東急1000系電車
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1000系電車(1000けいでんしゃ)は、1988年(昭和63年)12月26日に営業運転を開始した東京急行電鉄の通勤形電車。
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[編集] 概要
1988年(昭和63年)から1992年(平成4年)にかけて113両が東急車輛製造で製造された。
帝都高速度交通営団(現・東京地下鉄)日比谷線乗り入れ用の7000系の後継車で、9000系の設計を採り入れて製造した。その後、7200系の老朽取り替えを目的に目蒲線(現・東急多摩川線)や池上線にも投入した。池上線に新車を直接投入したのは実に63年ぶりであった。
[編集] 概説
[編集] 外観
- 営団との乗り入れ協定に準拠した軽量ステンレス鋼製の18m級3扉車で、客用扉間の窓は3枚構成であるが、客用扉と窓の構造などは9000系と共通化している。
- 前面は9000系と同様であるが、それと区別するために正面上部の種別・行先表示器周りを黒色塗装とした。
- 東横線と目蒲線(当時)の共通予備車として4両編成を2本併結する形で製造した1010F+1011Fと1012F+1013Fは、連結時に中間となる先頭車(1310+1011・1312+1013)の貫通扉を中央に設置した。現在、このタイプの編成は消滅している(後述)。
- 台車も9000系と同様のボルスタレス台車であるが、床面高さを低くするため設計変更を行ったTS-1006形(電動車)とTS-1007形(付随車)となった。
- 2005年(平成17年)3月から池上線と東急多摩川線用の編成に補助排障器(スカート)の装着を開始した。また、池上線・東急多摩川線用の一部の車両はパンタグラフを菱形からシングルアーム式に交換した。2006年(平成18年)12月からは東横線所属の編成にも補助排障器が取り付けられている。
- 種別・行先表示器は、東横線から日比谷線方面の運用の際は種別表示器に「日比谷線直通」と表示する。逆に日比谷線→東横線方面の場合は、日比谷線内は種別は無表示・行先のみの表示を行い、中目黒から東横線に入る際に「各停」表示に変更(一部北千住から各停表示して走行する列車もあり)する。
[編集] 内装
- 座席はすべてロングシートで、9000系で採用した車端部クロスシートは設置していない。
- 客用扉間の9人掛け座席は3-3-3人掛けに区分している。
- 東横線用の車両のみ車内案内表示器が取り付けられている(後述)。
[編集] 制御装置など
- 主回路はVVVFインバータ制御で、GTO素子を用いた東洋電機製造製制御装置を電動車 (M1) に搭載し、1台の制御器で2両8台の電動機を制御 (1C8M) する。9000系の1C4M制御に比して電動車比率が上がったものの制御器の個数は減少し、コストダウンを図っている。また、外観上は同一であるが3次車からは1C4M制御兼用となっている。
- 池上線向けに製造されたデハ1200形は、1C4M制御専用の小型のものを採用し床下スペースの確保を図った。
- 主電動機は定格出力130kWで、歯車比は85:14=6.07である。
- 冷房装置は、10,000kcal/hの能力可変のものを各車3台搭載している。
- 車内放送には9000系に続いて自動放送装置を搭載し、4連に関しては目蒲線にも対応しており、3連は池上・東急多摩川両線に対応している。東横線用は当初、日比谷線の自動放送に対応していなかったが、その後日比谷線対応と同時に東横線の音声も英語放送対応のものに更新された。
- 車外乗降促進用スピーカーが設置されている。池上線・東急多摩川線用の車両は他の車両と同じ内容であるが、東横線用は旧営団のままの内容である。
[編集] 運用
- 東横線用の8両編成9本(72両)は元住吉検車区に在籍し、同線から日比谷線への直通運用に使用する。なお、走行距離の調整で同線内を往復し東横線に戻らない運用や、日比谷線の千住検車区へ入庫する運用も存在するが、東武伊勢崎線には乗り入れない。また「みなとみらい号」などの不定期列車として日比谷線の北千住から東横線を介してみなとみらい線の元町・中華街まで直通運転も行われている。ダイヤが混乱した際には通常は入線しない中目黒以東にも入線する他、過去の車両不足時に本線系統の運用に充当した事例がある。
- 東横線所属車両の東横線~日比谷線~東武伊勢崎線への直通運転は行っていない。
- 池上線・東急多摩川線用の3両編成13本(39両)は雪が谷検車区に在籍する。同線を走る7700系や7600系との運用上の区別はなく、共通で運用されている。
[編集] 編成
- 東横線(日比谷線直通)用の8両編成9本は、乗り入れ協定に基づき、高加速性能を得るためMT比6M2Tの電動車比率の高い編成となっている。
- 1002Fは昭和64年(1989年1月1日~7日)に落成したため、銘板表記は"東急車輛 昭和64年"である。
