ボクシング
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ボクシング(英:boxing)は、拳にグローブを着用しパンチのみを使い、相手の上半身前面と側面のみを攻撃対象とする格闘技の一種。拳闘とも言う。
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語源
「ボクシング」という言葉の語源は、一説には、古代古典ギリシア語で握りしめた拳を意味する「πυγμή」(pugme)であるとされている。指を畳み込み拳を握る動作が箱に模され、ここから箱を意味する「πύξος」(puxos)が生まれ、ラテン語の「buxus」を経て、英語の「boxing」になった(英語で「boxing」は箱詰めも意味する)。また、英語では古い時代のまだ殴り合いに近いボクシングを「pugilism」と呼んでいたが、これも同じく古代ギリシア語の「pugme」およびラテン語の拳闘士を意味する「pugil」や拳での戦いを意味す「pugilatus」(プギラートゥス)を経て生まれたとされている。宗教上の祝日「ボクシング・デー」とは何ら関係ない。
歴史
古代ボクシング
両拳を使用する格闘法という広い意味での「ボクシング」は、人間が二足歩行を始めていた頃から既に会得していた攻撃手段だと言われている。紀元前4000年頃に描かれたとされる、ベニハサン遺跡の古代エジプト象形文字にもボクシングが軍隊で使われていたことが判読されており、クレタ島の紀元前3000年ごろのエーゲ文明の遺跡からもボクシングの図が書かれた壷が発見されている。恐らくこの頃から競技に発展していったと思われる。
ギリシャの古代オリンピックでは、ボクシングが第23回大会から正式種目となり、オノマストスが最初の月桂冠をうけた。この時代は全裸で油を塗り、拳には鋲を皮のバンテージのような物で包んだグローブのような物を着用、腕や肘による攻撃も許されていた。また、当時はラウンドは無く、どちらか一方が戦闘不能になるかギブアップ(右手の人差し指を天に突き上げるとギブアップを意味した)するまで勝負が続けられた。この競技は第38回大会まで続けられ、後にパンクラチオンとなった。
ローマ時代に入ると、奴隷同士が鉄の鋲を打ち込んだセスタスという武器を拳に着けて、コロシアムなどで見せ物としてボクシングを行うようになった。敗者は死亡、または再起不能になったと言われている。
そして436年に西ローマ帝国が滅びると共に古代ボクシングは歴史から姿を消すことになる。
中世ボクシング
中世イタリアやイギリス、オランダなどヨーロッパを中心に、ボクシングが護身として、あるいはレクリエーションとして細々と行われていたようだが、一般には定着しなかった。13世紀ごろのイタリア又はイギリスの神父が「ボクシング」と名付け、近所の若者に教えたのが「ボクシング」という名称の始まりだという説もあるが、定かではない。
近代ボクシング
ジェームス・フィグ
現在のボクシングのルーツは、18世紀イギリスのテムズ川流域にあるオックスフォードシアという村で誕生したジェームス・フィグ(James Figg、レスリング、フェンシングとくに棍棒術を得意とした)が、1718年にロンドンで「ボクシング・アカデミー」を設立して貴族などにボクシングを教え始めたことにあると言われている。彼が行った「ボクシング」とは「プライズ・ファイター」と呼ばれておりベアナックル(bare―素)の格闘で、蹴り技や投げ技、絞め技、噛み付き、目つぶし、髪の毛をつかむことも認められていたためプライズ・ファイターは対戦相手に掴まれないように頭髪をそっていたなどパンクラチオンのような物であった。
フィグ自身も教える傍ら自ら「プライズ・ファイター」として腕自慢達を倒して賞金を稼ぎ、護身術としても優れていると認められたボクシングとともに名声を得てイギリス初のチャンピオンとなった。フィグは1730年36歳で引退し、1734年、39歳で死去した。
ブロートン・コード
