ナツノクモ

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ナツノクモ
ジャンル	ネットワークゲーム
漫画
作者	篠房六郎
出版社	小学館
掲載誌	月刊IKKI
レーベル	IKKIコミックス
発表期間	2003年11月号 - 2007年5月号
巻数	全8巻
■テンプレート使用方法 ■ノート

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プロジェクト

ナツノクモは篠房六郎の漫画作品。オンラインゲームを舞台に、殺人事件で有名になってしまったカウンセリング目的のコミュニティ「精神動物園」とその住人達、動物園に群がる好奇心と悪意と「善意」を持った一般プレイヤー達、そしてコミュニティを守るために雇われた廃人プレイヤーキラーの物語が描かれる。

物語の中心がカウンセリングを目的としたコミュニティということで、主人公を含め多くの人物が心の傷を抱えており、それを彼等自身がどのように受容していくのかがテーマの一つ。

大半が戦闘だった前作の空談師よりコミュニケーションの比重が増している。その一方で現実世界の具体的な描写は前作と同様に極力避けることで、プレイヤー像の想像の余地を広く残している。そのプレイヤー像と、ゲームキャラクターとしての立ち振る舞いのギャップを楽しむといった多層的な読み方も可能にしている。

作者はこの作品で萌えを強化することを宣言しており、物語の時点で精神動物園の住人のほとんどが女性である。これまでの篠房作品と比べても萌えキャラと呼べる人物は多い。

[編集] あらすじ

[編集] セキ編

主人公は中年と思しき男。娘が事故に巻き込まれて傷ついたことへの自責の念に耐え切れず、職を失い、娘や妻と別居して、酒とオンラインゲームに耽溺している。ゲームの中でのキャラクター名はコイル。彼はこのゲームにおける格闘戦の達人で、ゲームの中で精神科医の隼川教授のカウンセリングを受ける傍ら、隼川教授の依頼に応じてある作業を請け負っていた。

全132ページからなるセキ編は1巻の3/4を占める。当初このエピソードは1話で終わらせる予定だったことが2巻の巻末で明かされている。

非常に密度が高く、時には数コマ単位でカットバックを続けて異なる場面をザッピングしながら、酩酊感を伴うハイペースで進行する。よそ見を許さない緊張感が読者を最後まで引っ張っていく。印象的なコマ割り、緩急の付け方など見所も多く、名作と言える一編。ただしこま切れにされた情報を再構成しながら読み進める必要があり、難解というわけではないが、おそらく読む側に体力を要求するだろう。

[編集] 動物園編

1巻の残り1/4から始まる動物園編がナツノクモの本編となる。関係者による殺人事件のため世間の注目を浴びてしまい、内外のプレイヤーによって荒らされようとしている小さなコミュニティ。約3週間後の8月31日には消えることが決まっているこの場所を、それまでの間守るためにトルク（コイル）が雇われる。

過去の事件についてなかなか詳細が語られない事や、外装の中身が必ずしも常に同じ人物とは限らない事から無数の仮説が成立するため、新事実が発覚するたびファンの間で議論が巻き起こる。

開放型ボード・タランテラに設置された、セラピー用のコミュニティ精神動物園。偵察のため外に出たガウルは、連れ戻しに来たミカオとともに外部のプレイヤー達に捕らえられてしまい、トルクが救出に向かう。（1～2巻）
違法改造された無敵の外装カバキが現れ、ガウル達を幽閉する。トルクは一人でカバキへ戦いを挑む。（3巻）
トルク以外にも動物園の警護に当たる者はいたが、それは盗賊まがいの傭兵団だった。さほど頼れる存在でもなく、かといって敵に回せば動物園の位置を暴露されかねない。傭兵団と動物園住人との間につのる不和を解消するために、3回勝負の決闘が行なわれることになった。しかし3回戦時に突如、一人の招かれざる人物が現れる。（4～5巻）
最大規模の魔術ギルド・ホグウィッシュが護衛のフィンドール騎士団を従えてタランテラに現れた。ボードの平穏を守るという大義を掲げ、動物園を殲滅するのが目的。大魔導士の手で森が次々と焼かれていく。これに対抗すべく動物園側はある計画を実行する。（5～6巻）
初めて動物園側から積極的に撃って出る作戦が立案された。森の一つを動物園の本拠地であるかのように偽装し、敵を誘い込んで一気に抹殺するというもの。しかしその敵を率いる鉄仮面は、一部の動物園メンバーに馴染みの深い人物だった。（7巻）

