JR貨物EF510形電気機関車
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EF510形電気機関車(いーえふ510がたでんききかんしゃ)とは日本貨物鉄道(JR貨物)が湖西線・北陸本線・信越本線・羽越本線・奥羽本線(いわゆる日本海縦貫線)や、常磐線などでEF81形電気機関車の置き換え用として2001年に登場した交直流用電気機関車。 (※但し、現在は車両数がまだ多くないため、新潟貨物ターミナル以北への運用は組まれていない。)
現在は日本海縦貫線に最優先で投入されており、所属機関区は富山機関区である。羽越本線や奥羽本線でも見かけることがある。ただしEF81との重連である
[編集] 経緯
日本海縦貫線は関西から青森に向かう場合、直流-交流(60Hz)-直流-交流(50Hz)と交直デッドセクションを3回通過するため、貨物列車牽引はEF81形にて運用されていた。
EF81形は運用出来る範囲も広くコストパフォーマンスもよいため、大量に運用されてきた交直流機関車の決定版であった。しかし経年劣化は避けられず後継機開発が必要となった。しかし、最初に試作したEF500形は、EF200形の交直流版だったことでオーバースペックという同様の弱点及び性能上の問題の為実用化に至らず、日立製作所の試作機ED500形は4軸駆動のD級機であり常磐線のような平坦な区間では性能的にも問題がなかったが、日本海縦貫線や東北本線での勾配性能に疑問符が付くこともあってJR貨物は導入に消極的で実用化されず、当時JR貨物の経営も大変であったため、後継機の開発が遅れていた。
そこでJR貨物は東海道本線、山陽本線で成果を上げている次世代直流機関車EF210形(100番台)をベースとした交直流機関車を開発するという結論に達した。2001年秋に川崎重工業で先行試作車である1号機が完成し、性能試験、社員への訓練を経て2003年3月に所属区である富山機関区においての営業運転が開始された。
一般に新型機関車として試作された車両には、「901」番が充てられるが、本形式は1番からとなった。この理由は、前述のようにEF210形100番台をベースに製作されており、ほぼ確実に運用することが決まっていたからである。そのため出力はEF210形と同様であり、1時間標準定格出力3390kW/30分定格出力3540kWの概念もそのまま反映されている。
しかし、交直流機器の配置があり内部の機器はほぼオリジナルと言ってよく、一概にEF210ベースとは言えない要素を多く含んでいる。
屋根部への特高機器の配置は寒冷地における使用と塩害を考慮し、パンタグラフと保護接地スイッチのみ、その他は車体内に配置した。
ブレーキは寒冷地仕様として車輪踏面と制輪子間の雪のかみ込みを防止するべく耐雪ブレーキ機能を装備した。
機械室内機器配置はZ形通路形式とし、通路幅を確保することと、メンテナンスのしやすさに配慮することにつとめた。
機器冷却は主変換装置、主電動機、ブレーキ抵抗器は個別に送風機と送風ダクトを配置し外気を直接取り込む。補助電源装置は夏冬切り替え方式を採用、夏は車体側面の通風口より機械室内に外気を取り入れ、冷却風とし、機械室内の換気をも兼ねる。冬は排風を機械室内に環流させ、機械室内への外気の侵入を防止した。
運転室は気密性を高め、暖冷房装置を配置した。運転席まわりの機器配置は操作性の向上と既存新型機関車との操作での共通化に配慮した構成にし、運転状況、故障状態、異常時の応急処置マニュアルを表示するモニター装置を設置した。モニター装置は、検修支援機能、機器チェック機能をも備える。
外観に関しても、EF210形の塗装を赤色系統にしたように見えるが、
- 集電装置であるシングルアーム式パンタグラフはEF210形とは逆向きに搭載されている
- ツララ切りのひさしが装備されている
- 全長、前面が異なる
など共通機器は多いものの大きく異なっている。
愛称は公募により、EH200形の「ECO-POWER ブルーサンダー」に対して、「ECO-POWER レッドサンダー」に決定した。1号機はJRFのロゴしかないが、2号機以降は「レッドサンダー」のロゴも書かれている。
[編集] 今後の増備予定
EF210形やEH500形の新製が優先されていたため、年1~2両前後とペースが遅かったが、2006年度は4両の新製されたものの2007年度は2両の新製予定[1]と、ゆっくりとしたペースでEF81形の老朽化に伴う置き換えが進められている。
- ^ 2006年12月13日発表のJR貨物Webサイト ニュースリリース「平成19年度の車両等の設備投資について」による。
[編集] 鉄道模型
2006年7月末現在、TOMIX、マイクロエース、KATOの三社からNゲージ製品化されている。どちらも1号機と2号機以降(レッドサンダー仕様)の2モデルとなっている。
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