赤い星
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赤い星(five-pointed red star、五芒星の中から小さな正五角形を取り除き、中を赤色に塗った星型)は共産主義や社会主義のシンボルとして用いられる。
五つの頂点は、労働者の手の五本の指を、また世界の五大陸を表す。
その他の解釈としては、五つの頂点がそれぞれ共産主義を指導する五つの社会集団、青年(国家の未来の世代)、兵士(共産主義の守護者)、産業労働者(産業を労働で支える)、農業労働者(食糧生産と農村を支える)、インテリゲンツィア(知識階級、共産主義を達成するために思想の批評や生活習慣の改善を行う)を表すというものもある。
一般的に、赤い星は、共産党の支配と指導の下での社会の新秩序の正しさを表す象徴とされていた。
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[編集] 起源
赤い星が使われた始まりは、第一次世界大戦の終わり頃からロシア内戦(1918年-1922年)の時期に遡る。1917年、ドイツ帝国およびオーストリア・ハンガリー二重帝国との戦闘で撤退を迫られたロシア軍はモスクワまで退却し、モスクワ守備隊と混ざり合う状態になった。モスクワに殺到するロシア軍部隊と地元の守備隊とを区別するため、守備隊の将校たちは兵士達にブリキの星を与えて帽子に付けさせた。このモスクワ守備隊が後に赤軍とボリシェヴィキ政府に合流した際、兵士達はブリキの星を共産主義を象徴する赤色で塗り、これが赤い星の起源とされる。
その他の説として、赤い星は赤軍にいたユダヤ人兵士が取り入れたというものもある。この説ではユダヤ人兵士らは、ロシア革命がロシアに「約束の地」を作るものだと信じて彼らのシンボルである星を赤く塗ったとされるが、この説の真偽は疑わしい。この推測の元には、反ユダヤ主義と反共主義との両方によくある、ユダヤ人のダビデの星(六芒星)と共産主義者の赤い星(五芒星)は同じものなのではないかという誤解と混同がある。
また別の説には、レオン・トロツキーとニコライ・クリレンコ(Nikolai Krylenko)との出会いが赤い星の誕生のきっかけだと主張するものもある。ボリシェヴィキのメンバーで1917年に赤軍総司令官となったクリレンコはエスペランティストでもあったが、彼はエスペラントの象徴である緑の星(緑星旗参照)のバッジを身に着けていた。トロツキーはその星の意味を尋ね、クリレンコから星のおのおのの頂点が五大陸のそれぞれを指すという説明を受けた。これを聞き、トロツキーは赤軍兵士には赤い星を付けさせようと考えたという説である。この説も、彼らの間にこのような出会いがあったかどうか定かではないため真偽は不明である。[1]
[編集] 使用
赤い星は共産主義国家の国旗や国章に使われていた。例えばソ連の国旗やユーゴスラビアの国旗には赤い星があしらわれていた。またスペインのカタルーニャ語圏のエステラーダ旗など、分離主義や社会主義のシンボルにも使われている。赤地に黄色い星の旗も、中華人民共和国やベトナムなどで同様の意味合いで用いられている。極東共和国では人民革命軍の軍服に赤い星と同じ意味を込めて黄色い星を使っていた。また、鎌と槌のシンボルが赤い星の中や下に表されることもある。
東側諸国崩壊とソ連崩壊の結果、いくつかの国では「赤い星」の使用が禁止されるようになった。例えばハンガリーでは、赤い星を公的に使用したり見せたりすることは違法行為となる。しかしながら、ロシア地上軍(陸軍)は今でも赤い星をシンボルとして使用し、旧ソ連の構成国家だった国には軍の装備や軍服に赤い星が残っている。ロシア軍の新聞は『赤い星(クラスナヤ・ズベズダ、Krasnaya Zvezda)』という名前のままである。
東側諸国ではスポーツクラブにも「赤い星」をシンボルにしたクラブが多く、いくつかのクラブは「赤い星」をそのまま名前にしていた。ベオグラードの『レッドスター・ベオグラード(Crvena zvezda、Црвена звезда)』、ライプチヒの『Roter Stern』などはその例である。
[編集] 西側での使用
赤い星はアメリカ合衆国など西側諸国の社会主義者の間でも使われていた。また1990年代に活躍したミクスチャーロックバンド、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンも彼らの急進的思想を表現するために赤い星を使用した。
赤い星はその他、カリフォルニア州の州旗、パナマの国旗、北海道開拓使の徽章、ビールのハイネケン、百貨店のメイシーズ、WebブラウザのMozillaなどのシンボルに使われているが社会主義との関係はない。