近畿日本鉄道の車両形式
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近畿日本鉄道の車両形式(きんきにっぽんてつどうのしゃりょうけいしき)では、近畿日本鉄道(近鉄)が保有する鉄道車両の形式と、その分類法及び特色について記す。
なお以下の法則・分類には例外も多く、全系列で当てはまるとは限らないが、当てはまる系列は過半数を超えている。ここに記した情報と実際の車両の仕様を照らし合わたり、修正したいと考える方はその点に留意し、完璧な適用を重視し過ぎてわかりづらさが目立つことがないよう注意されたい。
目次 |
[編集] 符番法則
過去の車両の使われなくなった法則や例外は、数が多いため省略している。
モ | 1 | 2 | 6 | 1 | 3 |
↑ A |
↑ B |
↑ C |
↑ D |
↑ E |
↑ F |
- A 記号
- 制御電動車(cM)電動車(M)=モ、制御車(cT)=ク、付随車(T)=サ。客車を表す「ハ」は付かない。JRのグリーン車に相当する21000系等のデラックスシート車についても「ロ」は付かない。この方式は隣の名古屋鉄道や、西日本鉄道と同じで、三重交通も同様だった。客車以外の事業用車には記号が付く(例:モワ、クワ等)。また北勢線では三岐鉄道が従来経営していた三岐線にあわせ、「クモハ」「クハ」「サハ」に変更されている。
- B 10000位
- 2以上 : 特急車・団体専用車(特殊)
- 1 : 特急車・団体専用車(一般)
- 4桁以下 : 通勤車
- C 1000位
- 8,9 : 奈良・京都線(と大阪線との共通規格車)
- 7 : けいはんな線
- 6 : 南大阪線(特急車は16000台、26000台)
- 5 : 料金不要クロスシート車
- 3 : 京都線 京都市営地下鉄直通規格車
- 2,1 : 大阪・名古屋線(と奈良・京都線との共通規格車)
- 3桁 : 支線(下記参照)
- 2桁 : 事業用車両
- D 100位
- 支線用車両はこの桁で使用線区を区別し、8:伊賀線、6:養老線、2:特殊狭軌線(内部・八王子線)。
- 系列番号は偶数(000,200,400,600,800)を使用し、電動車(M)の形式番号も偶数である。
- これに対し付随車(T)の形式番号は、幹線用なら系列番号に+100、支線用は-100する。
- 前系列に対し大規模な変更が行われた新系列は、前系列の番号に+200。
- E 10位
- 前系列に対し中規模な変更が行われた新系列は、前系列の番号に+10。
- 初期の高性能車で1両単位の増結車が製造された場合、形式番号は系列番号に+50。
- シリーズ21の系列番号は**20系。ただし大阪線投入車は**51から番号がスタートしている。
- F 1位
[編集] 特急・団体専用車両
[編集] 現有車両
- 広軌線特別仕様特急車
- 広軌線ビスタカー
- 広軌線汎用特急車
- 広軌線団体専用車両
- 南大阪線用
[編集] 過去の車両
- 10000系(ビスタカーI世)
- 10100系(ビスタカーII世)
- 10400系(旧エースカー)
- 11400系(新エースカー)
- 12000系(旧スナックカー)
- 18000系
- 18200系(旧あおぞらII)
- 20100系(あおぞら)
近鉄特急 ビスタカー(30000系電車) 近鉄京都線 新祝園~狛田間にて撮影 |
[編集] 通勤形車両
近鉄は阪神や神戸電鉄と共に、大都市近郊の私鉄では最も、車両の系列が複雑でわかり難い会社とされている。そう考えられている理由として、以下の項目が挙げられる。
- 通勤車のデザインが基本的に3種類(後述の第1~4世代の丸まった車体と、第5~6世代の角ばった車体、第7世代のシリーズ21)しか無い。
- 編成両数や機器メーカー、投入線区による系列の違いが存在する。投入線区も他の大手と比べ格段に多い。
