無法松の一生
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無法松の一生(むほうまつのいっしょう)は小説家・岩下俊作の『富島松五郎傳』を原作とした映画・演劇である。
映画は4度製作されたが特に名高いのは伊丹万作が脚本、稲垣浩が監督を2回つとめた作品である。
また舞台は昭和17年、文学座で初演以来幾度となく、宝塚歌劇団から歌手の座長公演などまで多岐の団体で演じられてきた作品である。
目次 |
[編集] あらすじ
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
福岡県小倉(現在の北九州市)で、荒くれ者で評判だった人力車夫・富島松五郎(通称無法松)と、よき友人となった矢先、急病死した陸軍軍人・吉岡の遺族(未亡人・良子と幼い息子・敏雄)との交流をえがいた作品。
か弱い吉岡母子の将来を思い、(身分差による己の分を弁えながらも)無私の献身を行う無法松と、幼少時は無法松を慕うも長じて(自身と松五郎の社会的関係を外部の視点で認識するようになったことで)齟齬が生じ無法松と距離を置いてしまう敏雄、それでも無法松を見守り感謝の意を表し続けてきた良子との交流と運命的別離・悲しい大団円などが描かれている。
[編集] 映画・1943年版
1943年10月28日公開。製作は大映。全長は99分あったが、内務省による検閲で松五郎が未亡人に想いを打ち明けるシーンが10分カットされた(時局柄軍人の未亡人の恋愛は戦地の将兵の士気を挫くと考えられた、このシーンではリメイクでも再現されなかったが、却って映像化された生々しい場面を排除することが出来、松五郎の心情表現に含みを持たせることが可能となり、観客の共感を招くことになった)。この時検閲官は「本当はこれをカットするのは惜しい。あと何年かすれば戦争も終わるだろうからそれまで保留という扱いにしたらどうだろう」と言ったが会社側はカットしてでも公開しろという意向だったため、稲垣は泣く泣くフィルムをカットした。さらに戦後占領軍による検閲で封建的だとされたシーンが8分カットされた。
[編集] スタッフ
- 脚本:伊丹万作
- 原作:岩下俊作
- 撮影:宮川一夫
- 監督:稲垣浩
[編集] キャスト
[編集] 映画・1958年版
1958年4月22日公開。製作は東宝。全長104分。1943年版での無念の想いを晴らすため、また、カラー、シネマスコープで松五郎を撮るために稲垣自身がリメイクした。ヴェネツィア国際映画祭グランプリ受賞。
その時の電報は「トリマシタ、ナキマシタ」
[編集] スタッフ
[編集] キャスト
- 三船敏郎(富島松五郎)
- 芥川比呂志(吉岡小太郎)
- 高峰秀子(吉岡良子)
- 笠智衆(結城重蔵)
- 飯田蝶子(宇和島屋おとら)
- 田中春男(熊吉)
- 大村千吉(ぼんさん)
- 多々良純(清吉)
- 稲葉義男(巡査)
- 宮口精二(撃剣の師範)
- 土屋嘉男 (高校の先生)
- 左卜全(居酒屋の亭主)
- 有島一郎 (オイチニの薬や)
- 沢村いき雄(俥の客)
- 中村伸郎 (良子の兄)
- 中北千枝子 (良子の兄の妻)
- 上田吉二郎(茶店の客)
[編集] 映画・1963年版
[編集] スタッフ
[編集] キャスト
- 三國連太郎(富島松五郎)
- 淡島千景(吉岡良子)
- 中山昭二(吉岡直樹)
- 島村徹(吉岡敏雄)
- 宇佐美淳也(大木戸兵衛)
- 松本染升(結城豊蔵)
- 沢村貞子(豊)
- 西村晃(由松)
- 潮健児(巳之吉)
- 花沢徳衛(小野)
- 左卜全(佐分)
[編集] 映画・1965年版
[編集] スタッフ
[編集] キャスト
[編集] 舞台
- 初の舞台化は前述のとおり文学座が潤色・演出を森本薫、無法松・丸山定夫(※『苦楽座』より客演、文学座男性メンバーの多くが出征して手薄による)、良子・杉村春子で上演。
- 宝塚歌劇団は「永遠物語」のタイトルで脚本・演出を草野旦が担当、1982年3月初演、再演は1988年7月、三演が1998年7月といずれも場所・宝塚バウホール、松五郎を榛名由梨(※榛名は'88で退団しているため'98の三演は"客演"である)が演じた。
- 歌手の座長公演では村田英雄,北島三郎らが幾度となく本作を演劇の演目に取り上げ、松五郎を演じた。
[編集] 音楽
- 「どうせ死ぬときゃ 裸じゃないか~」
[編集] その他
- 初映画化時、園井に良子役が配役されるまでに、数名の候補女優が諸々の事情で辞退した経緯があった。
- 初の舞台化時の良子役だった杉村にも出演打診があったが断っている。杉村の辞退理由は文学座の人手不足の問題とも、舞台初演時の劇評(とくに自身の良子役の出来)が今ひとつ辛いものだったからとも言われる。
- 次に打診されたのが水谷八重子 (初代)だったが水谷も自ら断りを入れた。事情・理由は不詳。
- 水谷辞退のち製作側は小夜福子に出演依頼をしたが、折悪しく小夜は妊娠中で出演辞退。