阪急610系電車
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610系電車(610けいでんしゃ)は、かつて京阪神急行電鉄→阪急電鉄に在籍した小型の通勤形電車である。宝塚線用として1953年から建造された。
元々は木造電車の車体載せ替え車(車体更新車)名目で建造され、宝塚線の輸送力増強に大きく貢献した。
[編集] 沿革
1950年代初頭の宝塚線系統では、1920年~1923年に建造された51形木造電車が多数運用され、更には1910年の箕面有馬電気軌道創業当初に建造された1形電車も若干が残存しているという、およそ時代離れした状態であった。それらは製造後すでに30年以上を経過し、小型木造車体の老朽化は著しかった。
小型車しか走れなかった宝塚線も、1952年9月に規格向上工事が完成し、神戸線用の幅広な大型車が入線可能となった。そこで、木造電車についても幅広の普通鋼製車体に載せ替えを行い、老朽化対策、床面積の増大、接客設備の向上を図ることが目論まれた。
改造の種車には1形2両、51形34両が選ばれた。実際には走行機器を直接利用していない。宝塚線用の在来鋼製車である1936年建造の380形、1938年~1942年建造の500形に木造車流用のブリル台車や出力48kWのモーター等の電装品を回し、玉突きで380形・500形が従来装備していた住友金属工業製鋳鋼台車や82kWモーター等を捻出して、これにナニワ工機(現・アルナ車両)で新造した全鋼製の15m2ドア幅広車体を組み合わせたものである。
この車体は、車体長こそモーター出力相応に短かったが、神戸線用大型車並みの車体断面があり、阪急電車らしく均整の取れた非常に好ましい形態に仕上がっていた。その愛らしさから、鉄道模型趣味者の題材として好んで取り上げられる系列ともなった。
最初に登場した610号・660号の2両のみ非貫通車であったが、後に建造された車両は全て貫通車であった。1953年~1956年の間に、片運転台の制御電動車610形13両、阪急初の中間電動車630形10両(能勢電鉄転出時に、660形から1両改造編入)、片運転台の制御車660形13両が建造されたが、うち630号はWN平行カルダン駆動方式、631号(元620号)は直角カルダン駆動方式の試験車となった。
幅広車体は輸送力の向上を実現し、規格向上された宝塚線の主力車として最大6両で運用された。
1967年の神戸・宝塚線架線電圧1500V昇圧の際には電気機器を新製して支線に移り、ATS・列車無線の導入後には、性能は同一ながら、建造年月も全長も扉数も違う600形を組み込んだ編成なども存在した。
1976年より663号車を除く全車両が能勢電鉄に譲渡され、1992年まで運用された。
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