ピアノソナタ第21番 (ベートーヴェン)
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ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンのピアノソナタ第21番ハ長調は、ヴァルトシュタイン(Waldstein)として知られる。ベートーヴェンの中期のピアノソナタで、第23番「アパショナータ」と並び、ベートーヴェンの中期の作品の中でも最も重要なもののひとつとされる。
ヴァルトシュタインという名は、ベートーヴェンがこの曲をフェルディナント・フォン・ヴァルトシュタイン伯爵(Graf Ferdinand von Waldstein)に献呈したことに由来する。ヴァルトシュタインはベートーヴェンの後援者・理解者のひとりでありヴァルトシュタインに献呈された曲は数多い。しかしこの曲のみがとくにヴァルトシュタインと呼ばれる理由は、おそらくこの曲の独創性や話題性などによるであろう。
この曲が書かれた時機は、「アパショナータ」で確立する「循環」の手法が確立する途上にあり、第1楽章第1動機(第1~2小節)の構成とその展開などに、その萌芽が伺える。作曲者にとってハ長調は祭典儀礼的な彫琢を指向しているといわれ、第3番のピアノソナタ、第1交響曲、第1番のピアノ協奏曲にも採用されている。本作もこれらの作品に堂々並ぶ律律溌剌とした名作である。奏者には特に終楽章で技巧体力を発揮するように求められている。
[編集] 作品番号
Op. 53
[編集] 曲の構成
ヴァルトシュタインは3つの楽章からなる。ただし、連続して演奏される後の2楽章を1つの楽章としてとらえ、2つの楽章からなるとする場合もある。
- 第1楽章 Allegro con brio
- ハ長調 4/4拍子 ソナタ形式
- 第1主題は和音連打と、そのエコーのような音型が繰り返されるが、開始はト長調と解釈することもでき、エコーの音型による動機操作を元に様々な調を経て、推移部はホ短調となり、第2主題はソナタ形式として異例の長3度上のホ長調で提示され、それはコラール的である。第2主題を慣例のト長調で提示しなかったのは、前述の通り開始部をト長調と解釈でき、さらに様々に転調するので、まだ使われていない調性を選んだためであろうと思われる。コラール的な主題は、装飾され、発展し、16分音符のパッセージとなる。しかし、提示部はホ長調のまま閉じられず、提示部としてさらに異例のハ長調への転調が行われる(普通は元調で閉じられるのは再現部である)。展開部はヘ長調で開始され、第1主題のモティーフによって展開される。後半は長いスパンによって和音が変化し、さらにドミナントペダルがこれでもかというように続き、再現部となる。再現部はベートーヴェンらしい遊びの部分も見られ、第2主題はイ長調から元調のハ長調となり、提示部の要領にしたがって今度はヘ長調の偽終始で終結する。ここから第2展開部といえる長大なコーダが続き、両主題が逆の順番で軽く扱われたあと、堂々と終わる。
- 第2楽章 Introduzione. Adagio molto - attacca
- ヘ長調 6/8拍子 三部形式
- 後述の通り、元々第2楽章として書かれた曲は、最終的にこのソナタから外され、代わりに3楽章の序奏とも見ることができる、短い瞑想的な曲に変えられた。これは、他人から、元々の曲が長すぎてソナタ全体として冗長になる、などの忠告を受けたためであると言われている。
- 第3楽章 Rondo. Allegretto moderato
- ハ長調 2/4拍子 ロンド
- 長大なロンド。主題は簡素であるが、ペダリングが克明に書き込まれており、和音が変化した後も踏みっぱなしであるため、それを現代のよく響くピアノで演奏すると音が濁ってしまうという難点があり、演奏者の解釈の拠り所となっている。さらに曲は極めて技巧的であり、速い音階の走句やトリルと旋律を片手で弾くこと、さらにコーダはプレスティッシモとなり、オクターブのレガートな進行をものすごい速さで弾かなければならないことなど、ピアニスト泣かせである。終結は、主和音が長く保持されて終わる。この楽章は、この時期のベートーヴェンのメカニックな作曲技法が集約された楽曲であると言える。
それぞれおよそ11分程度の両端楽章が、3分程度の簡潔な間奏曲をはさんだ形になっている。オリジナルの第2楽章(WoO 57)は外され、アンダンテ・ファヴォリ(Andante Favori)と名づけられて別途に出版された。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンのピアノソナタ | ||
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初期 |
選帝侯ソナタ | ソナチネ | 19 | 20 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 (悲愴) | 9 | 10 | 11 | 12 (葬送) |
中期 |
13 (幻想曲風ソナタ) | 14 (月光) | 15 (田園) | 16 | 17 (テンペスト) | 18 | 21 (ヴァルトシュタイン) | 22 | 23 (熱情) | 24 (テレーゼ) | 25 (かっこう) | 26 (告別) | 27 |
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後期 |
28 | 29 (ハンマークラヴィア) | 30 | 31 | 32 |