- 比較的こまめにマイナーチェンジを行うため、系列番号が小刻み(関西大手は関東と比べ、大量生産系列がかなり少ない)
- これらの違いが世代ごと路線ごとに揃っておらず、不規則な要素が挿入されている。
とは言えこれらは(近鉄に限らず)、これまでどういう系統立てで作られて来たかの概念を理解する事で、その把握をある程度容易なものに近づける事が出来る。例えば新車登場に伴う系列番号の変化も、原則として各路線毎に同じ1000位の番号(後述)が繰り上がって行くものであり、どのマイナーチェンジでどう系列番号が変わったかも、ある程度までは法則性が見られる。
以下は年度毎による車両の総合的変遷を世代別に解説・分類した後、世代別と路線別を組み合わせた表を使用し、これまでの幹線共通規格車を整理している。ただしこの世代名称などは投稿者が便宜上作ったもので、近鉄社内や近鉄ファンで慣例されているものではない。
[編集] 世代別変遷(高性能車)
前世代と次世代両者にまたがる系列も若干存在するので、その点にも注意する事。
- 第0世代(試作高性能車・1954年~)
- 近鉄におけるカルダン駆動は、1954年に試作された1450系がその始まりである。しかし、各線によって架線電圧、車両限界など仕様が全く異なるため、1955年に初の量産型高性能車800系を奈良線に、1957年に片側3扉の1460系を大阪線に、片側4扉の6800系を南大阪線に投入と、各線区別々の仕様で投入されることとなった。
- 第1世代(初期高性能車・1957年~)
- 統一デザインに近い初めての車両は前述の6800系で、大阪線でも1470系という類似車体の系列が作られた。しかし6800系の運転台や1480系の前後対称窓配置など、まだ統一を欠く仕様があちこちにあった。標識灯は当初、他社でも高性能車の頃からよく使われる様になった角型一段だったが、この世代の最後には近鉄独特の角型二段となった。この角型二段は単に尾灯と通過標識灯を分離したものでなく、構内入換運転時に白色灯を点灯する規則が近鉄社内にあるため、優等列車を運転しない支線においても、機会があれば標識灯は角型二段に交換されていった。
- 第2世代(統一規格車体・1961年~)
- 前世代と比べ、機器関係は走行性能やメンテナンスの問題から余り統一されていないが、車体は以下の点が統一された。車体幅は第5世代から全幹線で採用される広幅車体が、まだ奈良線のみでしか使われなかったため、むしろ奈良線だけ規格が違っていたが、車体幅に関係ない部分は勿論共通部品となっている。養老線は625系以外全てこの世代である。
- 正面窓の縁がフラットになった。(Hゴム支持→押さえ面支持)
- 屋根の丸みが弱くなった。
- 標識灯は角型二段(ただし奈良・京都線900~8000系は後で角丸二段に交換)
- 前世代ではオレンジ色(南大阪線)や肌色青帯の塗装があったが、この世代の途中から、以前と同じマルーン一色に戻った。
- 第3世代(ラインデリア車・1967年~)
- この世代は現在廃車進行中。前述の養老線は625系のみこの世代だが、今後幹線から養老線へ、この世代の転出が増えていく可能性がある。
- 近鉄と三菱電機が共同で開発したラインデリアが採用され、従来の扇風機や箱型通風器と比べ、屋根が10cm薄くなった。
- このため系列番号の多く(全てではない)が、前世代の番号に+10した新系列となった。これにより第2~3世代は関連づけし易いので、最も覚え易い世代となっている。
- 標識灯が角丸二段(別名:前方後円墳型や台風の予想進路図型)になった。
- 1970年製造分から、側面に行灯(あんどん)式種別表示が設置された。
- 1971年製造分から、全系列にスカート、一部系列に正面方向幕が設置された(現在は正面・側面とも行先幕が設置済)
なお、奈良線の8000系は第2世代、第3世代に跨る形式である(後に増備されたモ8250形は第4世代)。
