JR貨物EH500形電気機関車
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EH500形電気機関車(いーえいち500かたでんききかんしゃ)とは、1997年に登場した日本貨物鉄道(JR貨物)の三電源方式交直流電気機関車である。
愛称はEF210形の「桃太郎」と対をなす形で「エコパワー・金太郎」、もしくは「平成のマンモス(機関車)」と呼ばれる。
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[編集] 概要
本形式は、旧・日本国有鉄道(国鉄)時代に製造され東海道本線で使用されたEH10形以来となる2車体連結・主電動機軸8軸使用のH級機である。
従来、首都圏-函館・五稜郭駅間は直流機-交流機(重連または単機)-青函用交流機(重連)と機関車の付け替えがあり、到達時間にロスが生じていた。これを解消してJR貨物の保有機関車数を削減する目的とともに、東北地方のED75形、津軽海峡線のED79形老朽取替え用として開発・製造されている。
H級となった理由は2点あり、東北本線藤田-白石間・IGRいわて銀河鉄道線奥中山高原駅付近の十三本木峠の急勾配・青函トンネルの連続勾配を走行するため、高い粘着性を軸重を増大させずに確保する必要があったことと、もう一つは第二種鉄道事業者として線路保有会社に支払う線路使用料を軽減するためである。ED75・79形の重連使用の場合、線路使用料は機関車2両分を支払うことになるが、H級単機とすれば支払いは1両分で済む。
すでに重連運用は常態化しており、D形機を新造する意味合いは薄かった。このことは同時期に試験投入されていたED500形の導入を見送る原因ともなった。従来のED75形・ED79形重連でも動輪軸総数は8軸だったので、本形式で「永久重連」の格好になったとも言えよう。
[編集] 形態区分
- 試作機(901)
- 1997年東芝府中工場で落成、1998年3月JR貨物に車籍編入。
- 長町機関区(廃止)に新製配置、1999年8月仙台総合鉄道部完成に伴い同所に転属。各種試験に供された。
- クリーム色の前面帯は正面窓直下、形式番号表示部にあり、幅は量産車に比べ細い。前照灯は正面下部に設置され、正面窓の傾斜角も量産車とは異なる。車体側面のルーバーは量産車に比べ小型で、採光窓は片側5組(×2車体)と量産車に比べ多い。
- 1次形(1・2)
- 2000年3月製造。901号機の試験成績を踏まえ製造された量産先行機。
- 試作機では1基のみ搭載の主変圧器を各車体に1基、計2基搭載するなど内部機器配置の変更がなされた。車体側面のルーバーは天地寸法が拡大され、採光窓は片側2組(×2車体)となった。外部塗色は赤紫寄りに変更、前面帯は形式番号直下に移され、若干太くなった。
- 2次形(3~9)
- 2000年3月~2001年1月製造。
- 前照灯への着雪による照度低下の対策として、これを上方(前面帯部)に移設した。製造途中に愛称・ロゴマークが一般公募により決定され、以降の新製機は製造時から「金太郎」のロゴマークをあしらって出場した。
- 3次形(10~)
- 2001年8月以降製造。
- 車体塗色を明るめの赤に変更、運転台周りの黒色塗装は窓枠部のみに縮小、前面帯は側面に回りこまず、前照灯外縁で切れる。製造途中よりGPSアンテナ(列車位置検知装置)が追加装備され、既存機にも順次装備した。
[編集] 現況および動向
2006年度は10両と前年に引き続き大量の新製増備が決定しており、ED75形およびED79形の老朽置き換えがさらに進行することになる。
本形式は首都圏-北海道連絡の高速貨物列車を主体に運用されているが、運用区間の長さゆえ走行距離毎の点検頻度が増え、稼働率低下の主因となる。現状では、走行距離を抑え、最小限の車両数で運用するため、本形式の運用を黒磯以北の交流区間に限定し、黒磯以南の直流区間は東海道・山陽本線系統の直流電気機関車が継走する運転形態が多い。また、一時期は駆動装置の歯車箱に浸水が生じ、小歯車の異常摩耗が多発[要出典]して稼動車が不足したため、一度運用を外れたED75形を整備の上で復帰させて稼動車を充足した時期もあった。
主送風機(MMBM)・発電ブレーキの抵抗送風機から発生する風切り音はかなり大きく、このため走行音だけで本形式は容易に判別できる。原因として、製作費抑制との関連が指摘されている。
1両でED75形重連と同等の性能を有し、ED75形単機で運用される牽引定数の小さい貨物列車を置き換えるには出力過大であること、本形式が在籍するJR貨物仙台総合鉄道部の検修庫は狭小であり、整備点検環境の向上を必要とすることなどは今後の検討課題である。
最近では各車にヘッドマークステー(取付け台)を設置している。
本形式は三電源対応(直流/交流50Hz/60Hz)として製作されているが、このことは関門トンネルで2004年4月に25号機が、6月に27号機が運用試験に供されたことで、多くの鉄道ファンに知られることとなった。これはED76形及びEF81形300・400番台の後継機開発や、EH500形によって1300トン貨物列車を九州まで延長する為の参考データを得るために行われた。試験の結果は良好で、2007年より門司機関区に本形式が配置され、関門トンネル区間での本格運用が開始されている。
[編集] 増備状況
※日付は落成日
2005年新造
- 32号機:2005年5月31日
- 33号機:2005年6月11日
- 34号機:2005年7月29日
- 35号機:2005年9月8日
- 36号機:2005年10月15日
- 37号機:2005年11月10日
- 38号機:2005年12月1日
- 39号機:2005年12月26日
- 40号機:2006年1月25日
2006年新造 ※45号機以降は関門トンネル用としてJR貨物門司機関区に配備(青函ATCは非装備)。
- 41号機:2006年6月22日
- 42号機:2006年7月26日
- 43号機:2006年8月10日
- 44号機:2006年8月29日
- 45号機:2006年9月13日
- 46号機:2006年10月20日
- 47号機:2006年11月10日
- 48号機:2006年11月20日
- 49号機:2006年12月11日
- 50号機:2006年12月25日
[編集] 主要諸元
- 全長:25000mm
- 全幅:2808mm
- 全高:4280mm
- 軸配置:(Bo-Bo)+(Bo-Bo)
- 1時間定格出力:直流3400kw、交流4000kW(50/60Hz)
- 集電装置:下枠交差式パンタグラフ(交流区間走行時は上下とも東京方面1エンド側を下げる)
- 製造元:東芝府中事業所
[編集] 玩具・模型
Nゲージ鉄道模型として関水金属(KATO)が2次形・3次形、トミーテック(TOMIX)が1次形・2次形・3次形をそれぞれ商品化しており、実車同様の8軸駆動が再現されている。
また、トミーの玩具「プラレール」でもハイパワーモーターを搭載したモデルが販売されている。
[編集] 外部リンク
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