ワシントン条約
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ワシントン条約(英 Washington Convention)の正式名称は、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」という。英文表記の Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora の頭文字をとって、CITES(サイテス)とも呼ばれる。
野生動植物の国際取引が乱獲を招き、種の存続が脅かされることがないよう、取引の規制を図る条約である。輸出国と輸入国が協力し、絶滅が危ぶまれる野生動植物の国際的な取引を規制することにより、これらの動植物の保護を図る。絶滅のおそれのある動植物の野生種を、希少性に応じて3ランクに分類、これらを条約の附属書I、IIおよびIIIに分けてリストアップし、計約30,000種の動物を取引制限の対象としている。
絶滅の恐れのある野生動植物は、英語の呼称で「レッドデータアニマルズ」と呼ばれることもあるが、ワシントン条約の付属書リストに登録されている生物種は、国際団体や原産国によって、いわゆる「レッドデータブック」に登録されている種と必ずしも一致するわけではない。これは、この条約があくまでも経済活動としての国際取引によって種の存続が脅かされる生物の種の保全を目的とするものであるためであり、経済生物として国際取引される生物のうち、種の絶滅が危惧される生物が選ばれている。そのため、いかに絶滅が危惧されていようとも、経済的な国際取引の対象となり得ない生物はこの条約の対象とはならない。
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[編集] 経緯
1972年の国連人間環境会議において、「特定の種の野生動植物の輸出、輸入及び輸送に関する条約案を作成し、採択するために、適当な政府又は政府組織の主催による会議を出来るだけ速やかに召集すること」が勧告された。
これを受けて、米国政府および国際自然保護連合(IUCN)が中心となって野生動植物の国際取引の規制のための条約作成作業を進めた。 1973年3月3日にアメリカのワシントンD.C.で採択、1975年7月1日発効。2004年9月現在、締約国は166か国。日本は1980年11月4日に締約国となった。
[編集] 附属書I~III
附属書Iに掲げる基準は「絶滅の恐れのある種で取引により影響を受けるもの」で、約900種。哺乳類としては以下のもの等が含まれる。
いくつかのグループに分けているのは便宜上のものであって、生物学的な分類の決められた規則に従って分けられたものではない。
- ゴリラ、チンパンジー属全種、オランウータン、マンドリル、テングザル、ライオンタマリン属全種、アイアイ、キツネザル科全種
- ジャイアントパンダ、レッサーパンダ
- マレーグマ、ナマケグマ、ヒマラヤヒグマ、ツキノワグマ
- アジアゾウ、インドゾウ、アフリカゾウ
- タイリクオオカミ
- インドライオン、ジャガー、ヒョウ、ユキヒョウ、トラ、チーター
- ベンガルヤマネコ、マライヤマネコ
- フロリダピューマ、コスタリカピューマ、ペンシルバニアピューマ
- カリフォルニアラッコ、オオカワウソ
- ヨウスコウカワイルカ、ガンジスカワイルカ属全種、コビトイルカ属全種、ウスイロイルカ属全種、スナメリ、コガシラネズミイルカ
- ツチクジラ属全種、トックリクジラ属全種、マッコウクジラ、コククジラ、ミンククジラ、ミンククジラ亜種、イワシクジラ、ニタリクジラ、シロナガスクジラ、ナガスクジラ、ザトウクジラ、ホッキョククジラ、セミクジラ属全種、コセミクジラ
- オオアルマジロ
- フクロオオカミ
- ジュゴン、アマゾンマナティー、アメリカマナティー
- バク科全種
- サイ科全種
- コビトイノシシ
- ジャコウジカ属全種
附属書Iに掲げられた種は、商業目的のための国際取引が全面的に禁止されている。ただし学術研究目的(主として動物園や大学などでの展示、研究、繁殖)のための取引は可能(輸出許可書・輸入許可書が必要)である。附属書IIに掲げられた種は、商取引に、輸出国の輸出許可書(その取引が種の存続を脅かすものではなく、また、その個体が適法に捕獲されたものであることを認めるもの)が必要である。また、附属書IIIの種は、国ごとに品目を指定したものである。
上記の動物について、特に附属書Iに属する、知能の高いゴリラやチンパンジーといった類人猿のテレビ番組(多くは動物バラエティ番組)への出演について、飼育者である動物園が商業目的の疑いをかけられて問題になるケースが多い。
[編集] 締約国会議
第11条により、締約国会議は2年に1回開催されることになっているが、実際には3年の間があいたことも何度かある。1992年の第8回締約国会議は日本で行われた。また、最近の第13回締約国会議は、2004年10月2-14日にかけて、タイ王国で開催された。
[編集] 関連項目
- レッドリスト
- レッドデータブック (環境省)
- 絶滅危惧種
- 生物多様性
- 生物多様性条約
- ラムサール条約
- 天才!志村どうぶつ園(チカちゃんというオランウータンを起用していたがワシントン条約に引っかかり降板してしまった)
- 狩猟