イエスズメ
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イエスズメ | ||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||
Passer domesticus Linnaeus, 1758 |
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英名 | ||||||||||||||||
House Sparrow |
イエスズメ(家雀、学名 Passer domesticus )は、スズメ目スズメ科の鳥類。和名は学名を含むヨーロッパ各言語からの直訳に由来する。
目次 |
[編集] 分布
南極を除く全大陸に分布する汎世界種で、アフリカではナイル川下流域と大陸南部、セネガル周辺に分布する。近年はケニアのナイロビ周辺でも見られる。
ユーラシアは分布の中心であり、温帯域のヨーロッパ、中央アジアを中心として、インド、中東、東南アジアといった熱帯域、寒帯域のシベリアと、全域に分布する。ただし東アジアは分布の空白域になっており、朝鮮半島、日本列島、台湾、フィリピン群島、インドネシアには自然分布していない。中国も分布はしているが数は少ない。こういった空白域にはそのニッチとしてスズメが人里に進出している。
アメリカ大陸には元々生息していなかったが人為的に導入され定着した。同様にしてオーストラリアなどのオセアニア地域や、ハワイなどの島嶼にも導入された。空白域であった東アジアでもインドネシアには人為移入され現在定着している。
なお日本では1990年以降に北海道の礼文島、利尻島、天売島、積丹半島で繁殖まで観察されたことがある。これらはロシア沿海地方もしくはサハリン州北部から渡ってきた迷鳥と考えられている。
[編集] 特徴
大きさはスズメより一回り大きい。雌雄で体色が異なり、オスはスズメに似るが、頭に帽子を被ったような灰色の部分があり(ただしイタリア半島産亜種はこの灰色の部分が茶色になっている)、頬の黒斑がない。メスと若鳥は全体的に淡い茶褐色をした地味なカナリアといった風情で、特徴的なのは目の上に眉状の模様がある点ぐらいである。クチバシはスズメ同様、若鳥は黄色いが成鳥は黒い。鳴き声はスズメに似る。
[編集] 生態
ヨーロッパなどスズメ Passer montanus と競合している地域ではスズメを押しのけ人里の主要な野鳥となっており、スズメは人里から離れた森や山などでくらしている(スズメの英名 Tree Sparrow は森のスズメ、学名 Passer montanus は山のスズメという意味である)。スズメに限らず、同属他種と競合している地域では、たいてい体が大きく、都市環境に高度に適合した本種が優先種となって人里に住んでいるが、地域によっては仲良く混成しているところもある。
雑食性で、果実、植物の種子、昆虫類を食べる。本来は種子食性で、クチバシの構造はイネ科植物の種子を割るのに都合の良いよう太く短くなっている。昆虫は成鳥も捕食するが、主としてヒナの餌に用いる。
スズメ同様春から夏にかけて人家や廃屋などに営巣する。かなり気が強くて横暴なところがあり、営巣に適した場所に他の鳥が巣をかけていると、相手が本種より大きな鳥であってもその巣を横取りしたり、すでにヒナが生まれていた場合はそのヒナを殺して追い出したりする。年2-3回ほど育趨し、1度に5-6羽を若鳥にまで育て上げるが、成鳥になるのはせいぜい年3羽ほどである。
野生下での寿命は2-3年程度だが、飼育下では14年生きた記録がある。
[編集] Sibley分類体系上の位置
Sibley-Ahlquist鳥類分類 |
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[編集] 人間との関係
典型的なシナントロープであり、もともとの原産地はナイル川下流域にあり、それらが古代エジプトにおきた農耕の伝播と、それに伴う人間の移動につれて世界各地に広がったと考えられている。
現にシベリアにはもともと生息していなかったが、シベリア鉄道開通後にその沿線から徐々に分布を広げていった経緯が記録されている。ヨーロッパ人の入植したアメリカやオーストラリア、その他太洋島嶼の多くには害虫駆除目的で放鳥され、入植した人間とともに移動して分布域を広げ定着した。発祥の地アフリカにおいても、南アフリカやセネガル、ナイロビ周辺の個体群は同様に移入されたものである。
東アジアにおける分布が手薄なのは、米より麦を好む傾向があるからとする説もあるが、稲作の中心地であるタイやベトナムには自然分布しているので説得力に欠ける。
本種は都市環境に対する適応力が高く、スズメと異なり人間の出したゴミや残飯だけで繁殖まで行うことができる。それゆえ英語には feathered mouse (羽ねずみ) と呼ばれるほか、ハワイではファストフード店のゴミ箱で頻繁に見られることから Hamburger sparrow とも呼ばれる。
ヨーロッパの公園にいる本種は人懐こく、手に取れるような場所まで近寄るが、これは長年に渡って保護されてきたからであり、保護されていない地域にいる個体は日本のスズメ並みに警戒心が強い。1990年以降になってヨーロッパではなぜか個体数が激減しており、オランダでは近いうちに絶滅危惧種に指定される、などといった冗談もささやかれているほどである。なお激減の原因はいろいろ指摘されてはいるが、特定できる段階にはない。