- 1991年(平成3年)製の1014F~1018Fは池上線用であったが、暫定的に旧目蒲線用として4両編成で落成した。翌1992年(平成4年)には3両編成化するとともに予定通り池上線に転属した。抜き取った車両には両先頭車を製造して3両編成とした上で池上線に配属した。
- 2000年(平成12年)1月には1012F+1013Fを分割して目蒲線に転属させた。その際に両編成の下り方先頭車(1312・1313)を交換し、編成両端の運転台構造を揃えた。その後、1013Fは同年2月~6月、1012Fは同年4月~6月に目蒲線運転系統分離後の池上線・東急多摩川線での使用に備えてワンマン運転対応改造と3両編成化を行った。これにより余った中間車の1362と1363は休車となった。
- 2003年(平成15年)7月~8月には目蒲線の運転系統分離により、編成を分割する必要性がなくなったため、1010F+1011Fの中間に挟まれた先頭車(1310・1011)を休車となっていた中間車(1362・1363)と交換した。この際、1363は電装解除の上で1051に改番した。編成から外れた1310と1011は2007年現在休車となっている。
- 東横線の車両には9000系とほぼ同型のLED式の車内案内表示器が設置されているが、池上線・東急多摩川線用の車両には設置されていない。
←渋谷 | 1 (Tc2) | 2 (M2) | 3 (M1) | 4 (M2) | 5 (M1) | 6 (M2) | 7 (M1) | 8 (Tc1) | 製造年 |
形式 | クハ1000 | デハ1250 | デハ1200 | デハ1350 | デハ1300 | デハ1450 | デハ1400 | クハ1100 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
機器類 | SIV、CP | CONT | SIV、CP | CONT | SIV、CP | CONT | |||
車号 | 1001 1002 |
1251 1252 |
1201 1202 |
1351 1352 |
1301 1302 |
1451 1452 |
1401 1402 |
1101 1102 |
1988年 |
1003 : 1007 |
1253 : 1257 |
1203 : 1207 |
1353 : 1357 |
1303 : 1307 |
1453 : 1457 |
1403 : 1407 |
1103 : 1107 |
1989年 | |
1008 | 1258 | 1208 | 1358 | 1308 | 1408 | 1458 | 1108 | 1990年 |
1 (Tc2) | 2 (M1) | 3 (M2) | 4 (T) | 5 (M2) | 6 (M1) | 7 (M2) | 8 (M1c) | 製造年 | |
形式 | クハ1000 | デハ1350 | デハ1200 | サハ1050 | デハ1350 | デハ1200 | デハ1350 | デハ1310 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
機器類 | SIV、CP | CONT | CP | CONT | SIV、CP | CONT | |||
車号 | 1010 | 1360 | 1210 | 1051 | 1362 | 1211 | 1361 | 1311 | 1990年 |
←五反田 | 1 (Tc) | 2 (M) | 3 (Mc) | 製造年 |
形式 | クハ1000 | デハ1200 | デハ1310 | |
---|---|---|---|---|
機器類 | SIV、CP | cont、CP | CONT | |
車号 | 1012 1013 |
1212 1213 |
1313 1312 |
1990年 |
1014 : 1018 |
1214 : 1218 |
1314 : 1318 |
1991年 | |
1019 : 1023 |
1219 : 1223 |
1319 : 1323 |
1991年 1992年 |
|
1024 | 1224 | 1324 | 1992年 |
- 凡例
[編集] 今後
2007年(平成19年)2月12日、池上線と東急多摩川線各駅に5000系をベースとした新型車両導入のポスターが掲示された。それによると、同年度から新型車両の導入を開始し、2011年度には在籍する3両編成28本のうち19本がこの新形車両に置き換わるとされている。なお、置き換え対象となった28本の内訳は、1000系13本、7600系3本、7700系12本である。
[編集] 参考文献
- 川口雄二 「東京急行電鉄1000系」『鉄道ピクトリアル』1989年1月号(通巻506号)、鉄道図書刊行会。
- 尾崎正明 「新車ガイド 東急1000系デビュー」『鉄道ファン』1989年1月号(通巻333号)、交友社。
- 交友社編集部 「CAR INFO 東急1000系4+4連車」『鉄道ファン』1990年6月号(通巻350号)、交友社。
- 交友社編集部 「CAR INFO 東急 池上線用1000系」『鉄道ファン』1993年5月号(通巻385号)、交友社。