新幹線800系電車
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新幹線800系電車(しんかんせん800けいでんしゃ)は、九州旅客鉄道(JR九州)の新幹線車両である。九州新幹線の初代車両として2004年にデビューした。
新幹線800系電車 | |
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800系(2004年11月23日撮影) | |
両数 | 6両 |
起動加速度 | 2.5km/h/s |
営業最高速度 | 260km/h |
設計最高速度 | 285km/h |
編成定員 | 392人 |
全長 | 27,350(25,000)mm |
全幅 | 3,380mm |
全高 | 3,650mm |
軌間 | 1435mm |
電気方式 | 交流25,000V 60Hz |
編成出力 | 275kW×4基×6両=6600kW |
駆動装置 | 三相交流誘導電動機 |
制御装置 | VVVFインバータ制御(IGBT) |
ブレーキ方式 | 回生併用電気指令式空気ブレーキ、抑速ブレーキ |
保安装置 | KS-ATC |
メーカ | 日立製作所 |
目次 |
[編集] 概要
JR九州は1987年の発足以来新幹線車両の開発技術のノウハウをまったく持っていなかったため、同社初となる新幹線用の800系車両を製作するにあたり、高い新幹線開発技術を持つ東海旅客鉄道(JR東海)および西日本旅客鉄道(JR西日本)から車両技術や車両保守などの技術供与を受けた。
日立製作所により2004年3月の開業を前に5編成(U001~005)導入されたが、新幹線車両の全般検査サイクルが約2年であり、それを控えて予備編成を用意する必要性が生じた事から、2005年夏に更に1編成(U006)増備されている。
2005年、鉄道友の会ローレル賞・(財)日本産業デザイン振興会グッドデザイン賞を受賞。
[編集] 構造
JR西日本所有のひかりレールスター用車両の700系E編成を基本に開発・製造されているため、モータ制御等の制御装置についてはほぼ700系と共通である。ただし、35‰(パーミル)の急勾配に対応するため、全車両電動車としている。その結果主電動機の定格出力は700系と変らないものの起動加速度は2.5km/h/s(700系は東海道新幹線区間の常用1.6km/h/s、山陽新幹線区間では性能上の2.0km/h/s)に強化されている。最高速度については、500系や700系より少し遅い最高速度260km/hで運行されるが、営業運転における設計最高速度は285km/hとなっている。
3Mの3両を1ユニットとする構成で700系の4両1ユニットから1ユニットあたりの車両数は1両減らされている。そのため、運転席後部に機器室を増設しそこに減らした車両に載っていた機器を搭載している。
ブレーキ装置については、700系同様、回生ブレーキを装備するほか、緊急制動時の滑走対策のために先頭車の台車にセラジェットも装備。また、ブレーキについても急勾配対策として、抑速ブレーキの機能が追加されている。
乗り心地向上のため、全車両にセミアクティブサスペンションを搭載。
騒音対策としては、700系のような大型の碍子カバーやパンタグラフカバーは装備せず東日本旅客鉄道(JR東日本)が開発した低騒音碍子付きのシングルアーム式パンタグラフを装備している。
[編集] エクステリア
空力的な理由から「カモノハシ」のようなものとなった700系の先頭形状は採用せず、100系を想起させるようなシャープな形状である。これは700系の先頭形状のコンペで提出されながら未採用となり、その案を考えた日立製作所で眠っていたものを少しアレンジを加えて復活させたものである。そのため、空力性能は700系とほとんど変わらない。ボディの色は白地に赤のストライプが入る。そして、屋根の色は赤色であるが、これはパンタグラフの摺り板の粉で生じる汚れを目立ちにくくするために設定されたもの。
ドア横には大きな文字で号車番号が表されているが、これは、新八代駅で、「リレーつばめ」号から乗り換える際に、短い時間ですぐに乗る車両を探し出せるように配慮したものである。なお、787系電車にも「リレーつばめ」対応工事実施時に同じ配慮がなされている。
なお前述したように、ベースの700系が4両1ユニットであったものを3両1ユニットに短縮したため、一部機器を両端先頭車に収容しなければならず、結果500系同様運転室後ろのドアが廃止されている。
[編集] インテリア
全車両普通車のモノクラス編成であり、座席は横に4席並び、2-2配置となっている。
妻面にクスノキ、座席に西陣織のモケット、日よけに木製のブラインドと、日本の「和」を基本コンセプトとする独自の意匠が施されている。
