東京湾
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東京湾(とうきょうわん)は、日本の関東地方にある湾である。かつての江戸湾(えどわん)。
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[編集] 地理
狭義には三浦半島の観音崎と房総半島の富津岬を結んだ線(図の赤い範囲)の北側、広義には三浦半島の剣崎と房総半島の洲崎を結んだ線より北側、すなわち浦賀水道(図の水色の範囲)を含んだ海域を指す。狭義の東京湾の面積は922 km²。広義の面積は、1,320 km² である。
多摩川、鶴見川、江戸川、荒川などが注いでいるが、湾口が狭く外海との海水の交換は行われにくい。そのためたびたびプランクトンの異常発生である赤潮が発生してきた。外海に面している浦賀水道の水質は良く、加えて黒潮の影響を受けるため温かい水を好む南方系の魚やサンゴも生息している。特に、夏には沖縄近海で見られるような魚(死滅回遊魚)の姿を見ることも出来る。湾内には、明治・大正期に造られた海堡(かいほ)を始め、多くの人工島がある。対して、自然島は現在横須賀市沖の猿島のみ。
横浜港、東京港、千葉港、川崎港、横須賀港、木更津港などがあり、横須賀港には米軍横須賀基地や海上自衛隊横須賀地方隊の基地がある。沿岸は神奈川県、東京都、千葉県に面し、京浜工業地帯や京葉工業地帯が立地し、加工貿易で国を富ませてきた日本の心臓部であった。
元々遠浅で砂地の海岸が多かったため、各所で埋め立てが進められてきた。東京国際空港(羽田空港)や東京ディズニーランドも埋立地にある。浦安市などは埋立により3倍に市域が拡大し、千葉市美浜区にいたっては全域が埋立地である。埋立地は大規模な工業地としての利用が目立つが、バブル経済崩壊後は再開発が進められるようになり、オフィスビルや高層住宅、そしてショッピングセンターなどへの建て替えも見られる。
[編集] 環境保全
沿岸地域や流入河川の流域における都市化・工業化の進展に伴い、環境汚染が問題となっている。現在、水質は改善されてきたが、工場の排水口付近などを中心に底質汚染が明らかとなり、新たな問題となっている。
[編集] 干潟
沿岸の埋め立てに伴い干潟面積は大きく減少しているが、海水の浄化作用があること、海生生物や野鳥の生息に欠かせない自然環境であることから、残された天然の干潟に対する保護運動が起きている。現在東京湾に残干潟は以下の通り。
[編集] 底質汚染
近年では底質ダイオキシン類汚染も深刻な問題とされている。ヒトが食物とする魚介類に食物連鎖を通して有害物質が蓄積されており、環境基準を超過する底質の浄化が求められている。
千葉県市原港では高濃度の底質ダイオキシン類が検出されており対応が進んでいる。また東京都の隅田川河口付近や荒川河口付近、神奈川県の川崎港や横浜港では高濃度の PCB が検出されている。
[編集] 歴史
鎌倉時代には既に交通路として利用されていた資料が残る。中世には海賊衆も活動し、戦国時には後北条氏と里見氏の水軍の争いの舞台にもなる。
江戸時代には菱垣廻船や樽廻船などの和船による水運が行われ、後期には外国船来航に対する湾岸防備のために品川に台場が築かれている。長らく鎖国状態にあったが、黒船来航の後に日米修好通商条約が結ばれ、横浜港が開港された。