薩隅方言
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薩隅方言(さつぐうほうげん)は、広義では鹿児島県内で使われる言葉。薩摩国と大隅国で使用されていたことから呼ばれるが、現代では主に鹿児島弁という。
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[編集] 概要
類縁として、宮崎県南部で使用される諸県弁があげられるが、鹿児島弁が二型アクセントに分類されるのに対して、諸県弁のうちえびのは鹿児島同様二型アクセント、小林・都城から末吉・志布志にかけては統合一型式アクセント、北諸県郡と西諸県郡は無アクセントに分類され、別系統に取り扱う場合もある。
周辺の博多弁や宮崎弁、熊本弁とも語彙の点で、共通する点は見られるが、独特のアクセント・イントネーションは、しばしば遠く離れた津軽弁に似るとも言われる[要出典]。これは、上方を文化の中心として、そこから離れるほど文化の変化が乏しいためである(方言周圏論)[要出典] 。実際に鹿児島県本土ではしばしば豆腐のことを昔の上方の言葉で「おかべ」と言う。
音節が種類によらず同じ長さで発音され、モーラの単位がない。アクセントも専ら音節単位でつけられ(他の多くの方言ではモーラ単位)、日本語としては珍しい「音節方言」の部類に入る(ほかに津軽弁・秋田弁など一部の東北方言がある)。
南の玄関口として栄えた地域だけに、外来語が方言になったという例もある。 黒板消しという意味でつかわれる「ラーフル」という言葉は標準語ではなじみが薄いが、外来語由来であると推測されている。語源は諸説あるが、一説によればオランダ語のrafel(擦る・布きれ)が由来であるらしい。 ただし、この単語は鹿児島以外でも宮崎・愛媛などで使われており、方言周囲論で説明できるという向きもある。[1]
また、標準語となった薩隅弁としてよく「おい」、「こら」の2つがあげられる。今では当たり前のように使う言葉ではあるが、明治以前はこのような言葉はおろか、表現すらなかった。これが、明治に入ると藩閥による薩摩藩の警察官の薩摩藩出身者優遇によって、よく市民を注意する際に、薩摩藩出身の警察官が「おい」「こら(「これは」=「あなた」の意)」といって注意した。これが定着して、今日の標準語として、相手を呼んだり、あるいは気を引かせる、注意する際にこの語を用いるようになった。当然、当初はこれを薩摩藩出身者以外が理解できるわけはないので、よく市民が皮肉って薩摩藩出身の警察官を「おいこら警官」と呼んだ。
特筆すべき薩隅弁の特徴は、敬語をよくつかうことである。「ありがとう」を「あいがともさげもした」といったりするが、これは「有難う申し上げました」がなまったものらしい。また、やはり、話す相手が目上・年下で、薩隅弁を使い分ける。
鹿児島独自の表現もある。「いした」という言葉がある。この言葉、方言のなかでも最もユニークといえる。これは、一般の方言として残るような名詞、あるいは形容詞ではない。感嘆を表す独立詞で、自分の体に液体が触れたときに、意識なしに「おもわず」発してしまう言葉らしい。
ここまで薩隅弁の特徴を書いたが、実は県内でも薩隅弁は統一されておらず(たとえば上記「いした」場合、「いして」「い(ひ)っちゃ」「いっちゃび」などの言い方もある)、未だに県内でも通じない言葉が多々あるという。
他の地方者により薩摩弁の特徴とされている「おいどん」や「ごわす」といった表現は、現在は全くと言っていいほど用いられていない。
[編集] 朝鮮語との関係の噂
