不思議の国のアリス
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不思議の国のアリス(ふしぎのくにのアリス、Alice's Adventures in Wonderland)は、イギリスの数学者にして作家チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンが、ルイス・キャロルの筆名で1865年に出版した児童文学である。この作品では、白ウサギの縦穴を通り抜けて、人間の言葉を喋る動物や人間のようなトランプの札が住むファンタジーの世界へ落ち込んだ、アリスという名前の少女の物語が語られる。
『不思議の国のアリス』の本文には、ドジソンと友人たちに関わる逸話や、イギリスの学童が暗記させられる授業を風刺した引喩が数多く含まれている。不思議の国の論理で演じられる物語は、世界中の大勢の子供達と、同じく大勢の大人達の間で親しまれ続けてきた。
本書の原題の直訳は、『不思議の国でのアリスの冒険』となるが、日本では後述するように『不思議の国のアリス』の訳題で知られている。英語でも、しばしば省略形であるAlice in Wonderlandの題名が使われる。この略題は近年の本作品の映画化などによって、広く用いられるようになった。
本書には『鏡の国のアリス』(Through the Looking-Glass, and What Alice Found There)と題された続編があり、両編の要素を組み合わせた映像化が何度もおこなわれている。
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『不思議の国のアリス』は、作者チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンと友人ロビンソン・ダックワースが、三人の少女たちと一緒にテムズ川をボートで遡っていた時から丁度3年後にあたる、1865年7月4日に出版された。三人の少女たちとは、
- ロリーナ・シャーロット・リデル(Lorina Charlotte Liddell - 13歳・本編序詩「黄金色の昼下がりに」の「一の姫(Prima)」)
- アリス・プレザンス・リデル(Alice Pleasance Liddell(en) - 10歳・「二の姫(Secunda)」)
- イーディス・メアリ・リデル(Edith Mary Liddell - 8歳・「三の姫(Tertia)」)
である。
この行程は、イングランド、オックスフォード近郊のフォーリー橋から始まり、5マイル離れたゴッドストウ村で終わった。旅路の途中でドジソンは、アリスという名前の女の子の冒険の物語を即興で少女たちに語って聞かせた。
この物語は、少女たちのお気に入りとなり、アリス・リデルは自分のために物語を書き留めてくれるようドジソンにせがんだ。遂にドジソンは物語を文章にまとめて、1863年2月に『地底の国のアリスの冒険』(Alice's Adventures Under Ground)の最初の原稿を書きあげた。ドジソンが挿絵を添えたより精巧な肉筆写本を制作し、1864年11月26日にクリスマスプレゼントとしてアリスに寄贈した際に、このオリジナル原稿はドジソン自身により破棄されたようである(マーティン・ガードナー、1965年)。
更にドジソンは、かれの友人にして助言者であり、子供たちから愛されていたジョージ・マクドナルドに『地底の国のアリスの冒険』の未完成原稿を送っていた。マクドナルドの提言により、ドジソンは『アリス』を出版社に送るという決断を下した。ドジソンはチェシャ猫やキ印のお茶会の挿話等を書き足すことにより、18,000語の原稿を35,000語に加筆した。1865年に、ドジソンの手による物語は、ルイス・キャロル筆による『不思議の国のアリス』として、ジョン・テニエルの挿絵を伴って出版された。最初に印刷された2,000部は、テニエルが印刷の品質に難色を示したために回収された。しかし、(1866年の日付が奥付されているが)同年の12月に出版された新版が早急に印刷された。
アリスの完全な版は速やかに売り切れた。『アリス』は、出版界における一大事件であり、子供たちと同様に大人たちからも愛好され、それ以来、途切れることなく版が重ね続けられている。現在の『不思議の国のアリス』には100版以上の版が存在し、無数の舞台化や映像化(映像化作品の項目を参照)がおこなわれている。
[編集] 主な出版上の出来事
- 1869年 - アメリカで最初の版が印刷される。
- 1871年 - ドジソンがロンドン滞在中に、もう一人のアリスことアリス・レイクスに出会い、鏡に映る彼女の鏡像についての対話が『鏡の国のアリス』の構想に結びつく。この本も非常な好評を博した。
