将棋の戦法一覧
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将棋の戦法一覧(しょうぎのせんぽういちらん)
将棋の戦法は、「居飛車」と「振り飛車」の2つに大別される。また「急戦」か「持久戦」かによっても大きく異なる。
攻めによる分類と守り(囲い)による分類がある。居飛車の場合は、囲いによって大きく分かれ、攻めによって細かく分かれる。振り飛車の場合は、攻め(飛車の位置)と囲いはかなり独立している。
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[編集] 居飛車
居飛車(いびしゃ)は、将棋の二大戦法の一つ。序盤において、飛車を定位置の2筋(後手8筋)、またはその周辺の右翼に配置して戦うもの。この反対は振り飛車で、飛車を左翼へ展開する。
[編集] 相居飛車
- 矢倉戦法
- 角換わり
- 角換わり腰掛け銀・角換わり棒銀・角換わり早繰り銀・後手番一手損角換わり・後手棒銀・右玉
- 相掛かり
- 引き飛車棒銀・塚田スペシャル・新旧対抗型・中原流相掛かり(中原流▲3七桂)・飛車先交換腰掛け銀・鎖鎌銀
- 横歩取り
- ひねり飛車(縦歩取り)
- かまいたち戦法
[編集] 居飛車(対振り飛車)
[編集] 振り飛車
振り飛車(ふりびしゃ)は、将棋の二大戦法の一つ。序盤において、右翼にある飛車を左翼へ展開するもの。この反対は居飛車で、飛車を定位置の2筋(後手8筋)、またはその周辺の右翼に配置して攻める。 振り飛車戦法の相手は、居飛車の場合と振り飛車の場合があり、それぞれの戦い方は全く異なる。前者は居飛車振り飛車対抗型、もしくは単に対抗型と称す。後者は「相振り飛車」と称し、これについては後述する。
居飛車に対しては、角行を交換されて、飛車先を突破されるのを防ぐために通常角道を止める。囲いは堅い美濃囲いにする場合が多い。さらに堅い穴熊囲いにする場合もある。相手に攻めさせて、その反動で駒を捌く(「捌く」とは、駒をよく働かせることを指す将棋の専門用語である。盤上の駒を持ち駒にすることによって働きが増すと考えられる場合は、駒を交換することもまた「捌き」の一つである)、最後は玉将の堅さを活かして勝つのが基本的な戦い方である。よって、駒がどれだけ捌けたかが、振り飛車側の形勢を判断する重要な指標となる。
しかし、最近では、居飛車も振り飛車に対して左美濃や居飛車穴熊やミレニアム囲いなどの、美濃囲いと同等かそれより堅い囲いで対抗するようになってきたため、単純な捌き合いでは勝てないことも多い。ゆえに振り飛車は前述のような戦い方だけではなく、時には玉を初期配置から動かさずに果敢に攻め込んだり(藤井システム)、時には強引に捌こうとする堅い囲いの相手に対して押さえ込みを図ったりと、多様な戦い方をする戦法となっている。
振り飛車は江戸時代初期には用いられた古い戦法だが、江戸中期以降は廃れていた。昭和になって振り飛車を復活させたのが大野源一で、さらにその兄弟弟子の升田幸三、大山康晴両巨頭らが流行させ、振り飛車は再びプロの戦法として認識されるに至った。その後、居飛車穴熊戦法の台頭により、振り飛車党の棋士はなりを潜めていたが、藤井猛が四間飛車の藤井システムを開発して竜王位を奪取するに及んで、再び振り飛車の時代が訪れた。振り飛車はもともと受けの戦法と考えられていたが、藤井システムは攻めの戦型であり、振り飛車の革命といわれている。アマチュアの間では、振り飛車とくに四間飛車は非常に人気のある戦法である。
近年では、中村亮介、髙﨑一生、中村太地など若手の振り飛車党が急増、深浦康市などが振り飛車党に転換するなど振り飛車党の勢力が拡大、再び一時代を築く事も無いとはいえない。
また、奇襲戦法の部類に入るが、一間飛車という戦法もある。なお、袖飛車や右四間飛車は多くの場合振り飛車の部類には含めず、居飛車の部類に入る。
[編集] 振り飛車(対居飛車)
- 中飛車
- 力戦中飛車(ゴキゲン中飛車)・ツノ銀中飛車・平目・風車・英ちゃん流中飛車・原始中飛車・5五龍中飛車
