釜石線
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釜石線(かまいしせん)は、岩手県花巻市の花巻駅と釜石市の釜石駅を結ぶ東日本旅客鉄道(JR東日本)の鉄道路線(地方交通線)である。
釜石線の前身である岩手軽便鉄道は、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』のモデルと言われている。そのことに因み、銀河ドリームライン釜石線の愛称が付けられている。同じく宮沢賢治の『シグナルとシグナレス』は、東北本線と釜石線の信号機を擬人化し、男女に見立てた恋物語である。また、宮沢賢治が作品中にエスペラント語の単語をよく登場させていたことから、各駅にエスペラントによる愛称が付けられている。
目次 |
[編集] 路線データ
- 管轄(事業種別):東日本旅客鉄道(第一種鉄道事業者)
- 区間(営業キロ):花巻~釜石 90.2km
- 軌間:1067mm
- 駅数:24駅(起終点駅含む)
- 複線区間:なし(全線単線)
- 電化区間:なし(全線非電化)
- 閉塞方式:特殊自動閉塞式(軌道回路検知式)
- 運転指令所:盛岡輸送指令室
[編集] 運行形態
各駅停車は、基本的に花巻~釜石間の運行であるが、一部の列車は山田線釜石~宮古間に直通する。1994年3月30日から、盛岡車両センター配置のキハ100形気動車によるワンマン運転が行われている。
各駅停車の他、盛岡~釜石・宮古間に一部指定席の快速「はまゆり」が3往復運転されている。2002年12月のダイヤ改正までは、急行「陸中」として運転されていた列車で、回転リクライニングシートを装備した専用のキハ110系気動車が使用されている。このキハ110系は釜石線に初投入され、はじめは前面が黒色でブラックフェイスであったが視認性向上のために白系に塗り替えられたものである。
かつては、東北本線~釜石線~山田線を回る盛岡発盛岡行きの循環急行列車「五葉」と、逆回りの「そとやま」が存在した。
1989年以降、「SL銀河ドリーム号」(1995年運転開始)などの名前で年に数日SL列車が往復することがあり、通称めがね橋など有名スポットには多数の鉄道写真家やファン、家族連れで賑わう。また仙人峠越えはD51形498号機では力不足で、2両のDE10形ディーゼル機関車を前補機として連結して運転される。
また、かつての「五葉」・「そとやま」辺りと同様のルートを走る観光列車として、「ぐるっとさんりくトレイン」なる列車が一時期運行されたこともあった。
- SL運転実績
- 1989年7月29日 「SL D51498号」花巻~遠野間運転
- 1990年7月27日 「ロマン銀河鉄道'90」花巻~釜石間運転(D51498牽引)
- 1991年8月2日 「ロマン銀河鉄道SL'91」花巻~釜石間運転(D51498牽引)
- 1992年7月30日 「ロマン銀河鉄道SL'92」花巻~釜石間運転(D51498牽引)
- 1995年12月23日 「SL銀河ドリーム号」花巻~釜石間運転(D51498牽引)
- 1996年7月26日 「SL銀河ドリーム号」花巻~釜石間運転(D51498牽引)
- 1997年8月1日 「SL銀河ドリーム号」花巻~釜石間運転(D51498牽引)
- 1998年9月12日 「SL銀河ドリーム号」花巻~釜石間運転(D51498牽引)
- 1999年9月11日 「SL銀河ドリーム号」花巻~釜石間運転(D51498牽引)
- 2000年9月9日 「SL銀河ドリーム号」花巻~釜石間運転(D51498牽引)
- 2004年6月24日 「SL銀河ドリーム号」花巻~釜石間運転(D51498牽引)
[編集] 歴史
[編集] 西線
花巻~仙人峠(現在廃止)間は、岩手軽便鉄道(いわてけいべんてつどう)が軌間762mmの軽便鉄道として敷設したもので、1913年(大正2年)から1915年(大正4年)にかけて全通した。しかし、仙人峠~大橋間は距離約4kmに対して標高差が300mあり、建設費の負担に耐えられないことから、鉄道の敷設を断念。索道(ロープウェイ)により貨物・郵便を輸送することとし、旅客は同区間約5.8kmを徒歩連絡とされた。1927年(昭和2年)には、漸く鉄道敷設法別表第8号の2に「岩手県花巻ヨリ遠野ヲ経テ釜石ニ至ル鉄道」が追加され、1929年(昭和4年)には現在の釜石線となる路線の着工が決定。1936年(昭和11年)に岩手軽便鉄道は買収、国有化され、釜石線となった。1944年(昭和19年)、釜石東線の開業により釜石西線(かまいしさいせん)に改称する。