フィグの後継者であったジャック・ブロートン(Jack Broughton)は、自ら保持するタイトルの防衛戦の際に相手を殺してしまったために、「ボクシングを普及させるにはこのような危険は廃さねばならない」と考え、近代ボクシング初となる全7章にわたるルールブック、「ブロートン・コード」(英:Broughton's Rule)を書き記し、1743年発表した。ブロートン・コードには、ベルト以下への打撃の禁止、腰より下の抱込みの禁止、倒れた相手への攻撃禁止、ダウン後30秒以内に中央の所定の位置に立つ、リング(直径25フィートの円形、硬い土の上)の使用などの規定が記されていた。また貴族の練習の怪我防止用にマフラーという名のグローブを採用した。ファイトスタイルはスタンド・アンド・ファイトである。
1750年から1790年の間には、死者が多出したためイギリスでボクシングは禁止されることになる。しかし、ボクシングが再開されて1811年に行われたイギリス人王者トム・クリブとアメリカ合衆国トム・モリノーの再戦には、2万5000人もの観衆が押し寄せた。
ロンドン・プライズリング・ルールズ
1814年にジョン・ジャクソン(元チャンピオン)が英国ピュジリスト保護協会を設立し、1838年に「ロンドン・プライズリング・ルールズ」(29条)を発表した。そこには「ブロートン・コード」(ベルト以下への打撃の禁止、腰より下の抱込みの禁止、倒れた相手への攻撃禁止)に加え、ベアナックルで試合を行い、蹴り技、頭突き、目玉えぐりの禁止、ダウン者に30秒の休憩、所定の位置に8秒で戻るルールなどが規定された。
この頃のボクシングはスタンド・アンド・ファイトスタイルでダウンごとに1ラウンドとし、50ラウンドにも及ぶ試合が普通にあった。そのため序盤は拳や手首を痛めないように用心しながら、徐々に打ち合っていくというスタイルであった。
1856年にはフランスで八百長疑惑によりボクシングなどの興行がパリで全面禁止された。
クインズベリー・ルール
1867年にロンドン・アマチュア・アスレチック・クラブのジョン・グラハム・チャンバースは、ルール保証人の第8世クィンズベリー侯爵ジョン・ショルト・ダグラスの名を冠した「クインズベリー・ルール」(Marquess of Queensberry Rule、全12条)を発表した。このルールでは、投げ技が禁止された他、3分1ラウンドとしラウンド間に1分間の休憩をとるラウンド制、グローブの着用、ダウンした者が10秒以内に立ち上がれない場合はKO負けとすることなどが定められ、現在に通じるボクシングルールを確立するものであった。ただし定着は遅れ、1889年7月、ジョン・L・サリバンがジェイク・ロドリゲスと行なったヘビー級王座防衛戦まで「ロンドン・プライズリング・ルールズ」が使用され続けた。
1892年9月7日のジョン・L・サリバン対ジェームス・J・コーベット戦が、初めてのクインズベリー・ルールによる5オンスグローブ使用のヘビー級王者決定戦である。この時コーベットは当時のスタイル「スタンド・アンド・ファイト」ではなく「卑怯者の戦法」といわれた相手から距離をとってパンチをかわし、左の軽いジャブをあてるというフットワークのあるボクシング史上初めてアウトボクシングスタイルで21回1分30秒サリバンをKOし勝利をおさめた。
技
- ストレート
- ボクシングの花形。重心移動を利用した威力あるパンチである。
- 重心移動を伴わない、腕だけによる小出しのパンチ。「左を制するものは世界を制する」という格言があり、地味だが試合展開上重要な戦術を担う。
- アッパー(アッパーカット)
- 顎を殴り上げる。
- フック(フックパンチ)
- 上半身のひねりを利用した側面からのパンチ。
- ボディブロー
- 首から下、ベルトから上を狙ったパンチの総称。心臓・肝臓・腎臓などを狙う。
- 相手にしがみつき、攻撃を封じたり体力を回復する。
試合形式
アマチュア
シニア(18歳以上)では1ラウンドを3分間、ジュニア(高校生)では1ラウンドを2分とし、ラウンド間に1分のインターバルをおく。ラウンド数は、日本国内では3ラウンドでおこなわれる形式が一般的であるが、国際試合では1ラウンドを2分間に短縮して4ラウンド制でおこなわれることが多い。日本国内においても、全日本選手権とそのブロック予選では2分4ラウンド形式で試合がおこなわれる。
プロ
1ラウンドを3分間とし、ラウンド間に1分間のインターバルをおく。ラウンド数は4ラウンド、5ラウンド、6ラウンド、8ラウンド、10ラウンド、12ラウンドの6種類。日本ではラウンド数は選手のライセンスの種類によって決定される。なお、原則として12ラウンドは日本においては東洋太平洋タイトルマッチ、世界タイトルマッチの時にのみ実施される。かつて世界タイトルマッチは15ラウンドで行われていたが、事故防止のために廃止された。 興行によっては4回戦より短い3ラウンドの試合や、1ラウンドが2分の試合なども存在する。
