輪行
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輪行(りんこう)とは、自転車を公共交通機関(鉄道や船・飛行機など)を使用して運ぶ事。バスの場合は通常の路線バスではスペース的に困難であるが、高速バスや空港連絡バスなどで、大きな荷物室を持っているバスが使用されている場合は可能である。
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[編集] 概要
輪行ということばは、もともと競輪の選手が競輪場まで自走することを、「輪行」と称していたところに由来している。ふつう、走行出来る状態では持ち込めない(一部を除く)ため、分解し、輪行袋に袋詰め、布団袋程度の大きさに縮めて肩から提げて運ぶ。輪行袋はだいたい1万円程度で自転車店で購入できる。ただ、コンパクトに収納しても重いものはやはり重いので、肩当てなどを用意しておくと良い。
自転車の分解の手順は車種によって細部で違うが、多くの場合は車輪とフレームに分割する。近年では、自転車を分解することなく、小さく折りたためる折り畳み自転車を愛用する人も多い(主に小径車が多い)。輪行する人の多くが、少し高価ながらも小さくたためるタイプの折り畳み自転車か、元々分解しての運搬がしやすいロードレーサーなどを使用しているようである。
折り畳み自転車でも、安く買える、単に駐輪スペースを節約するのに折りたためるというタイプは折りたたんだ状態でもかなり大きいので輪行は困難である。ロードレーサーの場合は箱詰めして宿泊先に宅配便で送るという人もいる。折り畳み自転車の場合は宅配便の許容サイズには収納困難なので自分で持ち運ぶしかない。
ロードレーサーの分解・組み立てには工具が必要で慣れていない人はかなりの時間がかかる場合(初挑戦で半日かかったという報告あり)もあるので、未経験の人は事前に練習しておきたい。折り畳み自転車の場合は工具不要だが、やはり慣れていないと30分くらい掛かってしまう場合もあるので(慣れていれば5分で出来る)、ちゃんと練習しておかないと、目の前に乗りたい電車や飛行機が来ているのに間に合わない、などということになりかねない。
[編集] 鉄道による輪行
鉄道利用の場合、手回り小荷物に関する規則に準じる必要がある。「袋につめてさえしまえば問題がない為、ゴミ袋でも代用が可能である。」という考えも聞かれるが、同規則の「専用の袋」の使用という規定に抵触する。他の乗客への配慮などを考慮し、輪行袋をきちんと使うべきであろう。またインターネットの掲示板などで「自分は袋に入れずに持ち込んだ」などと公言する人もいるが、周囲の乗客の迷惑になっていることを自覚してもらいたい。
なお一部の路線では、時間帯を区切って自転車を(分解せずに)そのまま持ち込んでよいことにしている所もある。この場合、分解が容易でない通常のママチャリなどでも持ち込むことが可能である。
輪行時に自転車をどのように置くかについては、新幹線や特急などのクロスシートの電車の場合は最後尾の座席の後ろに置かせてもらうと最も邪魔にならない。ボックスシートやロングシートの場合はできるだけ端の座席にいた方がよいが、通勤用の座席の少ない電車の場合は出入り口近くのスペースに置いたほうが邪魔にならない場合もある。なお、マナーとして時間帯を調整してできるだけ混雑する時間帯を避けたいものである。
鉄道に持ち込む場合に、JRグループ・営団地下鉄(現東京メトロ)の場合は1999年1月1日より手数料を取らず自転車を無料で持ち込めるようになったが、私鉄の場合は手荷物料金を取るところと無料の所とで対応が分かれている。手荷物料金はややもすると人間の運賃より高くなることがあるため、自転車愛好者の側からは「ぜひ無料で持ち込み可能にして欲しい」という働きかけをしている人達もいるようである。
ロードレーサーやマウンテンバイクを輪行する場合、前輪のみを外すタイプと、前後輪を外すタイプが存在するが、後者の方が小さいサイズで輪行することが出来る。電車の混雑状況や座席の配置・形状、車掌の判断により、前輪のみ外すタイプの輪行では乗車拒否されることがあるので、注意されたい。
以前輪行は、交通機関として自転車と電車は競合するとして、競技の道具と明確化できるアマチュア登録選手、競輪選手にしか許可されなかったが、日本サイクリング協会が「趣味としてのサイクリング用」として認知させることで一般サイクリストにも道を拓いた。会員証の提示、その廃止を経て、1999年1月からJRグループにおいてはアマチュアのサイクリストについては無料で自由持込が認められている(競輪選手については現在も有料)。許可制だった当時は、日本サイクリング協会会員のみの許可(会員証提示)、更に帆布製の輪行袋を使用する事が義務付けられていた。
[編集] 飛行機による輪行
飛行機の場合、幹線を飛んでいる大きな航空機では問題なく輪行できる場合が多いが、小型飛行機を使用している航空会社(アイベックスなど)や主要航空会社でもローカル線など小型の飛行機を運航している路線の場合、飛行機の荷物収納スペースが小さいため乗客の預かり手荷物が多い場合などは輪行を断られる場合もある。
また航空機に乗せる場合、輪行時に自転車が壊れても損害賠償を請求しないなどの条件に同意し誓約書を書く必要がある。 故に、破損を防ぐためしっかりと梱包して輪行しなければならない。たとえば、変速機周辺やブレーキなどの精密部には特に気を遣わねばならない。(国内線の破損率と国際線の破損率は国際線の方が、比較的に高いため注意が必要である。)
なお、福岡空港・中部国際空港・羽田空港などのように空港まで電車で行ける場合は空港までの電車での輪行が可能だが、空港連絡バスを使う場合は事前にバス会社に自分の輪行袋のサイズを伝えて、その袋に収納した自転車の持ち込みが可能かどうか確認しておく必要がある。バスに自転車を乗せられない場合は、知人の車で運んでもらったり、タクシーなどバス以外の交通機関を利用したりする必要が生ずる。
[編集] フェリーでの輪行
フェリー等に自転車を持ち込む場合、自動車やバイクなどと同様に正規の搬送料金がある場合と、手荷物の延長として扱われる場合がある。前者の場合は所定の駐輪スペースに自転車を分解せずに駐めて本人は客室に入れば良い。後者の場合は輪行袋に収納して持ち込むことになるが、手荷物料金が必要な航路と不要な航路があるので事前に確認しておくのが良い。なお、小さな船を使用している場合は搭載そのものを断られる場合もある。