近鉄1220系電車
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1220系電車(1220けいでんしゃ)とは、近畿日本鉄道が保有する通勤形電車の一系列。
本稿では、同じく日立製作所製VVVFインバータ機器を搭載した2両編成の系列である1230系(1233系などの派生系列を含む)と、その4,6両編成の系列である1020系(派生系列である1026系)についても記述する。
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[編集] 1220系
1420系(1421F)の量産バージョンとして、1987年3月に登場した2両編成のVVVFインバータ車両。電算記号は1420系、1422系では大阪・名古屋線系統の青山越え可能な2連車を意味するWを用いてVWとなっていたが、これらが三菱電機製のVVVFインバータ制御装置を採用したのに対して、1220系では日立製作所製のものを採用したため、これと区別する意味合いでVCとなった。この区別はその後も1230系、1240系、1253系、1254系、1259系等で継承されていくことになる。
上記のとおり日立製作所製のGTO素子によるVVVFインバータ機器を搭載する。最大車体幅2800mm。裾を絞ったアルミ車体を採用。インバータ装置のメーカーを除く仕様は、1422系と同一である。しかし標準軌全線共通仕様の1230系に移行したため、新製は3編成にとどまる。全車大阪線所属。
[編集] 1230系
1989年7月に登場した、標準軌全線共通仕様のVVVFインバータ、アルミ車体の車両である。電算記号は、奈良線・京都線系統では同線の2両編成車を意味するEを用いてVE、大阪線・名古屋線系ではVCであるが、これは同線系統の1220系の制御装置メーカーが同一であることに倣ったものである。
1220系をベースに、標準軌全線共通仕様に変更されている。標準軌全線共通仕様とは車体設計の共通化とともに、大阪・名古屋線と奈良・京都線の間の車両転配がスムーズに行えるように機器類の配置を可能な限り共通化した仕様のことである。
[編集] 車体・走行機器等
1230系では台車は21000系(アーバンライナー)にならってホイールベース間隔を2100mm(従来車2150mm)に変更した新仕様台車KD-96形(M)、KD-96A形(T)を採用している。また、歯車比を1220系の6.31から5.73に変更し、これがシリーズ21登場前まで標準軌VVVF通勤車に採用されている。
1231F、1232Fの2編成は1220系、1224F、1225Fとして製作されている途中での仕様変更に対し、1233F以降は設計当時からの仕様変更のため、1233F以降の車両を1233系と呼ぶことが多い。1233系以外にも1240系、1249系、1252系、1253系、1254系、1259系と細かく分類されることがある。
なお1224F、1225F製作時の当初の計画では、最初の新造車5編成の車両形式は仮称1230系1231F~1235Fを予定していたが、1220系、1230系関連の計画変更で1233系1233F~1237Fとなっている。
1233系(1989年7月に登場)は当初から共通仕様の下に設計した車体(新アルミ材を採用)に新仕様台車をさらに改良したKD-96B形(M)、KD-96C形(T)を装備している。1249系(1992年2月登場)では補助電源装置がSIV(静止型インバータ)のBS-483Q形(70kVA)となり、運転台後方に車椅子スペースが設けられた。1252系(1993年3月登場)には1軸1ディスクの、1253系(1993年3月登場)には1軸2ディスクのディスクブレーキをTc車に採用したボルスタレス台車が使用された(後にディスクブレーキは1枚に改められている)。1254系(1993年3月登場)では滑走検知装置を取り付け、Tc台車のディスクブレーキ仕様を変更したが、この仕様変更は1255F以降の車両には採用されず、1254系は1編成のみの製造にとどまっている(後にディスクブレーキは1枚に改造)。1255F以降の車両は奈良・京都線用は元の1252系、大阪・名古屋線用は1253系として製造されており、1252F~1277Fは結果的に4形式が入り乱れている。
また、1231F,1232F,1240F,1259Fはワンマン対応工事が施工されている。なお、1233系の1240Fと1253系の1259Fはワンマン改造によりそれぞれ1240系・1259系に系列変更している。1231F,1232Fは2000年11月に、1240Fは2001年4月に、改造されている。
1276Fで製造を完了し、「シリーズ21」の9020系が後継系列として製造されている。1277Fも存在するが、これは後述の1020系の1030Fの中間2両を1026Fに組み込んだため、先頭2両のみを1編成とし、運転台寄りにパンタグラフを増設し、1252系に編入して1277Fとなったものである。
系列 | 編成名 | 電算名 | ク1320(Tc) | モ1220(Mc) |
---|---|---|---|---|