選手の服装
アマチュア
選手はトランクス、ランニングシャツ、シューズ、ヘッドギア、グローブを着用する。グローブの重さはシニア(18歳以上)の選手は全階級を通じて10オンス、ジュニア(高校生)はライトウェルター級までの選手は10オンス、ウェルター級以上の選手は12オンスである。また、負傷防止のためマウスピースとファウルカップを着用する。
プロ
選手はトランクス、シューズ、グローブを着用する。グローブの重さはスーパーライト級までが8オンス、それ以上は10オンスである。また、負傷防止のためマウスピースとファウルカップを着用する。(スパーリングの場合にはヘッドギアを着用することがある) これら以外の着用は原則禁止である。2005年12月、小口雅之が試合中に報告なしに着用していたカツラが外れる珍事があり、以後カツラ着用は明確に禁止された。
勝敗
アマチュア
- KO(KnockOut):相手がダウンしたのち、10カウント以内に立ち上がれない場合やファイティングポーズをとれない場合、もしくはレフェリーがダメージ甚大と判断してカウントアウトした場合。
- RSC(RefereeStopContest):プロボクシングのTKOに相当する。ただしRSCのバリエーションとしてRSCH(H= head)、RSCO(O =outclass)がある。RSCHは頭部へのダメージが甚だしい場合に適用する。RSCOはコンピュータ採点方式の試合中に15ポイント以上差がついた場合に適用する。
- 棄権(英:retire):選手本人、もしくはセコンドがこれ以上試合を続けることができないと判断した場合。タオルを投げ込んで合図するのが通例。
- 失格(英:disqualified):反則によって減点が3点に達すると失格となる。
- 判定(英:on Point):ラウンド毎に採点をし、より多くの点をとった選手を勝者とする。
- 不戦勝(英:walk over):予定された対戦相手が出場できない場合は不戦勝となる。ただし不戦敗は記録につかない。
プロ
- KO:プロの場合、相手がダウン後10カウント以内に立ち上がれなかった場合。
- TKO(Technical KnockOut):どちらかの選手が明らかに不利な場合や、試合続行不可能な状態になって試合を止めた場合。
- レフェリーストップ:どちらかの選手のダメージが深いなど、これ以上試合を続行させると危険であるとレフェリーが判断した場合。記録上はTKO。
- ギブアップ:選手本人、もしくはセコンドがこれ以上試合を続けることができないと判断した場合。タオルを投げ込むのが通例。記録上はダウン後のカウント中であればKO、それ以外の場合はTKO。
- 失格:相手が故意に重大な反則を犯した場合、もしくは反則を繰り返した場合。
- 判定:ラウンド毎に採点をし、より多くの点をとった選手を勝者とする。
- 負傷判定:試合の途中で偶然のバッティングにより負傷した場合、規定のラウンドに達していればそれまでの採点で勝敗を決する。達していない場合は負傷引き分けとなる。
採点方法
採点方法は1Rごとの10点満点の減点方式。ダウン1回で2点減点、ダウン2回で3点の減点。ダウンがなかった場合、より的確にパンチを当てていた選手に10点が、そうでない選手に9点が与えられる。 また実際に倒れずとも、ダウンしたに等しい内容であると判断された場合にも8点がつけられる。 双方がダウンを一度ずつした場合、両者ともに10点のままであるが 片方が一度、片方が二度ダウンをした場合、ダウンを二度した側に8点がつけられる。
採点は3人のジャッジで行い、2人以上のジャッジが支持した選手を勝者とする。ジャッジが3人とも一方の選手を支持した場合をユナニマス・デシジョン、2人が支持し、もう1人が引き分けであった場合をマジョリティ・デシジョン、1人のジャッジがもう一方の選手を支持した場合をスプリット・デシジョンと呼ぶ。またどちらの選手も2名以上のジャッジの支持を得られなかった場合、ドローとなる。3名が引き分けとした場合をユナニマス・ドロー、2名が引き分けとし、もう一人がいずれかの選手を支持した場合をマジョリティ・ドロー、ジャッジ2名がそれぞれ異なる選手を支持し、もう一人が引き分けであった場合をスプリット・ドローと呼ぶ。