- 1886年 - キャロルが初期の『地底の国のアリスの冒険』の複製本を出版する。
- 1890年 - キャロルが「0歳から5歳の読者のための」特別版The Nursery Aliceを出版する。
- 1908年 - 日本語への最初の翻訳がおこなわれる(日本での『不思議の国のアリス』の項目を参照)。
- 1960年 - アメリカの著述家マーティン・ガードナーが『注釈・不思議の国のアリス』(The Annotated Alice(en))と題して、『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』を1冊にまとめた本を出版する。同書では、ドジソンによるビクトリア朝の詩のパロディを含めて、両編への広範な注釈がおこなわれている。後の版では、更なる注釈が追加されている。
- 1998年 - オークションで初版本が150万ドルで競り落とされ、それまでに落札された最も高価な児童文学書となる(1865年の初版本はわずか22冊の所在が知られており、17冊は図書館に収められ、残り5冊は個人の所蔵となっている)。
『不思議の国のアリス』は、エスペラントを含めた50ヶ国語以上の言語に翻訳されている。
[編集] あらすじ
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
お姉さんと一緒のピクニックの間、アリスという名前の女の子は退屈しどおしです。外套に身をつつんで「遅れちまった!」とつぶやいてる白ウサギに興味をひかれたアリスは、白ウサギを追いかけて穴の中に飛び込みます。アリスはパラドクスと不条理と非現実の、地下世界の夢の中へと落っこちてしまいます。白ウサギを追いかけようとしているうちに、アリスは幾つもの災難に出くわします。アリスは巨人のように大きくなったり、半分の身長に縮んでしまったり、アリスの涙で立ち往生した動物たちと出会ったり、白ウサギの家にはまり込んでしまったり、仔ブタに変わる赤ん坊や消える猫を見つけたり、いつまでも終わらないお茶会に参加したり、人間そっくりのトランプの札とクロケー(クリケット)をしたり、海岸ではさらにグリフォンと代用海ガメたちに会ったり、タルトを盗んだと告発されたハートのジャックの裁判に加わったりします。そして最後に、アリスはお姉さんのいる木の下で目をさますのでした。
[編集] テーマとして含まれる要素
[編集] 目次
- 第1章/ウサギの穴へ落ちて “Down the Rabbit-Hole”
- 第2章/涙のプール “The Pool of Tears”
- 第3章/コーカス・レースと長いお話 “A Caucus-Race and a Long Tale”
- 第4章/白ウサギ、トカゲのビルを送り込む “The Rabbit Sends in a Little Bill”
- 第5章/芋虫からの助言 “Advice from a Caterpillar”
- 第6章/仔ブタと胡椒 “Pig and Pepper”
- 第7章/キ印のお茶会 “A Mad Tea-Party”
- 第8章/女王様のクロケー場 “The Queen's Croquet-Ground”
- 第9章/代用海ガメの話 “The Mock Turtle's story”
- 第10章/ロブスターのカドリール “The Lobster-Quadrille”
- 第11章/誰がタルトを盗んだのか? “Who Stole the Tarts?”
- 第12章/アリスの証言 “Alice's Evidence”
[編集] 登場人物(登場順)
- アリス (Alice) - 兎を追って不思議の世界に迷い込む。
- アリスのお姉さん (Alice's Sister)
- 白ウサギ (The White Rabbit)
- ハツカネズミ (The Mouse)
- アヒル (The Duck)
- ドードー鳥 (The Dodo)
- インコ (The Lory)
- ワシの子 (The Eaglet)
- トカゲのビル (Bill the Lizard)
- 芋虫 (The Caterpillar)
- 魚の従卒 (The Fish-Footman)
- 蛙の従卒 (The Frog-Footman)
- 公爵夫人 (The Duchess)
- チェシャ猫 (The Cheshire Cat) - 英語の慣用句「チェシャーの猫の様ににやにや笑う」“grin like a Cheshire cat”を擬人化したキャラクター。一説によるとチェシャ・チーズに集まってくるネズミを捕まえてご満悦ということらしい。
- 三月ウサギ (The March Hare)- 英語の慣用句「三月のウサギのように気が狂っている」“mad as a march hare”を擬人化したキャラクター。三月は野うさぎの発情期の始まりで、気が違ったように見えるという。
