ザンギエフ
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ザンギエフ プロフィール
ザンギエフ(Zangief, Зангиев)はカプコンが開発・販売している対戦型格闘ゲーム、『ストリートファイター』シリーズに登場するキャラクター。プレイヤー間ではザンギと通称される。
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[編集] キャラクターの設定
ソビエト連邦出身のレスラーで、赤きサイクロンの二つ名で呼ばれるロシアの英雄的存在である。全身についた傷跡と、鍛え上げられた筋肉、剛毛、モヒカン頭が特徴。興奮して頭の血管が切れているグラフィックがよく用いられる。ロシアレスリングとアメリカンプロレスをミックスした独特のファイティングスタイルを持つ。ほかにも中国の気功を取り入れて飛び道具への対策にしたり、コサックダンスの動きを蹴り技に取り入れたりと様々なものをファイティングスタイルに組み入れている。大家族の長男(弟、妹はまだ幼い)であり、家では熊の親子を飼っている(この熊を相手にザンギエフはトレーニングを積んだ)。
闇プロレス界で無敗を誇っていたが、余りの強さのために対戦カードを組まれなくなり、追放同然の憂き目に。その力を振るう相手もいないまま山篭りをしていたが、ある日ソ連の「偉大な指導者」ゴロバチョフ大統領に、レスリングによる国際交流につとめるよう依頼を受ける。指導者直々の依頼にザンギエフは感動し、その技と鋼の肉体を祖国のために振るうことを決心する。
ゴロバチョフとはゴルバチョフ大統領(当時)のパロディであり、ゴルバチョフ同様ペレストロイカを推進している。ザンギエフに国際交流を依頼したのもペレストロイカへの理解を得るためである。エンディングではザンギエフやKGBのメンバー達とコサックダンスを踊る。作品によっては、「大統領」「偉い人」などと称される。
『II』シリーズ、および『ZERO2』の設定ではゴロバチョフの依頼は上記の通りだが、『ZERO3』では祖国の脅威となる闇の組織「シャドルー」の兵器「サイコドライブ」の破壊が使命となっている。
ザンギエフの出身地は、現実にソ連が崩壊した後もソ連と設定され続けているが、これは『ストリートファイターII』『ストリートファイターZERO』の時代設定が1991年のソ連崩壊以前であるため。のちに、時代設定がソ連崩壊後である『CAPCOM VS. SNK』シリーズでは、台詞中でロシアが祖国であるとしている。名前と出身の設定は、1990年代にソ連のアマチュアレスリングから転向し、新日本プロレスのプロレスラー集団・レッドブル軍団で活躍したビクトル・ザンギエフに由来する(ただしキャラクターデザインやファイトスタイルについては、そのライバルであったスティーブ・ウィリアムスの影響が濃い)。開発時の名前はウォッカ・ゴバルスキーとされていた。 その後は、なぜか日本人女性と結婚し日本に帰化した後に、「国会にスクリューパイルドライバーを!」を公約に東京都知事選に立候補し当選、都知事に就任している(ストリートファイターIIダッシュ:公式アルバムより。日本の政治選挙に出馬するには、日本国籍でなければならない規定があり、これが帰化の根拠となる)。
外見・ゲームデザイン上ともに明確な個性を打ち出しているためか、カプコンのクロスオーバー系格闘ゲームの全てに登場している。『MARVEL VS. CAPCOM』ではリュウ、春麗と共に数少ないストリートファイター出身キャラクターとして参戦し、同シリーズでは皆勤を果たしている。『ポケットファイター』ではリュウ、ケンや豪鬼などの主役級キャラクターや人気の高い女性キャラたちに混じって参戦、『CAPCOM FIGHTING Jam』でも『ストリートファイターII』代表として参戦するなど、その地位を確固たるものにしている。一方『SNK VS. CAPCOM SVC CHAOS』ではヒューゴーに投げキャラのポジションを譲った。