原則的にボクシングにおいてはジャッジの採点に間違いはないものとされており、客観的に、いかに不可解な採点結果であろうが一度出された試合の判定が事後に覆ることはない。
反則
試合中に以下の行為を行った場合、反則となり、レフェリーに注意を受ける。注意が重なった場合、減点対象となり、悪質な場合は失格負けとなる。
- バッティング:頭、肘などで攻撃する。
- ローブロー:相手のベルトラインより下を攻撃する。
- ラビットパンチ:相手の後頭部を攻撃する。
- 相手の背中側を攻撃する。
- レフリーがブレイクを命じた後に攻撃する。
- ラウンド終了のゴングが鳴った後に攻撃する。
- サミング:グローブの親指で相手の目を突く攻撃。
- インサイドブロー:グローブの内側で打つ攻撃。
- オープンブロー:グローブを握らずに打つ攻撃。
- バックハンドブロー:ナックルパートより手首側のグローブの甲で打つ攻撃。空手で言う裏拳。
- ピボットブロー:体を回して背を向けて打つ攻撃。他の格闘技でいうところの「バックハンドブロー」。
- レスリング行為: 相手を投げ飛ばす。
- ホールディング: 相手の身体や腕を押さえつける事。
階級
ボクシング発祥の地・欧米ではキログラムではなくポンドが計量単位として使われていたため、階級を分ける数字はポンドによっている。そのため、キログラムでは中途半端な数字となっている。ただしアマチュアの階級はキログラムを単位として区分されている。
アマチュア
国際アマチュアボクシング連盟が定める階級は以下の通り(ただしモスキート級はジュニア選手のみ)。全12階級。
階級名称 | 体重(キログラム / kg) | 体重(ポンド / lbs) |
モスキート級(ジュニアのみ) | 45kgまで | lbsまで |
ライトフライ級 | 48kgまで | 105lbsまで |
フライ級 | 48-51kg | 105-112lbs |
バンタム級 | 51-54kg | 112-119lbs |
フェザー級 | 54-57kg | 119-125lbs |
ライト級 | 57-60kg | 125-132lbs |
ライトウェルター級 | 60-64kg | 132-141lbs |
ウェルター級 | 64-69kg | 141-152lbs |
ミドル級 | 69-75kg | 152-165lbs |
ライトヘビー級 | 75-81kg | 165-178lbs |
ヘビー級 | 81-91kg | 178-200lbs |
スーパーヘビー級 | 91kg以上 | 200lbs以上 |
女子アマチュアにおける階級は以下の通り
階級名称 | 体重(キログラム / kg) | 体重(ポンド / lbs) |
ピン級 | 46kgまで | 101lbsまで |
ライトフライ級 | 46-48kg | 105-112lbs |
フライ級 | 48-50kg | 105-110lbs |
ライトバンタム級 | 50-52kg | 110-114lbs |
バンタム級 | 52-54kg | 114-119lbs |
フェザー級 | 54-57kg | 119-125lbs |
ライト級 | 57-60kg | 125-132lbs |
ライトウェルター級 | 60-63kg | 132-138lbs |
ウェルター級 | 63-66kg | 138-145lbs |
ライトミドル級 | 66-70kg | 145-154lbs |
ミドル級 | 70-75kg | 154-165lbs |
ライトヘビー級 | 75-80kg | 165-176lbs |
ヘビー級 | 80-86kg以上 | 176-189lbs以上 |
プロ
プロボクシングにおける階級は、以下の通り。以前は、日本ボクシングコミッションではジュニア○○○級という呼称の形式を採用していたが、1998年5月1日に世界ボクシング協会と世界ボクシング評議会とでルールが統合され、両団体で異なっていた呼称もスーパー○○○級に一本化されたため、同時に日本ボクシングコミッションでもスーパー○○○級に呼称が変更された。 それにより、ジュニアミドル級はスーパーウェルター級へ、ジュニアウェルター級はスーパーライト級へ、ジュニアライト級はスーパーフェザー級へ、ジュニアフライ級はライトフライ級へ変更された。