なお、シートの基部に木製を採用しているが、これはシートの重量を大幅に軽量化することにより前述の3両1ユニット化によって増えてしまった軸重を軽減するという目的もあるとのこと。
鹿児島中央駅方向2号車と6号車には、車椅子スペースと車椅子対応トイレが設けられている。
出入り台の壁は柿渋色、ドアは古代漆色という伝統色、手すりや握り棒は熊本産のサクラ材を使用した。
トイレはサクラ材の手すりで温かさを、洗面室には八代のイグサの縄のれんで伝統の技を演出した。
[編集] 運用
2004年3月13日の九州新幹線の新八代駅~鹿児島中央駅間開業と同時に「つばめ」の愛称で運用を開始した。
2006年3月現在35往復運転されており、うち1往復が新八代駅~鹿児島中央駅間ノンストップの速達タイプとなっている。また早朝と深夜に車両基地からの出区および入区のため川内駅発着の列車や新水俣駅発着の列車も一部設定されている。
新八代駅発着の全列車は鹿児島本線の特急「リレーつばめ」と接続を行っており、同特急とは相互で同一ホームでの乗り換えが可能である。
[編集] 検測機能
全6編成(U001~U006)のうち、U001編成は線路および架線の検測機能を持っており、車両番号の末尾に「K」の文字が加えられている。
ただし、他の検査専用車両のように検査機器を常時設置しているわけではなく検査実施時に機器を積み込む。外観上の違いはパンタグラフ付近に計測用のカメラと投光器が装着されていること以外は他編成との違いはない。
[編集] 今後の動向
JR九州は、九州新幹線全線開業後、現在の800系は九州島内(最端駅は小倉駅)を走る列車に運用を限定し、それと同時に運行開始が予定されている山陽新幹線直通列車は新型車両で運用すると表明している。
山陽新幹線「ひかりレールスター」に使用されている700系は博多駅~新鳥栖駅間(脊振山地が立ちはだかっている)と新八代駅以南の急勾配に対応出来ないため、N700系をベースにした新型車両を共同開発し相互乗り入れ運転を行う可能性が高い。
[編集] 関連商品
- 2004年5月31日にPlayStation2用ソフト「Train Simulator KYUSHU SHINKANSEN」が発売され、260km/hで走る800系新幹線「つばめ」号の世界を疑似体験出来る。
また新幹線の開業と同時に肥薩おれんじ鉄道に経営移管された鹿児島本線在来線の八代駅~水俣駅間を走る787系特急「つばめ」号、そして「リレーつばめ」号も収録されている。
製作はカシオペアのキーボード奏者、向谷実(音楽館)。実際の九州新幹線の車内放送と駅ホームで使用されるメロディも向谷が作曲した。
発売当初はJR九州の子会社であるジェイアール九州商事による通信販売のみの取扱であったが、現在は一般販売も行われている。JR九州の特急列車にあるカタログにも当作品の記載がある。 - 2004年11月にはトミックスから800系のNゲージ鉄道模型が発売されている。初回限定6両セットは18,900円でその後順次3両基本セット、3両増結セットなどが発売される。
その他九州キオスク(JR九州の関連会社)からU001編成の限定版も発売された(すでに完売)。
同時期にKATOからも発売されたが、こちらは6両セットで16,800円と少し割安になっている。 - JR九州商事社製ダイキャストモデル(1号車および2号車・Nゲージスケール)がJR九州主要駅KIOSKや門司の鉄道記念館売店、JR九州商事のインターネット通販(楽天市場内)にて販売中。
- その他、カレンダー・縄のれん・チョロQ・マグネット・色鉛筆・Tシャツなどが販売されている。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
現行路線 |
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未成線 |
成田新幹線 |
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のぞみ・ひかり(ひかりレールスター)・こだま・つばめ |
廃止列車 |
あさひ・あおば |
営業用車両 |
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試験用車両 |
1000形・951形・961形・962形・WIN350・STAR21・300X・FASTECH 360 S・FASTECH 360 Z・軌間可変電車 |
事業用車両 |
911形・912形/ドクターイエロー・East i |
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