注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。

[編集] 用語・キャラクター

ナツノクモに登場する人物および事柄を解説する（50音順）。ゲーム自体のシステム・特徴については篠房六郎の「作品中のゲーム」の項目を参照のこと。

アーネフェルト: アーネフェルト盗賊団のボス。妙齢の女性の外装。魔法使いだが近接戦闘もある程度できる。盗賊団はタイムボカンシリーズの悪玉トリオを意識した構成になっており、アーネフェルト自身のポジションはマージョ。カツトシの実姉。ヤンキーの出身。本人としてはゲーム中でのキャラは「お嬢路線」でいくつもりらしいが、周囲からは全くそう見えない。盗賊団として大きなことを成して名を上げるのが夢。ガウルを手なずけ、ポチと呼ぶ。性と愛に関してはいろいろなエピソードがあるらしい。口先と指先で相手を弄る達人。怪談が大の苦手。
赤頭巾: 本名不明。プレイヤーの外装を強制的にキャプチャしてRMTで売り飛ばす集団のリーダー。ミカオやガウル（狼）に敵対するということで、元ネタは童話の赤頭巾。文字通り赤頭巾の少女の外装だが、顔に派手な傷跡があり、口元が裂けている。手下の悪魔召喚士（デビルサモナー）達に多数のグレーターデーモンを召喚させトルクを襲わせるが、逆に全滅させられる。
イグナイター: 人型の使い魔。自爆能力を有する。名前は発火（ignite）する者、点火装置の意味。点火してから爆発するまでの10秒間、頭上にカウンターが表示されるため、対人戦では役立たず。リネンが配布したうち千体が初期不良でカウンター通りに爆発せず、投げ売りされている。体力が0になった時も爆発する。自身の爆発には耐性があるため、まとめておいても誘爆はしない。
イタカ: 鷹を模した外装を持つ動物園の住人。名前の元ネタもそのまま。弓の射撃と近接刺殺の名手。かつて独自の暗殺技術を持つ、伝説的なアサシンギルド「ヤマノ」に所属していた。子供嫌いを直すためという申告で動物園に参加した。動物好き。めったに他人に愛想や笑顔を見せないが、クランクに「あなたは実は子供と動物の好きな優しい人では？」とカマをかけられ動揺する描写がある。
エンジン男: トルクが一般的に知られている名前。
カイカイ: トナカイを模した外装を持つ動物園の住人。名前の元ネタもそのまま。実際にはトナカイというよりクリスマスが外装のモチーフになっている。
ガウル: 狼を模した外装を持つ動物園の住人。16歳。過去に性的虐待を祖父から受けたが、その事実を信じることなく彼女の両親は事故死した。名前の元ネタはgowlと思われる。「吼える」を意味する動詞。howlと同じ。リーゼの友達。素直になれない問題児で、ガウルに手を焼いて放り出したギカも多い。虫が苦手。戦闘スタイルは格闘型だが、その戦闘力は底辺レベル。しかしコイル（トルク）の特訓を受け、戦闘力を上達させ自分に少し自信を持つ。また、その過程で彼を「師匠」と慕うようになり始める。
カツトシ: アーネフェルト盗賊団の一員。細身で口髭をたくわえたキザ男の外装。悪玉トリオで言うところのグロッキーのポジション。剣先で敵の装備を解除・分解するスキルを持つ。ガチンコ勝負向きではない。アーネフェルトの実弟。姉の肉体的・精神的暴力に怯える。「ざます」の語尾をアーネフェルトに強要されているが、使い忘れていることが多い。ハヤブサを使い魔として使役する。このハヤブサは動物園で飼育してもらったもので、とくにイタカが面倒を見ていた。名前は「キョロちゃん」のはずだったがイタカに「三郎丸」と勝手に名付けられている。それ以降どちらの名前で呼ばれているのかは不明。いわゆるおっぱい星人。片思いしていた女性に振られて極端に落ち込んでいたが、ジージャの巨乳を間近に見た瞬間、一気に復活した。その際中学時代の初恋の相手だったという家庭教師「早希先生」の名を口走っていた。彼女も巨乳だった模様。そしてジージャに抱きつき殴り飛ばされた結果、カツトシは自らの中に新しい悦びを発見する。
カバキ: 正体不明のクラッカーに違法改造で作られた外装。赤ん坊の泣き声と共に現れ、姿も能力値も見えない。ウィルス攻撃と地形変換の能力を持つ。攻撃を受けると姿がおぼろげに見えるようになる。正面からは巨大な蜘蛛の形に見えるが、後ろ半分を見ると、臍帯でつながった胎児の形をしていることが分かる。カバキ出現以降、ガウルの親役のギカは全員カバキに消滅させられている。
