工業
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工業(こうぎょう、英industry)とは、原材料を加工して製品を造る(つくる)こと、および、製品を造ることにかかわる諸事項のことである。工業の語には、製品を造る働き、製品を造る事業などについても含まれる。
工業は、第二次産業のうち(鉱業を除く)建設業および製造業の大部分に該当し、加工組立業といったりもする。
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[編集] 工業の諸要素
[編集] 工業の分野
工業のうち、鉄鋼・車両・船舶などの比較的重量のあるものを製造する工業(鉄鋼業、機械工業、造船業など)を重工業といい、これと化学工業を併せて重化学工業という。
重工業・重化学工業に対して軽いもの、特に消費財を製造する工業(繊維工業・食品工業・印刷業など)を軽工業という。
[編集] 工業の立地条件
工業の立地に関しては、例えば次のようなものが重視される。
- 水・空気など自然的条件
- 資源、市場、交通、労働力
- アルフレッド・ウェーバーの工業立地論
[編集] 工業労働者
仕事で流す汗が染みにならないように、仕事の時の服装は青などを基調としたものが多く、これに由来して工場などの現場で働く工業労働者のことをブルーカラー(Blue-Collar 青い襟)といったりもする。
なお、事務作業に従事する労働者については、ワイシャツを着用することからホワイトカラー(White-Collar 白い襟)と呼ぶ。
[編集] 日本の工業
[編集] 日本の工業の歴史
日本は1880年代から産業革命が始まって近代工業が発達し、日清戦争前後には政府の保護を受けて従来の軽工業部門から日露戦争前後には軍備拡張などもあり重工業部門へと発展する。1901年には官営の八幡製鉄所が建設される。太平洋戦争中には国家総動員法により経済統制が行われる。
第2次世界大戦後には農業に代表される第1次産業に代わり工場で行われる加工業が伸び始め、昭和30年代には、都市部で労働力が不足し始めた。このため、農村から集団就職によって中学卒業間もない青年を大量に都市部に流入させた。この後、日本経済はどんどん上向きになり、サービス業である第3次産業も急激に発展し始めた。
1980年代後半より、日本の労働集約型の工業は、円高による為替リスクを回避し、また低賃金の労働力を求めて、中国や東南アジアの国々に生産拠点を移しつつある。こうした産業空洞化については懸念する声もあるが、企業が最適な生産方法を求めた結果、生産活動が国境を越えて広がりつつあることが産業の空洞化であり、なんら不安視する必要はないとの意見もある。
[編集] 日本の工業地帯・工業地域
日本の工業は「太平洋ベルト」と言われる首都圏から北九州にかけての太平洋岸の範囲で盛んである。特に、長くは四大工業地帯(京浜工業地帯、中京工業地帯、阪神工業地帯、北九州工業地帯)が日本の工業の中心地であったが、北九州工業地帯の比重は小さくなった。四大工業地帯以外では、北関東工業地域、京葉工業地域、東海工業地域、瀬戸内工業地域などで工業が発達しており、いずれも太平洋ベルトに位置している。
太平洋ベルト以外の地域では、全体として工業が低調である。北海道ではパルプ、製鉄、化学、鉄鋼などの工業が発達していたが、国際競争が激化するなかで停滞している。東北地方では半導体などの機械工業が発達していたが、機械メーカーの多くが低賃金を求めて、中国などに生産拠点を移していく中、低迷が続いている。長野県では製糸業がまず発達し、戦時中に東京から工場が疎開したことをきっかけに、諏訪盆地ではカメラ、オルゴール、時計など、千曲川沿いの地域では通信・電子部品、自動車部品などが発達した。日本でもっとも工業化が遅れているのは中国地方の山陰、四国(愛媛県南予地方や高知県など)、南九州、沖縄などの地域である。