- 第4世代(新造冷房車・1972年~)
- ほとんどの車両が現存しているが、余剰を理由として廃車も一部発生している。
- 新造時より冷房を搭載した。天井に冷房風道を仕込んだため第3世代車よりも屋根が高く丸くなった。
- 新性能車で2両編成以上を作る場合、床下の補助機器を二位側車両に搭載し重量の分散化を計っているが、この世代からはこれを再検討、補助機器も一位側車両に搭載した。
奈良・京都線の8800系と3000系は、第4~5世代の過渡的性格を持つ。
- 第5世代(チョッパ省エネ車・1981年~)
- この世代も例外系列が少ないため、覚え易い世代の一つである。
- 車体のフルモデルチェンジが行われ、正面は窓上のステンレス板や角型横3列の標識灯など、全体的に角ばったデザインとなった。
- 編成両数によっても系列番号を本格的に区別する様になった。
- 界磁チョッパ制御が本格的に採用された。だが他社に比べチョッパ車の量産化は遅く、逆にVVVF制御の採用が早かったため、次世代と比べ両数は少ない。特に南大阪線は2両編成の6600系が4編成作られたのみである。これは山岳区間の多い近鉄では回生制動の失効を抑える必要があるのに対し、チョッパは比較的高い速度から失効するが、VVVFは失効速度が低い事が理由の一つである。
- この世代のみの外観上の変遷として、側面表示部が種別のみあんどん式→銀枠なし種別行先方向幕→銀枠つき種別行先方向幕と移行している。
大阪線1251系→1420系は、第5~6世代の過渡的性格を持つ。9200系は全体としては第5世代だが、1991年に増備された中間車サ9350形(サ9310形)は第6世代である。
- 第6世代(VVVF省エネ車・1984年~)
- 基本的外見は前世代と変わらないが、以下の通り多くの変化が加えられている。また第2世代以前の2両編成の廃車が始まった事による代替目的や、支線のワンマン化にこの世代が多く充当された事により、2両編成の車両が大変多い。
- 本格的にアルミ合金製車体を採用。初期車は主にA6N01アルミ合金が用いられていたが、1233F系・1430系・6413F以降はリサイクル性と溶接性を考慮し、A7N01アルミ合金が用いられている。5200系は車体構造と強度の問題で鉄を採用している。
- 第2世代で前述した全幹線新規格車体が本格採用され、奈良・京都線と同じ広幅裾絞り(最大幅2800ミリ)となった。なお名古屋線は車両限界工事が早くに完了していたらしく、この世代より前に奈良・京都線の920系→1010系や8810系が転属した事もある。車両限界工事に関しては同じ線路上を走る10100系以降の特急車が奈良・京都線と同じ広幅裾絞りであるため、解釈上の謎が残る。一説には河内国分駅~関屋駅間において車両限界の制限があり、側窓が開閉不可の特急車は2800mmの広幅でも通過可能だが、通勤車は側窓が開閉可能なため、車両限界が2740mmに押さえられていたという説がある。
- 連結面の窓配置が6800系以来(1480系を除き)非対称だったが、対称となる(ちなみに隣の南海電気鉄道も比較的同時期、非対称から対称に移行した)
- 台枠構造の関係で、車体裾が下方向に若干長くなった。9200系のように第5世代・第6世代の車体が混結されているとはっきり判る。
- 袖仕切りがパイプのみから、化粧板を併用したタイプとなった。
- 運転席の基本仕様は800系でその原型ができ、以後殆ど変化が無かったが(特急車21000系や特殊狭軌の260系もこれに準ずるデザインである)メーターパネルのデザインが若干変更された。
- 制御方式がVVVF制御式になり、乗務員室背後に「VVVF」のマークが入った(5800系のみ「L/C」のマークになっている)。また機器メーカーが日立製か三菱製でも系列番号を分けた。