『餓狼伝説』のライデン、『ストリートファイターEX』のダランなど、同業者とは馬が合うらしくエンディングでタッグを組むなどの描写が見られ、特にライデンとは『CAPCOM VS. SNK』で同じチームとして登場することもある(ちなみにライデンのモデルとなったベイダーと、ザンギエフの造形面でのモデルと思われるウィリアムスは、かつて世界タッグ王座を共に保持したパートナーであった)。一方、ザンギエフと同じ必殺技を使う『ファイナルファイト』のマイク・ハガーとは未だにプレイヤーキャラクターとして共演したことがない。『X-MEN VS. STREET FIGHTER』では同じくロシア出身で巨漢のコロッサスと「同志」と互いに呼び合いコンビを組んでいる。『ストリートファイターZERO3』に登場の女子プロレスラーレインボー・ミカはザンギエフに憧れている設定。
テレビアニメ『ストリートファイターII V』ではシャドルー所属のレスラーという立場の敵役として登場し、「~~だべ」となぜか日本の方言を使う。劇場版アニメ『ストリートファイターII MOVIE』ではブランカと対決するだけで出番はほとんどない。OVA『ストリートファイターZERO - THE ANIMATION -』でも格闘大会の試合中に場外からリュウに乱入され試合の邪魔をされたり、廃墟から地下へと転落するなどあまり良い扱いではない。ハリウッド映画版ではベガの側近だが、ディージェイに言われるまで給料がもらえることを知らなかったり、テレビで生中継されていたシャドルーの武器庫の爆破を見てチャンネルを変えれば爆破が防げると考えるなど頭の弱いキャラクターとして描かれている。
『ZERO』シリーズでの勝利ポーズ時のセリフ「ボリショイ・パビエーダ」(Большой победа,Bol'shoj pobjeda)は「素晴らしい勝利、大勝利」という意味。
[編集] 人物
筋肉こそ美学という考えを持っており、自らを鋼の肉体と称し壮大な自信を持っている。掴んで投げる事こそが最善且つ最良の戦法だと豪語している。
愛国心が強く国家のために闘う意識を持っている。ロシアの国民達を同志と呼んでいる。また、ファンをとても大切にする。製鉄所に設けられた特設リングを本拠地にしている。
見た目通り頑丈な体で、竜巻に巻き込まれても無傷だった。
痩せ型の格闘家には、体を鍛える事やもっと食事を多くとる様に勧めるのが恒例となっている。愛国心を他人に押し付けることもしばしばある。
キム・カッファンにチャン・コーハンと間違われたことがある(これは漫画でもネタにされた)。後にキムからは謝罪を受けたが、実際に会ってみたチャンが自分とは違い肥満体だったため、不快感を露わにした。
いずれのキャラクターにも当てはまることだが、ストⅡ時代の勝利時のセリフは脅迫的なものが多い(「今度会ったら腕をへし折ってやるぜ」、「ロシアの大地をお前の血で染めてやろうか?」など)。しかし、それ以降の作品では敗者にアドバイスをしたりやや天然な発言をするなどストⅡに比べて温和になっている。
[編集] キャラクターの特徴
シリーズを通してザンギエフの象徴となっているのが、必殺技「スクリューパイルドライバー」、通称「スクリュー」である。これは相手を捕まえて空中に高く舞い上がり回転しながらパイルドライバーを決めるという派手なものであり、操作はレバーを1回転させた後に地上でパンチボタンを押すという、他のキャラクターの必殺技に比べて難易度が高いものとなっている。その代わり全ての技の中でも最高クラスのダメージを誇り、かつ攻撃範囲も最高クラスに広い強力な必殺技である。数歩先にいる相手を突然捕まえて投げを決める様は、「吸い込み」と呼ばれてプレイヤーから恐れられた。
『ストリートファイターII』が出た当初はジャンプの低さ、足の遅さなどと併せて、スクリューのレバー1回転という一見不条理なコマンドから敬遠されていた(レバーを上に入れるとジャンプしてしまうため、地上では1回転できないと思われていた)。しかし後にプレイヤー間の研究が進むにつれ、地上でもレバーを1回転させられる方法(いわゆる立ちスクリュー)が発見され、スクリューをかけた後に相手が起き上がる瞬間打撃をガードさせ再度スクリューをかける「スクリューはめ」が開発されてからは、一度転ばせてしまえば一気に逆転できる玄人好みのキャラクターとして位置づけられるようになった。スクリューはめは完璧に実行すれば絶対に脱出は不可能とされていたが、『ストリートファイターII'』(ダッシュ)以降では、技後に間合いが広がるように修正されている。