- 帽子屋 (The Hatter) - 英語の慣用句「帽子屋のように気が狂っている」“mad as a hatter”を擬人化したキャラクター。当時の帽子屋はフェルトの加工に水銀を使用しており、その影響によるものという。
- ヤマネ (The Dormouse) - フランス語で「眠るネズミ」の意味。
- トランプの2番、5番、7番 (Two, Five & Seven)
- ハートの王様 (The King of Hearts)
- ハートの女王様 (The Queen of Hearts)
- ハートのジャック (The Knave of Hearts) - “Knave”には「悪党」の意味もある
- グリフォン (The Gryphon)
- 代用海ガメ(海ガメフウ) (The Mock Turtle) - “Mock Turtle Soup”は海亀の代用品に仔牛を使ったスープ。“Mock Turtle”とは、海亀の代用に使われた仔牛を擬人化した架空の生物
- 陪審員たち
[編集] 登場人物の原型
キャロルの物語が最初に披露された、ボートによるピクニックのメンバーが、第3章「コーカス・レースと長いお話」に登場する。そのくだりでは、アリスはアリス本人のままで、キャロルすなわちチャールズ・ドジソンはドードー鳥(Dodo)として戯画化され、ロビンソン・ダックワースはあひる(Duck)として、ロリーナ・リデルはインコ(Lory)として、イーディス・リデルはワシの子(Eaglet)として、それぞれ戯画化されて登場する。
トカゲのビル(Bill the Lizard)は、ベンジャミン・ディズレーリの名前をもじったものかもしれない。
帽子屋は、型破りな発明によりオックスフォードで知られていた家具商人テオフィルス・カーターをほのめかした登場人物であると考えられる。キャロルの提案により、テニエルは帽子屋にカーターの似顔絵を使ったのであると見られている。
ヤマネの物語に登場する三人の小さな姉妹(little sisters)の名前エルシー、レイシー、ティリーは、リデル三姉妹(Liddelの発音はLittleとそっくり)のことである。エルシー(Elsie)はL.C.すなわちロリーナ・シャーロットであり、ティリー(Tillie)は家族の間のニックネームがマティルダであったイーディスのことであり、レイシー(Lacie)はアリス(Alice)のアナグラムである。
代用海ガメの話に出てくる話術(Drawling)の教師であり、週に一回話術と体の伸ばし方(Stretching)と、とぐろを巻いて気絶するやり方(Fainting in Coils)を教えに来ていた 「お年寄りのアナゴ」とは、美術批評家のジョン・ラスキンをほのめかしたキャラクターである。ラスキンはリデル家に週1回やってきて、子供達に絵画(Drawing)と写生(Sketching)と油彩(Painting in Oils)を教えていた(リデル家の子供達は実際によく学び、アリス・リデルは幾つもの熟練した水彩画を制作している)。
[編集] 詩と童謡
- 「黄金色の昼下がりに」 "All in the golden afternoon..." - 『地底の国のアリス』の冒頭で、キャロルからリデル三姉妹へ捧げられた序詩
- 「なんて小さな鰐さんが」 "How doth the little crocodile..." - ビクトリア朝の童謡「なんて小さな蜜蜂さん」 "How doth the little busy bee"のパロディ
- 長いお話 The Mouse's Tale [1](en) - 家の中で猛犬に出くわしたハツカネズミが、むりやり裁判に掛けられる話。原文では文章を波打たせた視覚的効果がなされている(リンク先参照)。原題は「ネズミのお話」と「ネズミの尻尾」を掛けている
- 「いい年なのに ウィル親父」 "You are old, Father William..." - 老年期の幸福を語るロバート・サウジーの教訓詩『老齢の快適はいかにして得られるか』"The Old Man's Comforts and How He Gained Them" のパロディ
- 公爵夫人の子守唄「ちっちゃな子には怒鳴り声」 The Duchess' lullaby: "Speak roughly to your little boy..." - デヴィッド・ベイツの「優しく説き聞かせよ」 "Speak Gently"のパロディ
- 「きらきら光るコウモリさん」 "Twinkle, twinkle little bat..." - 「きらきら星」のパロディ
- 伊勢エビのカドリール The Lobster Quadrille - メアリー・ハウィット夫人の詩『蜘蛛と蝿』“The Spider and the Fly”のパロディ
