営団6000系電車
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6000系電車(6000けいでんしゃ)は、東京地下鉄(旧・帝都高速度交通営団)千代田線用の通勤形電車。
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[編集] 概要
20m4扉のアルミ合金車体を採用し、制御方式として回生ブレーキ付き電機子チョッパ制御方式を用いた。1967年(昭和42年)から1990年(平成2年)まで試作車・量産車あわせて36編成353両が製造される。2007年現在、廃車は発生しておらず、1次試作車3両1編成及び2次試作車6両を含む10両編成35本が在籍している。
なお、6000系の後継・増備系列として1992年に06系10両編成1本が製造されているが、その後の増備には至っていない。後述の更新工事施工もあって、「21世紀の電車」という登場時のキャッチフレーズそのままに、2006年現在も千代田線の主力である。
[編集] 編成
[編集] 量産車
←唐木田・代々木上原 綾瀬・取手→
6100(CT1)-6200(T2)-6300(M1)-6400(M2)-6500(Tc)-6600(Tc')-6700(M1)-6800(M2)-6900(M1)-6000(CM2)
- 6500形と6600形に中間運転台がある。なお6101編成のみ6100(CM1)-6200(M2)、6700(T1)-6800(T2)となっている。
- 一部の6200形と6900形に車いすスペースがある。
[編集] 試作車
←綾瀬 北綾瀬→
6000-1-6000-2-6000-3
[編集] 車両概説
運転台は回転式ツーハンドルで、マスコンハンドルは4段である。北綾瀬支線用を除き、マスコンのデッドマン装置はなくブレーキハンドルにノッチが刻んである。乗務員室仕切りには客室側から向かって右端に乗務員室扉がある。運転席後部には機器があるため乗務員室扉窓からは運転席は見えない。この他乗務員室仕切りには第22編成から運転席後部に窓が設置された。この窓は大きさが小さいものとそれよりは大きいものがある。
[編集] 1次試作車
1968年(昭和43年)4月、世界初のサイリスタチョッパの実用化を図るために3両編成のアルミ合金製車両として登場した。当時は2社のチョッパ制御と従来の抵抗制御、計3台の制御装置を搭載し、切り替えて比較していた。
前面デザインは非対称となり、正面の貫通扉は非常用ステップを一体にした前倒し式である。このデザインと構造はその後に登場した横浜市交通局や京都市交通局などの地下鉄車両にも影響を与えた。製造当時は車体裾部に防音用のカバー(現行の小田急3000形の3263編成登場時のものと類似)が設置されていたが、その後正面スカート(排障器)のみに変更され、最終的には取り外されている。また正面の緑色の帯は前照灯の部分で途切れていた。
量産車の千代田線への導入に考慮し、日本国有鉄道(国鉄、現・東日本旅客鉄道(JR東日本))常磐緩行線および小田急電鉄小田原線との相互直通運転が可能な20m・4ドア車としている。東西線で各種の走行試験を行った後、千代田線に転属した。そして1978年(昭和53年)にはVVVFインバータ制御の試験も実施した。
1979年(昭和54年)12月の北綾瀬支線の開業に併せて5000系と同一の抵抗制御に改造された。その後も冷房改造、リニューアル工事やワンマン運転対応改造なども施工され、北綾瀬支線で運用されている。
2004年(平成16年)12月23日の北千住~大手町間開業35周年・綾瀬~北綾瀬間開業25周年記念イベントとして、湯島~北綾瀬間を臨時列車として運転した事がある。この時の行先表示は「臨時」であった。
試作車とあって、量産車との相違点は多い。
- 車両番号は量産車と異なり、6000-1、6000-2、6000-3という付番となっている。
- 形式も若干異なり、系列名は「6000-系(6000ハイフン系)」とも称される。
- 先頭車両の上半分の傾斜が量産車よりやや角度が緩い。