ただし、世界ボクシング協会や世界ボクシング評議会以外の団体ではジュニアの名称は今でも使われている(団体によって名称に差異はあれど同じウエイトである)。全17階級。マイナー団体では別の階級が設けられている場合もある。
階級名称 | キログラム/kg | ポンド / lbs |
アトム級/ミニマム級/ストロー級(女子のみ) | 46.266kg | 102lbs |
ミニマム級/ストロー級/ミニフライ級 | 47.627kg | 105lbs |
ライトフライ級/ジュニアフライ級 | 48.988kg | 108lbs |
フライ級 | 50.802kg | 112lbs |
スーパーフライ級/ジュニアバンタム級 | 52.163kg | 115lbs |
バンタム級 | 53.524kg | 118lbs |
スーパーバンタム級/ジュニアフェザー級 | 55.338kg | 122lbs |
フェザー級 | 57.153kg | 126lbs |
スーパーフェザー級/ジュニアライト級 | 58.967kg | 130lbs |
ライト級 | 61.235kg | 135lbs |
スーパーライト級/ジュニアウェルター級 | 63.503kg | 140lbs |
ウェルター級 | 66.678kg | 147lbs |
スーパーウェルター級/ジュニアミドル級 | 69.853kg | 154lbs |
ミドル級 | 72.575kg | 160lbs |
スーパーミドル級 | 76.204kg | 168lbs |
ライトヘビー級 | 79.379kg | 175lbs |
クルーザー級/ジュニアヘビー級 | 90.719kg | 200lbs |
ヘビー級 | 90.719kg以上 | 200lbs以上 |
タイトル
ボクシングのタイトルは他の多くの格闘競技同様、「王座は王者に勝ったものに引き継がれていかなければならない」というのが原則であり、それがボクシングのアイデンティティでもある。王者というのは、初代ボクシングヘビー級王者ジェームス・フィッグの代理者たらなければならないため、「王者は自分自身の強さを世間に証明するために防衛戦を行い、挑戦者は王者から最強の称号を奪うために挑戦する」という形式を取っている。しかしながら、この形式では多くの選手に挑戦する機会が与えられないという弊害が生まれている。
結果、タイトルの分裂、乱立といった事態が発生してしまった。また新階級増設、世界王座以外の新王座乱発、認定団体の乱立といった問題が起きた。これがよくボクシングを知らない人間がよく疑問に思う、WBC世界XX級タイトルマッチのWBCって何?の答えである。その結果、
- 同じ階級でも誰が一番強いのかわからない(王者の形骸化)
- ライバル選手同士の対戦がなくなる傾向が出てきた。
- 近隣階級、ライバル団体に以前他の王者に倒された選手が平然と付くことが多くなり、その選手をファンが王者として見れなくなってしまう。
- スター選手及び有力プロモーターによる王座の商品化
- スター選手に対する王座の無力化
などの弊害が生じている。ただし、必ずしもデメリットしかないわけではなく
- 多くの国から世界王者が出てボクシングのマーケットが広がった。
- 今まで世界を取るのは難しいと諦めてプロ入りしなかったり、早めに引退してた選手がいたと思うので、彼らが続けることによって選手層が厚くなる。
- 肩書き、地位が人、実力を作ると言う物の典型例でありその分ボクシングのトップ選手の層が厚くなる。
- 対立王者を比較する作業というファンの大きな楽しみが出来た。
- 多くの試合を統一戦というブランドでより価値を上げて売り込めるようになった。
- チャンピオンとランカーの差が天地ほどに大きいボクシング界でスター選手の保険として多団体があるという現状は彼らがボクシングで過度に(精神面などが)磨り減らなくて済み永く選手を続けられる可能性が高くなるので、彼らが地位を守るためにも、ボクシング界がスターを守るためにも、ファンがスターを見続けるためにも良い。
といった良い影響も残している。