- 「伊勢エビの声がする、耳を傾け聞いたなら」 "’Tis the voice of the lobster, I heard him declare..." - 怠惰を非難するアイザック・ワッツの教訓詩『怠け者の声がする』 "Tis the voice of the Sluggard" のパロディ
- 海ガメのスープ Turtle Soup - ジェームズ・M・セイルズの流行歌「夜の星、美しき星」"Star of the Evening, Beautiful Star"のパロディ
- 「ハートの女王が つくったタルト」 "The Queen of Hearts..." - 実在するマザーグース
- 「君は彼女の元にいたと彼らが語り」 "They told me you had been to her..." - ドジソン自身により1855年に『コミック・タイムズ』に発表された、代名詞で構成された難解な詩。作中では白ウサギの証言として使われる
[編集] テニエルによる挿絵
ジョン・テニエルによるアリスの挿絵は、実在したアリス・リデルの似顔絵ではない。キャロルはテニエルに別の子供友達であるメアリー・ヒルトン・バドコックの写真を資料として送ったが、テニエルが実際にバドコックをモデルとして採用したかどうかは疑問の余地がある。
[編集] 著名な文章と表現
題名にある「ワンダーランド(不思議の国)」という用語は、幻想的な架空の場所や、現実のなかで夢が実現する場所を指し示す言葉である。「ワンダーランド」という用語は、書籍や映像、ポップ・ミュージック等のポップカルチャーのなかで広く言及されている(影響を受けた作品の項目を参照)。一例として、日本の小説家村上春樹による『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』と題された小説がある。
第1章の章題である“Down the Rabbit-Hole”(ウサギの穴に落ちて)は、未知の世界への冒険の出発を表現する有名な用語となった。映画『マトリックス』のなかで、モーフィアスはネオをウサギの穴を落下するアリスになぞらえる。コンピューターゲームにおける、「ウサギの穴」はプレイヤーをゲームの世界へと導く最初の要素かもしれない。
白ウサギは、冒険の開始を示す合図として、同様の含意を持っている。『マトリックス』において、パソコンに表示された「白ウサギの後を追え」というメッセージに促されて、ネオの冒険は開始される。
第6章のチェシャ猫の消滅は、最も印象的な一文を言わせるようにアリスに促す。「……猫のないにやにや笑いだなんて! わたしが生まれてから見た、一番おかしなものよ!」クリス・マルケル監督の“A Grin Without a Cat”(1977年)と呼ばれるフランス映画が存在する。
第7章では、帽子屋が有名な答のないなぞなぞを出題する。「カラスが書き物机に似ているのはなぜか?」キャロルはこのなぞなぞに解答を与える意図は持っていなかったが、1896年版の『アリス』の序文で幾つかの解答を提示している。「なぜならば、どちらも少しばかりの“note”(鳴き声、覚え書)が出せますが、非常に“flat”(平板、退屈)なものです。そして、どちらも前と後を間違えることは決して(nevar)ありません!」この“nevar”はraven(カラス)を後から読んだ逆さ読みであったが、後の版では“never”に綴りが「修正」されてしまい、キャロルの仕込んだ駄洒落は失われてしまった。パズル作家のサム・ロイドは、以下の解答を提示している。「なぜならば、どちらで出される“note”も“musical notes”(旋律、音符)ではない」「どちらもポーがそれに拠って書いた」「どちらも“bill”(嘴、勘定書)と“tale”(尻尾、物語)をその特性として含んでいる」「どちらも“leg”(足、支柱)に支えられており、“steals”(窃盗)(“steels”(鉄鋼株))を秘密にして、“shut up”(黙らせる、閉め切らせる)させるためのものである」ガードナーの注釈本では、他の多くの解答例が紹介されている。
第8章で、ハートの女王がアリスに“Off with her head”(この子の首をちょん切っておしまい!)と叫ぶ。おそらくキャロルはこの場面で、シェイクスピアの戯曲『リチャード三世』第3幕第4場76行目で、リチャードがヘイスティングス卿の処刑を命じ、“Off with his head!”と叫ぶ場面を意識したのだと思われる。この文章は1967年のジェファーソン・エアープレインの曲「ホワイト・ラビット」で、比類のない幻覚の含意として使われている。
[編集] 言葉遊び
『不思議の国のアリス』の文章そのものは、非常に平易な英語で書かれているが、そのなかには無数の英語に依存した掛詞や駄洒落が散りばめられている。特に、代用海ガメが第9章でアリスに語って聞かせる「海の学校」の学科のくだりは、翻訳者泣かせの文章として知られている。
