胃癌
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胃癌(いがん, Stomach cancer, Gastric cancer)は胃に生じる癌腫である。広義の「胃がん」は胃粘膜上皮から発生した癌腫(狭義の胃癌)と、上皮以外の組織から発生したがん(胃平滑筋肉腫・GIST・胃悪性リンパ腫など)の両方を含むが、この項では前者につき述べる。それ以外のがんについては各々の項目を参照されたい。
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[編集] 概要
胃癌は胃壁のもっとも内側にある胃粘膜から発生する。進行すると他の臓器やリンパ節にも転移し、胃壁で成長した癌は食道や十二指腸にまでも到達する。
また、癌が胃壁を越えると肝臓、膵臓、大腸など他の臓器に浸潤し、肺や鎖骨より上のリンパ節あるいは卵巣に遠隔転移する。
組織型としては、殆どが腺癌(胃小窩や胃腺に分化する円柱上皮幹細胞から生ずる)であり、稀にガストリン等の内分泌細胞から生ずる内分泌細胞癌(=高悪性度カルチノイド)が発症する。ごく稀に、腺癌とカルチノイドの両方の性質を持った癌が生ずる。また、ごく稀に扁平上皮癌など、胃には無い筈の種類の上皮の癌が生ずる(おそらく、化生した細胞を母地とする)。
胃癌が身体の他の部位に浸潤・転移し、その先で同一種類の癌細胞からなる新しい腫瘍を形成すると、それは原発腫瘍と同一の名称で呼ばれる。例えば、胃癌が肝臓に転移した場合は肝臓にある癌細胞は胃癌細胞であり、疾患としての名称は胃癌肝転移となり、(原発性)肝癌ではない。(しかし、WHOなどが行っている各臓器の腫瘍の組織学的分類には、便宜的に「転移性腫瘍」なり「二次性腫瘍」なりの項目が設けてあるのが通常である。)
胃癌と併発することが知られている卵巣のクルーケンベルグ腫瘍(Krukenberg tumor)は胃癌が卵巣に転移した癌である。この腫瘍は最初に発見した医師の名にちなんで命名されているが、胃癌と異なる疾患ではない。クルーケンベルグ腫瘍の細胞は胃癌細胞であり、原発腫瘍と同一の癌細胞である。
[編集] 疫学
胃癌は中国、日本、韓国などアジアや南米に患者が多く、アメリカ合衆国をはじめ他の諸国ではそれほど顕著ではない。
2003年の日本における死者数は49,535人(男32,142人、女17,393人)で、男性では肺癌に次いで第2位、女性では大腸癌に次いで第2位であった(厚生労働省 人口動態統計より)。かつて日本では男女とも胃癌が第1位であったが、死者数は年々減少している。
胃癌の発生過程でヘリコバクター・ピロリ (Helicobacter pylori)の関与が示唆されている。
- がんの国別・部位別累積罹患率(国立がんセンター・がん統計;2003年)
[編集] 症状
自覚症状による胃癌の早期発見は難しい。ほとんどの早期癌の段階では無症状であり、癌が進行してからでないと、はっきりとした自覚症状はでてこないことが多いからである。また症状があっても、患者はそれほど気にならず、放置する場合が多い。胃癌は進行してくると、次のような症状を呈する。
- 腹痛
- (胃部の)不快感
- 吐き気や嘔吐
- 食事後の胃部膨満感
- 食欲減退
- 体重減少
- 体調不良や疲労感
- 消化不良あるいは灼熱感(胸焼け)
- 吐血や下血・黒色便
胃癌ではじめに出現する症状は上腹部の不快感、膨満感などであることが多い。これらの症状は癌以外の消化器疾患、たとえば慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍でも認められ胃癌に特異的なものではない。これらの他の上部消化器疾患の症状に続いて、胃癌が進行すると腫瘍からの出血に伴う症状が出現する。便が黒色となったり、軟便傾向となる。さらに胃癌からの出血がつづき、貧血が進行すると、貧血による自覚症状、たとえば運動時の息切れ、易疲労感などの症状が現れる。さらに進行すると腫瘍の増大に伴い腹部にしこりを触れたり、食物の通過障害、閉塞症状が現れることがある。このような症状を持つ人々は医師の診察を受けるべきである。日本では普通、消化器内科、消化器科の医師が専門的な診療にあたっている。
[編集] 診断
診断のために、医師は患者の病歴を問診したり、身体所見をとり、画像診断や臨床検査を行う。次のようないくつかの検査が行われる。
