バルチック艦隊
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バルチック艦隊(バルチックかんたい/英 Baltic Fleet/露 Балтийский флот;略称БФ)は、バルト海の艦隊。本来ロシアおよびソビエト連邦海軍のバルト海に展開する艦隊を指す。日本では、日露戦争のとき旅順港に封じ込められた太平洋艦隊を応援するためにバルチック艦隊から戦力を引き抜いて編成された第二・第三太平洋艦隊のことを特に指して「バルチック艦隊」と呼ぶことが一般的であり、日露戦争を離れた文脈では「バルト(海)艦隊」と訳すことも多い(「バルチック艦隊」は英語読みだが、日露戦争以来、日本で定着した呼び方。)。
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[編集] 帝政ロシア時代
帝政ロシアの領土は広大な為、地政学的に三方面(北極海も入れれば四方面)に艦隊を維持する必要があった。黒海(オデッサ、セバストポリ)、バルト海(リガ、リバウ=現・ラトビア領リエパーヤ)、極東(ウラジオストック、一部は租借地の旅順に分遣)を根拠地(北極海はアルハンゲリスクだが小規模であった)として、ロシアはほぼ同規模の三艦隊を保有していた。
[編集] 日露戦争
1904年、ロシアと日本との軋轢が高まり、2月8日、旅順港に停泊中のロシア軍艦に日本の水雷艇が奇襲攻撃(宣戦布告は10日、但し最後通牒は6日に手交されていた)し日露戦争が始まった。同日の仁川沖海戦、4月13日には戦艦ペトロパブロフスクが触雷して沈没(太平洋艦隊司令長官マカロフ中将も戦死)。更に8月10日の黄海海戦、同月14日の蔚山沖海戦などによって太平洋艦隊はその戦力を失いつつあった。10月、ロシアはバルチック艦隊の主力を第二太平洋艦隊として極東方面に増派することとした。司令長官には侍従武官であったロジェストヴェンスキー少将(航海中に中将に昇進)が任命された。翌年2月さらに黒海艦隊の中からさらに第三太平洋艦隊を編成し、極東へ送り出した。この結果、ロシア艦隊には北海艦隊の老朽艦しか残らなかった。
バルチック艦隊は北海ではドッガーバンク事件を起こしイギリスと戦争寸前まで行った。スエズ運河は日本の同盟国であるイギリスが支配していたこと、軍艦の大きさ(大型艦の一部はスエズ運河の通行が出来ない)などの理由から、第二太平洋艦隊の主力はアフリカ大陸南端の喜望峰を回り、軽快な部隊はスエズ運河経由に別れ、両部隊はマダガスカル島のノシべ港で合流した。インド洋方面にはロシアの友好国の港は少なく、同盟国のフランスにも冷遇され約半年の航海は困難を極めた。第二・第三太平洋艦隊は翌1905年、ロシアの同盟国仏領インドシナ(現ベトナム)のカムラン湾で合流しウラジオストクを目指したが、5月27日、対馬沖で東郷平八郎率いる日本の連合艦隊と遭遇、海戦(日本海海戦 - 日本以外では対馬海戦と呼ばれる)の結果、艦隊はほぼ壊滅した。
[編集] ソビエト連邦時代
地政学的には帝政時代とほぼ変りがないが、革命によりバルト三国が独立し、母港は一旦レニングラード(現サンクトペテルブルク)近郊のクロンシュタットに移った。第二次世界大戦中、リガはソ連、ドイツ、ソ連と支配者を変えたが、大戦の結果、旧ドイツ領東プロイセンのケーニヒスベルク(ロシア名カリーニングラード)がソ連領となったため、母港はここに移った。西欧に対するプレゼンスとしての重要性は増したが、大戦後のソビエト海軍の主力は、次第にミサイル潜水艦に移行し、これらの主力は北極海(ムルマンスク)および極東に配備された為、純粋な軍事的重要性は相対的に低下した。
[編集] ロシア連邦時代
基本的にはソ連時代と同じ。バルト三国が独立した為、リガなどはロシア連邦領ではなくなった。
- 旗艦:戦列駆逐艦ナストーイチヴイ(Настойчивый)
以下の編成は、2005年11月頃のデータに基づく。
[編集] 艦艇部隊
- 第12水上艦艇師団
- 第128水上艦艇旅団
- 第71揚陸艦旅団
- 第7揚陸艦大隊
- 第64海域警備旅団
- 第264対潜哨戒大隊
- 第177掃海艇大隊
- 第488掃海艇大隊
- 第36ミサイル艇旅団
- 第143建造中・修理中艦艇旅団
- 第72偵察艦大隊
- 第23支援船舶旅団
- 第54救助艦旅団
- 第603水域測量船舶大隊
- 潜水艦大隊
- 第105海域警備旅団
- 第166教育・修理中艦艇旅団
- 支援船舶大隊
- 支援船舶大隊
- 救助船大隊
- 海洋遠征隊
- 水域測量船舶大隊
レニングラード海軍基地には、バルチースキー・ザヴォード、アドミラルチェイスカヤ・ヴェルフィ、セーヴェルナヤ・ヴェルフィ、「アルマーズ」工場等のロシア有数の造船所が集中している。
[編集] 海軍航空隊
- 第689独立戦闘機航空連隊:チカロフスク。Su-27装備
- 第4独立戦闘爆撃機連隊:チェミャホフスク。Su-24装備
- 第125独立ヘリ飛行隊:チカロフスク。Mi-24、Mi-8装備
- 第396独立対潜哨戒ヘリ飛行隊:ドンスコエ。Ka-27、Ka-29装備
- 第398独立輸送飛行隊:フラブロヴォ。An-24、An-26、Mi-8装備
- 独立通信連隊:グヴァルジェイスク
- 第302独立電波電子戦連隊:グヴァルジェイスク
[編集] 海軍歩兵・沿岸防衛部隊
- 第1沿岸防衛旅団:カリーニングラード
- 第152独立ロケット旅団:チェミャホフスク。トーチカ装備
- 第183高射ミサイル旅団:グヴァルジェイスク。S-300装備
- 第43高射ミサイル旅団:ズナメンスク。S-300装備
- 第689ロケット連隊:カリーニングラード。ウラガン装備
- 第46架橋連隊:ゴロドコヴォ
- 第1独立通信連隊:カリーニングラード
- 第159独立電波偵察連隊:グヴァルジェイスク
- 第196保管基地:ソヴィエツク
- 第385保管基地:ルゴヴォエ
- 第3598保管基地:カリーニングラード
- 第6610保管基地:マモノヴォ
- 第609教育自動車化狙撃連隊:グヴァルジェイスク
- 保管基地:グセフ
- 第25沿岸ミサイル連隊:ドンスコエ
- 高射ミサイル連隊:カリーニングラード。S-300装備
- 沿岸ミサイル大隊:サンクト・ペテルブルグ
- 第218独立電波偵察連隊:ヤンタミー
- 第336独立海軍歩兵旅団:バルチースク
- 第205独立対水中破壊工作大隊:バルチースク
- 第4海上偵察所(軍部隊10617):パルスノエ。海軍スペツナズ
[編集] 歴代司令官
職名 | 氏名 | 階級 | 在任期間 | 出身校 | 前職 |
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司令官 | ウラジーミル・エゴロフ | 大将 | - | ||
司令官 | ウラジーミル・ヴァルエフ | 大将 | -2006.5 | バルト艦隊第一副司令官 | |
司令官 | コンスタンチン・シデンコ | 中将 | 2006.5- | 太平洋高等海軍学校 | 太平洋艦隊参謀長 |
[編集] 外部リンク
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