デスラー
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デスラーは、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』シリーズに登場する架空の人物。(声:伊武雅刀、石塚運昇(ANA「旅割」のCMのみ。これは伊武がJAL提供のラジオ番組「JET STREAM」に出演しているため)、若本規夫(PCソフト「特打ヒーローズ 宇宙戦艦ヤマト タイピング波動砲」のみ))
大マゼラン星雲と小マゼラン星雲にまたがる一大星間国家ガミラス帝国の総統。
ガミラス本星消失後は、銀河系核恒星系にガルマン・ガミラス帝国を建国し、総統と称されている。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] キャラクター
名前はヒトラーに非常に似ており、その変形と言われることも多いが、実際には偶然の一致と松本零士が語っている。彼がよく使う「ラー」(ラーメタル、ラー・アンドロメダ・プロメシュームなど)と「デス」を組合わせたもので、前者はエジプト神話の太陽神ラーに由来し太陽やそれに象徴されるパワーを、後者は死を意味する英語であり、すなわち「デスラー」とは「死の太陽」を意味する。
また名称や役名などヒトラーやナチス・ドイツをある程度意識してモデルとして設定されているが、常に最前線で戦うデスラーはヒトラーというよりもナポレオンに近い性格ともいえる。
傲慢で冷徹な統治者であり反対者を躊躇なく粛清する冷酷な独裁者であるが、一方でその権力を私利私欲の為に行使する事はなく、一心にガミラス国家の繁栄とガルマン民族の存続の為行動している。その為、物語の進行と共に地球の存亡に命をかけるヤマトにも共感し始め、沖田や古代に敬意と友情を感じるようになってゆく。
「敵」ではあるが「悪」ではないためか、敵役ながら高い人気を得ている。
[編集] 宇宙戦艦ヤマト
故郷の惑星ガミラスが星としての寿命が尽きようとしていたため、移住先として地球を狙いを定め、「人類の奴隷化か絶滅かを要求して」遊星爆弾等で地球侵略を試みる。地球にイスカンダルから送られた設計図によって開発された波動エンジンを搭載した宇宙戦艦ヤマト(沖田十三艦長)が出現し、冥王星前進基地の壊滅などヤマトの思いのほかの善戦にヤマトに関心をもつようになるが、その実力を小雀程度にしかみなしていなかった。デスラー機雷網の突破に艦長沖田十三あてに「祝電」を送る度量を見せた。余興代わりに、オリオン座の赤色超巨星アルファ(ベテルギウス)の前に磁力バリアと全ての物質を吸収してエネルギーにしてしまうガス生命体を利用してヤマトを殲滅する作戦を立案し自ら指揮したが、最終的に突破を許したことは、事前に部下から完璧と賞賛されていた手前その矜持を少なからず傷つけたと思われる。その際は、発信元を知られないように二度と「祝電」を送るようなことをしないような細心さを示した。マゼラン星雲を目前にヤマト阻止を託したドメルが七色星団の決戦で敗退すると、地球に救いの手を差し伸べヤマトの航海を可能たらしめている張本人とも言うべきスターシャへのあてつけを狙ってか本土決戦に拘泥し、ガミラス本星にヤマトを引き込み希硫酸の雨と濃硫酸の海でヤマトを苦しめるが、病身の沖田艦長立案による海底火山脈を海中から波動砲で撃つ作戦で形勢逆転を許し、小マゼラン星雲の残存勢力を残してガミラス帝国を崩壊させてしまう。総統府内部に格納された一代目デスラー艦で辛くも脱出したデスラーは復讐の鬼と化して、帰路を急ぐヤマトを捕捉し白兵戦を挑むが失敗、切り札のデスラー砲を空間磁力メッキで反射され、四散するデスラー艦と運命を共にしたと思われた。
[編集] さらば宇宙戦艦ヤマト
帝国滅亡後のヤマト追撃戦に敗れ、宇宙空間で遭難するが、白色彗星帝国のズォーダー大帝によって救出され、一時、副官のタラン将軍とともに白色彗星帝国に身を寄せ、ガミラス再興の機会を待って、敗軍の将として屈辱の日々を過ごす。