- 側面雨樋の位置が量産車より高く、肩部が張り上げとなっている。
- 座席端部の仕切りの切れ込み角度が量産車の直角に対して斜めになっている。
[編集] 2次試作車
1次試作車に続いて6両編成1本がオールM車(電動車)で登場した。登場当時は6011編成を名乗っていたが、量産車の登場に併せてT車(付随車)4両を増結して6101編成に改番した。増結した4両を含めて車体側面の裾が長い事や両端共制御電動車になっている事が量産車との違いである。このため小田急電鉄の建築限界に抵触し、また同社線用の保安装置が搭載できず、小田急線に乗り入れる事はできない。
制約があるという点では国鉄の201系900番台編成と類似するものがある。しかし早々と編成を解消し他編成の中間に組み込まれた後に試作車は2005年10月に廃車となった201系の場合とは違って、この2次試作車は2007年現在も独立した編成を組んでいる上に、VVVFインバータ制御への更新及び冷房改造・車体更新も施工されている。
[編集] 1~3次量産車
1971年(昭和46年)に千代田線初の新系列車として登場した。1972年(昭和47年)度鉄道友の会ローレル賞受賞。1・2次試作車のデザインを活かした登場時としては斬新なスタイルとなっている。
1~3次量産車にあたる第2~21編成は2段窓タイプの非冷房車で登場した。増備の都度、乗務員室扉の大きさなど細部が変更されている。また代々木上原延長・小田急線乗り入れ開始に際して1977年に製造された第20・21編成は当初より小田急線乗り入れ機器を装備して落成した。
[編集] 4~7次量産車
1981年製の第22~28編成以降、1990年製の第35編成までは半蔵門線の8000系の設計を踏まえ1段窓タイプで登場した。また、第22~32編成までは冷房準備車として落成、第33~35編成は新製時より冷房車として登場している。増備は4次にわたり、屋根の高さや内装などに相違がある。第22~28編成の新製は千代田線及び東西線の輸送力増強用の名目で製造されており、常磐緩行線~代々木上原間の運用に使われていた5000系を置き換えて東西線に転用し同線の編成増強を行った。
地下鉄博物館で運転シミュレータとして使用されるモックアップは第29~32編成のものに準拠しており、車両番号は「6000」となっている(1985年・三菱プレシジョン製)。
1次試作車及び量産車について、冷房準備車を含む非冷房車は1988年(昭和63年)~1994年(平成6年)に冷房化改造を行った。
[編集] 運用
第2編成以降は常磐緩行線や小田急小田原線・多摩線にも直通する。ただし小田急線への直通種別は急行と多摩急行のみで、準急の運用は2003年3月29日改正以後設定されていない(小田急車の代走として準急運用に充当することはある)。
[編集] 付加機能について
東京メトロでは、6000系以降の車両に関しては車齢40年程度まで使用する方針であり、営団時代から様々なリニューアル工事を施している。1990年代以降、1次試作車及び量産車については行先表示器のLED化、チョッパ制御回路素子をGTOサイリスタへの更新やIGBT素子によるVVVFインバータ制御装置への換装、リニューアル工事(編成によっては2段窓の1段窓化)が行われている。
[編集] 付加機能一覧
編成によって付加機能の設置状況はまちまちである。具体的には以下の通り(数字は編成番号の下2桁)。
- 行先表示器がLED式:01~21・24・28~32
- 2段窓が存在:03・05・07・08・10・12・13
- 車内自動案内放送設置:01~21・24・28~32・35(35編成は製造当初から搭載)
- 座席モケット張り替え:02・04~06・09・14~17・20・23~25・28・30~32・34・35
- LED式車内案内表示器+ドアチャイム搭載:03~05・08~10・16・24・28~32・35(35が全ドア配置で製造当初から搭載、それ以外が千鳥配置)
- VVVFインバータ制御改造
- ※この色は5M5T編成(他編成は6M4T)・主電動機出力165kW・全電気ブレーキ対応