現在はIBF(国際ボクシング連盟)、WBC(世界ボクシング評議会)、WBA(世界ボクシング協会)、WBO(世界ボクシング機構)の4団体のタイトルが最も権威があるとされてる(勿論、これら4団体の中にも権威の格差が存在する)。この4つに加え、他にも有象無象の小団体が存在する。注意すべき点は、IBFにしろWBAにしろ、そしてもちろんWBCにしろ、世界のボクシングコミッションというもの(大義的にみてボクシングという競技そのもの)を管轄する存在でない、ということである。これらの世界王座認定団体は、単に「世界王座」を認定する組織にすぎず、 全世界のボクサーを監督する存在ではない(アマチュアは別である)。ただし、日本ボクシングコミッション(JBC)は日本の所属ボクサーを監督している。
ボクシングのタイトルの問題点
- 選手権(タイトルマッチ)の数が王者の積極性によって決められてしまう。
- 選手権に参加できる選手は2人だけである。
- 年間に義務づけられている試合数は存在しない。
- 開催地は金銭面・興行面で決定されてしまう場合が多い。
- 1位以外の選手は挑戦できる条件が不明瞭。
- 現在では複数団体が存在するため、強者との対戦を避けられる傾向もある。
- 暫定王者について基準が不明瞭でかつ人数も多い。
ボクシングのタイトルのメリット
- 王者が引き継がれるので、ファンは新しい王者を認知しやすい。
- 王者を倒した者が王者、という論理に合致している。
- 選手を売り出しやすい。
- お金があって、自身にもそしてジムにも力があるホープに限っては、早い段階からスターの座につけやすく、稼がせやすい。
マイナー団体
IBF(国際ボクシング連盟)、WBC(世界ボクシング評議会)、WBA(世界ボクシング協会)、WBO(世界ボクシング機構)の4団体の以外にも世界王座を認定している組織は存在する。また地域コミッション単体認定世界王者や、 マスコミ認定世界王者(専門誌やスポーツ誌、リングマガジン王者を除く) 専門家による認定王者も昔は存在していた。現在、これらのマイナー団体が認定する「世界」王座は有名になるための試金石として使われている。
プロボクシング団体の歴史
1900~1950年代:NBAの誕生
この頃は各地域のコミッションが独自の世界王者を認定していた。(例えばニューヨーク州コミッション認定世界王者、全米ボクシング協会認定世界王者など。)ただし、表向きは世界xx級王者として表記されていた。欧州では、欧州各国のボクシングコミッションが参加して、IBU(国際ボクシング連合、現在のEBU。WBC発足時に改称)が成立し、欧州王者を認定。しかしたびたび米国と対立を起こし、世界王者を別に認定していた。つまり、世界王者の認定方法は、最初各国(州)のコミッション単位で認定(他の国はそれに同意することが条件)。そして、その後は米国はそれぞれ各州、BBBC、IBUで認定し、全てに認定されれば統一王者(本物の世界王者)ということになる。
1921年にアメリカ国内の13州が参加して全米ボクシング協会(NBA)が設立される。これは1918年にイギリスボクシング管理委員会(BBBC)が設立され、英国内のボクサーを管轄、そして英国内及び大英帝国(現在の英連邦)王座を認定するという、単独国のボクシングコミッション的な要素を持ちつつも、欧州と同じように時には独自の世界王者を擁立されるという動きも見せたため、それに対抗するために設立されたと言われている。ここで注意すべき点は、設立当初は決して団体自体で世界王者を認定する存在ではなかったという点である。あくまで、アメリカ国内の参加各州のコミッションの集合体に過ぎなかった。しかし、未参加州であるニューヨーク州やカリフォルニア州などが、たびたび独自に世界王者を認定し、米国内で統一した世界王者の認定が出来ないことにより、このままではイギリス認定、ヨーロッパ認定の世界王者に対抗できなくなる恐れが出てきたため、NBAは独自に世界王者を認定するようになった。アメリカ以外の国々にも門戸を開き、加盟を受け付けた。
1950年代以降~1970年代後半:WBAへの改称とWBCの設立
1962年全米ボクシング協会(NBA)が世界ボクシング協会(WBA)へと改称。同時に、北米、南米、欧州、東洋に、組織を分割。しかし4つの地域に分けたことにより、各地域に平等に チャンスを与える必要があったが、相変わらず米国偏重は変わらなかった。