薩隅方言は、その音などが、関東方言や関西方言と大きく異なっていることはもちろん、他の九州各地の方言と比較しても特徴的な印象があり、そのため、朝鮮語等の影響を受けた人工言語であるとの言説を唱えるものがいるが、検証をすると、『「ばってん」=but then』に近い語源俗解の類と考えられ、言語学的に一顧だにされていないのが実情である。このような傾向は、言語学に関わらず、日本の人文科学全体に共通する問題であり、官製文献や大学者とされる人物の説の奉じて、他の説は門前払いする。例えば、『他の九州方言と比較しても特徴的な印象がある』と言う官能的な表現で切り捨てて、理論的な考察にまで突き進まない。『印象』などではなく、隣国の熊本県人にも鹿児島弁は理解できない。津軽弁が、秋田県の南側でも多く見られるのとは全く異なる。これを、人工言語ではないとして一顧だにしない。下に、「ai」→「e」と発音するのは、日本語の変化として切り捨てているが、このような発音変化が、九州地方全体の傾向だったら納得できる。しかし、こ、のような発音の変化は、鹿児島だけに強く現れているのである。言語を他国者が理解しにくいものにしようと企画する人間にとって、ヒントを得ることが重要であるから、鹿児島に連れて来られた朝鮮人の数が少なかったと言う説も説得力は無い。100人以下であっても、ヒントが得られれば十分なのである。このような解釈を否定するのは、自分たちの権威付け、そして、その保全のために、他説は無視しているのであり、それが日本の人文科学の現状である。残念なことである。
[編集] 言説
薩隅方言は、「故意に」標準語とは大きく異なる形の方言にしたという説がある。特に、豊臣秀吉の朝鮮出兵に参陣した島津義弘が、大勢の朝鮮人を連れ帰り、彼らの話す朝鮮語の発音法や単語を採用して、他国人には理解困難な方言にしていったと言う説は、広く流布している。これを否定する説では、連れ帰ったのは陶工だけだと言うことを唱えるが、秀吉軍は、6万人前後の朝鮮人を、男女の区別無く拉致しているのである。女は、下女として使ったり、奴隷として外国に売り飛ばすこともしている。江戸時代の朝鮮通信使は、彼らを再び朝鮮に連れ帰ることを一つの目的として再開されたが、ほとんどの朝鮮人が、当時の母国の惨状を知り、帰国しなかったと言われる。薩摩藩は、わざと標準語とはまったく異なる方言を使うことで、情報の漏れを防ぐ、幕府の隠密の侵入を難しくする、つまり他国人を言葉で聞き分けるという目的があったといわれている。
言葉の変換で、母音aiをeにする特徴がしばしみられる。朝鮮語は現在でも、『ai』や『oi』を『e』と発音する。これは、母音を連続発音しないと言う朝鮮語の原則に依るものである。
- 貝 (kai) →ケ (ke)
- 大根 (daikon) →デコン (dekon)
- 大層 (taisou) →テソ (teso) (大層だ→テソカ)
- 大概 (taigai) →テゲ (tege)
- 厄介 (yakkai) →ヤッケ (yakke)
また語尾などの音節が省略され促音になることも多い。これも朝鮮語に多く見られる発音法である。現在も韓国では英語の『NET』は『ネッ』、『HIT』は『ヒッ』と発音されている。
- 靴、釘、串→クッ
- 鹿児島→カゴッマ
朝鮮語から採用したと思われる単語には、以下のようなものがある。
- 大概 (taigai) →テゲ---鹿児島では「テゲテゲ」と2つ続けて用いることが多い。
- 労傷→ノサン---朝鮮語でも鹿児島弁でも(仕事や生活などが)大変だと言う意味。
- 按配→アンベ---朝鮮語の読み方そのまま。鹿児島弁と意味も同じ。
- ~ゲ→~ゲ---朝鮮語でも鹿児島弁でも『~の家(すむ所)』の意味になる。鹿児島弁で『アタイ・ゲ』は『私の家』と言う意味である。
[編集] 上記言説に対する検証
上記言説については、以下のとおり、根拠薄弱であると検証ができる。
まず、歴史的事実として、島津義弘が連れ帰った朝鮮人はその多くが陶工であり、絶対的人数はさほど多くなく、又、それらの人々は集住させられ周囲との交流も制限された事実(記事苗代川参照)から、その言葉が広範に影響を与えらことは考えにくい。もし、そうでなく、その他の流入経路であるとしたら、途中経路がまったく消失している。
次に、言語的にも、日本語の変化として十分に説明できる。
- 『大概 (taigai) →テゲ』、『按配→アンベ』、『~ゲ→~ゲ』は、すべて「ai」→「e」で説明できる(家「ゲ」は「がや(~の家:gaya→gaye→ge)」)。
- 語尾音節の促音化は、漢語に関する日本語一般に見られる傾向である。