- 上部消化管X線撮影(Upper GI series)
- 胃内視鏡検査(Gastroscopic exam)
- 便潜血検査(Fecal occult blood test)
- 腫瘍マーカー血液検査:癌胎児性抗原(CEA:Carcinoembryonic Antigen)など
- 超音波内視鏡検査
- 腹部CT(=Computed tomography)検査
- 腹部超音波走査
胃癌の存在自体を確認するには胃内視鏡検査かバリウムによる上部消化管X線検査が必要である。便の検査や血液検査では早期胃癌の発見は難しい。X線検査で異常が発見されたときも確定診断のためには内視鏡検査が必要である。内視鏡検査で、異常とおもわれる部位を医師が発見すると、組織の一部を一種のピンセットで採取する生検(biopsy)が実施される。生検標本は病理医に送られ、ホルマリンで固定後に染料にて染色され顕微鏡下にて癌細胞の存在の有無が確認される。場合によっては癌抗原による免疫染色が施される場合もある。生検とそれに続く病理検査が癌細胞の存在を確定する唯一の手段である。
上記の検査で胃癌であることが確定すると、医師は画像診断(内視鏡やX線検査)で胃癌が胃のどの範囲に広がるか、どの深さまで浸潤しているか、肝臓などの他の部位に転移していないかを調べる。胃癌は肝臓、膵臓など近傍臓器に浸潤・転移することがあり、胃の周辺リンパ節への転移は頻度が高いのでCTスキャンや腹部超音波診断でこれらの部位を検査する。肺にも転移するので、検査が必要である。これらを総合して病期(stage)の判定が行われる。これは治療方針決定に重要である。 日本においては早期胃癌は大きさ、リンパ節転移に関係なく、深達度が粘膜内、粘膜下層にとどまるものと定義されている。
[編集] 病期
胃癌の進行度は、T:原発腫瘍の拡がり、N:リンパ節転移の拡がり、M:他臓器への転移の有無 の3つの指標で評価される。それらの組み合わせを生存率がほぼ等しくなるようにグループ分けしたのが病期(Stage)であり、数字が大きくなるほど進行した癌であることを表す。国際的にはUICC(International Union Against Cancer)のTNM分類が用いられるが、日本では胃癌取扱い規約による病期分類が広く使用されている。
たとえば胃癌取扱い規約(第13版)によると、胃の固有筋層まで浸潤する腫瘍で(T2)胃壁に接するリンパ節(1群)のみに転移があり(N1)他臓器への転移がない場合(M0)、Stage IIとなる。ちなみに胃癌取扱い規約は日本胃癌学会から出版されており、書店で購入することができる。
最終的な病期診断(Final Stage)は手術後に確定する。外科医は主たる病変を切除するだけでなく、腹部の他の部位の組織サンプルや近傍リンパ節を郭清する。これらの全ての組織標本は病理医の癌細胞検査を受ける。最終的な診断はこの病理検査結果を根拠にして決定され、手術後の治療が必要かどうか判断される。
[編集] 治療
胃癌の治療方針は、腫瘍の大きさ・部位・拡がり、病期、全身状態、あるいは患者の希望など様々な要素を勘案し決定される。
日本では長い間、胃切除+D2郭清(2群リンパ節までの郭清)が標準治療とされ実践されてきた。しかし近年、診断技術の発達により早期胃癌の割合が増える一方、内視鏡的切除や縮小手術が開発され、多様な治療が行われるようになってきた。こうした状況を踏まえ、科学的根拠に基づいた治療の標準化を目指して2001年に日本胃癌学会による「胃癌治療ガイドライン」が作成された(最新は第2版;2004年4月)。 ガイドラインでは、これまでに集積された膨大な症例の解析を基に、癌の進行度(腫瘍の深達度、大きさ、分化度、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無等)に応じた治療法が規定されている。 たとえば、
- 深達度がM(粘膜内)で、N0(リンパ節転移なし)、分化型、2cm以下、潰瘍形成なし、であれば、内視鏡的粘膜切除術
- Stage IIもしくはIIIAなら、2群リンパ節郭清を伴う胃切除術(=定型手術)
- Stage IVなら、(姑息的手術+)化学療法(+緩和治療)
などといった具合である。
