竜王戦
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竜王戦(りゅうおうせん)は、読売新聞社主催の将棋の棋戦で、七冠(竜王・名人・棋聖・王位・王座・棋王・王将)の中でも最高峰のタイトル戦である。「竜王決定七番勝負」の勝者は竜王と呼ばれ、タイトル保持者とみなされる。
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[編集] 概要
読売新聞社が主催していた十段戦が発展的に解消されて、1988年に「竜王戦」が発足した。駒の竜王から命名された。2005年に制度の見直しが行われ、第18期(2005年)以前と第19期(2006年)以後で異なる部分があり注意が必要である。将棋のタイトル戦の中で最も高い賞金(勝者3200万円・敗者800万円)を誇り、対局料もズバ抜けて高い(竜王1450万円・挑戦者700万円)。
順位が加味されたトーナメント方式により挑戦者が決定され、挑戦者が竜王と戦う竜王決定七番勝負の勝者が次の竜王となる。竜王決定七番勝負は毎年10月から12月にかけて行われる。この七番勝負において竜王が負けて竜王が交代となった場合、それまでの竜王は他のタイトルを獲得していない場合1年間は前竜王と呼称される。ただし前竜王の称号を辞退して段位で呼称されることも可能である。
竜王戦は棋戦の序列は名人戦を上回り1位であるが、竜王と名人の棋士個人の序列は棋士番号順となっている、前竜王の序列はタイトル保持者に次ぐものと決まっている。辞退した場合、順位戦における序列が適用される。
また名人とともに、免状の署名等、多くの業務をこなす必要がある。
[編集] しくみ
独自のランキング戦と本戦によって竜王戦挑戦者を決定する。本戦優勝者は竜王と竜王戦七番勝負を争う。
[編集] ランキング戦
1組から6組までに分かれている。1組の上位5名、2組の上位2名、3組から6組までの優勝者が本戦に出場できる。第18期までは1組は上位4名、2組と3組は上位2名、4組から6組までの優勝者が本戦に出ることができたが、第19期から変更されている。
各組のランキング戦はトーナメントで争われる。準決勝までに敗れた棋士は昇級者決定戦(1組は本戦出場者決定戦)に回る。
- 1組(16名)はランキング戦決勝進出者2名、準決勝敗退者(2名)で3位決定戦、2回戦敗退者(4名)で4位決定戦、1回戦敗退者(8名)で5位決定戦を行い、それぞれその勝者が本戦に出場する。5位決定戦の1回戦で敗れた4名が2組に降級する。なお、もし3組以下の棋士が挑戦者になった場合、定員割れを起こすため5位決定戦の2回戦に敗れた棋士2人が残留決定戦を行いそれに敗れた棋士も2組に降級される。
- 2組(16名)はランキング戦決勝進出者が本戦に出場する。決勝進出者と昇級者決定戦に勝ち残った2名の合計4名が昇級する。昇級者決定戦の1回戦に敗れた棋士4名が3組に降級する。
- 3組から6組(3組は16名、4組、5組は32名、6組は残り全員)はランキング戦優勝者が本戦に出場する。決勝進出者と昇級者決定戦に勝ち残った2名の合計4名が昇級する。3組は昇級者決定戦の1回戦で敗れた4名が降級する。4組と5組は昇級者決定戦の1回戦で敗れた棋士で残留決定戦を行い、これに敗れた4名は降級する。6組の棋士は降級しない。
- 6組には女流枠(2名)とアマチュア枠(アマチュア竜王戦ベスト4など5名)があり、昇級の資格を満たした場合は5組に進出する。ただし、昇級者決定戦には参加できないため決勝に進出する必要があり、現在のところこの資格を満たしたアマチュア及び女流はいない(最高成績は第4期天野高志アマの準決勝進出)。アマチュアの1回戦は原則として新四段(棋士番号の大きい順)と対局する。
持ち時間は、ランキング戦と昇級者決定戦(1組は本戦出場者決定戦)は各5時間、残留決定戦は各3時間で行われる。
[編集] 本戦
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ランキング戦の組と順位により、右図のように位置があらかじめ定められたトーナメントを行う。1組の優勝者は2人破れば挑戦者となるが、5組、6組の優勝者は6人を破らなければならない。
決勝は三番勝負を行い、先に2勝したものが挑戦者となる。持ち時間は各5時間。なお、挑戦者は2組以下の棋士でも自動的に1組に昇級する。
ただし竜王のいない第1期においては各組を勝ち抜いた13人に加えて、シードとして竜王戦の前身である十段戦の最後のタイトル保持者の高橋道雄十段、永世十段を保持していた大山康晴十五世名人、中原誠永世十段の3人を加えた16人によるトーナメントを行った。本戦トーナメント準決勝を三番勝負とし、高橋道雄十段と1組2位から勝ち上がってきた米長邦雄九段、中原誠永世十段と3組2位から勝ち抜いてきた島朗六段という組み合わせで三番勝負が行われた。そしてそれぞれの勝者である米長九段と島六段によって竜王戦七番勝負が行われ、勝利を収めた島六段が初代竜王となった。