岩手軽便鉄道は軌間762mmであったため、1067mmへの改築が順次実施され、1944年(昭和19年)に花巻~柏木平間の工事が完成したが、以降は太平洋戦争の激化のため中断された。戦後の1946年(昭和21年)に台風により壊滅的被害を受け、長期不通となった山田線の代替路線として、釜石線の建設・改築を優先することとなり、1948年(昭和23年)に工事を再開。翌年に柏木平~遠野間の改軌が完成。1950年(昭和25年)には遠野~足ヶ瀬間の改軌が完成し、足ヶ瀬~陸中大橋間が新線で連絡して釜石線が全通した。なおこの際、新線建設ルートから外れた足ヶ瀬~仙人峠間は軌間762mmのまま、仙人峠~陸中大橋間の索道とともに廃止されている。これにより、国有鉄道の特殊狭軌線(軽便鉄道)は全て姿を消した。また、上有住~陸中大橋間では大きな高低差が生まれるため、「Ω」(オメガ)字状のループ線を陸中大橋駅付近に設け、距離を稼いで勾配を緩和することにした。
[編集] 東線
東(釜石)側は、1944年に開業した釜石東線(かまいしとうせん)以前に、民営鉄道がすでに開業していた。
まず1880年(明治13年)8月30日に、富国強兵を目指す政府の工部省によって釜石桟橋~大橋採鉱所18.3kmと、小佐野~小川山間4.9kmなど支線を含んで26.3kmを結ぶ釜石鉱山専用鉄道が敷設された。これは、釜石製鉄所への鉱石を輸送するためのものであり、日本で3番目となる鉄道路線であったが、釜石製鉄所での製鉄が不振で銑鉄生産を1883年(明治16年)に中断してしまったため、官営釜石鉱山は閉山し、そのための鉄道も開業僅か3年で廃線となってしまった。このときの鉄道設備は阪堺鉄道(後、南海電鉄)へ譲渡されている。
その後、1884年(明治17年)に釜石鉱山馬車鉄道(釜石町~甲子村間、軌間762mm)が岩手県下初の民営鉄道として開業、1911年(明治44年)に個人(田中長兵衛)経営の鉱山鉄道(鈴子~大橋間、軌間762mm)に移行した。これは、釜石製鉄所の再建を目指す田中によって官営鉄道を復活させる形で開業させたものである。田中長兵衛は、官営製鉄所が頓挫した後に製鉄所ごと鉄道も受け継いだ。1916年(大正5年)に田中鉱山(1924年釜石鉱山に改称)に譲渡され、1940年(昭和15年)には日鉄鉱業に譲渡された。前述の岩手軽便鉄道はこれとの接続を目指して計画されたものである。同鉄道は、釜石東線開業後は貨物専用線として残り、1965年(昭和40年)4月1日に廃止された。仙人峠を越えて釜石に入るとき片側2車線片側1車線の変則的国道があるが、これが廃線跡である。
詳しくは、釜石鉱山鉄道の項目を参照。
[編集] 岩手軽便鉄道
[編集] 西線
- 1913年10月25日 【開業】岩手軽便鉄道 花巻~土沢 【駅新設】花巻(国有鉄道花巻駅とは別駅)、似内(停留場)、矢沢(停留場)、幸田(停留場)、土沢
- 1914年4月6日 【停留場→駅】幸田
- 1914年4月16日 【延伸開業】土沢~晴山 【駅新設】晴山
- 1914年12月15日 【延伸開業】晴山~岩根橋 【駅新設】岩根橋
- 1915年4月10日 【駅新設】鳥谷ヶ崎(停留場)
[編集] 東線
- 1914年4月18日 【貨物線開業】岩手軽便鉄道 遠野~仙人峠 【駅新設】(貨)遠野、(貨)上郷、足ヶ瀬(給水所)、(貨)仙人峠
- 1914年5月15日 【旅客営業開始】遠野~仙人峠 【貨物駅→一般駅】遠野、上郷、仙人峠
- 1914年10月25日 【給水所→信号所】足ヶ瀬
- 1914年12月15日 【延伸開業】鱒沢~遠野 【駅新設】鱒沢(初代)、二日町(停留場)、綾織
- 1915年5月1日 【駅新設】赤川(停留場)
- 1915年7月30日 【延伸開業】柏木平~鱒沢 【駅新設】宇洞、柏木平
- 1915年9月1日 【駅新設】青笹(停留場)
[編集] 全通後
- 1915年11月23日 【延伸開業・全通】岩根橋~柏木平 【駅新設】宮守、平倉(停留場) 【信号所→駅】足ヶ瀬 【駅名改称】幸田→小山田
- 1916年2月10日 【駅名改称】上郷→岩手上郷
- 1916年2月25日 【停留場→駅】二日町
- 1924年12月16日 【駅新設】荒谷前 【駅名改称】宇洞→鱒沢(2代)、鱒沢(初代)→中鱒沢、二日町→岩手二日町
- 1926年8月15日 【駅新設】関口(停留場)
- 1927年12月13日 【駅廃止】赤川(停留場)
- 1928年6月1日 【駅廃止】中鱒沢
- 1930年7月16日 【駅新設】(貨)中鱒沢
- 1936年3月25日 【停留場→駅】平倉
