生産に留まり、またE4系の登場と共に東北新幹線から撤退した。現在は新塗装車のみ。「Maxとき」「Maxたにがわ」の大部分で使用されている。
- E2系
- 東北・長野新幹線(1997年営業運転開始、1998年から2004年までは上越新幹線でも運行)
- 東北新幹線の200系置き換え目的と長野新幹線開業に伴い登場した。8両または10両編成(登場時は8両編成のみ)。「はやて」の多くはE3系と連結して東京~盛岡間を走行する。「はやて」「あさま」「やまびこ」 で使用される。
- 中国の鉄道(在来線)高速化用に、本形式を元にしたCRH2型がフランスやドイツの車両とともに使用される。
- E3系
- 秋田・山形新幹線(1997年営業運転開始)
- 秋田新幹線用の車両として登場し、後に山形新幹線の山形~新庄間延伸開業用としても3編成が増備された。秋田新幹線「こまち」(登場時5両、現在は6両編成)のほか、先述の増備車(7両編成)が「つばさ」に使われている。400系同様、早朝と深夜で「なすの」としても使用されている。
- E4系
- 東北・上越新幹線 Max(1997年営業運転開始)
- E1系の改良型。8両編成が基本で、2本を連結した16両編成での運行も行えるように設計された。主に「Maxやまびこ」「Maxなすの」で使用されているほか、「Maxとき」「Maxたにがわ」の一部でも使用されている。一部の編成に限り、長野新幹線にも入線は可能。
なお「600系」が欠番となっているのは、当初「E1系」が「600系」として製造される予定であったが、開発途中において車両形式番号の振り方がJR東日本の方針(各社の間で形式番号の取り合いが起こるのを避けること)で変更されたためである。
[編集] 試験・試作車両
- 1000形(新幹線用試作旅客電車 A・B編成。B編成が1963年3月30日に鴨宮モデル線区で256km/hを達成)
- 951形高速試験電車(0系の次世代高速型開発用車両。1972年2月24日に286km/h達成)
- 961形新幹線試作電車(全国整備新幹線網対応試作車両。1979年12月7日に319km/h達成)
- 962形新幹線試作電車(200系の先行試作車両。開業後は925形電気・軌道総合試験車に改造)
- WIN350/500系900番台新幹線試験電車(1992年8月8日に350.4km/h達成)
- STAR21/952・953形式新幹線試験電車(1993年12月21日に425km/h達成)
- 300X/955形新幹線試験電車(1996年7月26日に443.0km/h達成)
- FASTECH 360 S/E954形新幹線試作電車(最高営業運転速度360km/hを目標とするJR東日本の高速試験電車・2005年6月落成。最高速度403km/hを達成)
- FASTECH 360 Z/E955形新幹線試作電車(同上・E954形は新幹線専用車両、E955形は新在直通車両・2006年3月落成)
[編集] 業務用車両(ドクターイエローなど)
- 911形ディーゼル機関車(救援用)
- 912形ディーゼル機関車(牽引・救援用)
- DD18形ディーゼル機関車(ラッセル式除雪車)
- DD19形ディーゼル機関車(ロータリー式除雪車)
- 944形(1000形試験車両A編成を改造した救援用車両)
- 921形0番台(軌道検測車、911形で牽引)
- 922形0番台(1000形試験車両B編成を改造した電気試験車。ドクターイエローT1編成)
- 922形10番台(0系16次車をベースとした電気・軌道総合試験車。ドクターイエローT2編成。923形T4の登場で廃車)
- 922形20番台(0系26次車をベースとした電気・軌道総合試験車。ドクターイエローT3編成。923形T5の登場で廃車)
- 923形0番台(700系ベースの電気・軌道総合試験車。ドクターイエローT4編成)
- 923形3000番台(700系ベースの電気・軌道総合試験車。ドクターイエローT5編成)
- 925形(962形新幹線試験電車を改造。ドクターイエローS1・S2編成、東北版で黄色の車体に緑の帯。「East i」の登場で廃車)
- E926形(E3系ベースの電気・軌道総合試験車。S51編成、車体の色はそれまでのドクターイエローとは異なり、白と赤をデザインした。愛称は「East i」)
- 931形(バラスト散布用のホッパ車。在来線のホキ800を改造したものと新造したものの2種類)
など
なお、貨車に分類される車両は山陽新幹線のみに残存する。東海道新幹線では1993年に全廃されている(モーターカーと同じ扱いとしたため)。
[編集] 関連項目
- 新幹線の車両形式 - 新幹線の車両形式の付け方・意味