ギーコ: 山羊を模した外装を持つ動物園の住人。白衣と眼鏡を着ける。名前の元ネタは子山羊→ヤギ子→ギーコと思われる。控えめな性格。メリノーの友達。
ギカ: 義理の家族（義家）と擬似家族（擬家）の意味。「育て直し」というロールプレイ療法の一環。ボランティアが親役、クライエントが子供役になって家族を演じるもの。
キビシ: 刀使いのニンジャマスター。装備は黒色系。クナイと行動を共にする。名前の元ネタは撒き菱。鉄仮面が率いる襲撃グループの一人。
クズノハ: 狐を模した外装を持つ動物園の住人。コノハと行動を共にする。名前の元ネタは伝承で安倍晴明の母親とされる白狐の葛の葉。「けけけけ」などと奇声のみを発するため意思の疎通は一方通行。
クナイ: 隻眼のニンジャマスター。装備は白色系で山伏を思わせるデザイン。キビシと行動を共にする。名前の元ネタは得物でもある苦無。鉄仮面が率いる襲撃グループの一人。
クランク: 冷徹な皮肉屋の雰囲気を漂わせた眼鏡の青年の外装。他人の心理につけ込み利用する策略家。機械としてのクランクは主にエンジンの部品として、往復運動を回転運動へ変換する働きをする。なおトルクと出会う以前からクランクと名乗っており、エンジンつながりなのは後付の理由と思われ、名前の本来の元ネタはクランケ（患者を意味するドイツ語）と考えられる。本名は倉池（くらいけ）。隼川教授のゼミに参加してカウンセリングを学んでいる。コイルの古い知り合い。コイルに対して遠慮なく辛辣な言葉を浴びせ、結果コイルからは嫌われているが、おそらくコイルの最大の理解者。コイルを隼川教授に紹介したのもクランク。戦闘に参加することは滅多にないが、中を通った攻撃を攻撃者にそのまま跳ね返す環をつくる糸状の武器「次元環」を使う。イタカを相手にしたときはカウンター攻撃で撃退した。ニヤケメガネとの渾名が付いている。
グリフ: 傭兵団の一員。投げナイフ使い。名前の元ネタは不思議の国のアリスのグリフォン。よく死ぬ人。
クロエ: 動物園の現園長。蜘蛛を模した外装で、糸を使った攻撃を得意とする。必要に応じて毒も使う。名前の元ネタはクロゴケグモか。リーゼのギカ（母親役）。後にガウルのギカにもなる。隼川教授のカウンセリングを受けたことで、自分も人を助ける側に立つことを志す。隼川教授のカウンセリンググループで他のメンバーの本名や住所を調べようとして、退会処分を受けた。ジージャの次に巨乳。（作者のコメントによる）かつては別の外装でリーゼと旅をしていた。ゲームの中でゴローと結婚式を挙げた。
コイル: トルクが普段使う外装。袖の破れたコートと無精髭が特徴。格闘で無類の強さを発揮する。名前の元ネタは電気部品のコイルか。
コノハ: 狸を模した外装を持つ動物園の住人。忍者。クズノハと行動を共にする。名前の元ネタは、伝承で狸が術を使うときに用いるという木の葉と思われる。眼鏡を外した状態のサンチョに助けられて以来、お頭と呼んでなついている。時代劇口調の持ち主。
コリデール: メリノーの使い魔。羊の角を持つ巨漢。名前の元ネタは羊のコリデール種。羊の執事という駄洒落でもある。攻撃されると主人のメリノーもダメージを受ける。パワーはあるが操作者がメリノーなので、ガウル以外の相手でまともに勝った例はない。ロケットパンチから「荷電粒子サイコメーサー破動砲（原文ママ）」まで様々な腕部オプションを使うが、役に立たない。変形もできる模様。
ゴロー: 動物園の元園長。17歳。名前の元ネタはムツゴロウ。家族3人を殺した浦和の少年Aとして報道された。ほかに動物園関係者4人の自殺を幇助した疑いが持たれている。
サブレ: 鳩を模した外装を持つ動物園の住人。名前の元ネタは鎌倉銘菓鳩サブレー。対人恐怖症で広場恐怖症。移動時には巨大な鳩時計状の箱に入って移動することも。イタカを先輩と慕う。ゲームに関しては意外と物知り。動物園と傭兵団との決闘時には格闘漫画風な「解説役」もつとめた。パチンコ（おそらく豆鉄砲からの連想）を使い、相手と直接対峙せずに、弾丸を障害物に反射させて目標に命中させる。
サンチョ: アーネフェルト盗賊団の一員。丸い小男の外装。悪玉トリオで言うところのワルサーのポジション。名前の元ネタはドン・キホーテ。アイテムを奪うスキルや地面に潜むスキルを使う、オーソドックスな盗賊。カツトシとは盗賊団以前からの長い付き合い。「がんす」の語尾をアーネフェルトに強要されているが、カツトシとは違ってまんざらでもないようだ。盗賊団の中ではベテランらしく知識が豊富。音痴。眼鏡を外すと美形長身の好男子に変わる。そちらが本来の姿。
