近鉄2600系電車
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2600系電車(2600けいでんしゃ)とは、1970年に登場した、近畿日本鉄道の大阪線、名古屋線用急行車である。
通勤形と同じ4扉を装備しながら、固定式クロスシートを採用して長距離利用者の利便に応え、同時に収容力も両立させたグループである。当時の大阪線や名古屋線の急行は、2200系や2250系などの旧型車が活躍していたが、老朽化が進んでいたこと、特に2200系は戦前製で半鋼製車のため、長大トンネルでの保安面を考慮し、新型車を導入することになった。
いずれも、外観は一般ロングシート車と変わらなかったので、乗り込んだ途端に右往左往する一般客もいたという。但しクロスシート車については、側窓の天地寸法がロングシートの2800系よりも60mm大きく、窓框の高さも同じだけ低い。
2680系電車は、廃車となった特急車10000系の機器を流用し、近鉄の特急車以外では初めての冷房付きとして1971年に製造されたグループ、2610系電車は、2600系の量産型で冷房装置を搭載し1972年から製造、2800系電車は2610系と同型で客席をロングシートとした通勤形である。2000系電車は「ビスタカーII世」10100系の電装機器を流用して、2800系同様の車体を新製した通勤形である。本項では、これらをまとめて紹介する。
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[編集] 2600系
2600系は、1970年に4両編成2本と2両編成2本が近畿車輛で製造された。 編成はク2700形(Tc)-モ2600形(Mc)または、ク2700形(Tc)-モ2650形(M)-サ2750形(T)-モ2600形(Mc)となっている。電算記号(他社でいう編成記号)はQである。
車内設備は、座席は4人掛け向かい合わせ式のクロスシートで、扉間に2ボックスが設置された。4扉とクロスシートの両立のため、ボックス長は1320mmで国鉄近郊型よりも狭く、座席表地はビニールクロスである。扉部分には団体列車として使用した際に使う収納式の補助席も設けられており、補助席使用時には乗降扉は700mmしか開かないようになっていた。
トイレはク2700形とサ2750形に和式が1箇所ずつ設置された。トイレは貯蔵タンク式である。また、トイレや運転席のないモ2650形は定員210名と国内最大を誇った。これはモ2660形、モ2680形も同様である。
冷房装置は搭載せず、ラインデリアを装備した。
性能は、WN平行カルダン駆動方式で主電動機は三菱電機製155kwモーターを装備する。これは2410系以来採用されているものである。制御装置は同じ三菱製の電動カム軸式抵抗制御(モーター4台制御)で各電動車に搭載した。台車はともに近畿車輛製シュリーレン式で、空気バネ式である。パンタグラフは各電動車に1台装備した。ブレーキ(制動)方式はHSC-D型(発電制動・抑速制動付き)である。空気圧縮機と電動発電機はク2700形とサ2750形にそれぞれ装備した。
[編集] 改造・廃車
1979年に冷房装置の取り付けを行った。これにともない電動発電機はク2700形に集約された。車内設備では座席の背ずりが低いのを高く改修し、また病院の待合室のベンチのようなビニールクロスの表地はモケットになった。一部座席はボックス長を広げている。
1989年から車体更新工事を行い、方向幕装置の取り付けも行われた。後述の2610系、2680系はトイレ前の一区画残してロングシートに改造されたが、本系列は全座席クロスシートのままで残った。その理由は団体用としてのニーズがあったこと、そして、前述の補助席使用時の乗降扉が700mmしか開かないようにする機能があったことが挙げられる。
2002年から2003年にかけて全車が廃車され、現存しない。同時期に製造されていた2410系、2430系の殆どが2度目の車体更新(B更新)を受けているにも関わらず、2600系が廃車になったのは、固定クロスシート(ボックスシート)による居住性に難があり、晩年は2603F以外はあまり使用されていなかったことが理由に挙げられる。
[編集] 2680系
2680系は、1971年に近鉄一般車では初めての冷房車として製造された。
編成は主電動機出力の関係からモ2680形(偶、Mc)-モ2680形(奇、M)-ク2780形(Tc)の3両編成で、2本計6両が製造された。電算記号(他社でいう編成記号)はXで、本形式がはじめて付けたものである。
車内設備は2600系に準じたものとした。トイレはク2780形に設置している。冷房装置は分散式ユニットクーラーを1両に5台設置し、これにラインデリアを併設したほか、熱交換型換気装置(ロスナイ)も1台設置されている。
