山口線
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
山口線(やまぐちせん)は、山口県山口市の新山口駅から島根県益田市の益田駅に至る西日本旅客鉄道(JR西日本)の鉄道路線(地方交通線)である。
中国山地西部、山口県中部から島根県西端にかけての地域を北東から南西に横断する陰陽連絡路線。沿線には山口県の県都山口市や「山陰の小京都」と呼ばれる津和野町などを控えている。
山口線で特筆されるのはSL(蒸気機関車)列車の運転である。国鉄線では1975年12月を最後に蒸気機関車列車の運転は終了していたが、地元やファンの要望により1979年8月1日からC57形蒸気機関車牽引で「SLやまぐち号」の運転が開始された。この列車の成功を受けて、国鉄からJRを通じてSLの復活運転が各地で行われるようになった。
目次 |
[編集] 路線データ
- 管轄(事業種別):西日本旅客鉄道(第一種鉄道事業者)・日本貨物鉄道(第二種鉄道事業者)
- 路線距離(営業キロ):93.9km
- 軌間:1067mm
- 駅数:28駅(起終点駅含む)
- 複線区間:なし(全線単線)
- 電化区間:なし(全線非電化)
- 閉塞方式:特殊自動閉塞式(軌道回路検知式)
- 最高速度:95km/h
- 運転指令所:山口CTCセンター
※広島支社独自で与えられているラインカラーはオレンジ。
[編集] 運行形態
運行はJR西日本広島支社山口鉄道部が担当している(但し、新山口駅は同下関地域鉄道部、益田駅は米子支社浜田鉄道部が駅設備を管理する)。
[編集] 優等列車
陰陽連絡列車として新山口~米子・鳥取間に特急「スーパーおき」が運転されている。山陰本線を基準とするため、普通列車と異なり新山口発が上り列車となる。
[編集] 地域輸送
全線を通して運転される列車もあるが、概ね山口駅を境に運転系統が分かれている。上下合わせ全線通しは7本・乗り換え接続は8本(平日)の計15本。新山口~山口間は毎時2~3本(34往復/日・うち約3分の1が宮野まで直通)、山口~益田間は1~2時間毎の運転で、津和野折り返しの区間列車もある。新山口~山口間には快速「やまぐちライナー」が運転されている。山口市の都市内輸送を担う山口~新山口間は沿線に高校・大学等も多いことから乗車率は高く、終日混雑している。
[編集] ワンマン運転
全線でワンマン運転を実施しており、特に宮野以北は全列車がワンマン運転となっている。無人駅では車内で運賃収受を行う(宮野駅は無人駅だが有人駅と同様の精算方法をしている)。山口~宮野間は1往復のみ車掌が乗務する他はすべてワンマン運転である。
山口~新山口間はおよそ半数の20本あまりに車掌が乗務する。通勤時間帯は車掌が3人乗務する場合もある。また、駅間が短く駅本屋の位置もまちまちなため、通勤時間帯以外でも車掌が前後に計2人乗務することが多い。
[編集] やまぐちライナー
やまぐちライナーは、2002年3月から山口線新山口駅~山口駅間に運行されている快速列車である。
普通列車同様キハ40系単行~2連で運転されている。新山口発10時台~15時台、山口発9時台~13時台にそれぞれ毎時1本ずつの計5.5往復が運行されている。新山口駅での山陽新幹線乗り継ぎをターゲットにしたものであり、地域輸送は特に考慮されていない。新山口~山口間12.6kmを途中湯田温泉のみ停車し13分で結ぶ。山口駅以北に直通する列車もあるが、山口駅以北は各駅に停車する。
また、SLやまぐち号運休日には新山口~山口間にSLやまぐち号ダイヤと同時刻による臨時快速が運行される。停車駅等の運行形態はやまぐちライナーと同様だが、愛称は付けられていない。
[編集] 貨物列車
貨物列車は全線で運行されているが、山口線の駅を発着するものはない。美祢線の美祢駅と山口線を経由し山陰本線の岡見駅を結ぶ専用貨物列車が、1日1往復岡見駅基準の平日に運行されている。牽引機は全区間を通じてDD51形ディーゼル機関車で、貨車はタキ1100形のみ。なお岡見駅に機関車留置線がないため、岡見駅~益田駅間で機関車の回送が行われている。
1980年代まで、山陽と山陰を結ぶメインルートの一つであった。1997年まで残存していた新南陽駅と江津駅や益田駅を結ぶ化学薬品輸送列車も廃止され、現在は細々としたものになっている。
[編集] 使用車両
- 新山口~山口間 キハ40系 1~5両編成
- 新山口~宮野間 キハ40系 1~4両編成
- 新山口~益田間 キハ40系 1~2両編成
- 新山口~益田間 キハ187系(特急「スーパーおき」)
- 新山口~津和野間 C57形、C56形蒸気機関車、12系客車(SLやまぐち)
なお山口線は、非電化陰陽連絡線の中で唯一キハ120などの新型軽快気動車が営業運転されていない路線である。
[編集] 合理化
駅の無人化が著しい。山陽線幡生駅は利用客数約500人/日で駅員が配置されているが、山口線では700人/日の矢原駅や同じく500人/日の大歳駅・宮野駅には駅員が配置されていない。これには、通過する自治体の数が2006年12月現在4自治体しかなく委託先が少ないという理由がある。