ジージャ: 牛を模した外装を持つ動物園の住人。名前の元ネタは乳牛のジャージー種。本名は水坂。おおらかな性格。動物園一番の巨乳持ちの外装だが、本人はあまりそれを意識していない。気持ちが高ぶると東北弁が出る。クランクに惚れ込んでいる。パワー型の戦闘スタイルを持ち、主な技は頭突きとハリケーンミキ（後半読めず）。またそれと縁のある必殺技も使える模様。
シーマ: シマウマを模した外装を持つ動物園の住人。名前の元ネタもそのまま。一つの事に熱中し出すと、加減が効かなくなる。
シゲトミ: 違法改造とBOT使いで鳴らした集団。メンバーの一人であるラギリの裏切り（駄洒落？）で傭兵団の襲撃に遭い、レアアイテムを多数強奪される。
精神動物園　→　動物園
セキ: コイルに師事する格闘家プレイヤー。17歳。名前の元ネタはパーティ仲間のカズ、トモと合わせて声優関智一と思われる。誰彼構わずPKしていたところをコイルに叩きのめされ、それ以来コイルを付け狙ううち、いつのまにか師弟関係になっていた。コイルはセキに殺されることをむしろ願っている節がある。またセキも、自分が暴力を振るってしまった実父の姿をコイルに投影していたことが暗示されている。トルクに消滅させられた後、現実世界で実父と和解することができた。
タギマ: 赤頭巾が率いるキャプチャ集団の拷問担当。名前の元ネタはマタギ。赤頭巾の猟師に掛けている。トルクに匹敵する巨躯で、得物はノコギリ。さらに悪魔と合体して巨大化できる。
タランテラ: 開放型ボード。ゴローがGM（ゲームマスター）として管理していたが、ゴローの逮捕とともに管理者不在となった。3週間後に閉鎖が決まっており、その時期にホスティングサーバの契約が切れるものと推測される。名前の元ネタは円舞曲のタランテラだが、そのまた名前の由来の一つとされるタランチュラも連想させる。事件後、興味本位のプレイヤーが大量接続しているときにカバキが現れた。ボード全体が900個以上の半球状の森を単純な繰り返しで敷き詰めた地形に書き換えられ、プレイヤー数百人の外装すべてが地面に塗り込められた。
ダンプティ: 傭兵団の一員。重装備の剣士。名前の元ネタは鏡の国のアリスのハンプティ・ダンプティ。最終奥義・破軍滅砕波を使う。イタカとの決闘後、彼女に惚れてしまう。
鉄仮面: 骸骨を戯画化したような鉄仮面を被っているセクシーな衣装の女性。愛称は「鉄ちゃん」「鉄の姉さん」。その豪放な人柄でわずか数日のうちに取り巻きを増やし、動物園襲撃の先頭に立つ。オリジナル必殺技「ゴールデンフィンガー」を使う。
動物園: タランテラに設置されたセラピー用コミュニティ。正式には精神動物園だが、もっぱら動物園と呼ばれる。住人全員に動物を模した外装が与えられている。獣人というほどではなく、耳・角・尻尾・髪型・服装・小物などに動物のイメージを借用する程度。事件の報道直後に大量接続してきたプレイヤー達の攻撃で動物園は壊滅した。その後カバキによる地形変換で無数の森が作られたのを機に動物園が再建されたが、以前の住人の大半、とくにボランティアの親役のほとんどは戻ってない。トルクが動物園に到着した時点で、親役は4人、子役は34人。施設としての狭義の動物園は無数にある森のうちの一つに限定されるが、実質タランテラを利用しているのは動物園のグループだけらしい。事件が起きるまではプレイヤーからモンスターを預かって育てたり調教する仕事を請け負っており、文字通り動物園（もしくは農園）らしい風景だった。中の施設は複数の広場や保育園、個々のギカの家屋など。
トランプ: 傭兵団の一員。決闘の際に審判として登場。名前の元ネタは不思議の国のアリスのトランプ。