性能は、WN駆動で主電動機は三菱製125kwモーターを装備するが、これは1971年に廃車となった10000系「ビスタカーI世」からの流用である。台車は新造品でシュリーレン式の空気バネ付きである。制御装置も10000系から譲り受けた三菱製の電動カム軸式抵抗制御(モーター8台制御)である。直列・並列切り替えを手動で行う特急用制御装置の流用のため、主電動機4個永久直列2群の並列制御に固定されており、直並列制御は行えないようになっている。ブレーキ(制動)方式はHSC-D型(発電制動・抑速制動付き)である。パンタグラフはモ2680形(奇)に2台装備する。
[編集] 改造・廃車
1979年に座席の改良がなされ、2610系と同じ仕様となった。また、方向幕装置の取り付けも行われている。
1989年には、5200系の登場で、ロングシートに改造され名古屋線に移籍した。
2684F(第2編成)は2001年に1481系の代替として鮮魚列車専用車に改造され、塗装もマルーンレッドをベースに、前面に白帯を入れる塗装として区別されるようになった。正面方向幕は残され、「鮮魚」(英字無し)の表示を出して運行をしている。なお2682F(第1編成)は2002年8月に廃車された。製造当初より冷房装置設置の通勤車が廃車されるのはこれが初めてのケースである。廃車の理由は乗客減による余剰、そして旧車機器流用車のため、足回り機器の老朽化、そして2684Fのための部品取りなどが挙げられる。更新の際に分散クーラーの配列を一部変更している。
[編集] 外部リンク
鉄路の名優「海の幸を奈良や大阪へ運ぶ列車 鮮魚列車」(近鉄公式サイト)
[編集] 2610系
2610系は、1972年から1976年に4両編成17本68両が近畿車輛で製造された。
編成はク2710形(Tc)-モ2660形(M)-サ2760形(T)-モ2610形(Mc)となっている。電算記号(他社でいう編成記号)は2680系と同じくXである。
車内設備は、座席は4人掛け向かい合わせ式のクロスシートで、扉間に2ボックスが設置された。扉部の補助席をなくしたため、ボックス長は1400mmに拡大された。座席表地はモケットになったが、肘掛けは設置されなかった。
トイレはサ2760形に和式が1箇所設置されたが、ク2710形にはない。トイレは貯蔵タンク式である。冷房装置は分散型ユニットクーラーで他にラインデリア、熱交換型換気装置が装備されている。なお、冷房装置は最初の6編成(2611~6F)は5台搭載の個別カバーだったが、以降は容量を増大した新型とし、4台搭載の連続カバーになった。また、前面方向幕も同時に装備されるようになった。
性能は2600系と同一で、WN平行カルダン駆動方式で主電動機は三菱電機製155kwモーター、制御装置は同じ三菱製の電動カム軸式抵抗制御である。台車はともに近畿車輛製シュリーレン式で、空気バネ式である。ただし、ク2721~4とサ2771~4の8両は2200系が使用していたコイルバネ台車を流用した。パンタグラフはモ2610形に1台、モ2660形に2台装備した。ブレーキ(制動)方式はHSC-D型(発電制動・抑速制動付き)である。空気圧縮機はク2710形とサ2760形、電動発電機はク2710形に装備した。
[編集] 改造
当初は伊勢方面への観光輸送・長距離乗車と、大阪口での通勤輸送の両立を考慮したクロスシート車として製造された。しかし、混雑時の対策として立席スペースをできるだけ確保する設計を行ったため、2600系より若干改善されたとはいえシートピッチ・幅とも非常に狭く、さらには肘掛がないため実質ロングシートと同等以下の乗り心地でしかないクロスシートであった。また、大阪~伊勢間の旅客輸送においては自動車を除いて競合相手がおらず、快適さを求める乗客は特急料金を払って特急に乗車するため、必ずしもクロスシートが必要ではないという同路線の事情もあった。さらに、1988年に3扉転換クロスシートの車内設備を備えた5200系が登場し、一部の快速急行・急行の運用を同系列に振り替えることになったため、1989年からロングシートへの改造が開始されることとなった。大阪線所属の編成から先に着手し、トイレ前1区画を残してロングシートになった。このため内装はJR東日本の107系と似ている(但し107系は3扉)。なお、トイレ前に残されたクロスシートは僅かながらシートピッチを広げてある。ロングシートの袖ひじ掛けは第1編成(2611F)のみVVVFインバータ制御の通勤車(1230系など)と同一のものであるが、その他はパイプ式の旧式ひじ掛けとなった。方向幕も前面および側面に装備されるようになった。他に、ク2710型に搭載されていた空気圧縮機はサ2760形に大容量のものを搭載し、集約した(11F~16Fまで。同編成は更新の際に分散クーラーの配列を一部変更している)。
