近鉄5200系電車
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5200系電車(5200けいでんしゃ)は、近畿日本鉄道の急行用車両。本項では派生系列である5209系・5211系も記述する。
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[編集] 概要
1988年(昭和63年)に長距離急行・快速急行用及び団体運用を目的にして作られた。三菱電機製GTO素子のVVVFインバータ制御装置が搭載されている。転換式クロスシートを採用している。More Comfortable,Modern Technology,Multi Purposeの「M-3」が5200系の設計のコンセプトである。上本町・名古屋寄りから、cT(ク5100) - M(モ5200) - M(モ5250) - Tc(ク5150) の4連を組む。トイレはTc車であるク5100とク5150にそれぞれ和式のものが設置されている。さらに急行用という位置付けだがラッシュ対策のため、片側3ドアの普通鋼製車体が採用された。車体が鋼製とされたのは、本系列では5連窓を採用した関係上、当時普及していたアルミ製だと車体強度・剛性が不足するからである。電算記号(他社で言う「編成番号」に相当するもの)はVXで、大阪線・名古屋線に4両編成13本(52両)が配置されている。同じく、標準軌線である奈良・京都線系でも走行可能であるが、西大寺検車区には配置されていない。ただし臨時列車・団体貸切列車として奈良・京都線を走行する事がある。
大阪線・名古屋線の長距離急行の運用が主であるが、大阪線ではラッシュ時の運用にやや難があること、そして東海旅客鉄道(JR東海)の快速「みえ」などとの競合も激しい為、13編成中9編成は名古屋線配置となっている。なお急行用として製造されているが、準急や普通にも一部で使われることもある。
また、補助電源装置を電動発電機からSIV(静止型インバータ)に変更した5209系(5209~5210F)、台車をボルスタレス台車に変更した5211系(5211F~5213F)と分けられている。
[編集] 車体・走行機器等
足回りの機器はロングシートの1422系とほぼ共通の仕様としている。VVVFインバータ装置は三菱電機製MAP型制御装置であり、M車は2両とも制御装置を装備した1C4M制御を採用している。主電動機出力も同じく165kW×4で、歯車比は最初の4編成が6.31、第5編成以降が5.73となっている。またTcにそれぞれMG、CPを各1台ずつ装備している。MGはHG-77463形(70kVA)、CPはC-1000L形である。パンタグラフは交差式のものを2両のM車の上本町寄りに設置している。回生制動装置はHSC-2R型である。5201F~5208Fの台車は積層ゴムブッシュ軸箱案内式横剛性空気バネ台車であるKD-301形(M)、KD-301A形(Tc)を採用している。ホイールベース間隔を2100mmとしている。冷房装置は各車両とも10500kcal×4台の集約分散型のユニットクーラーを装備し、冷房効果向上のため、Tc車には6台、M車には7台のラインデリアを天井中央に配置している。また、各車2台ずつ屋上に500m/hの換気扇を設置している。転換クロスシートのシートピッチは910mmとし、余裕を持たせている。シートの表地はM車はブラウン系、Tc車は淡いグリーン系としている。側扉付近に、団体運用時に使用する折り畳み式補助シートを格納した、腰高さのFRP製仕切壁を設置し、客席座席部分と踊り場を隔離している。補助席は運転台からロック解除の操作を可能としている。座席定員は通常時200人、補助席利用時は296人を確保している。5連窓の側窓は、上辺高さは通常のロングシート車と同一としているが、框(下辺)高さをロングシート車に比べて50mm下げ、800mmとしている。運転台はロングシート車に準じるが、1422系等とは異なり、前照灯周辺もマルーン・レッドとし、運転台の左右正面窓ガラスに曲面ガラスを採用し、展望性を高めている。貫通扉のガラスも腰高さを一般通勤車に比べて下げた縦長のものを採用している。標識灯はLEDによるものを採用している。
[編集] 改造
近年改良が加えられ、出入台の吊手の設置、座席(窓際)のひじ掛けの撤去、モニタ装置の更新などが実施された。現在、5209FはFFCパイロゲンのアートライナーになっている。
[編集] 追記
近畿車輛が提案した本系列は、後のJRグループ各社(東日本旅客鉄道(JR東日本)を除く)の新型近郊形電車の開発・設計にも強く影響を与えた車両で、近郊形の革命児的な車両でもある。特に国鉄型車両のイメージを一新した221系・311系・811系の開発・設計の参考にされた。
なお、1988年に通商産業省(当時)グッドデザイン商品に選定されている。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
現有車両 |
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広軌線: 9820系・9020系, 9200系・9000系・8810系, 8800系・8600系・8400系・8000系(60番台~90番台), 5820系, 5800系, 5200系, 3220系, 3200系, 3000系, 2800系・2680系・2610系・2000系, 2430系・2410系, 1810系, 1620系・1430系・1420系, 2050系・1400系・1201系・1200系, 1230系・1220系・1020系, 1010系, 1000系 南大阪線: 6820系, 6620系・6400系, 6600系, 6200系・6020系 独立線区: 260系(内部・八王子線用), 620系・610系・600系(養老線用), 860系(伊賀線用), 7000系・7020系(けいはんな線-大阪市営地下鉄中央線乗入) 事業用: モト75形, モト90系, 五位堂・高安入替車, モワ24系電気検測車(はかるくん) |
過去の車両(近鉄による新造形式) |
8000系(20番台~50番台), 6800系, 6441系, 6411系, 6000系, 2600系, 2400系, 1800系・モ1650形・1600系, 2470系・1480系, 1470系, 1460系, 1450系, 920系, 900系, 880系, 820系, 800系 特急車格下げ車両: 2250系, 6421系, 6431系 |
過去の車両(合併各社よりの承継形式) |
大阪電気軌道・参宮急行電鉄: モ1000形, モ1100形, モ1200形, モ1300形, 2200系 大阪鉄道・吉野鉄道: モ5800形, モ6601形 伊勢電気鉄道・関西急行電鉄: モニ6201形, モニ6231形, モ6301形 奈良電気鉄道: 400系, 680系(旧京都線特急車), 683系(旧京都線予備特急車) その他: モ5251形 |