■(反論)漢語ではなく、鹿児島弁では、多くの動詞も促音化しているのである。熊本弁では、『行くぞ』が『イクバイ』であり、鹿児島弁では、『イッド』である。この差を、日本語一般に見られると言う主張は、誰も理解できないだろう。
- 『労傷→ノサン』、「のさん」は「なさず、なさぬ」の転と考えた方が自然。
■(反論)自然ではない。鹿児島弁の『ノサン』には、辛いと言う意味もある。『なさず』に『辛い』の意味を持たせるのは不自然で、そこまで拡大解釈すると『悲しい』や『嫌い』などの意味もあると言っても不思議ではない。
[編集] おもなことば
(五十音順)
<あ>
- アイ:単数三人称代名詞。「あれ」という代名詞が変化したもの。「彼」「奴」の意。
- アイドン:複数三人称代名詞。彼等。
- アイガトゴワス:ありがとうございます。
- アイガトモシャゲモシタ:ありがとうございました。
- アタイ:私。
- アタイゲエ:私の家。
- アタイゲン:私の家の。
- アタヤ:私は。(あたや、したん→私は、知りません)
- アッタカン、シタンドン:有ったかも、知れないけれど。
- アッタブッ:暖める。
- アッタラシカ:もったいない。(←古語「あたらし」)
- アッパッ:持て余す。焦る、いっぱいいっぱい、驚く。
- アップチャ:雨蛙。
- アマメ:ゴキブリ。
- アンネコッ:危険なこと
- アンベ:按配。体調。
<い>
- イオ:(生きている)魚。
- イケン、シタトナ?:どう、したんだい?
- イタカ:痛い。(お湯などが)熱い。
- イッカスッ:言い聞かせる。教える。
- イッキ:すぐに。
- イッスカン:気に入らない。
- イットッ:ちょっと、少しの時間。(いっとっ、だまっちょれ→少し、黙っていろ)
- イッナ/インナ:何時ですか。
- イミシタン:意地悪な
<う>
- ウッカタ:女房(家方[うちかた]の訛り)。
- ウソヒィゴロ:うそつき
- ウッタクッ:殴る。(ゆこちゅ、きかんと、うったくっど→言うことを、聞かないと、殴るぞ)
- ウッゼラシカ:うるさい。(『セカラシカ』より、きつい言い方)
- ウド:空っぽ。
- ウンナゲン:うちの、私の
- ウン:海
- ウンベ:むべ(郁子:アケビ科の果物)
- ウンマカ:旨い。美味しい。
<え>
- エシイ/エシカ/エジカ:ずるい。
- エジワロ:ずるい奴
<お>
- オ:鯨の肉。
- オイ:俺。
- オイドン:俺共。俺たち。複数一人称代名詞。「おいどま(俺共は)」の形で使われることが多い。
- オイドン:俺殿。単数一人称代名詞。「おいどんな(自分は)」の形で使われることが多い。
※どん(殿)は、本来は敬称であるが、主に農村地帯で、爺どん、婆どん、親爺(おやっ)どん、かかどん、医者どん、どんこ(蛙)どん、等のように、親しみを込めた「殿(どん)」の用法例があり、単数一人称代名詞「おいどん」も、そういった中の一例だったと考えられる。転じて謙譲の意で使われるようになった。
- オカべ:豆腐。
- オジ:おそろしい、怖い。
- オジャッタ:いらっしゃった。
- オジャッタモンセ:いらっしゃいませ。
- オッカ:重い。
- オットッ:強奪する。盗む。(オットラレタ→盗まれた。)
- オテシキ:だいぶ、(雨がー降った)。思い切り。
- オドモン:横着な人(横道者の訛り)
- オハン:あなた(「おはんな」と言えば「あなたは」の意)
- オマンサァ:あなた。(「お前様」が訛ったもの。)
- オモサマ:思い切り。(「オモサマ、セ」→思い切り、やってみろ)
- オモヒトカ/オモシトカ:面白い
- オヤットサァ:お疲れ様。
- オラン:居ない。
<か>
- カイカ:軽い。痒い(かゆい)。
- カイモ/カライモ:さつまいも。
- カズン:嗅ぐ
- カタカタ:左右で違う(げた/靴下が-)
- ガッツイ:丁度。本当に。
- ガラッパ:河童。
- ガル/ガッ:叱る(ガラレタ=叱られた)
- ガンタレ:利かん坊、暴れん坊。役立たず。
<き>
- ギ:議。文句、屁理屈 (ぎをゆな→文句を言うな)
- キッシャナカ:汚い。
- キバレ!:頑張れ!