一方、欧米では胃癌の治療方針に大きな違いがある。日本の医師が広範なリンパ節郭清を伴う胃切除を行い、手術による癌の完全切除を重視するのに対し、欧米では手術は最小限に済ませ、術後の化学療法や放射線療法を重視する傾向にある。(後述「外科手術」も参照)
治療内容について説明されると、患者は最新の治療法について知りたいと考えるものである。癌の治療法の一部は臨床治験や未承認治療と呼ばれる実験的な医療もある。治療方針の決定は癌の進行度や、患者の全身状態に応じていろいろと複雑である。場合によっては、診断や治療計画について患者が他の専門の医師に意見を求める行為(セカンドオピニオン)は、十分な治療を行ううえで手助けとなる。
癌と診断された患者は、ショックやストレスを受けるのは当然の反応である。患者がこの様な気持ちを医師にあれこれと伝えようと考えても伝え難いものである。そのような場合は、質問をリストとして書き連ねてみることもひとつの方法である。また、医師との質疑応答を覚えておく為にテープに録音する方法も理解の手助けになる。患者によっては家族や友人が立ち会って、医師と質疑応答したり、ノートに取ったり、説明を聞く方が良い。患者が一人だけで考えたり、医師に質問したり、医者からの返答を覚えておくことを同時に行うことは無理がある。また後になっても、他の医師に疾患自体の説明を求めたり、治療方針に関して追加の情報を教えてもらう機会はある。
[編集] 治療の種類
胃癌は早期に発見された場合は手術あるいは内視鏡的に完全に切除が可能であり、完全に切除されたときの再発率は非常に低い。進行胃癌では完全に病変が摘出されても、手術時にはわからなかった微小な転移巣があり、後に再発してくることが少なくない。手術で根治が不可能な進行胃癌であっても手術以外の治療により延命したり、症状を緩和することができる。胃癌の治療として、内視鏡治療、外科手術、化学療法、放射線療法などが施される。新しい治療法としては、生物学的療法(免疫療法)や研究段階である未承認治療が施されることがある。患者はこれらの治療法を単独あるいは併用して治療される。
[編集] 内視鏡治療
内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection; EMR)は、内視鏡(胃カメラ)を用いて胃粘膜の腫瘍を切除するものであり、ごく早期の胃癌に適応となる。日本胃癌学会治療ガイドラインでは、分化型で2cm以下の潰瘍形成を伴わない粘膜病変に適応があるとされているが、これは癌の完全切除を念頭に置いた条件であり、条件に合わないものは外科手術を行うべきというスタンスである。ただし昨今、内視鏡的粘膜下層切開・剥離術(endoscopic submucosal dissection; ESD)の出現により、より大きな粘膜病変でも一括で切除可能となってきており、今後のガイドライン改定に注目されるところである。
なお、組織病理学的に低分化な癌の場合は、内視鏡所見やCT・超音波内視鏡などの画像診断所見で粘膜病変に見えても実際は進行癌である確率が無視できないものであるため、通常はEMRやESDの適応とはならない。
[編集] 外科手術
胃癌に対する外科手術の基本は、胃切除+リンパ節郭清+消化管再建である。腹腔内へのアプローチの方法により、腹腔鏡下手術と開腹手術に分けられる。 腹腔鏡(補助)下手術は、開腹手術と同等の手術が可能であるとの主張がなされているが、それを裏付ける精度の高い調査結果が2005年現在ではまだ示されておらず、現状では比較的早期の胃癌に適応が限定されている。今後の適応拡大が待たれる。 開腹手術は文字通りお腹を開けて手術を行うものであり、癌の存在部位により、胃全摘術、幽門側胃切除術(十二指腸側2/3程度の胃切除)、噴門側胃切除術(食道側1/2程度の胃切除)などが行われ、リンパ節郭清が行われる(日本における標準術式は2群リンパ節郭清)。また、癌が他臓器に直接浸潤しており、且つ腹膜播種や遠隔転移が無ければ、他臓器合併切除を行う拡大手術が検討される。 切除が終わったら、食物の通り道をつなぐために消化管再建が行われる。様々な再建法があり個々の患者の状態に応じて選択されるが、代表的なものはBillroth I法(胃-十二指腸吻合)、Billroth II法(胃-空腸吻合)、Roux en Y法(食道or胃-空腸吻合)、空腸間置法(空腸で置換)などである。ちなみにBillrothは19世紀の外科医で、初めて胃癌手術に成功したとされる。 日本と欧米の胃癌手術には、大きな違いが存在する。すなわち、日本では2群リンパ節郭清を標準とする胃切除が行われるのが通常であるが、欧米では一部を除きこのリンパ節郭清の手技による予後改善の効果を認めていない。このことに関しては現在の臨床治験をはじめとして検討中である。ちなみに欧米での胃癌手術における死亡率は10%前後あるといわれているが、日本では1%程度と考えられ、秀逸である。