トルク: コイルが使うもう一つの外装。名前の元ネタのトルクは回転力を表す物理量で、エンジンの加速性能の指標となる。一般にはエンジン男として知られる。廃人プレイヤーばかりを狙う謎の存在として都市伝説化されている。トルクに外装を消滅させられたプレイヤーはそのまま音信不通になり、二度とゲームに戻ってこない事から、死んだり病院送りになったものと噂されている。エンジンを模した機械的な体で、上半身が大きすぎて異様なバランスになっている。右腕が欠損している。トルクのデザインはヘルボーイにインスパイアされた可能性がある。全体的な風体だけでなく、片腕がアンバランスに巨大であること、額の二つの瘤（ヘルボーイは切り落とされた角の痕、トルクの場合はおそらくシリンダー）といった特徴が共通している。; 基本的な戦闘スタイルは素手の殴り合いだが、カバキ戦では接触によるウィルス感染で左腕を失い、代わりに弾体射出装置を取り付けた。体力が半分以上残っている時は攻撃力・防御力・速度とも並以下だが、体力だけは高い。体力が半分以上減少すると隠れ能力の「根性（ガッツ）」の効果で全ての能力値が上昇する。体力が減るほど能力値の上昇幅も大きくなる。この事はタギマ戦で端的に示され、一撃目ではトルクにダメージが与えられたのに対し、能力上昇後の二撃目では、まだ無傷だったタギマを一発で倒している。残り体力が1ケタにまで減少するとエンジンが発動する。このとき周囲に開けた場所と、生贄のプレイヤー（または死体）が必要。発動するとトルクの周囲の流血が吸収され、欠損していた右腕が生成される。この右腕は格闘用としても破格のパワーを発揮するが、さらに（１）召喚陣による範囲攻撃（２）右腕からの砲撃（３）全方位へ無差別爆撃（弾道からは追尾型の可能性もあり）の三種類の攻撃が確認されている。リネンに個人的なコネを持つバンブロジアが問い合わせをしたとき、トルクに関してはリネンからの返答が無かった。この事からトルクの能力は違法改造ではなく公式の裏技である可能性をサンチョが指摘している。; 現実では無職の中年男性。東京在住。幼い娘は事故で鳥取の病院に入院しており、妻も鳥取の実家にいる。娘の事故に関してコイルに直接的な責任はないものの、強い自責の念を負い、酒とオンラインゲームに逃避している。隼川教授のカウンセリングを定期的に受けている。
ノーキン: 大柄なパワー型のプレイヤー。ネイティブアメリカン風の外装を持つ。名前の元ネタは脳筋。脳みそ筋肉の省略形。オンラインゲームで用いられるスラングとしては、魔法を使えない物理攻撃特化型の戦士キャラクターや、猪突猛進の単純な戦い方しかできないプレイヤーを指す。鉄仮面が率いる襲撃グループの一人。鉄仮面に惚れ込んでいる。ダンプティと「愛のために戦う戦士」同士で戦う。
ハーニィ: ホグウィッシュに所属する大魔導士の少女。リポタと行動を共にする。名前の元ネタはハリー・ポッターのハーマイオニー・グレンジャー。外装は兄からのお下がりでプレイヤーは初心者なため、魔法攻撃がなかなか命中しない。
ハッター: 傭兵団の元リーダー。帽子を被った暗器使い。職業は死霊使い（ネクロマンサー）。名前の元ネタは不思議の国のアリスの帽子屋。中国風の衣装を着た細面の東洋系男性の外装。主に使う「爆砕符」は呪符の端に鏢が付いた投擲武器。命中と同時に爆発し、即死効果も併せ持つ。他に、多節棍も用いる。
ハフウィッド: フィンドール騎士団の団長。名前の元ネタはハリー・ポッターのルビウス・ハグリッド。リポタの保護者。
隼川教授: 読みは「はやかわ」。精神科医。白衣を着た初老の紳士の外装。オンラインゲームの古参プレイヤーで、オンラインの中での治療行為を研究している。個人的なカウンセリングを受け付けたり、自助グループであるワークショップの手助けをしている。この活動についてはリネンから研究費を受け取っている。廃人プレイヤーの社会復帰プログラムとして、彼等の外装を「戻し屋」を使って消滅させることで強制的にゲームから引き離す手法を取り、すでに十数件成功している。
パラパラ: インパラを模した外装を持つ動物園の住人。名前の元ネタもそのまま。カイカイと仲が良い様子。
バンブロジア: 魔術ギルド・ホグウィッシュの最高責任者。名前の元ネタはハリー・ポッターのアルバス・ダンブルドア。世間のゲームへのバッシングの原因がタランテラにあると考え、森を焼き尽くす作戦を立案・実行する。
フィンドール騎士団: 大規模な戦士ギルド。ホグウィッシュの作戦に協力する。名前の元ネタはハリー・ポッターのグリフィンドール。
ホグウィッシュ: 魔術ギルドの最大組織。多数の大魔導士を擁する。名前の元ネタはハリー・ポッターのホグワーツ魔法魔術学校。
ミーたち: 子猫を模した外装を持つ動物園の住人。元気（三毛）とクール（シャム）と少女趣味（白）と泣き虫（縞）の四人組。よくモーリィに追い回されている。