「はじめは、這い方(Reeling)と悶え方(Writhing)からでした」代用海ガメは答えました。「次は算数の四則です。野心(Ambition)、動揺(Distraction)、醜怪(Uglification)、愚弄(Derision)」
「わたし、『醜怪』なんて聞いたこともない」アリスは思い切って口をはさみました。「それって、何をやるんですか?」
グリフォンは驚きのあまり、両前足をふりあげました。「いやはや! 醜怪を聞いたことがないとはね!」グリフォンは叫びました。「じゃあ聞くが、美化は知っているかね?」
「はい」アリスはためらいがちに答えました。「それは……何かを……きれいにすることです」
「うむ、その通り」グリフォンは続けました。「それなのに醜怪がわからないのは、お前さんが間抜けってことだよ」
アリスはそれ以上醜怪について尋ねる気をなくしてしまい、代用海ガメに向きなおって言いました。「他には、何を習ってたんですか?」
「そうですね、謎(Mystery)がありました」代用海ガメは学科をひれ折り数えながら答えました。「古代の謎と現代の謎に、海洋学(Seaography)、それから話術(Drawling)……話術の先生はお年寄りのアナゴで、一週間に一度来ていらっしゃいました。この先生は僕たちに、話術と体の伸ばし方(Streching)と、とぐろを巻いて気絶するやり方(Fainting in Coils)を教えてくださいました」
- 這い方(Reeling)と悶え方(Writhing) - 読み方(Reading)と書き方(Writing)
- 野心(Ambition)、動揺(Distraction)、醜怪(Uglification)、愚弄(Derision) - 足し算(Addition)、引き算(Subtraction)、掛け算(Multiplication)、割り算(Division)
- 謎(Mystery) - 歴史(History)
- 海洋学(Seaography) - 地理(Geography)
- 話術(Drawling) - 絵画(Drawing)
- 体の伸ばし方(Streching)、とぐろを巻いて気絶するやり方(Fainting in Coils) - 写生(Sketching)、油彩(Painting in Oils)
[編集] 映像化作品
映像化の詳細は不思議の国のアリス (映画)も参照。
- Alice in Wonderland (1933 movie)(en) - 映画
- Alice in Wonderland (1951 movie)(en) - ウォルト・ディズニー・カンパニーによる、最も有名な『不思議の国のアリス』のアニメーション映画化
- Alice in Wonderland in Paris(en) - アニメーション
- Alice in Wonderland (1985 movie)(en) - 映画
- Alice (1988) - ヤン・シュヴァンクマイエルによるアニメーション
- Alice in Wonderland (1999 movie)(en) - テレビ映画
[編集] 『不思議の国のアリス』に影響された作品
キャロル自身による続編(上記リンク参照)に加えて、他の多くの芸術作品に、『アリス』は影響を与えている。
[編集] 文学
- ジェイムズ・ジョイスの小説『フィネガンズ・ウェイク』への『アリス』からの影響はよく知られている。『フィネガンズ・ウェイク』は夢に関する小説であり、以下のような文章を含んでいる。「アリシャス、ぐるぐる光り(トゥインストリームズ・トゥインストリームズ)、魅惑の鏡を抜けて巨人の国にいるのか?」「――孤独な不思議の旅人は我らを永遠に見失った。悲しき哉(アラス)アリスは鏡を割った! リデルは木の葉を抜けて閉じ込められ、我らは苦痛の謎にある」
- ウラジーミル・ナボコフは、『アリス』を母国語であるロシア語に翻訳した。ナボコフの小説は、“Ada, or Ardor”に見られる戯本のタイトルのように、多くのキャロルへの言及を含んでいる。しかしながらナボコフは、かれの生徒にして注釈者だったアルフレッド・アペルに、かの悪名高いペドフィリアの主人公が登場する『ロリータ』は、作品のテーマである写真術という芸術形式へのキャロルの興味にも関わらず、キャロルからの影響は意識していないと語っている。
- イギリスの作家ジェフ・ヌーンは、未来の空想上のマンチェスターを舞台にした作品“Vurt”(1993年)から始まる一連のサイバーパンク小説に、多数のキャロル語を挿入した。これらの作品において、ヌーンは不思議の国と鏡の国における論理の発展を、登場人物が没入する仮想現実サイバー詩の主題とした。これらの作品でなされうる解釈の一つは、『鏡の国のアリス』における「赤の王様の夢」の仮定と同様に、アリスの夢の中ではあらゆる事が起こるということである。また、ヌーンは彼自身が冗談半分に三作目の『アリス』と名付けた『未来少女アリス』を執筆した。この挿絵付き小説の中で、アリスは柱時計の中に入り込み、クォークという名の透明な猫やアリスの自動人形であるスリアなどの、奇怪な住民の住む未来のマンチェスターに現れる。