ハメ技は嫌われる傾向にあるが、ザンギエフの場合に限っては、他の強力なキャラクター相手にそれ以外に勝つ手段は無いに等しく、ザンギエフにスクリューをかけられるという状況自体が既に将棋でいう「詰み」であり、その状況を作り出したほうが悪いとしてある程度許容されていた。
キャラクター設定で「嫌いなもの」が飛び道具とされているが、実際のゲーム上もリュウの波動拳、ガイルのソニックブームといった飛び道具には、ジャンプが低く足も遅いため避けづらく(弱パンチで出されたものは移動速度が遅いのでジャンプではかわすことはできない)、苦戦を強いられる(ただしダブルラリアットで飛び道具をすり抜けることができる)。また、接近戦が主になるキャラクターなので、ダルシムのように相手を近づけずに戦うタイプのキャラクターは天敵となる。
[編集] 技の解説
[編集] 特殊技
- ヘッドバット
- 垂直ジャンプ時のみ使用可能。ストIIシリーズの技でダッシュ以降では気絶値が高くヒットさせればほとんどの場合相手を気絶させることができる。
[編集] 必殺技
- スクリューパイルドライバー
- 前述の通り、高威力で攻撃範囲も広い強力な投げ技であり、同時にいわゆる「コマンド投げ」の元祖でもある。コマンドは「レバー1回転 + パンチボタン」とされているが、実際には上下左右の各方向に1回以上入力することが条件となっているため270度の回転で出すことができる。最後の入力を上方向にし、ジャンプする前にボタンを押すことで、地上から直接発動できる(立ちスクリュー)。基本的な使い方としてはしゃがみ弱パンチや、ジャップ弱キックなどを当ててから、発動して投げるというもの。この使い方ならば、リバーサルアタックされない限り、ほぼ確実に投げることができる。
- アトミックスープレックス
- 『スーパーストリートファイターII』で追加された技で、ジャーマン・スープレックスからさらに跳び上がってのスープレックスを決める連続投げ。有効範囲はスクリューパイルドライバーより狭いが、威力はより大きい。スクリューパイルドライバーと同じく地上から直接発動できる。
- フライングパワーボム
- 相手に走り寄り、接触すると捕まえてパワーボムを決める。相手との距離があるときにアトミックスープレックスと同じコマンドを入れると発動する。奇襲技であるが、実際はアトミックスープレックスの失敗で出てしまうことが多い。
- ロシアンスープレックス
- 『EX』シリーズの技。相手に走り寄り、接触すると捕まえてスープレックスを決める。フライングパワーボムの代替となる。
- ベアハッグ
- 『EX』シリーズの技。ロシアンスープレックスのダッシュ時に相手の近くでパンチボタンを押すと、相手を捕まえて抱いて絞める。レバガチャ+ボタン連打で絞める回数がアップし、絞め終わると相手を高く放り投げる。そこから追撃が可能。
- ダブルラリアット
- 回転しながら両手でラリアットを放つ技で、『ファイナルファイト』でハガーが使用した技と同じもの。回転中は飛び道具を避けることができるほか、『II'』以降は回転しながら前後に少し移動できる。
- ハイスピードダブルラリアット
- 『II'ターボ』と『カプコン バーサス エス・エヌ・ケイ ミレニアムファイト 2000』にのみ登場した、高速回転するダブルラリアット。足下が無敵になっており、足払い等を避けながら相手に接近できる。ダブルラリアットと同じモーションだが上方向の判定がやや弱めで、対空に使うにはあまり向かない。
- クイックダブルラリアット
- 『スーパー』以降に登場した、回転数が少ないダブルラリアット。
- バニシングフラット
- 弱点である飛び道具に対抗すべく、『IIX』で習得した技。オーラをまとった大きな手のひらで飛び道具を打ち消す。スパⅡXではスクリュー後に間合いを詰めるためにも使われる。
- グロウイングフィスト
- 『ストリートファイターEX』シリーズにおいて、バニシングフラットの代わりに登場。飛び道具を打ち消せる。
- ウォッカファイヤー
- 口から青白い炎を吐く技。後述するメカザンギエフのみ使用可能な技。
- アイアンプレス
- ポケットファイターに登場。超硬化し、フライングボディーアタックを繰り出す。威力は通常のフライングボディーアタックより高く、地上の敵を潰すことが出来、落下速度も非常に速いが、着地後の隙が非常に大きい。レベルアップしない必殺技。
[編集] スーパーコンボ