ミカオ: ガウルのギカ（親役）。狼を模した老婆の外装で、愛煙家。名前の元ネタもそのまま。アメリカンスタイルの大型バイクを操る。燃料タンクの脇には狼のエンブレムが付く。必要に応じてサイドカーが取り付けられる。現実でも老齢の女性らしいが、末期癌で入院中。赤頭巾たちに捕まったときに「カバキが来る」などと言った。その結果オオカミ少年の物語を逆でいくことになった。
ミズク: ミミズクを模した老男性の外装を持つ動物園の住人。名前の元ネタもそのまま。クロエとゴローのゲーム内の結婚式で神父の役を務めた。動物園再建後は登場せず。
ミツキ: 兎を模した外装を持つ動物園の住人。傭兵団のリーダー。名前の元ネタは不思議の国のアリスの三月兎。戦闘スタイルからボーパルバニーも元ネタと考えられる。（ウィザードリィ、モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル）他の住人の外装とは全く異なる、正気を疑うような露出度の高いバニーガール風の外装で、元のデザインにミツキ自身が大幅に手を加えている可能性がある。武器は踵の刃だけだが、素早い動きで全身をバネのように使い、相手に深手を負わせる。殺した相手に変身する能力がある。カチューシャを外すと外装が変化し、圧倒的なパワーを持つ二刀流使いになる。気分屋で自己顕示欲が強い。仲間はずれにされることを根に持つ性格。他人の心の傷をえぐり出す事を無上の喜びとするサディスト。違法改造アイテムのナイフを使いガウルにセカンドレイプを行った。動物園の住人で唯一、外装と本当の性別が一致しない。つまりネカマ。初期に動物園から離れたが、動物園再建後に傭兵団を引き連れて現れた。現実では実家住まいで、家人の一人を「ババア」呼ばわりして口汚く暴言を吐く様子が、ゲーム中に洩れ聞こえてきた。
ミント: ミツキのギカ（姉役）。
目坂ユウ: 動物園の住人の外装をデザインした有名な外装デザイナー。読み切り版の空談師に登場したシバと同一人物と目される。ただし他社物であることを考慮してか、名前は呼ばれてない。デザインにおいてペドフィリアの趣味をいかんなく発揮するが、成人や老人のデザインも併せて手掛けている。
メリノー: 羊を模した外装を持つ動物園の住人。名前の元ネタは羊のメリノー種だが、メリーさんの羊も連想しやすい。他人の幸せを祝福できず嫉妬するタイプ。典型的な「高飛車なお嬢様」的言動をとるが、自己否定的な言動も多い。ガウルを慕いお姉様と呼ぶが、素直に伝えられず、空回りして自爆してばかりいる。途中から車椅子に乗るようになったが、理由は誰にも告げてない。使い魔として「執事」のコリデールを従える。戦闘力はガウルより若干強い程度。つまりかなり弱い。会話では微妙に凝った物の例え方をする。
モーリィ: 蝙蝠を模した外装を持つ動物園の住人。名前の元ネタもそのまま。大魔導士。スキルは高いが動物園に積極的には関与しない。ポイントとなる場面のみで活躍を見せる。読み切り版の空談師に登場したラベルの別外装であることが示唆されている。他人に対してからかったり意地悪したりするのが好きな模様。
モモちゃん: 赤ちゃんの外装をした動物園の住人。オーバーオールに耳と大きな尻尾が付く。発声は喃語だけだが他人の言葉は理解するので、プレイヤーは赤ちゃんではない。現在はモモちゃん以外に赤ちゃんの外装はいないようだが、かつては多数いて、その大半はマスコットのNPCだった。しかしモモちゃんのようなプレイヤーの場合もあり、セラピーの一環だった模様。
傭兵団: ミツキが動物園へ連れ込んだならず者の一団。正式名称は「ティーパティ傭兵団」。名前の元ネタは不思議の国のアリスのキ印のお茶会。元々は盗賊団。他人に迷惑をかける事に一切の躊躇がない。かつてハッターがリーダーを務めていたが、ミツキが力で彼等をねじ伏せてリーダーの座に収まった。傭兵団の名前だけでなくメンバーも不思議の国のアリスにちなんだ名前を名乗る者が多いが、そのためにミツキに狙われたのか、後からミツキに強制的に命名されたのかは不明。動物園の警護を名目に常駐しているが、本当の目的は動物園の謎を探り出すことで、そのためには暴力的手段も厭わない。彼等が赤頭巾のキャプチャ集団と内通し、ガウルとミカオを襲わせたものと目されている。
リーゼ: クロエのギカ（娘役）。蜘蛛を模した外装を持つ動物園の住人。ガウルを慕っている。
リポタ: ホグウィッシュに所属する魔法使い見習い。ハーニィと行動を共にする。名前の元ネタはハリー・ポッター。