完全切除が不能であれば定型的な手術は行わないのが通常であるが、出血や嘔吐や痛みが強い場合は症状の緩和を目的に胃切除術が行われることがある。また他臓器に広範な浸潤があり物理的に切除不能な場合でも、食物の通り道を確保する目的でバイパス術が行われることがある。
[編集] 化学療法
化学療法は薬剤で癌細胞を破壊することを目指すものである。投与された薬剤は血流に乗り、体の隅々に運ばれるので、全身治療に分類される。手術不能例や、再発例、手術で完全に胃癌の組織が切除できなかった際に行われる。しかしながら胃癌は比較的化学療法が効きにくい癌であり、化学療法単独で胃癌が完全に治ることはほとんどなく、延命効果や苦痛緩和があるに過ぎない。また、外科手術前に腫瘍を縮小させる術前化学療法や、手術後に遺残する微小癌細胞の再発予防を目指す術後補助化学療法としても行われる。化学療法と放射線療法との併用療法が研究中である。腹腔内に直接抗癌剤を投与する治療法(intraperitoneal chemotherapy)も癌性腹膜炎に対する治療として行われている。疼痛軽減や、閉塞症状の改善のために化学療法が進行癌の症状を緩和することを目的に施されることもある。化学療法は間欠的に実施されることが普通で、投与の後に回復期間や他の治療の為の休薬の期間等が置かれる。(抗癌剤の投与時に入院したり、外来で点滴・注射されたり、自宅での経口剤投与など)
多くの抗癌剤は注射剤であるが、いくつかの経口剤も存在する。胃癌に対してよく使われる抗癌剤はフルオロウラシル、シスプラチン、メソトレキセート、パクリタキセル、イリノテカンなど、もしくはその類似薬である。抗癌剤は効果を上げるために組み合わせて使用されることが多く、その方法によっては半数近い患者に腫瘍縮小効果を上げることができる。TS-1(商品名)は日本で開発された抗癌剤であり、経口剤でありながら単剤での奏効率が3割程度と高く、日本国内では広く使用されているが、欧米での認知度は今ひとつである。
[編集] 放射線療法
放射線療法(Radiation therapy, radiotherapy)は高エネルギーの放射線で癌細胞に障害を与え、癌の進行を食い止める。放射線療法は手術と同じく局所的な治療法で、放射線は癌細胞の存在する部分だけ照射される。場合によっては、手術後に取り残された癌細胞を破壊する為に、その部位に放射線療法が施される。未承認治療法として術中照射(intraoperative radiation therapy)が手術の補助として有効かどうか研究されている。放射線療法は癌の疼痛をとめる為に施されることがある。
[編集] 生物学的療法(免疫療法)
生物学的療法(免疫療法とも呼ばれる)は身体の免疫が癌細胞を攻撃するのを補助する治療法であり、他の治療法の副作用から回復させる補助としても施されることがある。未承認治療法として他の治療法と併用して、再発癌の防止する生物学的治療法研究が医者によって進められている。別の生物学的治療法として、化学療法中あるいは治療後に(白血球など)血球が減少した患者に、コロニー刺激因子などを投与して、血球数レベルの回復の手助けをすることがある。ある種の生物学的治療法を受ける患者は入院が必要な場合がある。
[編集] 治療の副作用
癌細胞だけを除去したり破壊したりするだけに留める事は困難である。健全な細胞あるいは組織も障害を受けるため、治療には好ましくない副作用が発生する。
癌治療の副作用は患者毎に異なり、今回の治療とそれ以降に受ける治療とでも異なる。医者は副作用が最小限になるように治療方針を組み立て、発生する問題に対処することができる。それゆえ、医者が治療中あるいは治療後に発生する問題を把握できるようにすることが重要である。
[編集] 外科手術の副作用