1220系 | 1221F - 1223F | VC21 - VC23 | 1321 - 1333 | 1221 - 1223 |
1230系 | 1231F - 1232F | VC31 - VC32 | 1331 - 1332 | 1231 - 1232 |
1233系 | 1242F ・1243F ・1247F ・1248F | VC42 ・VC43 ・VC47 ・VC48 | 1342 ・1343 ・1347 ・1348 | 1242 ・1243 ・1247 ・1248 |
1240系 | 1240F | VC40 | 1340 | 1240 |
1253系 | 1253 ・1255 - 1257 1260 ・1261 1265 - 1269 |
VC53 ・VC55 - VC57 VC60 ・VC61 VC65 - VC69 |
1353 ・1355 - 1357 1360 ・1361 1365 - 1369 |
1253 ・1255 - 1257 1260 ・1261 1265 - 1269 |
1254系 | 1254F | VC54 | 1354 | 1254 |
1259系 | 1259F | VC59 | 1359 | 1259 |
系列 | 編成名 | 電算名 | モ1230(Mc) | ク1230(Tc) |
---|---|---|---|---|
1233系 | 1233F - 1239F ・1241F 1244F - 1246F |
VE33 - VE39 ・VE41 VE44 - VE46 |
1233 - 1239 ・1241 1244 - 1246 |
1333 - 1339 ・1341 1344 - 1346 |
1249系 | 1249F - 1251F | VE49 - VE51 | 1249 - 1251 | 1349 - 1351 |
1252系 | 1252F ・1258F 1262F - 1264F 1270F - 1277F |
VE52 ・VE58 VE62 - VE64 VE70 - VE77 |
1252 ・1258 1262 - 1264 1270 - 1277 |
1352 ・1358 1362 - 1364 1370 - 1377 |
[編集] 1020系
1991年(平成3年)11月に登場。奈良線・京都線用に製作されたVVVFインバータ制御、アルミ車体の4・6両編成を組成する系列。日立製作所製GTO素子によるインバータ装置を採用。1230系(1233系、1249系、1252系)の4・6両編成バージョンである。
現在のところ奈良線系統のみの在籍であるため、電算記号は同線の4両編成車を意味するLを用いて4両編成ではVL、6両編成ではVHである。同系から初めて、6両編成車固有の電算記号としてHを採用し、以降の5800系&5820系(DH)、9820系(EH)に続くことになる。基本設計は1230系に準じているが、モ1020形、モ1026形、モ1070形、モ1076形のパンタは1基として編成内に母線を引き通した。これはパンタグラフの間隔を30メートルに抑えるためである。
奈良線では同系を2本つないだ4両重連で8両編成、更に2両をつないだ10両編成を組むこともある。また6両編成車は奈良線では普通から快速急行まで幅広く使用され、京都・橿原線では主として急行に使用される。
1230系が1233系、1249系、1252系と細かく分類されるのと同様、1020系においても1026F以降の編成を1026系と区別して呼ぶ場合がある。1026系は1993年9月に登場している。
1026F以降の車両の変更点は、台車をボルスタレス台車に変更し、補助電源装置もSIV(静止型インバータ)をBS-484Q形(70kVA)とし、編成内での補助電源引き通しを行うことにより故障の際のバックアップ機能を持たせてある点である。また、サ1196形とモ1096形の間には簡易運転台が設けられている。
1035Fで生産を完了。後継系列は「シリーズ21」の9820系である。
系列 | 編成名 | 電算名 | モ1020(Mc) | サ1170(T) | モ1070(M) | ク1120(Tc) |
---|---|---|---|---|---|---|
1020系 | 1021F - 1025F |
VL21 - VL25 |
1021 - 1025 |
1171 - 1175 |
1071 - 1075 |
1121 - 1125 |
系列 | 編成名 | 電算名 | モ1026(Mc) | サ1176(T) | モ1076(M) | ク1126(Tc) |
---|---|---|---|---|---|---|
1026系 | 1026F | VL26 | 1026 | 1176 | 1076 | 1126 |
1026系 | 1030F - 1035F |
VL30 - VL35 |
1030 - 1035 |
1180 - 1185 |
1080 - 1085 |
1130 - 1135 |
系列 | 編成名 | 電算名 | モ1026(Mc) | サ1176(T) | モ1076(M) | サ1196(T) | モ1096(M) | ク1126(Tc) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1026系 | 1027F - 1029F |
