北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ
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ジャンル | アドベンチャーゲーム |
対応機種 | PC-6001 PC-8801 PC-9801 FM-7 MSX ファミリーコンピュータ キャプテンシステム 携帯アプリ |
開発元 | ログインソフト |
発売元 | アスキー |
人数 | 1 |
メディア | [FC]2M+64Kbitカセット |
発売日 | [PC60]1984年 [PC88]1984年 [PC98]1985年 [FM7]1985年 [MSX]1985年 [FC]1987年6月27日 [iアプリ]2001年 [EZweb]2003年 |
北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ(ほっかいどうれんささつじん -にきゆ)は、堀井雄二がシナリオを手がけたアドベンチャーゲーム。同じく堀井雄二がシナリオを手がけた『ポートピア連続殺人事件』『軽井沢誘拐案内』と本作を合わせて「堀井ミステリー三部作」とも呼ばれた。
ログインソフト(アスキー)から1984年にPC-6001版とPC-8801版が、翌1985年にはPC-9801版とFM-7版・MSX版が発売された。なお1985年にはプロローグにあたる「東京編」のみの収録ながらキャプテンシステム版も公開されている。1987年には全面的にリメイクされたファミリーコンピュータ版が発売された。その後ファミリーコンピュータ版のシナリオを下敷きにグラフィックを刷新したPC-9801版がムック形式で発売され、現在ではプロジェクトEGGでプレイ可能な他、携帯電話でも配信されている。
目次 |
[編集] 作品解説
事件の発端は東京湾で発見された謎の死体。その身元がわかるにつれ捜査は北海道に移るが、そこでも連続して死体が……というミステリー作品。綿密なロケーション・ハンティングを元にした現実的な舞台設定、また社会派ミステリーに分類される重厚なシナリオは当時きわめて斬新であり、傑出の出来としてヒットを記録し現在でもファンが多い。
特に、摩周湖や屈斜路湖を始め、網走刑務所や北浜駅、夕張炭鉱などの現実の観光スポット、また本当に網走刑務所で作成されているニポポ人形など実在の風物が登場するシナリオは当時のゲーム表現として特徴的である。これはポートピア'81を背景にした堀井雄二の前作『ポートピア連続殺人事件』に続き、当時とかくリアリティを失いがちだったゲームシナリオに現実性を持ち込む方法論であり、ルポライター・漫画原作者としての顔を持つ堀井雄二らしい独特の表現手法であった。
堀井雄二の前作『ポートピア連続殺人事件』がフーダニット(犯人当て)を根幹とする本格ミステリー的作品であったのに対し、本作はドラマ性と戦中・戦後の日本を背景とする社会性を重視した社会派ミステリーであり、作風は大きく異なる。ゲームに物語的なドラマ性を持ち込む手法は当時実験的な試みであり、『ポートピア連続殺人事件』以降の堀井の大きなテーマでもあったが、本作はそうした試行錯誤の延長線上にあり、この路線が後の『軽井沢誘拐案内』、ドラゴンクエストシリーズへと続いていく。
当時としては高い水準にあった劇画的・写実的なグラフィックも特徴的である。ファミコン版では一転、作画を『べーしっ君』の荒井清和が手がけ漫画的表現に変わったが、これも当時のファミコンのグラフィックとして高レベルであり評価は高い。後年のPC-9801用リメイク版では再び写実表現に回帰し、またさらに後のⅰアプリ版では漫画的表現に再回帰しているが、EZアプリ版では再び写実的表現になっている。
ファミコン版のBGMはゲヱセン上野こと上野利幸が担当。このBGMも秀逸なものが多く、ファンの声の多さから2005年にはサウンドトラックの復刻が実現している。なお、上野は初代パソコン版のメインプログラマーでもあった。
元来はパソコン雑誌『ログイン』と堀井雄二の共同企画で、ログイン側はプロデュースおよびゲーム開発の追跡記事を、堀井雄二はシナリオを担当するという企画だった。この企画の担当編集者は後に『ファミ通』二代目編集長となる塩崎剛三(東府屋ファミ坊)。ログイン1983年12月号には堀井雄二自身による北海道の取材記事が掲載されている(実際の取材は1983年9月)。当時すでにストーリー構想は完成していたにもかかわらず、堀井の多忙と慣れない分担作業(本作は堀井がプログラムから離れシナリオ専門に注力した初のゲームだった)から開発期間は当時異例の1年間を要した[1]。