- キヒカ:厳しい
- ギー:~時(動詞の後に来る)。
- ~ギ:~まで。
<く>
- クイマラン:(やらなければいけないことが)なかなかできない。(諸県)
- クガ/クド:食べよう(誘いの言葉)。
- クジル:(鼻の穴などを)ほじくる。
- クセラシカ:大人びた。生意気だ。(年少者に対して)
- グラシカ:可哀そうだ、気の毒だ。
<け>
- ゲー:家。「アタイゲー」は「私の家」、「オイゲー」は「俺の家」と考えればよい。
- ケケケ:貝を買いに行くところです。最初の[ケ]が貝、2番目の[ケ]が買う、3番目の[ケ]が、現在進行形を意味する。
- ケシン:死ぬ。「ケシンミャッタ」は「亡くなった」の意。
- ケシンボ:ずるい・ずる賢い人間。
- ケスイバッ:ひょうきんな人。
- ケヲケケケ:貝を買いに来い(70年代この歌詞の入った歌を歌ったグループがいたが、、)
- ケンスノ:穴の穴
- ゲンネ:恥ずかしい。「ネ」は「無い」の意、「ai」→「e」の音韻変化の例だが、活用時も原音に戻らない。(例)「恥ずかしいだろう」→○「ゲンネカロ」、×「ゲンナカロ」
<こ>
- コケケ:買いに来い。「コケ」が「買いに」、最後の「ケ」が「来い」を意味する。(目下の者に使う表現)。
- コケケ:此処に来い。この場合の「コケ」は「此処に」を意味する。(目下の者に使う表現)。
- コケオジャタモンセ:こちらにおいで下さいませ(目上の者に使う表現)
- コイ:是
- コッ:蜘蛛
- コマンカ:小さい。
<さ>
- サイモイ/サイモ:是非
- サンカ:寒い
<し>
- ジサン:爺様。(ばさん:婆様)
- シタン:知らない。
- シッチョ:知っている。
- シモンソ:(そのように)しましょう。「シモンソカイ」は「しましょうか?」。
- シヤッガ:~されるでしょう(尊敬語)。
- ジャッタケ:そうだったかな。(最後の「ケ」は疑問を表す接尾語。標準語の「~かな?」と同意)
- ジャッチ:そうだがしかしという反語。相手の話に同意する表現、
- ジャッド/ジャライ:そうだ。(同意を意味する)(目下の者に使う)
- ~ジャンサイ:そうでございますとも。(目上の者に使う)
- ~ジャンサー:~と言うことでございます。
- ショチュ:焼酎
- シャイモガ:わざわざ
- ~ジャッセン?:~だよね。~じゃない?主に県北西部の川内地方で用いられる言葉。
<す>
- ス:穴。シイノス、ジゴンス(尻の穴)
- スカンド:好きではないですよ。
- スッガ/スッド:します。(ソゲン、スッガ→そのように、します。)
- スッパイ:やっぱり。川薩では全部の意味。
- ズンバイ:いっぱい。-食べやん=いっぱい食べなさい。
- ズンダレ:(服装などが)だらしない。ずり落ちている。(「ずり垂れる」の訛り)
<せ>
- セ:しろ(目下に言う命令形)。(コゲン、セ!→このように、しろ!)
- セカラシカ:うるさい。
- センド:しませんよ。
<そ>
- ソゲン:そのように。
- ソゲンナ:そうなのですか。
<た>
- ダイ:誰
- ダイカ:だるい。(体が、だいかして→体が、だるくて)
- ダイカ/ダイガ:誰か。(だいか、おらんな?→誰か、居ませんか?)
- ダイサア:どちら様(誰様が訛ったもの)。(ダイサア、ジャヒケ?→どちら様、ですか?)