VH27 - VH29 |
1027 - 1029 |
1177 - 1179 |
1077 - 1079 |
1197 - 1199 |
1097 - 1099 |
1127 - 1129 |
[編集] 改造・組成変更
1998年(平成10年)から1999年(平成11年)にかけて、1033Fにシングルアーム式パンタグラフを搭載した走行試験が行なわれたが、現在は元の下枠交差形のパンタグラフに戻っている。その後、「シリーズ21」各系列で採用された。
4両編成車は東花園検車区所属の1035Fを除き、生駒線のワンマン運転に対応した改造をしており(1035F以外は西大寺検車区所属)、現在は生駒線の全列車に使われているが、奈良線(2編成つなげたり、1230系や9020系などを連結)や京都線などの運用に入ることもある。また4両編成車はバリアフリーの一環として、車内案内表示器を出入り口上部に設置、及び車外転落防止幌を取り付けの改造を受けている。
2002年、1030Fの中間車モ1080・サ1180をそれぞれサ1196、モ1096に改番して1026Fに組み込まれた。この2両には他のサ1196形とモ1096形と異なり簡易運転台は付けられていない。
残りの先頭の2両モ1030・ク1130はモ1277・ク1377に改番され、2両編成の1277Fとなり、1230系(1252系)に編入された。なおモ1096・モ1277には南大阪線6620系6621F母線引き通し工事で余剰となったパンタグラフを流用し、それぞれ1基ずつ追加してパンタグラフを2基とした。
系列 | 編成名 | 電算名 | モ1026(Mc) | サ1176(T) | モ1076(M) | ク1126(Tc) |
---|---|---|---|---|---|---|
1026系 | 1031F - 1035F |
VL31 - VL35 |
1031 - 1035 |
1181 - 1185 |
1081 - 1085 |
1131 - 1135 |
系列 | 編成名 | 電算名 | モ1026(Mc) | サ1176(T) | モ1076(M) | サ1196(T) | モ1096(M) | ク1126(Tc) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1026系 | 1026F - 1029F |
VH26 - VH29 |
1026 - 1029 |
1176 - 1179 |
1076 - 1079 |
1196 - 1199 |
1096 - 1099 |
1126 - 1129 |
[編集] 関連商品
1252系と1026系についてはそれぞれグリーンマックスよりNゲージ鉄道模型で発売されている(商品名は「近鉄1436/1252/6422系セット」と「近鉄1620/1026/6620系セット」)。特に説明書には記載されていないが1253・1254・1259系も無加工で製作可能であり、別売の台車の変更などの小加工で、1233系など他形式の一部も製作可能である。
[編集] 関連項目
現有車両 |
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広軌線: 9820系・9020系, 9200系・9000系・8810系, 8800系・8600系・8400系・8000系(60番台~90番台), 5820系, 5800系, 5200系, 3220系, 3200系, 3000系, 2800系・2680系・2610系・2000系, 2430系・2410系, 1810系, 1620系・1430系・1420系, 2050系・1400系・1201系・1200系, 1230系・1220系・1020系, 1010系, 1000系 南大阪線: 6820系, 6620系・6400系, 6600系, 6200系・6020系 独立線区: 260系(内部・八王子線用), 620系・610系・600系(養老線用), 860系(伊賀線用), 7000系・7020系(けいはんな線-大阪市営地下鉄中央線乗入) 事業用: モト75形, モト90系, 五位堂・高安入替車, モワ24系電気検測車(はかるくん) |
過去の車両(近鉄による新造形式) |
8000系(20番台~50番台), 6800系, 6441系, 6411系, 6000系, 2600系, 2400系, 1800系・モ1650形・1600系, 2470系・1480系, 1470系, 1460系, 1450系, 920系, 900系, 880系, 820系, 800系 特急車格下げ車両: 2250系, 6421系, 6431系 |
過去の車両(合併各社よりの承継形式) |
大阪電気軌道・参宮急行電鉄: モ1000形, モ1100形, モ1200形, モ1300形, 2200系 大阪鉄道・吉野鉄道: モ5800形, モ6601形 伊勢電気鉄道・関西急行電鉄: モニ6201形, モニ6231形, モ6301形 奈良電気鉄道: 400系, 680系(旧京都線特急車), 683系(旧京都線予備特急車) その他: モ5251形 |