[編集] 竜王戦七番勝負
竜王と本戦を勝ち抜いた棋士が七番勝負を戦う。先に4勝したほうが新たな竜王となる。七番勝負は全国各地の旅館やホテルなどで開催され、とくに第1局は日本国外での対局が行われることもある(下記)。
持ち時間は各8時間で、1局を2日かけて実施する。1日目の終わりには封じ手を行い、2日目の開始まで次の手を考えて有利になることがないようにする。
- 日本国外での対局
1990年の第3期から1998年の第11期までは毎年行われていたが、それ以降は2年ごとになっている。
- 第3期(1990年)フランクフルト(ドイツ)
- 第4期(1991年)バンコク(タイ)
- 第5期(1992年)ロンドン(イギリス)
- 第6期(1993年)シンガポール
- 第7期(1994年)パリ(フランス)
- 第8期(1995年)北京(中華人民共和国)
- 第9期(1996年)ロサンゼルス(アメリカ)
- 第10期(1997年)ゴールドコースト(オーストラリア)
- 第11期(1998年)ニューヨーク(アメリカ)
- 第13期(2000年)上海(中華人民共和国)
- 第15期(2002年)台北(台湾)
- 第17期(2004年)ソウル(韓国)
- 第19期(2006年)サンフランシスコ(アメリカ)
[編集] 昇段基準
竜王戦による昇段基準は以下の通りである。
- 九段 - 2期獲得
- 八段 - 1期獲得(飛びつき昇段を認める)
- 七段 - 竜王挑戦(飛びつき昇段を認める)・1組昇級
- 六段 - 2組昇級(飛びつき昇段を認める)
- その他の昇段(七段まで) - 2期連続昇級・通算3回ランキング戦優勝
六段以下の棋士が竜王になった場合、八段に飛びつき昇段する。この制度は2005年に決定したため、2004年に五段で竜王に挑戦し、竜王位を獲得した渡辺明は2004年の竜王挑戦で六段、2005年の竜王戦出場を竜王挑戦と見なして七段、同年、本制度の決定によって八段、さらに竜王防衛により九段に昇段した。
さらに2006年2月にランキング戦1組昇級者・竜王挑戦者には七段、2組昇級者は六段(ともに飛びつき昇段も可能)、連続昇級・通算3回ランキング優勝した棋士には一段ずつ昇段(最大で七段まで)することを決めた。
[編集] 永世竜王
永世称号である永世竜王は、竜王位を連続5期もしくは通算7期以上保持した棋士に与えられる。2006年12月現在、永世竜王の資格を持つ棋士はいない。
[編集] 歴代七番勝負
年は七番勝負が行われた時点。
- 1988年:島朗 4-0 米長邦雄
- 1989年:羽生善治 4-3(1持将棋) 島朗
- 1990年:谷川浩司 4-1 羽生善治
- 1991年:谷川浩司 4-2(1持将棋) 森下卓
- 1992年:羽生善治 4-3 谷川浩司
- 1993年:佐藤康光 4-2 羽生善治
- 1994年:羽生善治 4-2 佐藤康光
- 1995年:羽生善治 4-2 佐藤康光
- 1996年:谷川浩司 4-1 羽生善治
- 1997年:谷川浩司 4-0 真田圭一
- 1998年:藤井猛 4-0 谷川浩司
- 1999年:藤井猛 4-1 鈴木大介
- 2000年:藤井猛 4-3 羽生善治
- 2001年:羽生善治 4-1 藤井猛
- 2002年:羽生善治 4-3 阿部隆
- 2003年:森内俊之 4-0 羽生善治
- 2004年:渡辺明 4-3 森内俊之
- 2005年:渡辺明 4-0 木村一基
- 2006年:渡辺明 4-3 佐藤康光
[編集] 備考
- 1組の優勝者がもっとも挑戦に近い位置(18期まではベスト8から、19期からはベスト4から)にあるが、1組の優勝者が竜王に挑戦したことがなく、将棋界の七不思議の一つに数えられている(17期までは挑戦者決定戦までも行けないというジンクスがあったが18期に三浦弘行が挑戦者決定戦まで進出し半分ジンクスは崩れた)。
- 第7期(1994年)で前年四段に昇段したばかりで、一番クラスの低い6組で優勝した行方尚史が挑戦者決定戦まで進んであわや6組から挑戦者かという事で話題となった(結果は羽生善治に0-2で敗退)。現在最も低い組からの挑戦者は4組から(真田圭一・藤井猛・渡辺明)である。
- 将棋の最高位のタイトル戦ながらアマチュアや女流棋士も参加できる事や、島朗・羽生善治・渡辺明のように若手時代に突然挑戦者となりそのまま竜王という最高位を獲得してしまうように若手にもチャンスがあることから将棋誌では「竜王ドリーム」と呼んでいる。
[編集] 記録
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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