田岡一雄
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田岡 一雄（たおか かずお、1913年3月28日 - 1981年7月23日）は、ヤクザ、暴力団・三代目山口組組長。甲陽運輸社長、神戸芸能社社長、全国船舶整備協会顧問、ひばりプロダクション役員、日本プロレス副会長。
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[編集] 経歴
[編集] 山口組三代目継承まで
大正2年（1913年）、徳島県三好郡三加茂町（現東みよし町）の農家に三女、二男の次男として生まれる。幼くして両親を亡くし、叔父に引き取られて神戸市兵庫区に転居。小学４年から新聞配達を続けながら、昭和元年（1925年）、浜山小学校を卒業し、その年、兵庫尋常高等小学校に進学。卒業後、昭和2年（1927年）、川崎造船所に旋盤見習工として入社するが2年後の5月、上司から仕事上の注意をうけ小突かれため、殴って退社。せっぱつまってゴンゾウ部屋に転がり込み、バラケツ(不良少年）グループに加わっていた。喧嘩には滅法な強さを見せ、強烈な張り手と指で相手の目玉をえぐる指突きを必殺技とした。その為、街でついたあだ名がクマであった。
昭和5年（1930年）10月、山口組が用心棒を務めていた新開地の剣劇小屋・湊座乱入事件を引き起こした。木戸口で小屋主の放った言動に激怒してしまい、湊座の舞台の花道に下駄履きで駆け上って、佳境に入った芝居の役者達を追い掛け回し無茶苦茶にした。この一件で二代目山口組・山口登組長の前に突き出される事となり、二代目の妹婿で舎弟でもある古川松太郎宅へ行儀見習いとして約2年間預けられることとなった。昭和9年（1934年）9月、海員組合の労使争議のもつれで、調停に入っていた山口登の舎弟が組合員達に殺害されたことから憤激し、独断で商船ビルの海員組合争議本部にドスを持って殴り込み、懲役1年の刑で神戸刑務所に服役した。昭和11年（1936年）1月20日、山口登親分から盃を受け、二代目山口組の正式な、そして最年少の若衆となった。同年12月、山口登親分と激しい口論で二代目を激怒させてしまい、両国の二所関部屋へ逃げた。昭和12年（1937年）2月25日、切戸町の山口組へ殴り込んできた大長八郎と、居合わせた者達の制止を振り切り、本家の庭先で決闘し斬り殺した。この事件で田岡一雄は懲役8年の刑で服役した。田岡一雄の服役中、山口登は吉本興業社長・吉本せいの依頼を受け、吉本興業の東京進出に尽力した。昭和15年（1940年）、山口登は人気浪曲師・広沢虎造の移籍問題などから、下関の籠寅組・保良浅之助と対立。昭和15年（1940年）8月2日、山口登は、東京浅草の浪花家金蔵宅で、籠寅組幹部と話し合いを持ったが、帰り際に籠寅組の組員に刃物で襲撃され、重傷を負った。その傷がもとで昭和17年（1942年）10月4日、山口登親分は亡くなった。田岡一雄は、「皇紀2600年」の恩典で2年減刑され、昭和18年（1943年）7月13日に高知刑務所を出所し、終戦を迎えた。
戦後、湊川で自らの名を名乗る田岡組という小さな組を構えた。戦後の混乱で警察力が弱体化していた為、田岡一雄は、街や闇市の警備をする自警団を新開地で結成し、闇市への三国人の干渉を排除した。これらのことから人望を集めた。2代目の舎弟である長老たちの推薦により、昭和21年（1946年）7月に開かれた兄弟会の席で、田岡一雄の山口組三代目襲名が決まった。8月に神戸市須磨の一流割烹料亭・延命軒で、山口組三代目の襲名式が行われた。山口組三代目の初代若頭には、山田久一が就任した。
[編集] 三代目山口組組長となって
当時の組員は僅か三十数人だった。 占領下の日本が復興を始めると、昭和24年（1949年）前後には競輪場や競馬場などの公営競技施設が関西に相次いで設立され、パチンコやスマートボールも流行し、賭博を主な糧道としていたヤクザ社会も変革の時期を迎えた。 こうした状況下、田岡は先代から親交のあった興行の世界との義理を果たし、昭和24年（1949年）には姉ヶ崎五代目襲名披露に四代目兄弟分として華を添えた。かたわら、浪曲興行を手がけ、平行して神戸港の船内荷役にも進出。港湾労働者への中間搾取を減らし、劣悪な労働環境を改善するなど神戸港の発展に貢献していた面もある。これが十数年後には、藤木幸太郎らと結成する全国湾荷役振興協議会や、実演の時代には芸能プロダクションひばりプロの役員であった。山口組興行部神戸芸能社（美空ひばりや田端義夫らの興行を手がけていた）などの経済活動に結実していった。
