飾緒
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飾緒(しょくちょ、しょくしょ)とは、一般に軍服の前部から片肩にかけて吊るされる飾り紐のことをいう。いわゆるモール。軍人以外でも警察官や消防吏員、消防団員、海上保安官等が礼装などの際に着用する事もある。
軍人の場合、参謀や副官や正装時の将官等が着用するのが一般的な着用例である。 また、儀杖兵や軍楽兵が公的な式典の際に着用することもある。
元々は地図に書き込みをする要のある参謀や、メモを頻繁に取る必要のある伝令が鉛筆やチョークなどの筆記具を吊るしておく為のものだったという説がある。その名残とされているのが、胸前部に垂らす紐の先端に付けられている石筆(ペンシル)と呼ばれる飾り金具であり、古い時代の飾緒では実際にこの部分が鉛筆になっている例がある。しかし、それ以外にも馬の手綱やメジャー、あるいはマスケット銃の火皿の火薬滓をかき出すための金具が起源という説もあり、詳細は判然としない。
持つ意味も国や時代によって異なり、パレードや礼装時の飾りのこともあれば、何らかの地位や役職・資格をあらわす物であったり、所属する部隊や兵科を示すこともある。また、表彰の一種として勲章的な意味を持つこともある。
アメリカ軍では歩兵・騎兵科の課程修了将兵が正装の際に着用する(兵科ごとに色が違う)。
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[編集] 日本軍
帝国陸軍及び帝国海軍では、正装又は礼装時の将官が将官用の飾緒を着用した。金色である。
帝国陸海軍では参謀が常に参謀用の飾緒を着用した。将官用のそれに似た形状で金色である。
帝国陸海軍は侍従武官、皇族付又は王公族付武官が着用した。銀色である。
[編集] 日本海軍
日本海軍では「かざりお」読む。
明治28年(1895年)に、飾緒の制式が改正される。丸打金線、長さ2丈4尺5寸、その両端を鎖状組とし、これに金具各1個を付する。将官の直径は2分、参謀佐尉官の直径は1分8厘。金具は石筆形、金色長さ2寸6分である。また、伝令使の飾緒を廃止する(明治28年9月28日勅令136号)。
明治32年に、将校飾緒につき、通常軍服及び夏服には白茶色の絹線製を用いることも許容される。副官の飾緒が設けられる。副官飾緒は銀線とし通常軍服及び夏服には白色を用いることが許容される(明治32年8月10日勅令第369号)。
大正4年(1915年)11月5日に、皇族付武官も飾緒を着用することとなる(大正4年11月1日勅令第191号(同年11月5日施行))。
昭和17年11月1日に、参謀及び副官用の略式飾緒が制定される(昭和17年10月30日勅令第699号(11月1日施行))。
海軍では、特定の部隊等の副官(海軍省副官、軍令部副官、鎮守府副官、艦隊副官、警備府副官、海軍聯合航空隊副官、元帥副官、軍事参議官副官、その他参謀を置かない部隊の副官)が副官用飾緒を着用していた。銀色である。陸軍では副官は高等官衙副官懸章を肩掛けしていて、飾緒を着用しない。
[編集] 着用方法
海上自衛官が飾緒を着用する場合、
- 上衣の右肩袖付上部を約4センチメートルを切り開き、内側でボタンにより飾緒の取付部を固定する。
- 飾緒の短い細ひもの輪に右腕を通す。
- 飾緒の長い三つ編みひもは、右肩後方から右脇下を経て上衣の前部に回す。
- 飾緒の長い細ひも及び短い三つ編みひもは、直接上衣の前部に回す。
- 上衣の前部に回すひも類をまとめて、第1種夏服上衣(立襟)にあっては第1ボタンに、第2種夏服上衣(ワイシャツ型)にあっては第2ボタンに、その他にあっては右えり裏側に取り付ける。
[編集] 陸海空自衛隊で共通の飾緒
陸海空で共通の飾緒としては、防衛駐在官と副官の飾緒がある。
- 防衛駐在官たる自衛官の飾緒
- 防衛駐在官たる自衛官が着用する。黄色の丸打ひもに金色の金属細線をかぶせたものを三つ編みにし、その両端に金色の金属製金具(陸上自衛官のものには桜花及び桜葉を、海上自衛官のものには錨を、航空自衛官のものには鷲をつけたものとする。以下同じ。)をつける。
- 副官の飾緒
- 陸上幕僚監部、海上幕僚監部、航空幕僚監部及び統合幕僚監部の副官並びに方面総監部、師団司令部及び旅団司令部の副官並びに自衛艦隊司令部、護衛艦隊司令部、航空集団司令部、潜水艦隊司令部・地方総監部、教育航空集団司令部、練習艦隊司令部、護衛隊群司令部及び掃海隊群司令部の副官並びに航空総隊司令部、航空支援集団司令部、航空教育集団司令部、航空開発実験集団司令部、航空方面隊司令部、航空混成団司令部、航空団司令部、及び航空警戒管制団司令部の副官が、日本国外に出張する場合並びに日本国内において日本国以外の国の軍隊、軍艦又は大使館若しくは公使館との連絡業務に従事する場合並びにそのほか、渉外事務を行うため必要がある場合に着用する。白色の丸打ひもを三つ編みにし、両端に銀色の金属製金具をつける。
[編集] 各自衛隊特有の飾緒
- 陸上自衛隊
- 海上自衛隊
- 航空自衛隊
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- 音楽隊の隊員の飾緒
- 銀色の丸打ひもを三つ編みにし、両端に銀色の金属製金具をつける。
- 儀仗用飾緒
- 儀仗の場合に白色の顎紐、白色の拳銃帯及び白色の脚絆と共に着用される。