その後、ガミラス再興のためよりも、屈辱に耐えられないことに、ある意味死に場所を求めて白色彗星帝国の一将軍として戦う。彼の死んだ部下ドメル将軍の開発したデスラー戦法で戦いを挑むが再び敗北を喫し、ヤマトに白色彗星帝国の攻略方法を示し、宇宙空間へと身を投じ死亡。
[編集] 宇宙戦艦ヤマト2
さらば宇宙戦艦ヤマトと大まかな背景は共通するが、借り物の艦隊ではなく、タランら腹心達の尽力で再集結した旧ガミラス帝国軍残存艦隊を率いて白色彗星帝国軍の同盟者としてヤマトに挑んだことが最初の相違点。
サーベラーを筆頭とする一部の古参幹部に半ば虐め同然の妨害に遭いつつも善戦し、竹輪状の小惑星の決戦やデスラー機雷等ではヤマトを窮地に追いやる事に成功する優れた指揮官ぶりを見せた。古代は、とっさの判断でヤマトをワープさせて(二代目)デスラー艦に突っ込んでの白兵戦を試みて、この勝負はかろうじて「引き分け」に持ち込まれたが、古代は傷つきデスラーを撃つ余力はなく、デスラーには他の艦に移れる余力はあったので、彼自身は、「ヤマトに勝った。」と言っている。大破した旗艦の中で、森雪が見せた負傷した古代を庇う姿を見て献身的かつ自己犠牲的な愛を感じ取るとともに、母星である地球のために必死に戦う古代たちの姿を見て、民族の存亡を掛けて闘ってきた自分の心が、ガトランティス人よりヤマトクルーに近いことを悟り、積年の怨恨もここに潰えた。白色彗星の弱点を暗号にして森雪に託し、(おどろくべきことにヤマトが勝利するか生き残ることを予見しているかのように再会を約束し)不敵な笑いを残して、腹心のタランを伴って残存艦隊を纏めて戦場から撤退した。この瞬間、傲慢な支配者から、民族国家再興の為に闘う真の指導者へと彼は人物的に大きな成長と転機を迎えたといえる。
[編集] 宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち
ガミラス再建をめざすデスラーがガミラス星にもどったところ、正体不明(実は暗黒星団帝国)のガミラシウム採掘船団に出くわした。激怒したデスラーは、その船団を攻撃したが、暗黒星団帝国のマゼラン方面軍に反撃された。その戦いの過程で、ガミラス星は爆発し、兄弟星であるイスカンダルは、重力バランスを失って暴走し始めた。こうした危機的状況に対しデスラーは、地球に通信し、ヤマトが出撃した。暗黒星団帝国軍は強力でデスラー艦隊は苦戦した。
ヤマトとの共同戦線で、暗黒星団帝国マゼラン方面第一艦隊と戦い、ヤマトが暗黒星団帝国艦隊司令官デーダーの旗艦プレアデスを波動砲でようやく葬ると、報復のためマゼラン方面軍司令官メルダーズが自動惑星ゴルバを駆って登場した。デスラーは、デスラー砲でゴルバを攻撃するが、その堅牢な装甲にはまったく効果がなく、ゴルバ主砲に突っ込んで、古代進に自分の旗艦の戦闘空母ごと波動砲で撃つよう要請する。ためらう古代に自分がスターシャを愛していることを語り決心を促した。覚悟をきめた古代は波動砲のターゲットスコープをデスラー戦闘空母の突っ込んだゴルバ主砲砲口に向けるが、イスカンダリウムの採掘を口頭で許可してみせたスターシャのイスカンダル自爆によってゴルバは吹き飛んだ。
戦いが終わると、デスラーは、古代に「ガミラス帝国の再建を宇宙を幾年さすらおうとも成し遂げる」と言い残して去った。
[編集] 宇宙戦艦ヤマトIII
デスラーは、ガミラス再建を目指して放浪の旅に出たが、やがて銀河系中心部に、ガミラス人の遠い先祖であるガルマン民族の多く住む二重惑星を発見した。ガルマン民族は、当時銀河系の中心部まで支配していたボラー連邦によって奴隷として酷使されていた。デスラーは、ガルマン民族を解放するため、手始めに、二重惑星のボラー勢力に戦いを挑んだ。ガミラスの優れた兵器やヤマトを苦しめたほどの優れた戦術、デスラーの優れたリーダーシップと戦闘指揮によってボラーの勢力は駆逐され、やがて銀河系核恒星系のガルマン民族は解放された。デスラーは、総統に選ばれて就任し、二重惑星は、ガルマン・ガミラス(本)星と「スターシャ」(星)と名づけられ、ガルマン・ガミラス帝国が建国された。まもなく、ガルマン・ガミラス帝国は、ボラー連邦と銀河系を二分する勢力にまで成長する。