昭和27年（1952年）、田岡一雄は、田端義夫を山口組興行部の専属とした。
興行師としての強引な手口も少なくなく、昭和28年（1953年）には、有名な鶴田浩二襲撃事件の主犯として全国指名手配になった。この事件以降、山口組の機嫌を損ねるとひどい目にあうという恐怖を芸能界興行界に定着させることになった。
昭和33年（1958年）4月1日、田岡一雄は、正式に「神戸芸能社」の看板を掲げた。同年4月に、美空ひばりが神戸芸能社の専属となった。同時に、田岡一雄は、株式会社「ひばりプロダクション」の副社長に就いた。
昭和35年（1960年）8月9日、田岡一雄は、舎弟の富士会・韓録春会長が8月5日に店開きしたマンモスキャバレー「キング」の開店祝いに訪れた。その後、このキャバレーにゲスト出演した田端義夫をねぎらうために、舎弟の中川組・中川猪三郎組長（ボディガード役）、織田組・織田譲二組長（秘書役）、韓録春会長、山広組・山本広組長（若頭補佐）とサパークラブ「青い城」に入った。この場で、明友会幹部・宋福泰、同幹部・韓建造らとトラブルになり、中川猪三郎組長が殴打される事件が起きた。この事件後の交渉でも和解に至らなかったため、山口組は明友会に対する報復を開始。同年8月12日には、大阪・西成区のアパート「清美荘」にいた明友会幹部・李猛を銃撃し、重傷を負わせた。同年8月19日、加茂田組組員・前川弘美ら3人は、明友会幹部・宋福泰、同幹部・韓建造ら6人と遭遇し、拉致され、布施市（現：東大阪市）足代のアパート「有楽荘」でリンチを受けた。この報を受けた明友会・姜昌興会長は釈放を指示した。前川弘美は午前0時ごろ、西成区山王町の加茂田組事務所に戻った。同年8月20日午前6時、加茂田組・加茂田重政組長は、組員15人とともに、布施市のアパート「有楽荘」を襲撃し、明友会組員山岸襄を射殺し、4名に重傷を負わせた。同年8月23日に箕面市の「箕面観光ホテル」にて、山口組と明友会の手打ち式が行われた。山口組側からは、中川組・中川猪三郎組長、富士会・韓禄春会長、柳川組・柳川次郎組長が出席した。明友会側は、姜昌興会長と南一家許万根組長が出席した。明友会側は幹部15人の断指した指を持参した。仲裁人は、石井組・石井一郎組長だった（明友会事件）。
それまでばくちで生きていくのが一般的だった極道の世界で、組員に賭け事の寺銭ではなく「正業」を持つことをすすめ、合法事業を営ませたことが発展の大きな理由である。中でも、組内の組織改革は、大きな改革であった。警察の取り締まりや景気の動向に左右されやすいヤクザ社会において、資金源の確立を絶対とした。このため、舎弟や組員の一部を「堅気」の法人団体の長として、一切の組員を持たせず渡世との交渉をさせなかった。こうして組の計画性と安定をもたらした点は その後の活動に大きな布石となった。
その結果、1950年代から60年代にかけて傘下の団体が全国へ進出、各地で抗争事件を引き起こすなど、世間の恐怖と批判を招いた。安保の時には、児玉誉士夫が田岡に左派の運動を弾圧するように求めるが、田岡はそれを拒み、全学連に資金援助をしていた事実がある。（なお田岡はヤクザの右翼活動には懐疑的だったと言われている）。昭和38年（1963年）には東声会・町井久之会長を弟とする兄弟盃を交わし、関東進出の足がかりを築いた。東声会と山口組との結縁には、当初関東の諸組織は反発した。しかし、この結縁を児玉誉士夫が取り持ったこともあって、昭和38年（1963年）2月に神戸市須磨区の料亭「寿楼」で行われた兄弟盃には阿部重作・住吉会名誉顧問、稲川角二・錦政会会長（当時）、関根賢・関根建設社長・松葉会顧問（元関根組組長）、磧上義光・住吉一家四代目総長兼港会会長ら関東の実力者が臨席した。他方、1963年には田中清玄や菅原通済と連携した麻薬追放国土浄化同盟を結成し、山岡荘八、福田恆存、市川房枝らとともに麻薬撲滅運動を展開した。横浜に支部（益田組）を出した時には地元勢力とトラブルとなった。 この関東とのトラブルで、山口組は力で“多摩川を越えない”という約束が、児玉誉士夫の調停により関根賢・松葉会顧問、阿部重作・住吉一家名誉顧問、並木量次郎・三代目並木一家総長、稲川角二・錦政会会長（当時）との間で交わされた、とされる。
