白鳥伸雄
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白鳥 伸雄（しらとり のぶお、1928年（昭和3年）6月12日 - ）は、千葉県生まれの元競輪選手である。
デビュー後しばらくは追い込み一辺倒の戦法で、記念競輪では活躍できても、特別競輪を優勝できるほどの力はなかった。
1959年（昭和34年）、立川競輪場で開催された、第16回全国都道府県選抜競輪4000メートル競走で優勝し、初の特別競輪制覇を果たしたが、同選手が本格的に強くなるのは、後に「３強」を形成することになる、高原永伍、平間誠記が頭角を現してからである。
もっとも、白鳥が後に「輪聖」とまで謳われる大選手にまで上り詰めるきっかけとなったのは、下記に挙げる「西武園事件」があったからという見方もできる。
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[編集] 西武園事件
1960年（昭和35年）9月13日の西武園競輪場。大本命を背負っていた白鳥だが、周回中に自転車がパンクし、競走中止となった。この時点で既に場内は騒然となっていたが、白鳥が吹っ飛んだのに配当があまりにも安すぎるという話に繋がり、これは八百長ではないか、と一部の客が激昂したため、騒擾事件となってしまった。
ちなみにこの日、阿佐田哲也も同競輪場に来場していたが、見ず知らずの客に、「これからもっとひどいことになるから、さっさとここから逃げたほうがいいよ。」と諭され、すぐさま同競輪場から出たらしい。
白鳥自身にとってみれば、不可抗力の出来事であったが、この事件以後白鳥は、「ファンは勝たないと納得してくれない。」と自分を責める一方で、もっと強くならねばならないという気持ちが芽生えた。そして丁度この事件が発生して以後の競走から、後に華麗とも言われた三角捲りを繰り出すようになる。
[編集] 「白鳥は悲しからずや」
上記の題は、「白鳥の歌（若山牧水・作詞、古関裕而・作曲）」の出だし部分であるが、同選手が1963年（昭和38年）に行われた第16回全国争覇競輪（現在の日本選手権競輪）決勝及び、1964年（昭和39年）に行われた第18回日本選手権決勝と、２度に亘って１着でゴール線を通過しながらも、内線突破で失格になったことから、競輪解説者でもあった寺内大吉が同歌をもじって、白鳥に対する心情を詠んだとされる。そして、白鳥は一躍、「悲劇のヒーロー」と言われるようになった。
しかし、次に述べる「白鳥胴上げ事件」は、同選手の過去の悲劇を知るファンが優勝を心待ちにしていた結果だったからこそ発したものだったと言われている。
[編集] 白鳥胴上げ事件
1965年（昭和40年）5月5日。川崎競輪場で開催されていた第10回オールスター競輪は最終日を迎えた。
当日は祝日でもあり、白鳥の他、同大会3連覇がかかる高原永伍をはじめ、「3強」の一角、平間誠記の他、高原と一時期ライバル関係にあった松川周次郎、２人で一時代を築いた吉田実、石田雄彦、さらに「捲りの名人」と言われた加藤晶らが決勝へと駒を進めたことも手伝い、川崎競輪場のスタンドは客でぎっしり埋まり、ついにはスタンド内で見れなくなった客は、スタンド上の屋根に上ったりするなどして、何とかレース観戦しようとした。
一方、スタンド前方にいた客は続々と後から客が入場してくるものだから、押しつぶされそうになっていた。やがて、スタンドの柵を超え、バンク内へとおしかける客が出始めた。そして決勝直前には、約200名ほどがバンク内になだれ込むという、「異常事態」となった。
当初主催者はこのような非常事態下では競輪競走を行うことは不可能ではないかとして、レース中止も検討していたそうだが、バンク内に入った客は三角座りをするなどしてじっと決勝戦の行方を見守っていた様子だったことから、決勝戦は予定通り行われることになった。
レースは逃げる高原、番手の平間と続いて、白鳥は３番手でレースを進めたが、一本棒の展開となった。直線で差す算段だった平間に対し、白鳥は既に三角で追い出しにかかっており、直線でグーンと伸びて優勝。高原の同大会3連覇を阻止した。そしてこのあと、競輪史上、今も語り継がれる「胴上げ事件」が起こる。
クールダウンを行っていた白鳥に対し、バンク内にいた客が集まり、白鳥は身動きが取れなくなった。すると、ある客が、
「これから白鳥を胴上げするぞ！自転車は俺が持ってるから、絶対にこいつに触れるんじゃねぇぞ！」
と言って、その客は白鳥の自転車を高々と掲げ、他の客はついに白鳥を胴上げし始めた。これがいわゆる、「白鳥胴上げ事件」である。
なんと胴上げは延々５分ぐらい続いたという。
このような事例は後にも先にも、これが最初で最後の出来事だと思われるが、とにかく信じられない光景だったとはいえ、当時騒擾事件が頻発していた競輪において、客がこうした行動に出るとは誰もが思ってもいなかった。
そして白鳥は、「ああ、競輪選手でよかった。」と述懐している。またこの余勢をかって、白鳥は同年６月に開催された第16回高松宮賜杯（現在の高松宮記念杯）も優勝し、特別競輪連覇を果たした。また同年の賞金王（1210万1480円）にも輝いた。
しかし、主催者の川崎市はこのような事態になったことを重く受け止め、この大会以後特別競輪開催を自粛することになり、2005年（平成17年）にこそ、GⅡ・サマーナイトフェスティバルを開催したものの、特別競輪、つまりGIは現在もなおこれ以後開催されていない。
[編集] 38歳で特別競輪優勝
1967年（昭和42年）、西武園競輪場で行われた第2回秩父宮妃賜杯競輪で優勝したが、当時38歳だった。
ちなみに同年齢の優勝記録は長らく、特別競輪最年長優勝記録となったが、2002年（平成14年）の第11回寛仁親王牌において、松本整が43歳で同大会を優勝したことからその記録は塗り替えられることになった。
しかし、現在の競輪では、GIの優勝者は高齢化の傾向にあるが、白鳥の時代はせいぜい30歳位までがトップクラスのピークと言われていた。そんな中での優勝だっただけに、周囲を驚かせたことは言うまでもない。
[編集] 突然の引退
同年、白鳥は後楽園競輪場で開催された第21回日本選手権競輪に出場するも、二次予選で敗退。そして、この敗戦後まもなく、電撃的に引退を表明した。
白鳥自身、過去に二度、決勝１着失格となった苦い経験もあるが、年齢的なことを考えると、これが日本選手権優勝の最後のチャンスだと思って挑んだのにそれができなくなったことで、競走に対する意欲が失われたと思われる。
[編集] 引退後
引退後、同氏はRFラジオ日本で放送されていた競輪トピックスで、特別競輪開催前には必ずその大会の展望の解説者として出演。また、テレビの競輪中継でも、鈴木保己氏らとともに頻繁に出演していた。
1984年（昭和59年）から、同氏の功績を讃え、「白鳥伸雄杯」が毎年、千葉競輪場で開催されている。
また、1995年1月に創設された日本名輪会の会員でもある。