- ダイヤメ:晩酌。(「だれやめ」が訛ったもの)。
- タマガッ:驚く。(「魂消える」の訛り)
- ダンブクロ:麻袋(蘭袋が訛ったもの)
<ち>
- チョッシモタ:しまった。
- チゴッ、チゴド:違う
- チンガラッ:滅茶苦茶などを表す語。
- チンタカ:冷たい。
<つ>
- ツクジル:(やたら箸で)つっつく
- ツケアゲまたはチケアゲ:さつま揚げ。
- ツヨカ:強い(財力のあることも「ツヨカ」と言う)
- ~ッド:~ましょう(動詞の後)。
<て>
- テゲテゲ:いい加減。適当。ほどほど。
- テゲナ:①けっこうな。たいそうな。②いい加減な。適当な。
- テソカ:大儀だ。疲れて面倒だ。
- テネゲ:手ぬぐい、タオル
<と>
- ドケ:何処に。
- ドケイットコイ:何処に行くところかね(目下に使う表現)。
- ドゲン:どのように。(どげん、すっとな?→どのように、するのですか?)
- ドッサイ:沢山。(「どっさり」の訛り?)
- トナイノ、イエギ、ウッコワシヤッタモンジャッガ:隣の、家まで、壊してしまったもんだ。
- ドンコ/ドンコドン/ドンコビッ:蛙。
- ~ドン:敬称(殿)。用法例;苗字に付けて、○○ドン(○○さん)
- ~ドン:(共)。用法例;オイドン(我々)、ワイドン(お前たち)、アイドン(彼等)
<な>
- ナオッテネル:ちゃんと布団/ベットに移って寝る。
- ナゴキャンサンジャシタナァ:長いことお見えになりませんでしたね。
- ナイゴッナ?/ナイゴテ?:どうしたの?何をしているの?
- ナイゴテ:どうして(-そげんことをすっとよ?)
- ナマスカン:意地悪な(言動)
- ナンカカル:(壁などに)寄りかかる。
- ナンマンサー:仏壇
<ぬ>
- ヌキ/ヌッカ:暑い(温かい→ぬくいの訛り)。
- ヌサン(ノサンを参照):たまらない
<ね>
- ネタ:泣いた。
- ネタコズガ、ヒヒントワルタ:泣いていた子の機嫌がすぐになおるさま。
- ネッド:寝ますよ。
- ネド:無いですよ。
- ネマル:腐る(鼻がネマル- 非常に臭い時の描写)
<の>
- ノサラン:かなわぬ夢みたいなこと。
- ノサン:(仕事などが)大変だ。韓国語の労傷(ノサン)が語源?
- ノンベ:酒飲み(飲ん兵ぇの訛り)
- ノンカタ:酒の飲み会。
<は>
- ハッチタ:去った。
- ハッチラッドン:身なりが極端に貧相な様子(の人)
- ハヨ:早く
- ハヨ、コケコンナ、ネゴナッド:早く、ここに来ないと、無くなるよ。
<ひ>
- ヒッカブリ/ヒッカブイ/ヒッケジロ:弱虫。臆病者。
- ヒッカブル:(おしっこを)もらす。
- ビッキョ:蛙。(←「蟾蜍」(ひき よ)?)
- ヒッタマガッ:非常に驚く。(ヒッタマゲタ(引魂消る)→非常に驚いた)
- ビハナ:昼間の花火
- ヒンガ、ヨカ:かっこ良い!
- ヒンガ、ワイカ:かっこ悪い!