1年後の1963年にWBAの総会で、評議機関(監視機構)の下部組織の設立が決定される。選手権やランキングの適正を意見する(米国偏重を監視するため)ための機関として 世界ボクシング評議会(WBC)が設立される。同年、WBCが世界ボクシング協会(WBA)から独立。この時、WBCはWBA側に残った国(コミッション)から王座を剥奪する方針をとった。結果、日本ではスーパーフェザー級王者の小林弘、スーパーライト級王者の藤猛の2人の王者が指名試合不履行その他を理由として翌1968年にWBC王座を剥奪された。
1972年4月7日に初めてメジャーな世界王座認定団体間で王座統一戦が行われた。WBA世界王者ビセンテ・ポール・ロンドンと、WBC世界王者ボブ・フォスターとの、世界ライトヘビー級王座統一戦である。
1970年代以降~1990年代後半:IBFとWBOの造反
1980年、世界体育協会(WAA)というマイナー団体が設立される。
1983年にWBA会長選挙に敗れた全米ボクシング協会(USBA)会長ロバート・リーが独立し国際ボクシング連盟(IBF)を設立。IBFがUSBAを率いて脱退したため、アメリカ国内の多くの州がIBFに移行してしまい、WBAの同国内での権威が落ちる。
1987年に全世界ボクシング協会(UBA)というマイナー団体が設立される。マイケル・スピンクスを世界王者として認定するためだけに創られた団体といわれている。
1988年にWBAからルイス・サラス、アルベルト・アレマンが独立し世界ボクシング機構(WBO)を設立。同年にマイナー団体の老舗世界ボクシング連盟(WBF)が設立される。同年11月には当時世界王座4階級を制覇していたトーマス・ハーンズがWBOの世界スーパーミドル級王座をジェームズ・キンチェンと王者決定戦を行い前人未到の5階級制覇を名乗る(しかし当時は、専門家やファンからは設立間もないWBOという団体の存在自体を疑問視する声が多く、現在でも専門家によって是か否の解釈が異なる)。結果、この頃からマイナー団体はスター選手やプロモーターからご都合主義的に利用されるようになり始める。さらに翌年1989年5月6日にはWBO世界ヘビー級王座決定戦がフランチェスコ・ダミアニ(イタリア)とジョニー・デュープロイ(南アフリカ)の間で行われる。マイク・タイソンが3団体統一をしていた時期であったため、結果的に、王座の正当性=ひとつのつながりを重要視する専門家、関係者の間からWBOが敬遠されてしまうことになる。
この頃からマイナーないわゆるアルファベット団体の王座が世界各地で設立し始める。
1990年代になると、WBCとの分裂、IBFの脱退などによる結果からか、最も歴史があり権威がある団体とされて来た世界ボクシング協会(WBA)がさらに衰退し始める。その例として、王座認定料確保のためか、正王者がいるにも関わらず暫定王者決定戦を行う(本来暫定王者とは正王者が怪我や事故などで一時的に防衛戦が行えなくなった場合のみに立てられる一時的な代理の王者である)といったことが起きた。例えば、日本では畑山隆則がWBA世界スーパーフェザー級王座を奪取した際、1週間後に別の場所で勝手に暫定王者決定戦が行われた。
2000年以降:WBCの破産騒動
世界ボクシング評議会(WBC)がロッシジャーニから不当に世界ライトヘビー級王座を剥奪したとして訴えられる。結果、裁判に負けたWBCは資金集めのため、世界王座以外の王座を新設し始める。そして女子部門、ムエタイ部門の設立を決定。
廃止論
一般的には様々な制約が少ない格闘技の方が危険なように思われるが、実は最も身体に危険を及ぼす格闘技はボクシングである。
なぜならボクシングは他の格闘技と違い頭部を中心に殴るスポーツであるため、日常生活に支障をきたすような障害になる可能性は、他の制約の少ない格闘技よりも桁違いに高い。安全基準が厳格なアマチュアボクシングでも死亡事故や体に重大な障害を残す症状が出る人、パンチドランカーになって日常生活がまともに送れなくなる人など、問題が多い。(記事:リング禍参照)
そのためイギリスを含め、様々な国で廃止論が叫ばれる(特に死亡事故が起こった直後ほど)。これらに対してボクシング団体は世界戦のラウンドを12に減らしたり、試合で使用されるグローブを大きくするなど対策を講じてはいるが、頭部を殴るスポーツであるため、根本的な解決になっていないし、解決方法などない(ルールで頭部を殴らせなくするくらいしかない)が、より一層厳格な安全基準の制定が望まれる。