自動案内放送が対応するのは千代田線と小田急線内のみである。また、LED式車内案内表示器搭載編成はドアチャイムを併設しており、ドアの開閉時にチャイムが鳴る。
ドア上にあるLED式の車内案内表示器は、営団民営化に際して駅ナンバリングを表示させたが、JR線内では「For Yoyogi-uehara(C-01)」などの長い表示が収まらず、大文字の幅を狭めたり表示形式を変更したりしていた。具体的にはこの部分はJR線内では駅番号も伴ったスクロール表示と駅番号非表示による固定表示が混在していた。地下鉄線内は民営化時に表示方法が抜本的に変わったため問題はなかった。最終的には駅番号非表示による固定表示ですべて統一した。2005年8月24日にはこの点の他に一部の表示形式を変更し、千代田線からJR線への直通電車の場合に「JR常磐線直通 ○○ ゆき For ○○ on the JR Line」と表示するようになった点である。例外として第28~32編成は旧来のままの表示であり、表示形式に関しては他にも異なる部分がある。JR・小田急線内においても種別・行先、次の駅、乗り換え案内などの比較的詳細な案内を表示する。常磐線から千代田線に直通しない綾瀬止まりの列車では「地下鉄千代田線直通 綾瀬 ゆき」と表示する。
第35編成は登場当時から行先表示器が幕式であるものの、LED式の車内案内表示器及び自動案内放送を搭載する。同編成と06系はすべてのドア上にLED表示器が搭載されている上、他の編成とは書体が異なる。また、乗降促進用車外スピーカーも第24・28~32編成のリニューアル車と共に取り付けられている。これは主にラッシュ時などに使われ、発車の際にブザーが鳴った後「ドアが閉まります、ご注意下さい」と2回アナウンスされる。前述のリニューアル車6編成は更新時にドアの窓を大幅に広くしている事から、小窓・中窓・大窓の3種類になっている。
なお、行先表示器が幕式になっている編成(22・23・25~27・33~35の各編成)の字幕は2004年(平成16年)12月11日の小田急電鉄のダイヤ改正の際に取り替えられている。側面部にも英語表記を追加した他、準急・多摩急行・急行の表示形式・配色も小田急の車両と統一した。この中で2006年現在は設定のない準急の表示もある。他に小田急多摩線自体に準急の設定がないにも関わらず「準急 唐木田」の表示もある。方向幕装置の車内側に小さな窓が設置してあり、現在表示している方向幕とその番号を車内側から確認する事が出来る。
6000系の方向幕は到着後に変更される事が多く、場合によっては乗務員の移動後まで変更しない。これは幕式編成では設定器を取手方の10号車のみに設置しているためであるが、第35編成は両先頭車に装備している。対してJRの203系と207系900番台、小田急の1000形の方向幕は、設定器を両先頭車に設置するため、走行中に設定機を操作して終着駅到着時に折り返し後の行先になっている事が多い。
最近では小田急の車両に合わせて、優先席付近の吊り革がオレンジ色のものに取り替えられている。その他のメトロ車(5000系を除く)もオレンジに取り替えられている。
[編集] その後
6000系の車体スタイルは、後に有楽町線用として登場した7000系や、半蔵門線用として登場した8000系に引き継がれた。
関東の各鉄道事業者で同期に新製された車両の多くが次々と廃車になって行く中で、6000系以降の営団→東京メトロの各系列は、車両更新の方針が「10年で小規模、20年で大規模、30年で小規模の更新工事を行い、40年で運用を離脱」としているため、様々な改造を施しながらも大部分が運用されている点も特筆に値する。
2004年(平成16年)9月26日有楽町線新木場検車区一般公開に際し、「千代田ワープ号」の復路便として新木場~桜田門~(連絡線通過)~霞ヶ関~北綾瀬間を走行している。
[編集] 関連商品
Nゲージ鉄道模型としてグリーンマックスから「営団6000(7000/8000)系」という製品名で組立てキットが販売されている。
[編集] 外部リンク
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