- マルーンレッド(それまでの1色塗り時代のものより明るい色調のもの)とシルキーホワイトのツートンカラーを採用。この配色は幹線系全通勤車と、後に特殊狭軌線を除く支線にも採用された。2001年頃からは更に裾部と雨樋部分(第4世代車までの車両)のマルーンレッド塗装を省略した簡略化塗装への変更が幹線系・支線双方で進められ、現在ではシリーズ21とアートライナー、特殊狭軌線を除く全通勤車がこの簡略塗装となっている。
- 機器面におけるほんの僅かな変更点でも、1位単位で系列番号を変える様になった。(そこまで細かく分ける必要があるかと考えたくなるが、工場での保守の利便を図ったものと思われる)これまでの系列は第2~5世代ならここに記した通り、理論的分類で把握がかなり容易になるが、この世代の符番形態は熱心な近鉄ファンでも苦労する所である。このため当稿をはじめ多くの車両紹介では「****系列」「****系群」またはVE車、VC車などと電算記号で統括されている。
- 大阪・名古屋線と奈良・京都線で導入系列が統一された。ただし車両の向きや、マスコンの抑速制動を起動させる部分での方式など、不統一な部分はまだ多数残された。
[編集] 幹線系高性能通勤車一覧
- 幹線同士の移籍系列は、改造点が少ない(最小限の路線規格のみ改造など)系列は未掲載。中規模な改造をした系列は、改造前も改造後も、製造時の世代で配置している(改造転入後の年代では配置していない)
- 改番があった系列は改番後、つまり現在か引退時の番号のみ掲載。
- "+"印は引退済車両。ただこれは幹線の旅客営業から全て引退したという意味であり、事業用車や後述の支線転出の為の改造・改番で存続している場合にも、引退の印を付けている。
- 第6世代は前述通りマイナーチェンジで1桁単位での形式変更を行っているため、1230系、1420系等にまとめて記載する。
- けいはんな線と伊賀線転出車は系列数が少ないため、養老線転出車は改造時の変遷が複雑なため、この表には載せていない。
南大阪線 | 名古屋線 (と機器流用車) |
大阪・名古屋線 クロスシート車 |
大阪・名古屋線 | 奈良・京都線 | 奈良・京都線 その他の系列 |
|
第0世代 試作高性能車 |
6441系+ | 1450系+ | 800系+ | |||
第1世代 初期高性能車 |
6800系+ | 1600系+ | 1470系+ | モ1650形+ | ||
第2世代 統一規格車体 |
6000系+ | 1800系+ | 2400系+ | 900系+ | 820系+ | |
第3世代 ラインデリア |
6020系 | 1810系 | 2600系+ | 2410系 | 8000系(60番台~90番台) | 920系+ |
第4世代 新造冷房車 |
6200系 | 2000系 | 2680系+ | 2800系 | 8600系 | 3000系 |
第5世代 チョッパ省エネ |
6600系 | 1200系 | 8810系 | |||
第6世代 VVVF省エネ |
6400系 | 5200系 | 1420系 | 1230系 | 3200系 | |
第7世代 シリーズ21 |
6820系 | 5820系 | 9020系 | 9020系 | 3220系 |
通勤形電車9020系「シリーズ21」 高安駅にて撮影 |
|||
けいはんな線で使われている7000系 生駒駅にて |
260系 日永駅にて撮影(1999年) |
[編集] 内部・八王子線
[編集] 他の独立線区
- 600系・610系・620系(養老線用)
- 860系(伊賀線用)
- 7000系・7020系(けいはんな線-大阪市営地下鉄中央線乗入用)
[編集] 事業用車両
- モト75形
- モト90系
- 五位堂・高安入替車
- モワ24系電気検測車(はかるくん)
[編集] 過去の車両
前述の「幹線系高性能通勤車一覧」に掲載されている車両は、以下では省略した。