- アリス・リデルはフィリップ・ホセ・ファーマーのSF作品「リバーワールド」シリーズの登場人物だった。
[編集] 絵画
- ドロテア・タンニングの絵画『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』 Eine Kleine Nachtmusik (1946年)は、神秘的で恐ろしげな作風の中に『不思議の国のアリス』を連想させる。
[編集] 漫画とアニメーション
- アリスはアラン・ムーアによる二つのアメコミ・シリーズ、『 リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』(表紙にのみ登場)と“Lost Girls(en)”(成長した姿で登場)でも姿を見せている。
- アリスとバットマンが顔を合わせる“Haunted Knight”のような、多数のアメコミがある。
- 日本の少女漫画内田善美の『星の時計のLiddell』には、アリス・リデルをモチーフにした不思議な少女が登場する。
- 日本の皆川亮二作の漫画『ARMS』では、キャラクターにアリスになぞらえたコードネームが付けられている。
- 日本の介錯作の漫画『鍵姫物語 永久アリス輪舞曲』は、幻の3作目のアリスの物語を巡る少年少女達の戦いを描いている。(ただし、作者はキャロルではなくタキオンという架空の人物となっている。)
- 日本のPEACH-PIT原作の漫画、松尾衡監督のアニメ作品ローゼンメイデンには超越的存在の象徴としてアリスの名が使われている。また、そのアリスを目指す人形達の戦いはアリス・ゲームと呼ばれる。特に原作漫画版は異世界の扉や兎など、この作品の影響が濃厚にみられる。
- 日本のCLAMP作の漫画『不思議の国の美幸ちゃん』では、主人公の女子高生・美幸ちゃんが美女だらけの世界に迷い込み、毎回トラブルに見舞われる(ただし、「アリス」シリーズのストーリーやキャラクターが元ネタとなっているものは「不思議の国の美幸ちゃん」「鏡の国の美幸ちゃん」だけで、後続のシリーズは「~の国」というタイトルを借りた別物である)。
- 日本の冨樫義博作の漫画HUNTER×HUNTERのオリジナルドラマCD『HUNTERS IN WONDERLAND』では、ゴンやキルアを始めとするハンター試験受験生達がスペードの女王の支配する『ワンダーランド』にてスペードの女王との戦い(ゲーム)を繰り広げている。
- 日本の木下さくら作の漫画魔探偵ロキRAGNAROK二巻では、主人公のロキがウトガルドの国に入り、その国は不思議の国のアリスがモチーフである。
なお、同作者作、ALICE IN WONDERLAND Picture Book はアレンジを加えつつも不思議の国のアリスの原作に沿った、アリスのコミック版である。
[編集] 映画・テレビ・ラジオ
- ジム・ヘンソン監督による1986年の映画『ラビリンス/魔王の迷宮』は、アリスの物語の影響を受けた映画の一つに数えられる。この作品は明らかにキャロル的な作風を備えている。この映画は、言葉を喋る不思議な生物たちの住む奇妙なファンタジーの世界を冒険し、幾つものパズルを解き明かさねばならなくなった少女の物語である。
- 『マトリックス』(1999年)は、白ウサギのタトゥーに誘われて反乱組織に加わった主人公ネオを特徴としている。この映画の監督であるウォシャウスキー兄弟は、『不思議の国のアリス』がマトリックス三部作を貫くテーマであると述べている。また、アニマトリックスの『ディテクティブ・ストーリー』も『鏡の国のアリス』の引用が多い。
- 『ドニー・ダーコ』(2001年)では様々なキャロル的要素が、夢と悪夢や、悪魔のようなラビットマン、グラウンドのゴルフホールなど、そのダークな筋書きに沿って改変されている。
- 『バイオハザード』(2002年)も幾つかの『アリス』に対する言及を行っている。名前のないメインキャラクターの一人は、アリスと呼ばれている。
[編集] ポピュラー・ミュージック
- ビートルズは、「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンド」や「アイ・アム・ザ・ウォルラス」(ウォーラスは『鏡の国のアリス』に登場)のような曲で、シュール な着想を持っていた。