大阪線所属の同系列はロングシート改造後は中・長距離を問わず急行を中心に運用されているが、5200系や5800系等L/Cカーによる急行の運用が増えたこともあって現在では準急や普通の運用に入ることも多くなっている。
1996年には、2621FがL/Cカーに改造された。座席を昼間時はクロスシート、ラッシュ時はロングシートに切り替えできる画期的な座席を導入したもので、本編成での試用を経て、新造車(5800系)および改造車を導入することになった。2626F、2627Fの8両もL/Cカーとなったが、他の編成は現在すべてロングシートに改造されて、大阪線、名古屋線(L/Cカーは名古屋線のみ)で継続して使われている。名古屋線車両がL/Cカーに改造された理由は、大阪線とは違って名古屋線には競合路線(JR東海)が存在し、名伊特急と共に快速みえ号と対抗する役割も担っているためである。所要時間はみえ号より遅いが車内設備が同等(増結車を除く)で、特急料金がかからないため運賃の面でも対抗しており、また松阪以北では特急同様運転本数の面でも優位に立っている。試作車の2621Fとは異なり、2626F、2627Fはカーテンをフリーストップ式に改められ、また側面二枚窓中央のサッシの外装側は黒く塗られている。
初期車両の2回目の車体更新(B更新)も始まっている。室内の壁紙がL/Cカーと同じ色のもの(明るめのグレーを基調としたもの)に改められたが、シートはロングシートのままである。現在2611~16・18~20FがB更新を施行済みである。全車が現存する。
[編集] 2800系
2800系は、1972年から1979年にかけて近畿車輛で製造された、2610系のロングシート版である。また、2430系・1810系の製造当初より冷房装置搭載版でもある。
編成は2両編成がク2900形(Tc)-モ2800形(Mc)、3両編成がク2900形(Tc)-モ2850形(M)-モ2800形(Mc)、4両編成がク2900形(Tc)-モ2850形(M)-サ2950形(T)-モ2800形(Mc)となっている。2両編成は2本、3両編成は5本、4両編成は10本の計59両が在籍する。電算記号(他社でいう編成記号)は両編成関係なくAXである。
車内設備は、座席はロングシートである。座面を低く、奥行きを広くして座り心地を良くした。
冷房装置は分散型ユニットクーラーで他にラインデリア、熱交換型換気装置が装備されている。なお、冷房装置は最初の4編成(2801~4F)は5台搭載だったが、以降は容量を増大した新型とし、4台搭載になった。また、前面方向幕も同時に装備されるようになった。
性能は、2610系と同一である。ブレーキ(制動)方式はHSC-D型(発電制動・抑速制動付き)である。空気圧縮機はク2900形とサ2950形(サ2959を除く)、電動発電機はク2900型に装備した。
パンタグラフは2両編成はモ2800形に2台、3両編成がモ2800形の運転席側に1台とモ2850形に2台、4両編成はモ2800形のパンタグラフが連結側にあり、モ2850形は2台装備する。
AX11編成はFFCパイロゲンのアートライナーになっている。
[編集] 改造・廃車
1989年に2817F、サ2967に急行での運用を考慮し、トイレが設置された。その他、各車とも車体更新工事も実施され、方向幕も全車に装備された。
1997年には、2811F、2813F、2815Fの4両編成3本がL/Cカーに改造された。座席だけでなく、中間車の連結面の窓が埋められ、フリーストップ式のカーテンを採用し、2610系改造L/Cカーと外見上・内装上は大差が殆ど見あたらない。これら編成にはサ2950形にトイレを設置した。先にトイレが設置されたサ2967とは、トイレが設置された場所が異なっている。サ2967は車端部の窓が一枚のところに設置されたが、2811F、2813F、2815Fは2610系に合わせて車端部の窓が二枚のところに設置された。2610系の大多数がロングシートに改造されたなか、2800系にL/Cカーへの改造車がある。
これは1997年当時、2610系の初期車両がロングシートに改造されて間もなかったこと、そして車体更新の時期がちょうど1997年に当たっていた2811F、2813F、2815Fが車内設備以外が2610系と変わらなかったことで白羽の矢が当たったものと考えられる。L/Cカーは2610系同様に名古屋線に所属する。
2006年7月、AX09編成のサ2959が2800系初の廃車になり、もとAX09編成は3連化の上、名古屋線に転属になった。
サ2959以外の全車が現存する。
[編集] 2000系
1978年に名古屋線旧性能車の代替用として製造された。主電動機は廃車になった「ビスタカーII世」10100系のものを流用している。3両編成で、全車名古屋線所属。車体は同時期に製造されていた2800系の後期車2805F以降と同一である。電算記号(他社でいう編成記号)はXTである。