なお、線路保守を日中に行うための月1回程度の運休措置は行われていない。また、近年ローカル線で行われることが多い減便による離合施設撤去がなされた駅はない(湯田温泉駅は離合施設が撤去されているが最近行われたものではなく、故に合理化目的ではない)。
[編集] 歴史
山口線開業以前、小郡~山口間に大日本軌道(大軌)山口支社の軽便鉄道が存在していたが、国鉄山口線の開業に伴い、1913年2月19日限りで廃止された。
- 1913年(大正2年)2月20日 - 山口線 小郡(現在の新山口駅)~山口間が開業。大歳駅、湯田駅(現在の湯田温泉駅)、山口駅開業。
- 1914年(大正3年)11月2日 - 上郷駅が開業。
- 1917年(大正6年)7月1日 - 山口~篠目間が延伸開業。宮野駅、仁保駅、篠目駅開業。
- 1918年(大正7年)4月28日 - 篠目~三谷間が延伸開業。三谷駅開業。
- 1918年(大正7年)11月3日 - 三谷~徳佐間が延伸開業。地福駅、徳佐駅開業。
- 1922年(大正11年)4月29日 - (仮)長門峡駅開業。
- 1922年(大正11年)8月5日 - 徳佐~津和野間が延伸開業。津和野駅開業。
- 1923年(大正12年)4月1日 - 津和野~石見益田間が延伸開業し全通。日原駅、石見横田駅、石見益田駅(現在の益田駅)開業。
- 1924年(大正13年)7月15日 - 青原駅開業。
- 1928年(昭和3年)7月18日 - (仮)長門峡駅を長門峡駅に格上げ。
- 1935年(昭和10年)10月1日 - 矢原駅開業。
- 1935年(昭和10年)12月20日 - 周防下郷駅開業。
- 1944年(昭和19年)11月1日 - 周防下郷駅、矢原駅休止。
- 1947年(昭和22年)頃 - 船平山仮乗降場開業。
- 1953年(昭和28年)3月15日 - 日赤前仮乗降場開業。
- 1953年(昭和28年)4月10日 - 周防下郷駅、矢原駅営業再開。日赤前仮乗降場を上山口駅に格上げ。
- 1954年(昭和29年)2月1日 - 船平山仮乗降場を(仮)船平山駅に格上げ。
- 1961年(昭和36年)4月1日 - 渡川駅、名草駅、青野山駅、東青原駅開業。(仮)船平山駅を船平山駅に格上げ。
- 1961年(昭和36年)3月20日 - 湯田駅を湯田温泉駅に改称。
- 1962年(昭和37年)7月17日 - (仮)鍋倉駅開業。
- 1963年(昭和38年)10月1日 - (仮)鍋倉駅を鍋倉駅に格上げ。
- 1966年(昭和42年)10月1日 - 石見益田駅を益田駅に改称。
- 1972年(昭和47年)4月10日 - 仁保津仮乗降場開業。
- 1973年(昭和48年)10月1日 - 山口線から蒸気機関車が引退し無煙化。
- 1979年(昭和54年)8月1日 - 「SLやまぐち号」運転開始。
- 1984年(昭和59年)2月1日 - CTC化。
- 1987年(昭和62年)4月1日 - 国鉄分割民営化により西日本旅客鉄道が承継。日本貨物鉄道が全線の第二種鉄道事業者となる。仁保津仮乗降場を仁保津駅に、本俣賀仮乗降場を本俣賀駅に格上げ。
- 1990年(平成2年)6月1日 - ワンマン運転開始。
- 2003年(平成15年)10月1日 - ダイヤ改正。JR発足後初の減便。小郡駅を新山口駅に改称。
一時期山口線新山口(当時小郡)~山口間を電化しようという気運が高まったが、議会で否決され終わっている。
[編集] 駅一覧
- ●:停車、|:通過
- 普通列車は省略:各駅に停車
駅名 | 営業キロ | 快速 やまぐちライナー |
接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|
新山口駅 | 0.0 | ● | 西日本旅客鉄道:山陽新幹線・山陽本線・宇部線 | 山口県 | 山口市 |
周防下郷駅 | 1.0 | | | |||
上郷駅 | 2.7 | | | |||
仁保津駅 | 4.6 | | | |||
大歳駅 | 7.3 | | | |||
矢原駅 | 8.6 | | | |||
湯田温泉駅 | 10.3 | ● | |||
山口駅 | 12.7 | ● | |||
上山口駅 | 13.9 | ● | |||
宮野駅 | 15.5 | ● | |||
仁保駅 | 20.2 | ||||
篠目駅 | 28.9 | 阿武郡阿東町 | |||
長門峡駅 | 32.3 | ||||
渡川駅 | 35.5 | ||||
三谷駅 | 38.6 | ||||
名草駅 | 41.4 | ||||
地福駅 | 43.9 | ||||
鍋倉駅 | 46.4 | ||||
徳佐駅 | 49.9 | ||||
船平山駅 | 52.8 | ||||
津和野駅 | 62.9 | 島根県 | 鹿足郡津和野町 | ||
青野山駅 | 66.1 | ||||
日原駅 | 72.8 | ||||
青原駅 | 77.5 | ||||
東青原駅 | 80.6 | ||||
石見横田駅 | 84.7 | 益田市 | |||
本俣賀駅 | 89.6 | ||||
益田駅 | 93.9 | 西日本旅客鉄道:山陰本線 |