ガルマン・ガミラス帝国は建国一周年を迎える直前、銀河系各地で有利に征服戦争をすすめていた。とりわけ東部方面軍のガイデル提督は、麾下に猛将ダゴン将軍、ガルマンウルフとして知られるフラーケン大佐など有能な部下を従え、優れた科学力を持つ星が多い担当戦域を予定の280%の征服事業を完成させるなど著しい戦果を挙げていた。地球から1500光年に位置するバース星戦役でガイデルの部下の一人ダゴン将軍は、バース星艦隊に完勝をおさめたが、惑星破壊プロトンミサイルの流れ弾を放置するような粗雑で乱暴な性格の持ち主であった。そのため、バース星旗艦ラジェンドラ号が太陽系に逃げ込んだときに、それを追いかけてきたダゴン将軍は、ラジェンドラ号の艦体の修理と食糧補給を行った地球連邦の領海内である第11番惑星空域で、独断でヤマトに戦いを仕掛けたため、ヤマトとガルマン・ガミラス東部方面軍は交戦状態に入ってしまった。
デスラー総統は、再び地球やヤマトと戦う可能性を避けるため、オリオン腕方面の恒星系には、手を出すな、と厳命していたが、ダゴン将軍の独走で東部方面軍がヤマトを攻撃することになって、結果的に東部方面軍移動要塞にヤマトが捕獲されたことで、部下たちがヤマトと戦っていたことを知った。
そのため、総統として、その不明をわびて、古代を始めとするヤマトクルーをガルマン帝国に招待した。デスラーは、ヤマトの出撃と古代達の様子から地球の危機を察し、その原因が自軍の惑星破壊プロトンミサイルにあることを知ると、彼なりの償いとして太陽制御を提案し、配下のフラウスキー技術少佐麾下の工作船団を派遣するが太陽制御は失敗に終わる。次の手段として自国の領土内にある地球に似た環境の惑星を探させた。結果、惑星ファンタムに地球人類移住の可能性が出てくると、ヤマトの航海の安全を取りはからうために、ボラー連邦ベムラーゼ首相にヤマトから手を引くようにホットラインをかけるが、ベムラーゼは、ヤマトはガミラスの尖兵ではないかと揶揄し、デスラーを嘲笑した。
ヤマトの探索により、ファンタムがコスモ生命体で、スーパーサイコエネルギーで見る人の文化習慣によって幻影を見せることが判明すると、帝国の名誉に泥を塗ったことに激怒して、グスタフ中将に惑星破壊プロトンミサイルによる「処刑」を命じた。古代は、惑星ファンタム「処刑」に異議をとなえたが、帝国の名誉に泥を塗ったこと、古代をはじめとするヤマト乗組員をたぶらかした(第二の地球を見つけたと思い込ませた)が赦せなかったからだ、とその理由を説明する。惑星ファンタムからルダ王女が乗り込んだことを知ると、グスタフ中将に確認させるようにキーリングに指示した。ルダ王女の所在をかぎつけたボラー艦隊の出撃を知るとグスタフにヤマトを死守するよう直接命令した。
ルダ王女の案内でヤマトによってシャルバート星の所在が明らかになるとそれを追跡したが、銀河系を支配した科学力と軍事力を期待したデスラーは、戦いを放棄したシャルバートの姿に当惑する。一方これを奇貨としたボラー連邦のゴルサコフは、シャルバートの占領を試みるが、デスラーは、これを旗艦のハイパーデスラー砲によって艦隊ごと吹き飛ばした。古代からシャルバートの事情を聞かされると「誇り高き武人、栄光あるガルマン・ガミラスの総統として無抵抗の者を攻めたりはしない、太陽制御の成功を祈る」と言い残してシャルバートを去った。
太陽系内で、ボラー連邦ベムラーゼ首相は、自ら大艦隊と機動要塞ゼスパーゼを駆ってヤマトを攻撃する。ヤマトを餌にデスラーをおびきよせて葬るためであった。デスラーは100隻ほどの親衛艦隊を率いて太陽系内に現れる。会戦劈頭、古代にボラー連邦打倒は自分の宿願であり太陽制御に専念するよう通信を入れ、ベムラーゼに対しては葬式の宗派を問うことで対抗心をあおった。一旦はゼスパーゼを除くボラー艦隊を撃滅したものの、ブラックホール砲を連射するゼスパーゼによって麾下の艦隊も、旗艦を除いてほぼ全滅する。しかし、ヤマトの艦載機搭乗員揚羽武のコスモタイガーによるブラックホール砲口への特攻で攻撃の止まったゼスパーゼを、べムラーゼもろともハイパーデスラー砲で撃破する事に成功した。ハイドロコスモジェン砲によって太陽制御が成功すると、古代に対し、地球がよみがえったことに対する祝辞と将来の再会を約しガルマン・ガミラス本星へ帰還していった。