- 1980年代のイギリスの音楽シーンで、不思議の国のアリスを意識した作品が多数出現したことも述べておくべきだろう。1982年を皮切りにし、ゴシック・ロックバンドやインディーズバンド関連において、アリスへのオマージュが集中したのである。例をあげると、のちにMissionのメンバーになるウェイン・ハッセイが在籍していたゴシックバンド、シスターズ・オブ・マーシー The Sisters Of Mercyは1982年にシングル「アリス」をリリース。一連のルイス・キャロル作品のヒロインをイメージしたこの曲はヒット曲となった。1983年にはロンドンにある、ゴシックバンドが好んでライブを行っていた名門のライブハウスBatcave Clubが、名前を"Alice In Wonderland"に変えた。
- スージー・アンド・ザ・バンシーズ Siouxsie & the Bansheesは自身のレーベルを"Wonderland"と名づけ、1987年にアルバム"Through The Looking Glass"(『鏡の国のアリス』の原題)をリリースした。
- 自身のミドルネームがAliceでもあるシンガーソングライターのヴァージニア・アストレイ Virginia Astleyの作品は、より明確にアリスへのオマージュが随所に散りばめられている。1983年の彼女のインストゥルメンタルアルバム"From Gardens Where We Feel Secure" には、アリスの冒険が始まった場所Godstowから数マイル南でフィールド・レコーディングされた小鳥のさえずりなどの効果音や、"Tree Top Club"、"Nothing is what it seems"、"Over the edge of the World"などの、小説内の情景を思い起こさせる曲が収録されている。
- グウェン・ステファニーの曲「ホワット・ユー・ウエイティング・フォー?」のミュージックビデオは、不思議の国のアリスにインスパイアされており、ハートの女王の迷路やマッド・ティーパーティを前面に押し出している。
- トム・ウェイツはアルバム『アリス』をレコーディングした。
- トム・ペティの曲「ドント・カム・アラウンド」のビデオもアリスの要素を含んでいる。
- INGRY'Sの永島浩之の曲不思議の国の女王様 CD未収録 ソロ3rdライブビデオにのみ収録
- 中島みゆきの舞台「夜会Vol.3 KAN-TAN」は、主人公の女性が夢の中で体験することがストーリーの中心になっており、夢の世界の案内人として「不思議の国のアリス」のウサギが登場する。(ちなみにタイトルの「KAN-TAN」とは中国の故事「邯鄲の夢」のことで、「不思議の国のアリス」とは「夢の中の出来事」という点が共通していると言える。
[編集] コンピューターとテレビゲーム
- 『アリス イン ナイトメア』のようなダークで血に塗れたPCゲームや、同じくロールプレイングゲームの『キングダムハーツ』にも、アリスは登場する。
- PCゲーム“Thief: The Dark Project”には、巨大な屋敷に忍び込む初級レベルがある。屋敷の中は、最初の内は概ね普通であるが、より奥深くに進むにつれ、『アリス』と同じように“curiouser and curiouser”(不思議な薬を飲んで巨大化したアリスが口走る言葉。普通の英語では“more curious and more curious”)になっていく。“Thief: Gold”では、ファンの間では“Little Big World”として知られている、最初に非常に小さな村を通り抜けて巨大なキッチンに至る屋敷が加えられたセクションで、このアイデアが拡張されている。“Thief”は“Looking Glass Studios”で開発された。
- アーケードゲームの『メルヘンメイズ』(ナムコ)には、「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」のキャラクターをモデルにしたキャラクターが登場する。
- ATLUS(アトラス)のゲームである「真・女神転生」や「ペルソナ」シリーズの中でも謎の少女として度々登場することがある。モデルになっているのは「不思議の国のアリス」のアリスであり、「死んでくれる?」が口癖である。
- 上記に挙げた以外にも『不思議の夢のアリス』(フェイス・PCエンジン)・『ありす・イン・サイバーランド』(グラムス・プレイステーション)・『Londonian Gothics ~迷宮のロリィタ~』(メガサイバー・ニンテンドーDS)など『アリス』を題材ないしリスペクトしたコンピュータゲームは多数存在する。
- また、2月14日発売のPCゲームソフト「ハートの国のアリス」にもアリスの名前と他の様々なキャラクターの名前が使われている。
[編集] 文化とコレクション
現在の『不思議の国のアリス』は、何百ものコレクターズ・アイテムやウェブサイト、芸術作品を生み出す、一つの文化現象となっている。