ログインとの共同企画には他に香港を舞台とする『九龍の牙』、ロシア(当時はソ連)を舞台にした『白夜に消えた目撃者』の、実質的な『オホーツクに消ゆ』の後継作品にあたる推理アドベンチャーゲームが2作予定されていたが、ともに取材旅行まで敢行したまま製作は頓挫している。
[編集] システム
当時のアドベンチャーゲームとしては画期的な「コマンド選択方式」を採用している。従来はコマンドを直接入力する必要があった(キーボードで「シンカイチ イケ」等と入力する)がプレイヤーが適切な行動を思い付いても必ずしもプログラムでフォローされているとは限らないという限界があり、究極的には物語性と無関係に「言葉探し」というパズルを解くことが中心となっていた。本作では〈最初からコマンドを全て見せておく〉というスタンスのコマンド選択方式を新規に導入する事で、ゲームの主題を言葉探しからシナリオを読み解く楽しみへと転換させることに成功しており、ゲーム史の上でも意義ある作品ともいえる。
堀井雄二自身もその後ファミコン版『ポートピア連続殺人事件』やドラゴンクエストシリーズにこのシステムを導入した他、これ以後のアドベンチャーゲームやコンピュータRPGでもコマンド選択方式が採用されるなど、多大な影響を及ぼしたと言っていいだろう。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] ストーリー
東京湾、晴海埠頭で男の死体が発見される。主人公は部下の黒木と共に被害者の身元を調査し、事件に北海道が関係している事を知る。北海道に渡った主人公は、釧路署の刑事である猿渡俊介と共に捜査を始めるが、第二、第三の殺人事件が次々に起きてしまう。犯人の目的は一体何なのか。被害者の関連性を調べていくうちに、ある重大な過去が浮かび上がっていく……。
[編集] キャラクター
- ボス - 主人公。プレイヤーが操作するキャラクター。
- 増田文吉 - 第一の被害者。顔かたちがゲンさんにそっくり。
- 黒木五郎 - ボスの部下。東京で共に捜査するパートナー。
- 高野 - 増田の死体の第一発見者。
- 明美 - キャバレー「ルブラン」のホステス。
- ルナ - キャバレー「ルブラン」のホステス。
- 山辺則之 - 北海道警察釧路署長。
- 猿渡俊介 - 通称「シュン」。北海道で共に捜査するパートナー。後に野村真紀子と結婚する。
- 増田たえ - 増田文吉の妻。緑ヶ丘在住。
- 飯島幸男 - 元新聞記者。第二の被害者。北浜の浜辺にて死体として発見される。
- 飯島信二 - 飯島幸男の息子。増田の写真を見せるとゲンさんと見間違える。
- ゲンさん - 札幌すすきのにある炉辺焼き屋「コロポックリ」の店員。
- 白木雄九朗 - 東京のスーパー社長。第三の被害者。網走港にて死体として発見される。
- 坂口達男 - 白木雄九朗の秘書。社長が屈斜路湖・摩周湖を旅行すると話していたと証言する。
- 中山めぐみ - 大学生。野村真紀子の幼馴染。東京の大学に通っている。失恋したため、北海道に観光旅行に来ている。
- 野村真紀子 - 北海道生まれの北海道育ち。札幌市手稲在住。スポーツ用品店でバイトしている。めぐみの幼馴染。
- 中野和夫 - 井持の死体の、第一発見者。新婚旅行で北海道に来ていた。
- 中野裕美子 - 中野かずおの妻。新婚旅行はハワイに行きたかったらしい。
- 菊奴 - かがや旅館の芸者。
- 井持邦雄 - 30歳。札幌市の会社員。第四の被害者。知床五湖で死体として発見される。
- 小野とく子 - 25歳。恋愛のもつれから井持を殺害。連鎖殺人とは関係が全くない。野付崎で自殺を図るが未遂に終わる。
- 野村ゆかり - 大学生。野村真紀子の妹。東京の大学に通っている。交通事故にて死亡。
- 野村安吉 - 漁師。野村源次郎の父。
- 野村源次郎 - 野村安吉の息子。野村真紀子、野村ゆかりの父。実はゲンさん。
- 奥村紀助 - 既に老衰で死去。しかし奥さんは存命。俊が訪れるとニポポ人形をくれる。
- 阿久津秀夫 - 元海軍将校。網走市出身の国会議員。大臣になる予定のため、北海道に遊説に来る。
- 浦田甚五郎 - 漁師。奥村の妻から渡される、涙が彫られたニポポ人形の作者。事件当時、網走刑務所で服役中。
- 北竜会 - 暴力団。阿久津秀夫が取り巻きとして手を組んでいる。
[編集] 外部リンク
- オホーツクに消ゆ - エンターブレインデジタルファミ通内紹介ページ
- 北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ - ファンサイト
- オホーツクに燃ゆ - ファンサイト
- オホーツクに消ゆサウンドトラック - たのみコム内紹介ページ
[編集] 参考文献
- ^ 「『オホーツクに消ゆ』はこうして作られた!」『ログイン』26号、アスキー、1985年、90-93頁