社会的動物
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社会的動物(しゃかいてきどうぶつ)とは、社会を構築し、その中で生活する動物の事である。
なお本項では主にアリストテレスの提唱した人間の定義と、この人間が考える所の社会のイメージに基づいて、類似性の見られる生活習慣がある動物についても触れる。より広義に生物全般の持つ社会性に関しては社会 (生物)を、また社会構造を構築する生物に関する学問については社会生物学を参照されたし。
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[編集] 概要
この言葉は古く、アリストテレスが人間(ヒト)を指してこのように呼んでいる。正確には、「人はポリス的な動物である」というのだが、この場合のポリスとは当時のアテナイ人にとっては、まさしく社会そのものであった(→都市国家)。所謂社会において、個々の存在(人間の場合は個人)が各々に与えられた役割を果たす事で機能している。社会は、個々の存在である個体を保護する機能を持ち、個体は社会に寄与する形で社会や他の個体に関係する。
野生動物にあって、各々の個体に単に集団(群)の一員といった程度の役割しかない場合には、この集団性のみをもって社会的動物であるとは呼ばれない。その一方で父親・母親・子供といったような役割の分化は社会性の発露であると見なされるため、父性・母性にも関連して、家族または家庭の様式によっては社会的な動物であると見なされる傾向にある。
生物における、より一般的な意味の社会については、社会 (生物)を参照のこと。
[編集] 人間の社会性
今日に於いて地球上で、一つの個体が数多くの役割を持つなど、複雑な社会構造を構築して生活している動物は人間(ヒト)をおいて他には余り見られない。
ヒトの社会においては、各々の個体は多様な役割を常に負っており、これらは対峙する相手や状況によって使い分けられている。人は様々な社会に含まれる小社会に属しており、家庭・職場・趣味のサークルなどや自治会・地域コミュニティといった様々な局面に於いてそれぞれ異なった役割を演じている。
人間の社会は複雑であるため、それぞれをこなすために知識が必要となり、その知識は教育によって与えられ、この教育に負わなければならない情報は極めて多い。幼少期などにはしつけを通して、ある程度成長したら義務教育のような基本的教育を、更には専門分野やより高度な高等教育を課す事で、社会に求められる役割に必要な情報が与えられる。これら教育や訓練は、長い期間を通して社会で求められる能力を育てる。(→後述・社会と情報伝達-教育)
[編集] 社会を形成する動物
ヒト以外にも少なからず独自の社会を形成して生活する動物は存在する。特に近年では野生動物の観察・調査が進むにつれて、社会性を持つことが知られるようになった動物も多い。これらは古く観察が十分ではなかった時代には、野生動物が独自の社会性を持つことが知られていなかった部分もあり、近代以降の学術的な調査により、人間以外にも独自様式の社会構造を持つ生物が見つかっている。
古くより群の中でリーダーシップを発揮するボスを中心とした社会を持つものは、社会的動物であると見なされた。群の中で各々の役割が発生しており、相互関係によって成り立つヒエラルキーの有無は、単なる群か、それとも社会とすべきかと言う点で、注意すべき違いである。
例えばイヌであるが、この動物は群社会においてボスが絶対的な権力を持っており、これは優れた個体が担っている。このイヌの社会性は、ペットとして飼われている家畜のイヌでも持っており、ペットであるイヌを含めた人間の家族の中に、イヌ自身の地位を認識していると考えられている。
またミツバチなどのハチやアリのような昆虫の中には、一定の環境下に於いて・若しくは遺伝的な作用によって、その地位を獲得する場合も見られる(後述)。
[編集] 社会を形成する昆虫
ハチやアリの中でも社会を形成するタイプの動物では、遺伝的な本能によるものではあるが、その役割が細かく区分され、主に食糧を集めるもの、外敵から巣を防衛するもの、子供(幼虫)の世話をするものといった各々の労役を担う個体と、それを産む(産卵)女王と呼ばれる立場の個体によって社会が形成されており、また有性生殖を担う上でごく少数のオスが存在している。女王とオスの個体以外は生殖に直接関与しないなど、明確な役割分担が存在する。
なおサムライアリはクロヤマアリなどの巣を襲い、この巣の幼虫を奪って育て、使役する事が知られている。この奴隷制度を支えているのは、勿論サムライアリの遺伝的にプログラムされた本能によるものであるが、単なる適者生存だけでは考えられない、驚異的な社会構造といえよう。これらのような社会を構築するタイプの昆虫は、主に社会性昆虫と呼ばれる。なおこのような様式を数理的に解き明かそうという学問として、社会生物学という分野がある。
[編集] 社会と情報伝達・教育
社会を形成する上で、そこには一定の情報伝達(コミュニケーション)の必要性が出てくる。先に挙げたアリではフェロモン(匂い)が情報を伝える役割を担っているが、ハチでは一般にダンスとも呼ばれる一定行動様式で餌の位置や距離などといった情報を伝達していると考えられている。イヌ等では音声によって情報伝達を可能にしているほか、ヒトでは言語や文字で情報を伝達する。
更にこれら情報伝達でいっぺんに伝えきれない(情報の受け手が理解しきれない)情報を伝え覚え込ませる事は教育と呼ばれる。特にヒトでは必要とされる知識が多いため、長い期間を掛けて教育される。(→前述・人間の社会性)
[編集] 備考・社会性と文化
社会の形成は、ある程度の余裕(身を守ったり、食物を得る労力が軽減される)が生れる事から、この余暇を用いた行動様式も発生する。ヒトの社会では遊びと呼ばれる行動であるが、このようなものでは、必ずしも実利的ではない行為から、文化と呼べるような世代を超えて伝えられる行動様式も発生し得る。
ただこのような文化(?)の継承などは、幾つもの群を個体を識別しながら注意深く観察しない事には、気付かれ難い現象である。古くは単なる自然発生的・もしくは遺伝的・本能的な習性に過ぎないと考えられていた。