年末時代劇スペシャル
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『年末時代劇スペシャル』(ねんまつじだいげき-)は、日本テレビが1985年から1993年にかけて、12月30日・12月31日の2夜連続(1991年以降は31日のみ)で放送した時代劇の特別番組である。NHK紅白歌合戦の対抗番組として、テレビ史に残る健闘をした。
目次 |
[編集] 概要
「年末時代劇スペシャル」はNHK「紅白歌合戦」の対抗番組として年末に放送されたシリーズの特別番組である。1985年の「忠臣蔵」から1993年の「鶴姫伝奇」まで、毎年1作ずつ、計9作が製作された。製作は全てユニオン映画が担当。
内容は時代劇であるが、特に幕末の動乱を多く取り上げた作品が多い(2~6作目)。また、ある人物のサクセスストーリーをハッピーエンドで描くというよりは、「運命」や「大きな時代のうねり」に翻弄される人々の悲哀を描く内容が多く、「義」「夢」「信念」といったものを持って生きることを称える内容のシリーズであった。
「忠臣蔵」「白虎隊」などの初期の作品は特に好評で、視聴率的にも成功を収めた。紅白歌合戦の裏番組としては異例の高視聴率を獲得し、紅白歌合戦の視聴率低下を加速させる原因となった(後述)。
第3弾「田原坂」第4弾「五稜郭」の頃になると、年末の定番番組としての評価が定着し、また日本テレビも年末に向け、大規模な宣伝を行うようになり、看板番組にもなっていく。「五稜郭」でははじめてエピローグ(「ウラルを越えて」)を導入。
第5弾「奇兵隊」では、これまで主演・準主演を務めてきた里見浩太朗をはじめてキャストからはずし、松平健を主演にすえた。これを残念に思う里見ファンの要望に応えるため、数日後(つまりは新年特番として)に「里見浩太朗時代劇スペシャル」として「樅ノ木は残った」が放映された。
第6弾「勝海舟」では主演の勝海舟役田村正和が撮影途中に病気となったため、急遽田村の出演は前半部とエピローグのみとし、後半部は山岡鉄舟役を予定していた実弟の田村亮を昇格させ(山岡役は勝野洋に変更)、Wキャストとなった。またナレーションがこれまでの5作すべて担当した鈴木瑞穂から金内吉男に変更され(翌年以降も毎回違うナレーターとなった)、全体の雰囲気が変わった。この年も里見浩太朗の出演は無かったため、前年と同様、数日後に里見主演の「寛永風雲録 激突!知恵伊豆対由比正雪」が放映されている。
1990年代に入ると、企画や番組の方向性にマンネリ的傾向が感じられ、また同様に紅白対策として練られた他局の大晦日企画も充実し始め、本シリーズの評価・視聴率にもかげりが見え始めた。1991年の「源義経」では野村宏伸を主演に抜擢して若年層視聴者へのアピールを行う一方、3年ぶりに準主演として里見浩太朗を復活。これまでの2日間放映ではなく大晦日に一挙放映したが、大きな効果は得られず、長期低落傾向は止まらなかった。
翌年の第8弾「風林火山」は、里見が以前から演じたいと考えていた原作・役柄(山本勘助役)であり、さらに2役として高坂弾正昌信も演ずるなどの話題もあったが、視聴率的には失敗。翌1993年の9作目「鶴姫伝奇」を最後にシリーズ終了となった。
[編集] 歴代作品
放送年 | タイトル | 主演 |
1985年 | 忠臣蔵 | 里見浩太朗,森繁久彌 |
1986年 | 白虎隊 | 森繁久彌,里見浩太朗 |
1987年 | 田原坂 | 里見浩太朗 |
1988年 | 五稜郭 | 里見浩太朗 |
1989年 | 奇兵隊 | 松平健 |
1990年 | 勝海舟 | 田村正和,田村亮 |
1991年 | 源義経 | 里見浩太朗,野村宏伸 |
1992年 | 風林火山 | 里見浩太朗 |
1993年 | 鶴姫伝奇 | 後藤久美子 |
[編集] 紅白歌合戦への影響
20世紀の終わりより、紅白歌合戦の視聴率低下が指摘されているが、本シリーズもその大きな要因の一つであったと評される。
1980年代初頭より、既に、紅白は嗜好の多様化や、出場歌手の人選問題、音楽番組の低迷などの課題を抱え、視聴率の低下が指摘されていた。それでも、本シリーズ開始の前年となる1984年にはいまだ視聴率78%(関東視聴率)を誇っており、その存在は相変わらず圧倒的であった。 しかし、忠臣蔵・白虎隊の放送と同期するように紅白の視聴率は大幅に下落している(下表)ことから、本シリーズが紅白に潜在的に不満を持つ視聴者層を取り込んだことが分かる。
放送年 | 年末時代劇視聴率 | 紅白視聴率(関東) |
1982年 | 69.9% | |
1983年 | 74.2% | |
1984年 | 78.1% | |
1985年 | 15.3% | 66.0% |
1986年 | 17.2% | 59.4% |
ここまでの高視聴率を得られた一因として、本シリーズが30・31日の2日間での放送であったことを挙げることができる。30日の内容が面白ければ、引き続き31日も見たくなる視聴者が一定数期待できるからである。
本シリーズの成功は日本テレビ以外の各局の番組編成にも影響を与えた。 本シリーズ以前には、各局とも紅白歌合戦を強大な存在ととらえ、裏番組の制作に十分なリソース(予算・企画・人員など)を投入してこなかった。 しかし、本シリーズの成功によって、紅白の視聴率は「絶対的で強固なもの」ではなく、「強力な裏番組をぶつけることによって切り崩せるもの」であることが証明された。その結果、日本テレビ以外の各局もこの時間帯の番組に積極的にリソースを投入するようになり、紅白視聴率の低下傾向を加速させることとなった。
- NHK総合「紅白歌合戦」 - ビデオリサーチ。1962年(第13回)以降のテレビ視聴率を掲載。
[編集] シリーズのエピソード
- 豪華なキャスティングを揃え、全9作を数える本シリーズだが、数回にわたって出演した俳優も多い。最も多くの回数出演したのは堤大二郎と本田博太郎の7回。シリーズの顔ともいえる里見浩太朗や副主役級を多く演じた森繁久弥・丹波哲郎らは6回出演している。この他下川辰平・勝野洋・堀内正美も6回出演している。
- 中には同じ役者が同一人物を演じた例もある。本田博太郎は「白虎隊」「田原坂」で同じ佐川官兵衛役を演じ(ストーリー的にもつながりがあった)、夏八木勲は「白虎隊」「五稜郭」で近藤勇を演じている(使い回しの映像で「奇兵隊」でも使われている)。さらに堀内正美は「白虎隊」「田原坂」「奇兵隊」と3度に渡って三条実美役を演じている。
- シリーズの脚本を担当した杉山義法は、分かりにくい幕末の政治情勢を視聴者に対して分かりやすく提示し、感動的なストーリーに仕上げた。いっぽうで、第2弾「白虎隊」では自ら西郷隆盛役として出演している。