胃切除術は消化器外科の中では一般的な手術である。手術後に一定期間、患者は安静にしている必要がある。手術後の数日は点滴で(経静脈的に)栄養を摂取する。術後は日が経つにつれ、一般に患者は、液体、柔らかいもの、固形物の順に食事を摂れるようになる。胃切除をおこなうと、患者は一時的あるいは恒久的にある種の食物を消化することが困難になる。そのさいは、医師あるいは栄養士が食事内容の変更を指示する。胃を完全に切除した患者はビタミンB12を吸収することが出来ない。このビタミンは血液や神経の健康維持に必須であり、胃全摘の手術後に数年すると体内の備蓄が枯渇し欠乏症状が発生するために、このビタミンを注射で投与する必要がある。
胃切除患者の一部は、食物や飲料が小腸に急激に流れ込むために、食事後に腹痛、吐き気、下痢あるいは眩暈を引き起こす。この種の症状をダンピング症候群(dumping syndrome)と呼ぶ。食物に大量の糖分が含まれていると、この症状は悪化しやすい。ダンピング症候群は食事内容の変更で治療可能である。1回あたりの食事の量を減らし、食事の回数を増やすことや、糖分を多く含む食事を避け、たんぱく質の多い食事を取ることで改善する。ダンピング症候群を抑えるために薬剤を投与することもある。この症状は3ないしは12ヶ月ほどで通常は消失するが、一部の患者はもっと長く続く。
胃切除したことにより、小腸内の胆汁が残存した胃や食道に逆流するようになると、胃がむかつく症状が引き起こされる。患者の主治医はこの症状を抑えるために、薬を処方したり、OTC市販薬の服用を指示する。
[編集] 化学療法の副作用
化学療法の副作用は患者に投与される薬によって異なり、また患者毎に現れ方は様々である。一般的に、抗癌剤は細胞分裂が活発な細胞により強く作用する。人体の健康な細胞の中では血液細胞が細胞分裂がもっとも活発で抗癌剤の影響を受けやすい。これらの血液の細胞は感染を防御したり、血液凝固を補助したり、体中に酸素を運搬したりする働きを持っている。正常血液細胞が抗癌剤の作用を受けると、白血球が減少して感染症に罹りやすくなったり、血小板が減少して出血しやすくなったりする。また赤血球が減少して貧血状態になったりすることもある。血液系の細胞についで、毛根細胞や消化管上皮の細胞も分裂が活発であるので、化学療法を受けると患者は食欲減退、吐き気、嘔吐、脱毛、あるいは喉の脹れなどの副作用が現れる。患者によっては、特に吐き気や嘔吐については、副作用を抑える薬剤を処方することがある。このような副作用は普通、化学療法の投薬の合間や化学療法が終わると徐々に回復する。
[編集] 放射線療法の副作用
腹部に放射線照射を受ける患者は吐き気、嘔吐、下痢を起こすこともある。医者は、薬剤を処方したり、食事を変えることでこの副作用に対処する。照射する場所の皮膚に赤発、乾燥、腫れ、かゆみを生じることもある。患者は照射部位を着衣が擦らないように、ゆるい木綿の下着を着用するのが良い。患者は放射線療法の期間中は皮膚の手入れに注意を払い、医者の指示がなければローションやクリームを使うべきではない。
患者は放射線療法の期間中に、強い疲労感を感じやすく、治療の後半の週に顕著である。休息をとることが重要であるが、医者が勤めて活発に振舞うように患者にアドバイスすることもよくある。
[編集] 生物学的療法(免疫療法)の副作用
生物学的療法の副作用は治療の種類により様々である。あるケースでは、寒気、発熱、だるさ、吐き気、嘔吐あるいは下痢のような風邪に似た症状が現れる。患者は時として発疹を引き起こし、内出血や出血しやすくなる。この様な症状は重篤なので、患者は生物学的療法を受けている間は入院していることが望ましい。
[編集] 予後
早期に発見され治療が行われれば予後の良い癌である。国立がんセンター中央病院胃癌グループの統計によると、5年生存率は胃癌全体で71.4%、Stage Iで91.2%、Stage IIで80.9%、Stage IIIで54.7%、Stage IVでは9.4%であった。
[編集] 関連項目
- 日本胃癌学会
- 腫瘍学
- 悪性腫瘍
- 消化器科
- 逸見政孝-内臓を大量摘出する手術を受けるもそれが逸見の死期を早めたとの指摘があり、がん治療のあり方に波紋を投げかけた。
- 王貞治-妻を胃癌で失い(2001年)、王本人も2006年胃癌発覚、監督休養(のち復帰)・内視鏡手術を経験
- スキルス
[編集] 外部リンク
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