[編集] 宇宙戦艦ヤマト 完結編
赤色銀河によってガルマン・ガミラス本星は大きな被害を受けた。ヤマトがガルマン・ガミラス本星を調査しに来た時にはデスラーは辺境視察中で、本星に帰還後、彼の帝国の本星が滅亡したと誤解した古代達の手によって手向けられた花によって、彼らの訪問を知った。デスラーが古代達ヤマトクルーと再会するのは三重水素という起爆性物質を積み込んだヤマトがディンギル艦隊に反撃できない状態の時で、絶好のタイミングで登場した彼の艦隊はディンギル艦隊を一掃し、ルガール神官大総統の旗艦をハイパーデスラー砲で撃沈した(これはいわゆる旧タイプのデスラー艦が放ったデスラー砲が戦果をあげた唯一の例)。ディンギルとアクエリアスの地球接近を知って駆けつけたとき、ヤマト艦橋のビデオパネルに映る彼の胸元には、古代達が手向けた花束の一輪があしらわれていた。
ガミラス帝国や白色彗星帝国、暗黒星団帝国等から撃沈されることのなかったヤマトが、地球を守るため自爆する光景を見て、ヤマトの作品中で唯一涙を流した(ガミラス星の崩壊、スターシァの死に際しては錯乱はしているが泣いてはいない)。
[編集] 余談・備考
- デスラーは「ヤマトよ永遠に」に登場しておらず、藤堂司令長官との二役を演ずる伊武に「今回はデスラーが出なくて寂しい」と言わせた。
- 初期作品では部下の失敗にはたった1回で戦って死ぬか自決かデスラーによる処刑しか選べなかったが、IIIでヒステンバーガー将軍の失敗を「あと2回で死刑」とするなど、少しは寛容になったところを見せた。ただし配下が自分以外の対象を崇拝することを極端に嫌う傾向があり、シャルバート信仰の信者の幕僚を「ガルマンに神は二人はいらぬ」と言い、その場で射殺したことがある。
- 冷徹ではあるが紳士的であり、言葉遣いも慇懃無礼ではあるが丁寧である。「逢いたかったよヤマトの諸君」等の名言を残している。
- デスラーと云えば金髪に青い顔色で有名であるが、パート1第10話までは髪は栗毛色で顔は肌色であった(他のガミラス人も同様の設定であり、シュルツやガンツ、ヤレタラら初期のガミラス人は肌色で登場している)。この大胆な色設定変更は「地球人と同じ肌色では敵手と見なし難い」と言う指摘に応えたものであり、11話で赤い絨毯の上を歩むデスラーの顔色が背景色の変化に連動するようにして肌色から青色に段階的に変化していく。つまりそれまで顔面が肌色に見えていたのは照明が原因だったと言う理由付けだと思われるが、お世辞にも分かり易い演出とは言えないし、髪の色変化やヤレタラらに対しての説明にはなりえていない。
- ガミラス星人は放射能の中でなければ生きてはいけないと思われているが、実はこの設定が有効なのはパート1最終話(「地球型の大気の中では宇宙服を着けなければならない(デスラー)」)と同じくパート1劇場版(「地球型の大気の中では、ガミラス人は生きてはいけない(スターシア)」)のみである。
- 彼のマントは宇宙空間上でも常にはためいており、本シリーズ批判の材料とされることがある。
- 松本零士によるコミカライズでは結婚していて、妻・メラと娘・ジュラが存在している。妻が相手の心を読み、それを相手に投影する能力を持っていて、娘もその能力を引き継いでいる為、嫌がったデスラーにより幽閉されている。尚、この作品におけるデスラーは、妻子の能力を部下に愚痴る人間臭さを見せている。
[編集] パロディ
- 下品な男が嫌いで、第11話『決断!!ガミラス絶対防衛線突入!!』では、総統と相当を掛けた駄洒落の「総統も相当冗談がお好きなようで」を言った部下は即刻処刑された。なおこの時の床に穴が空いて落とされての処刑シーンは後に『ふしぎの海のナディア』でガーゴイルが部下を処刑する際のパロディーとして使われた。デスラーが自ら処刑したのは、この通称「下品男」を含め、ヒス・ミル(映画版)・バンデベル・ハイゲルの五人である。
- 『パタリロ!』(魔夜峰央)の花とゆめコミックス第10巻に限って、パタリロ(『FLY ME TO THE MOON』はタマネギ)がデスラーの「逢いたかったよヤマトの諸君」「実力だよヤマトの諸君」のものまねをよくやっている。