葫芦島
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葫芦島(ころとう、葫蘆島とも。ピンイン:Húludǎo)は中華人民共和国の遼寧省南西部にある地級市で、港湾都市である。1994年までは「錦西」とも呼ばれた。北京と瀋陽の中間にある交通の要衝で、とりわけ遼西回廊と呼ばれる中国東北部と華北とを結ぶ戦略的に重要な地域の拠点都市でもある。また満州から日本への引揚船の出発地としても有名である。市域の面積は10,415平方メートルで、2004年の人口は273万人である。
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[編集] 地理
葫芦島市の中心地は東経120度38分、北緯40度56分に位置する。遼寧省の西端にあたり、北は朝陽市、東は錦州市、西に山海関をはさんで河北省秦皇島市がある。南は渤海(遼東湾)に面し、環渤海経済圏を形成する都市のひとつである。また、北京方面から山海関を出て一番はじめにある街であり、東北部の西の入り口に当たる戦略的要所である。
葫芦島は大陸性気候であるがモンスーンの影響を受けている。年平均降水量は550-650mmで、年平均気温は8.5-9.5℃である。
[編集] 産業
環渤海経済圏の一部として、開発区などを設置し、有利な交通をPRしての外資誘致に余念がない。地下資源が豊富で、鉛、亜鉛、銅、モリブデンなどの採掘が盛んな鉱業都市であり、石油化学工業、金属工業が盛んな工業都市でもある。大慶油田から秦皇島市へのパイプラインと、盤錦市から葫芦島までのパイプラインが地下を通り、石油化学工場に石油原料を供給している。
また造船業もさかんで、とりわけ中国最大級の造船所・渤海造船廠は国産潜水艦の建造を早くから行い、中国初の原子力潜水艦もここで生産された。それゆえ中国海軍北海艦隊の重要な原潜基地でもあり、軍事上の理由から港湾部は立ち入れない場所が多い。
237kmの海岸線と13万ムーの干潟が広がるため、貝やエビなどの漁業も重要な産業となっている。また海岸部は新たなリゾート・観光資源としても注目されている。山地には森林や牧草地のほかアジア有数の広大な果樹園地帯があり、252万5000ムーの広さに8850万本のさまざまな種類の果樹が植えられており、年に75万トンの果実を産出する。
[編集] 歴史
古代には燕や秦などの支配を受けてきた。この地域で一番古い町である興城の名は遼代の990年にあらわれている。
1902年に綏中県が、1906年に錦西県が、1914年に興城県がそれぞれ置かれた。葫芦島は錦西市街の南にあるひょうたん型の半島で壺蘆島とも呼ばれていたが、張学良がここに港湾を建設したことから発展が始まった。また海浜リゾートとしても知られていた。
1932年からは満州国の一部となり、日本の陸軍燃料廠が錦西に石油精製工場を建設するなど、石油化学・軍事・港湾の拠点としての開発が進んだ。満州国崩壊後、中国には大勢の日本人居留民が取り残されたが、その帰還は連合国の協議によって当時の中国政府の責任となった。日本人難民のうち満州にいた105万人以上は、1946年からの数年間でこの葫芦島の港から引揚船に乗って博多港などへ脱出しており、今も葫芦島には「日本僑俘遣返之地」の記念碑が建っている。
国共内戦中の三大戦役の一つ、1948年秋に中国共産党軍が中国東北部全域の制圧を目指して行なった「遼瀋戦役」では「塔山阻撃戦」の舞台となった。遼瀋戦役の結果、瀋陽方面から撤退した国民党軍は葫芦島から海上へ脱出し、東北部はすべて共産党支配下に置かれた。
1989年、錦州市の管轄下の県級市だった錦西市は地級市に昇格し連山区を置き、錦州市管轄下の葫芦島区・南票区・興城市・綏中県と、朝陽市管轄下の建昌県を統括することとなった。1994年に錦西市は葫芦島市に改名し、あわせて葫芦島区は龍港区に改称した。
[編集] 行政区画
3区、1市、2県を統轄する。
[編集] 交通
葫芦島には北京~瀋陽間の京瀋高速公路などの高速道路や国道が通り、海運では葫芦島港や東隣の錦州港を利用できる。また空港もある。
[編集] 古跡・観光地
万里の長城の一部で、綏中県で川の上を渡っている九門口長城が有名であり、世界遺産に登録されている。また興城市は明代からの歴史を残す都市であるとともに、海岸地帯は「第二の北戴河」とも呼ばれるビーチリゾートにもなっている。その他、秦の始皇帝や前漢の武帝による東方遠征の史跡が残るなど、さまざまな考古学的に重要な遺跡がある。
[編集] 姉妹都市
- 日本・宮崎市
[編集] 外部リンク
- 葫芦島市人民政府
- 葫芦島市の全図
- 英語による、市政府の投資案内・市の紹介
- 英語による葫芦島の短い紹介
- 葫蘆島からの帰還、105万人
- 葫蘆島大遣返(ころとうだいけんへん・葫芦島から日本への引揚を記録したドキュメンタリー映画)
- 遼寧省の行政区画
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(注:瀋陽市と大連市は副省級市。)