近年ではネバダ州ラスベガスにおいて2005年の7月から9月にかけての3ヶ月間で2人のボクサーが死亡するという事件がおきた。これを受けて州のスポーツコミッションが独自の調査委員会を設置した。(記事:レバンダー・ジョンソン参照)
団体
- アマチュア
- 国際アマチュアボクシング協会 (AIBA)
- 日本アマチュアボクシング連盟 (JABF)
- 世界タイトル
- 世界ボクシング協会 (WBA)(NBA全米ボクシング協会より改称)
- 世界ボクシング評議会 (WBC)
- 国際ボクシング連盟 (IBF)
- 世界ボクシング機構 (WBO)
IBFとWBOは後発団体。 ボクシングにおけるマイナーな世界タイトル認定団体を以下に挙げる。
- 世界タイトル
- 地域タイトル
- 東洋太平洋ボクシング連盟 (OPBF)
- パンアジアボクシング協会 (PABA)
- IBFアジア
- WBOアジアパシフィック
- 北米ボクシング協会 (NABA)
- 全米ボクシング協会 (USBA)
- 北米ボクシング連盟 (NABF)
- 北米ボクシング機構 (NABO)
- 中米カリブ海ボクシング連盟 (FECARBOX)
- 南米ボクシング連盟 (FESUBOX)
- WBC米大陸王座
- パンアフリカンボクシング協会 (PAFBA)
- 欧州ボクシング連合 (EBU)
- 国内タイトル
- 日本ボクシングコミッション (JBC)
- その他
- スーパーチャンピオン
- WBAインターコンチネンタル王座
- WBCインターナショナル王座
- ユース王座
- 英連邦王座
- 旧スペイン語圏王座
ボクシングのレギュラーテレビ番組
- ワールドプレミアムボクシング・ダイナミックグローブ(日本テレビ、日テレG+)
- ガッツファイティング(TBS)
- ダイヤモンドグローブ(フジテレビ、フジテレビ739)
- エキサイトボクシング(テレビ朝日)
- ヒートアップボクシング(テレビ東京)
- ドラマチックボクシング(よみうりテレビ)
- SOUL FIGHTING(中部日本放送)
- BEST GLOVE(FBS福岡放送)
- エキサイトマッチ~世界プロボクシング(WOWOW)
- S.X.B プロボクシング(J SPORTS ESPN)
- ※そのほかサンテレビジョンで2004年に「めざせ!チャンプ」という番組が放送された。
ボクシングを扱った作品
ボクシング映画
- ロッキー 1~5(1976年~1990年)、主演: シルヴェスター・スタローン、タリア・シャイア
- チャンプ(1979年)、主演: ジョン・ヴォイト
- レイジング・ブル(1982年)、主演: ロバート・デ・ニーロ
- どついたるねん (1989年)、主演:赤井英和、相楽晴子、 大和田正春、輪島功一
- Knockout Workout(1993年)、主演: ステファニー・スチール
- ファイト・クラブ(1999年)、主演: ブラッド・ピット、エドワード・ノートン
- THE OPPONENT(2000年)、主演: エリカ・エレニアク
- Knockout(2000年)、主演: ソフィア・アデーラ・ヘルナンデス
- デッド・ロック(2001年)、主演: ウェズリー・スナイプス
- ミリオンダラー・ベイビー (2004年) 、主演: クリント・イーストウッド、ヒラリー・スワンク
- シンデレラマン (2005年) 、主演: ラッセル・クロウ、レネー・ゼルウィガー
ボクシング漫画
- あしたのジョー(高森朝雄、ちばてつや)
- あいしてる(守村大)
- 1ポンドの福音(高橋留美子)
- KATSU!(あだち充)
- 神様はサウスポー(今泉伸二)
- 仮面ボクサー(島本和彦)
- がんばれ元気(小山ゆう)
- 拳闘暗黒伝CESTVS セスタス (技来静也)
- 太郎(細野不二彦)
- CHIBI-チビ-(高橋陽一)
- はじめの一歩(森川ジョージ)
- B・B(石渡治)
- ふたりのジョー
- ヘヴィ(村上もとか)
- のぞみウィッチィズ(野部利雄)
- 満天の星 (楠本 哲)
- 満腹ボクサー徳川。(日高建男)
- Monacoの空へ(野部利雄)
- Monacoの空へ2 ALAS輝ける翼(野部利雄)
- リングにかけろ(車田正美)
- 二匹のブル(瀬叩龍、岩重孝)