莫大な数の個人所蔵アリスコレクションは、最近はインターネットにより数を増やしつつある。稀覯本から最近のコミッションド・アートまで、2500以上のグッズが、頻繁にeBay経由でオークションに上げられている。置時計からイアリングや枕カバーまで、想像できるあらゆる種類のアリス関連商品が入手可能である。アリスグッズの場所を突き止めるのはいつも簡単とは限らないが、しばしば「アリス・ショップ」と呼ばれる店でグッズを見つけ出すことができる。イギリスには、スランデュドゥノの“the Rabbit Hole”やオックスフォードの“Alice's Shop”といったアリス・ショップがある。より小規模なアリス・ショップは、ハルトン・チェシャや、アリス・テーマパークのあるボーンマスで見つけ出せる。アメリカでは、カリフォルニアの“the White Rabbit”がある。事実、他のどの国でも入手できないほど、多数のアリス関連商品がアメリカには存在する。その内の一つが、Sherlock Holmes and the Alice In Wonderland Murders(en)(『シャーロック・ホームズと不思議の国のアリス殺人事件』)と呼ばれる書籍である。
インターネット上には、シンプルなサイトから学術的なサイトまで、数百のアリス関連サイトが存在する。実在したアリス・リデルやルイス・キャロルの情報を提供する、伝記サイトもある。
[編集] 日本における『不思議の国のアリス』
日本において、『不思議の国のアリス』は、現在まで二十人以上の訳者によりさまざまな翻訳がおこなわれている。
日本におけるAlice's Adventures in Wonderlandの初訳は、1908年2月に実業之日本社から創刊された『少女の友』の第1号から第3号までに連載され、1912年に紅葉堂書店から一冊にまとめられて出版された、「須磨子」名義による永代静雄訳の『アリス物語』である(ただし、この翻訳は原作の細部を作り変えた、翻案に近いものであった)。初期の珍しい訳本としては、芥川龍之介と菊池寛の共訳による、『アリス物語』(1927年)がある。
『アリス』の訳題として日本で定着した『不思議の国のアリス』という題名は、1930年の長沢才助訳『不思議の國のアリス』が初出とされている。
現在入手可能な『アリス』の邦訳としては、福島正実、高杉一郎、脇明子、石川澄子、生野幸吉、北村太郎、蕗沢忠枝、中村妙子、矢川澄子、山形浩生、柳瀬尚紀他の訳書がある。日本の訳書の挿絵は、ジョン・テニエルのイラストをそのまま流用した版が多いが、福島正実訳では和田誠がシンプルな描線によって、矢川澄子訳では金子國義が幻想的なタッチによって、『アリス』の世界を、それぞれ独特な画風で描き出している。
1983年10月3日から1984年3月26日にかけて、日本アニメーションの制作でアニメ『ふしぎの国のアリス』全26話が放映された。監督は杉山卓。声優として、アリス役をTARAKOが、アリスのペットであるうさぎのベニーを野沢雅子が演じている。
2006年4月には、ポプラ社より、POP WORLD ふしぎの国のアリス(文:はやのみちよ、絵:ぽっぷ)が出版され話題となった。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- Etext With Illustrations by Tenniel at the University of Adelaide(en)
- HTML version with Illustrations by Arthur Rackham(en)
- Illustrations(en) for Alice's Adventures in Wonderland by Arthur Rackham (1907).
- Alice's Adventures in Wonderland by Lewis Carroll - Project Gutenberg(en)
- Alice in Wonderland(en) HTML version
- Alice's Adventures in Wonderland(en) RSS version
- 不思議の国のアリス:プロジェクト杉田玄白
- 「(対談)ラッセル、ヴァン・ドーレン及びポーターと『不思議の国のアリス』を語る(1942年)」
- http://www.aliceinwonderlandshop.com アリス・ショップ
[編集] 参考文献
- Lewis Carroll. Alice's Adventures in Wonderland and Through the Looking Glass. Penguin Books ISBN 0140301690
- ちくま文庫『原典対照/ルイス・キャロル詩集』 ルイス・キャロル著/高橋康也・沢崎順之介訳 ISBN 4-480-02311-9