[編集] 備考

タイトルの「ナツノクモ」

蜘蛛はそれ自体が夏の季語となるほど夏場に活動が活発化する。卵で越冬する種の場合、成虫は秋には死んでしまう。
「夏の蜘蛛」と「夏の雲」のダブルミーニング。

英題の“Spinning Web”

Webは蜘蛛の糸。オンライン上の人々のつながりを示す。それがSpin（回転）しているので、立場（視点）によって人間関係の解釈が変化すること、または実際に変化し続ける人間関係を表すのではないか。

他作品からの借用: この作品はとくにキャラクターに関して、他の作品から借用したものが多い。この事はファンの間でも元ネタの類推という点では興味の対象になるが、作者への非難が表明されることは滅多にない。それはこの行為が作者による剽窃ではなく、作品中のプレイヤーによる既存キャラクターの剽窃だという了解があるためだ。; 実際のオンラインゲームでも他作品の登場人物の名前をそのまま使用しているプレイヤーキャラクターは多く、そういった実情を知る者にとって、この作品で描写されている状況はとりたてて誇張されたものではない。
打ち切り: 登場人物の家庭の事情やメリノーの車椅子など様々な謎を残したまま、トルクの契約期間の満了を待たずに連載が終了した。理由について当事者からは何も語られていないが、月刊IKKI 2007年1月号で本作が予告無しに休載したのが原因ではないかと言われている。時期的にコミックマーケットとの関係も取りざたされているが、篠房六郎がC71で長編を発表したという情報は確認されていない。

[編集] 補遺

1巻145ページの「もう4人も死んでいる」は、2刷までは「7人」だった。3刷以降で修正。
月刊IKKI 2004年末付録のマウスパッドはトルク、クロエ、ガウルの3人による団欒風景。表面の透明シートを剥がすと3人の外装が消え、インターフェイスを装着したトルクのプレイヤーが1人でダイニングに座っている、やるせない図に変わる。
5巻61ページの「メンヘル女」は、連載時は「メルヘン女」だった。
第24話（5巻収録）は連載時に間に合わず、群衆はアシスタントが作画した。篠房とは似ても似つかないが、上手い作画だった。（単行本では描き直されている）