- ビンタ:頭。(びんたが、いたか→頭が痛い)
- ヒンダリ:だるい。つかれた。(←ひだるし)
- ビンタンケ:頭髪
<ふ>
- フ:運。(フガ、ヨカ→運が、良い。)
- ブエン:食用となる生魚・鮮魚。。一部地域では「刺身」。干物などのように塩をふっていない魚(無塩)。
- ブゲンシャ/ブケンシャ:お金持ち(分限者)
- フトカ:太い。
- ブニセ:醜男。
<へ>
- ヘ:灰(特に桜島からの灰)。蝿。縁。
- ヘタタッ:ハエ叩き
<ほ>
- ホケ:湯気
- ボッケモン:向こう見ず。豪胆な人。
- ホガネ:頼りない
<ま>
- マガッ:曲がる。
- マコテ:実に。誠に。
- マッキッタ:狂ったようになること。
- マッポシ:障害物が無い様子(隣の家の部屋が - 見える)
- マギル:曲がる
<み>
- ミナモロタギーナニターシヤッカモヨ:みんなもらったときは喜ぶかもよ。
- ミシタン:会ったことがない。(「見知らぬ」の訛り)
- ミッシャナカ:可哀そうな。
- ミン:耳
- ミンチャバ:耳朶
- ミン:見ていない
<む>
- ムッシャナカ:可哀そうな。
<も>
- モジョカ/モゾカ:かわいい。
- モヘ:もう。早くも。(「もはや」が訛ったもの。)。
<や>
- ヤッケタ:困った。(ヤッケタコッ→困った問題)・・・韓国語では「弱る」を「ヤッケチダ」と言う。
- ヤッセン:駄目。(*ヤッセンボ→駄目な奴。臆病者。)
- ヤマンコッ:女郎蜘蛛(山の蜘蛛の意味)。
- ヤマイモヲホッ:山芋を掘る→転じて『酔っ払いが同じことを何度も話すこと』を意味す。
- ヤンカブイ:髪の乱れている様。
<ゆ>
- ユ:言う。
- ユナチヨ:言わないでよ。(動詞に「ナ」がつくと否定になる。「チヨ」は要請を意味する接尾語。)
- ユクサ:ようこそ。よくぞ。(ゆくさ、ゆちくれた=よくぞ言ってくれた)
<よ>
- ヨカニセ:美男子。
- ヨカオゴジョ:美女
- ヨカド(男)/ヨカヨ(女):良いよ。
- ヨカフー:素晴らしい風情。
- ヨクロタ:酔っ払った。
- ヨクロンボ:酔っ払い。
- ヨメジョ:お嫁さん。(トウモロコシの意味もある)
<わ>
- ワイ:二人称代名詞。「おまえ」の意。
- ワイドン:複数二人称代名詞。お前共。あなたがた。
- ワイカ:悪い。
- ワッコ:(目下の者に対して)おまえ。
- ワッゼ:ものすごく。
- ワッゼカ:ものすごい。
<ん>
- ~ン:(名詞の後ろにつけて)~の。(つくえんなか→机の中)
- ~ンシ:(土地名の後ろにつけて)~の人。(カゴシマンシ→鹿児島の人)
- ンダモシタン:あらまあ。
- ンーニャ/ウンニャ:否定の言葉(いいえ。違います。)。
<5W1H>
- ダイ:誰
- イッ:何時
- ドケ:何処
- ナイバ/ナイヲ:何を
- ナイゴテ:何故
- ドゲン:どのように
[編集] 薩隅方言に関するエピソード
第二次世界大戦中の1943年にドイツから日本へ寄贈された2隻の潜水艦のうちの1隻、U511号には軍事代表委員の野村直邦中将が便乗することになっていた。当時の日本の外務省と在独大使館の間の情報交換は、乱数表を用いた暗号電報。ところが、戦況の悪化に伴い使用が困難になった。そこで、重大機密事項であるU511の出航に関する情報交換に採用した暗号が「早口の薩隅方言」だった。
出航前後に十数回、堂々と国際電話を使って話を伝えた。アメリカ軍事情報部は当然のことながらこの通話を盗聴し、さまざまな方法で(アメリカにとっては)暗号の解読に努めたものの、最初はどの国の言語かもわからなかったという。
尚、NHK大河ドラマ「山河燃ゆ」でも、ユダヤ人の科学者が原子爆弾を作るという情報を薩隅方言で話した内容が傍受され、声の主が恩人とわかった主人公が義理と職務のはざまで苦悩しつつ英訳するシーンが描かれている。
[編集] 書籍
- 鹿児島ことばあそびうた
茶碗蒸しの歌
食堂に来た客が、茶碗蒸しを注文したことに驚いた食堂の主人の歌
- うんだもしたん----------------(えーまさか!=私は知らないと言う意味の感嘆語)
- こげなこっつぁー--------------(こんなことって)
- あたいげん茶碗なんざ-----------(私の食堂の茶碗などは)
- 一日三度も洗れおっもんせば------(1日3回も洗っていますから)
- 綺麗なもんじゃんさあ-----------(きれいなものですよ)
- 茶碗に付いたムッじゃろかい------(茶碗に付いた虫のことでしょうか?)
- ゴゼ馬場這い回っムッじゃろかい---(庭を這い回る虫でしょうか?)
- ほーんに、こげなこちゃ----------(本当に、こんなことって)
- わっはっはっ-----------------(わっはっはっ)
[編集] 参考文献
- ^ 上村忠昌『「ラーフル」考』
[編集] 関連項目
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