千夜一夜物語
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千夜一夜物語(せんやいちやものがたり、ألف ليلة و ليلة、Alf Layla wa Layla、The Book of One Thousand and One Nights)は、アラビア語でまとめられた説話物語集である。
中世イスラム世界で形成されたアラビア語の説話集。中世ペルシア語であるパフラヴィー語で記された(「ハザール・アフサーナ」(千物語))がアッバース朝期に翻訳されたものとされる。いくつかの発展段階を経て、19世紀に現在の1001夜分を含む形で出版された。
18世紀初頭にフランスのアントワーヌ・ガランがヨーロッパで「発見」し、シリア系写本を使ってフランス語訳を行い、ヨーロッパに広く紹介された。以来、さまざまな翻訳と翻案が積み重ねられ、アラブ文学の枠に留まらない大きな文学ジャンルと言えるほどの作品になっている。
日本では1875年に早くも英語版からの翻訳が行われ、以来英語・フランス語などのさまざまなバージョンからの重訳が行われ、有名な説話は児童文学に翻案されて親しまれてきた。原典アラビア語(カルカッタ第二版)からの翻訳は前嶋信次・池田修による平凡社東洋文庫版『アラビアン・ナイト』(全18巻)がある。マルドリュス版(仏語・翻案を含む)、バートン版(英語)からの翻訳もよく知られている。
目次 |
[編集] 名称
千夜一夜物語は、日本語では千一夜物語、アラビアン・ナイトとも呼ばれている。初期の翻訳においては、永峯秀樹訳『開巻驚奇 暴夜(あらびや)物語』や、日夏耿之介訳『壹阡壹夜譚』の題名も見られた。
原書名のアルフ・ライラ・ワ・ライラは、alfが「千」、laylaが「夜」の意味で、waが接続詞「と」であるから、直訳すると『千夜と一夜』が正しいように思えるが、これはアラビア語独特の数の数え方に起因することであって、日本語の訳としては『千一夜』の方が自然である。しかし日本では『千夜一夜物語』の名称の方が普及している。また、通称の「アラビアン・ナイト」と言うのは、この物語が初めてイギリスに紹介されたときの題名がArabian Nights Entertainments で、明治初期にアラビア物語などとして翻訳されたことに由来している(『暴夜物語』(1875年)、『全世界一大貴書(アラビアンナイト)』(1883年)など)。
[編集] 内容
妻の不貞を見て女性不信となったシャーリアール王が国の若い女性と一夜を過ごしては殺していたのを止めさせる為、大臣の娘シェヘラザードが自ら王の元に嫁ぎ、千夜に渡って毎夜王に話をしては気を紛らわさせ、終に殺すのを止めさせたという物語が主軸となっている。話が佳境に入った所で「次回はまた明日」とシェヘラザードが打ち切る為、王は続きが聞きたくて別の女性に伽をさせるのを思い留まり、それが千夜続いたという。説話は、船乗りシンバッド(シンドバード、シンドバッド)の様な実在の冒険商人たちをモデルにしたであろう架空の人物からアッバース朝のカリフ、ハールーン・アッ=ラシードや、その妃のズバイダのような実在の人物まで様々な登場人物が登場し、官能的な説話や戦争ものや空想的な架空の物語など多彩な物語を繰り広げる。なお、中世ヨーロッパに流布されたプレスター・ジョン伝説の中に、ジョン王からの手紙があり、その中に千夜一夜物語から仮借された内容もあると言われている。
説話は様々な地域に起源をもつものも多く、中世イスラム世界の社会背景が生き生きと書き出されている。
「商人と金細工師と銅細工師を営むふたりの息子、および金細工師の息子ハサンとペルシア人の詐欺師にまつわる物語」(東洋文庫版・第15~16巻・第778~831夜)に登場する「ワークの島じま」を「倭国」、即ち日本列島とする説がある。
有名な『アラーウッディーン(アラジン)の魔法のランプ』と『アリー・ババ(アリ・ババ)と40人の盗賊』の話は当時主に流通していた写本にはなく、18世紀のフランス語版の翻訳者アントワーヌ・ガランが付け加えたとされてきた。しかし20世紀になってから、ガランの時代より古いとされるこれらの挿話の写本が発見された(この写本はフランス語版からの逆翻訳で、偽物だという主張もある)。また、千夜一夜物語は、成立後も様々な作家によって新たに挿話が付け加えられ、原典であっても複数のテキストが存在することに注意する必要がある。
[編集] 原文
ウィキソースにてアラビア語の原典が閲覧できる。
[編集] アニメ映画
手塚治虫のプロデュース・構成・脚本により、1969年に公開された。大人のためのアニメとしてアレンジが加えられ、大胆な性描写、実写映像の合成など、実験的な要素が強い傑作となっている。
[編集] スタッフ
[編集] 声の出演
- 青島幸男
- 岸田今日子
- 芥川比呂志
- 加藤治子
- 小池朝雄
- 橋爪功
- 三谷昇
- 文野朋子
- 高木均
- 名古屋章
- 遠藤周作
- 吉行淳之介
- 北杜夫
- 小松左京
- 筒井康隆
- 大宅壮一
- 佐賀潜
- 大橋巨泉
- 前田武彦
- 立川談志
- 野末陳平
[編集] 関連項目
- シェヘラザード (リムスキー=コルサコフ)
- アラジンと魔法のランプ
- マジック:ザ・ギャザリング(この物語をテーマにしたカードセットが発売された)
- のび太のドラビアンナイト(この物語をモチーフとしている)
- ソニック・ザ・ヘッジホッグ(この物語をテーマにした「ソニックと秘密のリング」が発売された)