- 四間飛車
- 藤井システム・立石流四間飛車・玉頭銀(たこ銀)
- 三間飛車
- 石田流・早石田・升田式石田流・鬼殺し・中田功XP
- 向かい飛車
- 阪田流向かい飛車・メリケン向かい飛車・△3二銀型向かい飛車・△3二金型向かい飛車
[編集] 相振り飛車
相振り飛車(あいふりびしゃ)は、将棋の戦型の一つで、先手と後手が互いに振り飛車にして駒組みを進める戦型である。互いに飛車を左翼に移動させる、つまり「振る」ので、この名が付いた。両対局者が振り飛車党の場合に、相振り飛車が発生しやすい。
振り飛車には前述のとおり中飛車・四間飛車・三間飛車・向かい飛車の4つがあり、したがって相振り飛車の戦型は、相居飛車や居飛車対振り飛車の場合に比べて、複雑なものとなる。また、両対局者が互いに振り飛車にしないと発生しない戦型なので、定跡化が遅れており、未知の要素が大きいともいえる。
囲いは金無双・美濃囲い・矢倉囲い・穴熊囲い(矢倉囲いの場合、盤面の右側に囲うため、居飛車の場合とは左右逆であるが、同じ名前で呼ぶ)などを用いることが多い。金無双は相振り飛車において以前は多用された囲いであるが、先手の場合2八、後手の場合8二の銀将が、玉の逃げ道を塞いでいる「壁銀」と呼ばれる悪形なので、最近は美濃囲いや矢倉囲いを用いる場合が多い。振り飛車対居飛車の戦いと違って相手の飛車と向かい合う(自分から見て)盤面の右側に玉を囲うことになるため、相居飛車で用いられる上からの攻めに強い矢倉囲いが相振り飛車でも用いられるのである。
[編集] 主な「振り飛車党」の棋士
- 大野源一 - 「振り飛車名人」の異名を持つ。三間飛車での捌きを得意とした。
- 升田幸三 - 向かい飛車を得意とした。名人に香車を引いて(香落ち)勝ち、将棋界以外にも顔が広かった。
- 大山康晴 - 四間飛車隆盛のもとを築いた。
- 大内延介 - 振り飛車穴熊を得意とする。
- 森安秀光 - 将来を嘱望されたが、長男に殺害される。
- 小林健二 - 「スーパー四間飛車」の著者である。
- 杉本昌隆 - 四間飛車を得意とする。
- 藤井猛 - 竜王戦3連覇。藤井システムの開発で、振り飛車に革命を起こす。
- 久保利明 - 駒の捌きを重視する。
- 鈴木大介 - 豪快にして繊細な棋風。
- 中田功 - 三間飛車における中田功XPの創始者。
- 近藤正和 - ゴキゲン中飛車の創始者。受けが常識である中飛車に革命を起こす。
(特に、藤井猛、久保利明、鈴木大介の3人は、「振り飛車御三家」と呼ばれる。)
[編集] 囲い
囲い(かこい)とは、玉を相手の攻撃から守るための、ある決まった駒組みのことである。主に金将や銀将を用いる。玉を囲いの中に入れることを「(玉を)囲う」と言う。一般的に、戦いが起こる場所から離れたところに玉を囲う。
[編集] 主に相居飛車で使われる囲い
- 矢倉囲い
- 金矢倉・銀矢倉・総矢倉・片矢倉(天野矢倉・半矢倉)・へこみ矢倉・銀立ち矢倉・菱矢倉・流れ矢倉・菊水矢倉(しゃがみ矢倉)・富士見矢倉・土居矢倉・高矢倉・角矢倉・矢倉穴熊
- カニ囲い
- 中原囲い
- 雁木囲い
- 右玉
- 中住まい
- イチゴ囲い
- カタ囲い
- カブト囲い
[編集] 主に振り飛車対居飛車で使われる囲い
[編集] 振り飛車側の囲い
[編集] 居飛車側の囲い
- 舟囲い
- 箱入り娘・セメント囲い
- 左美濃囲い
- 天守閣美濃・四枚美濃・銀冠
- 米長玉
- 穴熊囲い
- 四枚穴熊・田尻穴熊・松尾穴熊・ビッグ4
- 串カツ囲い
- ミレニアム囲い(かまくら・カマボコ・トーチカ・三浦囲いとも)
- 中段玉
- 空中楼閣・四段端玉
[編集] 主に相振り飛車で使われる囲い
[編集] その他の戦法の囲い
- 金開き
- アヒル
- 大阪囲い
- 風車(囲いではなく攻めの形との考えもある)
- 多伝囲い
- 金象眼・銀象眼
- 居玉
[編集] 参考文献
- 塚田泰明監修、横田稔著『序盤戦! 囲いと攻めの形』、高橋書店、1997年