森田芳光
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森田 芳光(もりた よしみつ、1950年1月25日 - )は、日本の映画監督、脚本家である。
東京都渋谷区生まれ、神奈川県茅ヶ崎市育ち。1981年に『の・ようなもの』で長編映画監督デビュー。以降、シリアスなドラマから喜劇、ブラックコメディー、アイドル映画、恋愛映画、ホラー映画、ミステリ映画と幅広いテーマを意欲的に取り扱い、話題作を数多く発表する。
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[編集] 来歴
日本大学芸術学部放送学科在学中に、映画の制作を開始する。特に映画好きではなかったが、日大闘争の煽りでサークルが無かったので、取り敢えず映画を作ってみたのだという。その一方で、全共闘運動に参加するほか、落語研究会に所属。同研究会の先輩には、のちに放送作家となる高田文夫がいた。
1981年に、『の・ようなもの』でデビュー。題名は、三遊亭金馬 (3代目)の落語『居酒屋』に出て来る、「のようなもの」というフレーズから採られた。
1983年に、松田優作主演の『家族ゲーム』を発表する。家庭をシニカルに、暴力的に描いた、出色のブラックコメディーである。家族全員が長い食卓に、画面に向かって横一列に並んで座る何とも奇妙な食事場面等、何気無い日常の風景を非日常的に描写した、人を食った演出が評判となった。これが出世作となり、新世代の鬼才として広く注目を集める。
映画のTV放映が時間枠の都合でカットされる事を嫌い、本作がTV初放映された際には、一番の見所であり、視聴者も期待していたであろうクライマックスの食卓バトルのシーンを丸ごとカットしてこれに抵抗した。
1985年に、夏目漱石原作、松田優作主演の『それから』を発表する。村上春樹は、本作を観て以降は、明治時代に書かれた小説を読むと主人公に松田の顔を思い浮かべてしまうと告白している。
1986年に、広告代理店を描いたコメディー『そろばんずく』を発表した。バブル時代を色濃く描いた作品となった。
1996年に、パソコン通信による男女の出会いを描いた『(ハル)』を発表する。日本映画でパソコンをテーマにした作品は珍しく、話題になった。
1997年5月に、渡辺淳一原作の『失楽園』を発表する。役所広司、黒木瞳の主演、人生に疲れた中年男女が不倫の果てに心中するというストーリーで、R-15指定をうける。観客動員数が200万人を超えるヒットとなった。「失楽園」という言葉はこの年の流行語ともなった。
1999年に、貴志祐介原作の『黒い家』を発表する。『リング』、『らせん』と、1997年以降、日本のホラー映画が高い注目を集めていた。しかし本作は、一連のホラーブームに便乗したのではない、群を抜くホラー映画と評価された。
2002年に、宮部みゆきの大ベストセラー小説を原作とした、中居正広主演のミステリー『模倣犯』を発表する。
2003年11月に、向田邦子原作の『阿修羅のごとく』を発表する。4人姉妹のそれぞれの複雑な色恋を描いた恋愛映画である。大竹しのぶ、黒木瞳、桃井かおり、深津絵里と豪華な女優陣が結集した。
2004年11月に、伊東美咲主演の『海猫』を発表する。北海道の田舎の漁師の家に嫁いだ女が、夫の弟との密通の果てに自殺するという、破滅的な色恋を描いた恋愛映画である。森田は「多くの人に見て貰いたい」との気持ちを抱いていたが、伊東の演じた激しいベッドシーンなど、激しい性描写を理由にR-15指定を受けた。
2006年夏に佐々木蔵之介、塚地武雅主演、江国香織原作の『間宮兄弟』を発表する。
[編集] 作品
[編集] 監督
- 『ライブイン・茅ヶ崎』1978年。脚本兼任。
- 『の・ようなもの』1981年。脚本兼任。
- 『シブがき隊ボーイズ&ガールズ』1982年。脚本兼任。
「本(マルホン)噂のストリッパー」 「ピンクカット太く愛して長く愛して」
- 『家族ゲーム』1983年。脚本兼任。
- 『メイン・テーマ』1984年。脚本兼任。
- 『ときめきに死す』1984年。脚本兼任。
- 『それから』1985年。
- 『そろばんずく』1986年。脚本兼任。
- 『悲しい色やねん』1988年。脚本兼任。
- 『キッチン』1989年。脚本兼任。
- 『愛と平成の色男』1989年。脚本兼任。
- 『おいしい結婚』1991年。脚本兼任。
- 『未来の想い出――Last Christmas』1992年。脚本兼任。
- 『(ハル)』1996年。脚本兼任。
- 『失楽園』1997年。
- 『39 刑法第三十九条』1999年。
- 『黒い家』1999年。
- 『模倣犯』2002年。脚本兼任。
- 『阿修羅のごとく』2003年。
- 『海猫』2004年。
- 『間宮兄弟』2006年。脚本兼任。
- 『椿三十郎』2007年公開予定。
[編集] 制作総指揮
- 『バカヤロー!――私、怒ってます』1988年。オムニバス映画。渡辺えり子、堤幸彦、中島哲也、原隆仁が監督。脚本兼任。
- 『バカヤロー!2――幸せになりたい』1989年。オムニバス。本田昌広、鈴木元、岩松了、成田裕介が監督。脚本兼任。
- 『バカヤロー!3――へんな奴ら』1990年。オムニバス。鹿島勤、長谷川康夫、黒田秀樹、山川直人が監督。脚本兼任。
- 『バカヤロー!4――YOU!お前のことだよ』1991年。オムニバス。太田光、明石知幸、加藤良一が監督。脚本兼任。
[編集] 脚本
[編集] 出演
- 『東京日和』1997年。
- 『世界の中心で、愛をさけぶ』2004年。
[編集] 受賞歴
- 1978年 - 『ライブ・イン・茅ヶ崎』で、第2回ぴあフィルムフェスティバル入選。
- 1982年 - 『の・ようなもの』で、第3回ヨコハマ映画祭作品賞、新人監督賞。
- 1984年 - 『家族ゲーム』
- 1986年 - 『それから』
- 第31回キネマ旬報賞日本映画監督賞。
- 第28回ブルーリボン賞監督賞。
- 第10回報知映画賞監督賞。
- 第9回日本アカデミー賞優秀作品賞、優秀監督賞。
- 1987年 - 『そろばんずく』と『ウホッホ探検隊』
- 第8回ヨコハマ映画祭脚本賞。
- 第10回日本アカデミー賞優秀脚本賞。
- 1997年 - 『(ハル)』
- 第21回報知映画賞最優秀監督賞。
- 第39回ブルーリボン賞監督賞。
- 第18回ヨコハマ映画祭脚本賞。
- 第20回日本アカデミー賞優秀脚本賞。
- 1998年 - 『失楽園』で、第21回日本アカデミー賞優秀監督賞。
- 2004年 - 『阿修羅のごとく』
- 第46回ブルーリボン賞監督賞。
- 第27回日本アカデミー賞優秀作品賞、最優秀監督賞。