- ファイナルアトミックバスター
- 様々な投げ技を連続で発動するスーパーコンボ。初登場した『IIX』においてはジャーマン・スープレックスを2回からスクリューパイルドライバーに繋げている。投げ技の種類・回数は、登場する作品やスーパーコンボのレベルによって異なる。『EX』シリーズではスクリューパイルドライバー前にストマックブロックの攻撃が加わる。威力は全キャラクターの技を通じて最も高い部類にはいるが、コマンドもレバー2回転という非常に難易度の高いものとなっている。
- エリアルロシアンスラム
- 空中の相手をつかんで投げる技。『ZERO』シリーズではスーパーコンボのレベルによって内容が異なり、レベル1では後方に放り投げ、レベル2ではパイルドライバー、レベル3ではパワーボムで地上に叩きつける。マーベル系VS.シリーズでは通常必殺技として上記のレベル1に相当するものを使用。
- スーパーストンピング
- 『EX』シリーズのスーパーコンボで、ストンピング(踏みつけるようなキック)を連続して繰り出してからミドルキックとハイキックを放つ。追加入力で攻撃を中断できる。
- コズミックファイナルアトミックバスター
- 『EX』シリーズのメテオコンボで、宇宙までジャンプした後、ファイナルアトミックバスターを放つ。
- ヘビーバイト
- 『ポケットファイター』のマイティコンボ。相手に連続で噛み付く。
- ロシアンビート
- 『ポケットファイター』のマイティコンボ。コサックダンスの動きで、連続で下段蹴りを放つ。『頂上決戦 最強ファイターズ』でもLV2専用技として追加されている。
- アイアンボディ
- 『MARVEL VS. CAPCOM』以降のMARVEL VS.シリーズで使用できる技。後述する「メカザンギエフ」に変身し、見た目とキャラ特性が大幅に変更される。変身中にもう一度アイアンボディのコマンドを入力すると変身が解除される。
- シベリアンブリザード
- ダブルラリアットを出しながら上昇する、メカザンギエフ専用のハイパーコンボ。
- ウルトラファイナルアトミックバスター
- マーベル系VS.シリーズの技。ザンギエフの技の中で最強の威力を誇る。フライングパワーボム→アトミックスープレックス→画面外まで飛び上がるスクリューパイルドライバーの連続投げのハイパーコンボ。
[編集] その他
- 『マーヴル・スーパーヒーローズ VS. ストリートファイター』以降のマーベル系VS.シリーズには、シャドルーに改造されたザンギエフとして「メカザンギエフ」というキャラクターが登場する。体が鋼鉄に覆われ、火を吹いたり、相手の攻撃を受けてものけぞらずに行動したりできるが、ガードが一切できない。性格も若干変わり、祖国ロシアの代わりにシャドルーを崇拝するようになった。エンディングでザンギエフは体を改造したことと己の弱さを悔い、元の体に戻る方法を探す旅に出る。その成果として、続編である『MARVEL VS. CAPCOM』ではザンギエフと同じキャラクターとなり、ハイパーコンボ「アイアンボディ」で二つの体を切り替えて戦えるようになった。
- PCエンジン版『ストリートファイターII’』では、2ボタンパッドでザンギエフを使用するプレイヤーが多かった。RUNボタン・Iボタン・IIボタンを押しっぱなしの状態で、セレクトボタンを連打しダブルラリアットを連続で出すという、裏技を通り越して反則技とも言うべき入力方法が可能だったからである。
- アーケードゲーム誌『ゲーメスト』の伝説的誤植として「ザンギュラのスーパーウリアッ上」がある。詳しくは誤植#雑誌の誤植を参照。これをもとに、ザンギエフを指す隠語・通称として「ザンギュラ」が用いられることがある。
- 『マーヴル・スーパーヒーローズ VS. ストリートファイター』でEX仕様の隠しキャラが登場する、続編の『マーヴル VS.カプコン2』ではEX仕様のキャラクターに変身できる、『ストリートファイターZERO3』では新キャラクターのキーキャラクターになる、等なぜか春日野さくらとの共通点が多く見受けられる。
[編集] 登場作品
- ストリートファイターIIシリーズ
- ストリートファイターZEROシリーズ(ZERO2以降)
- ストリートファイターEXシリーズ
- VS.シリーズ
- ポケットファイター
- CAPCOM FIGHTING Jam