編成はMc(制御電動車)、M(電動車)、Tc(制御車)のMMユニットの3両編成で、名古屋寄りからク2100(Tc)+モ2000(奇数)(M)+モ2000(偶数)(Mc)と組む。電動機出力は、10100系時代の125kWから132kWに増強されている。一方、主制御器は日立製 MMC が新製された。パンタグラフはM車にPT-4203形が2基搭載されたが、1979年に増備された車両は下枠交差形のPT-48形に変更されている。
全車名古屋線用として製造されたが、抑速ブレーキを含む発電ブレーキを装備していることから、当初大阪線の2430系3両編成の冷房改造期にあたり、車両不足の応援として一部の車両は大阪線に貸し出されたこともあった。
[編集] 改造
第7編成のXT07(2107-2013-2014)の、ク2107号には急行運用を考慮してトイレが設けてあり、かつては大阪-伊勢志摩間の快速急行にも入った時期があったが、現在は急行運用にはほとんど入らない(入る場合は臨時列車であったり、2610系や2800系のL/C改造車や5200系などの名古屋線急行車両が一時的に不足したときに応急処置として3+3の編成を組ませるときくらいである)。
また、第1・2・7編成以外は湯の山・鈴鹿線用ワンマン改造車である。最近XT09編成及びXT12編成が三重県四日市市にある企業をモチーフとしたペイント(ラッピング)列車となり、鈴鹿線・湯の山線のワンマン運用を中心に活躍中である(余談だがXT09の広告は2050系のものとほぼ同じものである)。また、2004年にTc車(C#2105、C#2106、C#2108、C#2109、C#2111、C#2112)は廃車になった奈良線の8000系60番台のT車(サ8700形)で使用されていた空気バネ台車KD-64Aに取り替えられた。全車が現存する。
[編集] その他
ここまでの大阪線・名古屋線用抵抗制御通勤車(1470系以前を除く)の基本性能は、主電動機出力の差に関わらず加速度(高加速時)=2.5km/h/s(MT比1:1)・3.2km/h/s(MT比2:1)、常用減速度=4.0km/h/s、営業最高速度=110km/hとされている。但し、大阪線の急勾配区間を走行できるのは、155kWモーター車はMT比1:1、125kWまたは132kWモーター車はMT比2:1以上の、全車抑速ブレーキ付き編成に限られる。歯車比は155kWが4.61、125kWまたは132kWが5.47と差があるが、155kWモーターは低回転高トルク型なので、定格速度や走行特性は類似している。
[編集] 関連商品
2600系、2610系はそれぞれNゲージ鉄道模型(キット)で発売されている。2600系は2430系も、2610系は2800系も製作可能で、また小加工により他形式の一部も製作可能である。
[編集] 関連項目
現有車両 |
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広軌線: 9820系・9020系, 9200系・9000系・8810系, 8800系・8600系・8400系・8000系(60番台~90番台), 5820系, 5800系, 5200系, 3220系, 3200系, 3000系, 2800系・2680系・2610系・2000系, 2430系・2410系, 1810系, 1620系・1430系・1420系, 2050系・1400系・1201系・1200系, 1230系・1220系・1020系, 1010系, 1000系 南大阪線: 6820系, 6620系・6400系, 6600系, 6200系・6020系 独立線区: 260系(内部・八王子線用), 620系・610系・600系(養老線用), 860系(伊賀線用), 7000系・7020系(けいはんな線-大阪市営地下鉄中央線乗入) 事業用: モト75形, モト90系, 五位堂・高安入替車, モワ24系電気検測車(はかるくん) |
過去の車両(近鉄による新造形式) |
8000系(20番台~50番台), 6800系, 6441系, 6411系, 6000系, 2600系, 2400系, 1800系・モ1650形・1600系, 2470系・1480系, 1470系, 1460系, 1450系, 920系, 900系, 880系, 820系, 800系 特急車格下げ車両: 2250系, 6421系, 6431系 |
過去の車両(合併各社よりの承継形式) |
大阪電気軌道・参宮急行電鉄: モ1000形, モ1100形, モ1200形, モ1300形, 2200系 大阪鉄道・吉野鉄道: モ5800形, モ6601形 伊勢電気鉄道・関西急行電鉄: モニ6201形, モニ6231形, モ6301形 奈良電気鉄道: 400系, 680系(旧京都線特急車), 683系(旧京都線予備特急車) その他: モ5251形 |