[編集] 国有化後
[編集] 釜石線→釜石西線
- 1936年8月1日 【買収・国有化】釜石線 花巻~仙人峠(64.4km) 【駅廃止】(貨)中鱒沢 【停留場→駅】鳥谷ヶ崎、青笹
- 1943年9月20日 【改軌762mm→1067mm】花巻~柏木平(似内~柏木平間で+0.1km) 【線路付替】花巻~似内(-0.2km) 【駅廃止】鳥谷ヶ崎
- 1944年10月11日 【線名改称】釜石西線(釜石東線開業にともない)
- 1949年12月10日 【改軌762mm→1067mm】柏木平~遠野(-0.1km)
[編集] 釜石東線
- 1944年10月11日 【開業】釜石東線 釜石~陸中大橋(貨物線)(16.5km) 【駅新設】(貨)陸中大橋、洞泉(信号場)、小佐野(信号場)
- 1945年6月15日 【旅客営業開始】釜石~陸中大橋 【駅新設】松倉 【信号場→駅】洞泉、小佐野
- 1946年4月1日 【駅新設】中妻(操車場)
- 1949年8月1日 【駅廃止】中妻(操車場)
[編集] 全通以後
- 1950年10月10日 【延伸開業・全通】足ヶ瀬~陸中大橋(12.5km) 【駅新設】上有住 【改軌762mm→1067mm】遠野~足ヶ瀬(-0.2km) 【改キロ】綾織~遠野(-0.1km) 【廃止】足ヶ瀬~仙人峠(-3.9km) 【駅廃止】仙人峠 【線名改称】釜石線 花巻~釜石(90.2km)(釜石東線を釜石西線に編入)
- 1967年3月 無煙化(D50・D51)
- 1985年3月14日 【駅廃止】矢沢 【駅新設】新花巻(実質的に矢沢駅の移転改称)
- 1987年4月1日 【承継】東日本旅客鉄道(第1種)・日本貨物鉄道(第2種)
- 1993年10月1日 全線CTC化
- 1999年4月1日 【第二種鉄道事業廃止】花巻~釜石(日本貨物鉄道)
[編集] 駅一覧
駅名 | エスペラントによる愛称とその意味 | 営業キロ | 快速はまゆり | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|---|
花巻駅 | Ĉielarko(虹) | 0.0 | ● | 東日本旅客鉄道:東北本線(盛岡駅まで直通あり) | 岩手県 | 花巻市 |
似内駅 | La Marbordo(海岸) | 3.5 | | | |||
新花巻駅 | Stelaro(星座) | 6.4 | ● | 東日本旅客鉄道:東北新幹線 | ||
小山田駅 | Luna Nokto(月夜) | 8.3 | | | |||
土沢駅 | Brila Rivero(光る川) | 12.7 | ● | |||
晴山駅 | Ĉeriz-arboj(桜並木) | 15.9 | | | |||
岩根橋駅 | Fervojponto(鉄道橋) | 21.7 | | | 遠野市 | ||
宮守駅 | Galaksia Kajo(銀河のプラットホーム) | 25.1 | ● | |||
柏木平駅 | Glanoj(どんぐり) | 31.2 | | | |||
鱒沢駅 | Lakta Vojo(天の川) | 33.6 | ▲ | |||
荒谷前駅 | Akvorado(水車) | 36.4 | | | |||
岩手二日町駅 | Farmista Domo(農家) | 39.3 | | | |||
綾織駅 | Teksilo(機織り機) | 41.1 | | | |||
遠野駅 | Folkloro(民話) | 46.0 | ● | |||
青笹駅 | Kapao(カッパ) | 50.3 | ▲ | |||
岩手上郷駅 | Cervodanco(鹿踊り) | 53.8 | ▲ | |||
平倉駅 | Monta Dio(山の神) | 56.6 | ▲ | |||
足ヶ瀬駅 | Montopasejo(峠) | 61.2 | ▲ | |||
上有住駅 | Kaverno(洞窟) | 65.4 | | | 気仙郡住田町 | ||
陸中大橋駅 | Minaĵo(鉱石) | 73.7 | | | 釜石市 | ||
洞泉駅 | Cervoj(鹿) | 79.6 | | | |||
松倉駅 | La Suda Kruco(南十字星) | 83.2 | ▲ | |||
小佐野駅 | Verda Vento(緑の風) | 86.5 | ● | |||
釜石駅 | La Oceano(太洋) | 90.2 | ● | 東日本旅客鉄道:山田線(宮古駅まで直通あり) 三陸鉄道:南リアス線 |
- 凡例
- ●:停車 ▲:一部の列車が停車 |:通過