昭和39年（1964年）、美空ひばりと小林旭の離婚記者会見には、ひばりと共にひばりの親代わりとして田岡組長が並んで会見し、世間を驚かせた。昭和43年（1968年）1月11日には、吉本興業社長、林正之助と共にレコード会社乗っ取り容疑で兵庫県警に逮捕された。
[編集] 第一次頂上作戦以降
昭和39年（1964年）の「第一次頂上作戦」においては、資金源の要であった神戸港の港湾事業に司直のメスが入り、子飼いの甲陽運輸までも業務監査を受ける惨状となって、山口組は港からの撤退を余儀なくされた。 若頭・地道行雄（地道組組長）が山口組解散へと動くが、幹部会で山本健一（山健組組長）、菅谷政雄（菅谷組組長）、梶原清晴（梶原組組長）、山本広（山広組組長）ら若頭補佐が反対。この結果、地道は失脚し山本健一の力が増すが、昭和40年（1965年）に田岡が心筋梗塞で病床にあったこともあり集団指導体制へ移行。 規模に比して斜陽にあったことは否めない。このころから山口組は、不法な事業に一層手を染める者がますます増えていく。
「第一次頂上作戦」を乗り越えた後も勢力の拡張を続けるが、昭和53年（1978年）7月11日には京都のクラブ「ベラミ」で、傘下の佐々木組と対立していた二代目松田組系 大日本正義団の組員・鳴海清に撃たれ負傷した（これにより「第3次大阪戦争」と呼ばれる大規模な拳銃乱射事件が始まり、同年11月に山口組が終結の記者会見を開くまで続いた）。昭和56年（1981年）、急性心不全により68歳で死去したが、跡目に内定していた山本健一は獄中にあり、これが後に紛糾の種となった。
神戸水上警察署の一日署長をした経験もあり、自伝によると警察との蜜月時代もあったとされる。青田昇の著書によれば田岡はプロ野球ファンであり戦後の混乱期は地回りの興行組織の機嫌を伺わなければ、試合が開催できずに嫌がらせを受けていたが、山口組の全国進出以後は野球は国民的娯楽だからとそのような慣習なしでも開催できるよう取り計らいをしたという。
この頃には田岡の名は世界中で知られるようになり、葬儀の際には日本だけでなく、アメリカ、ソ連、スウェーデン、オーストラリアなど各国のマスコミが取材に訪れた。
[編集] 著書
- 『山口組三代目 田岡一雄自伝＜電撃篇＞』 徳間文庫 徳間書店 1982年6月 ISBN 4-19-597322-8
- 『山口組三代目 田岡一雄自伝＜迅雷篇＞』 徳間文庫 徳間書店 1982年7月 ISBN 4-19-597334-1
- 『山口組三代目 田岡一雄自伝＜仁義篇＞』 徳間文庫 徳間書店 1982年7月 ISBN 4-19-597335-X
- 『山口組三代目 田岡一雄自伝』 徳間書店 2006年10月 ISBN 4-19-862238-8 （『週刊アサヒ芸能』創刊50周年特別企画）
[編集] 関連書籍
- 飯干晃一 『山口組三代目・〈１,野望篇〉』 角川書店 ＜文庫＞1989年9月 ISBN 4-146421-8
- 飯干晃一 『山口組三代目・〈２,怒涛篇〉』 角川書店 ＜文庫＞1989年9月 ISBN 4-146422-6
- 田岡由伎 『お父さんの石けん箱』 ベストセラーズ 1991年3月 ISBN 4-584-00751-9
- 田岡由伎 『お父さんの石けん箱 -- 愛される事を忘れている人へ』角川書店 ＜文庫＞ 2003年3月 ISBN 4-04-369501-2
- 『山口組50の謎を追う』洋泉社2004年 ISBN 4-89691-796-0
- 山平重樹『ヤクザ大全』幻冬舎＜文庫＞1999年 ISBN 4-87728-826-0
[編集] 田岡を支えた主な山口組最高幹部
[編集] 戦後・昭和20年代
[編集] 昭和30年代から頂上作戦
[編集] 頂上作戦以降
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