カンニング
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カンニング (英語: cunning)は、試験のとき、隠し持ったメモや他人の答案を見る不正行為。英語では cheating(チーティング)という。
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[編集] 語源
英語の cunning (ずる賢い)より。ただし、cunning には日本語のカンニングの意味は無い。英語では cheating という。朝鮮語では日本語と同じくカンニングという。
日本では、また日本語としては大正12年(1923年)に芥川龍之介が書いた『大正十二年九月一日の大震に際して』に、また昭和9年(1934年)に発表された夢野久作の短編小説『木霊』に、この意味での「カンニング」という言葉が出てくることから、戦前から流布していたことが分かる。
[編集] 手口
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- 記憶しきれない数学の公式や歴史用語などをメモにし、筆箱など手元に忍ばせ、試験中に参照する。このメモを「カンニングペーパー」、略称「カンペ」と言う(なお,英語ではcheat sheetという)。ただし、試験にメモの内容通りのものが出るとは限らない。また、カンニングペーパー防止のため、試験中に使用する筆記用具以外のものを置くことそのものを禁止する例も多い。
- 上記の応用で、メモではなく、机の上や体(手のひら、太腿など)に直接書き込む場合もある。その対処として、机に落書きが残っている状態のまま試験を受けると、無条件でカンニングとみなすケースもある。
- 他人の解答をのぞき見る。不自然な方向に視線が移るため、挙動不審になりやすい。また、間違った解答を写してしまうこともある。結果としてのぞき見た答案とよく似た解答が並ぶため、採点中にカンニングが発覚することもある。
- 友達からメモを回してもらう。試験監督者からはもちろん、他の受験者から見ても明らかに挙動不審である。
- 携帯電話を持ち込んで電子メールで教えてもらう。試験監督者から見ると、他の受験者と視線が違うので目立つ。携帯電話自体の持ち込みが禁止になっている場合や、携帯電話が使えないように妨害電波を発信するという対策を取る場合もある。2004年には、韓国の大学修学能力試験(日本の大学入試センター試験に相当)において、携帯電話を利用した大規模な不正行為が発覚し、関係した学生が処罰された。
- 机をコツコツと叩くなどして、友達に暗号で教えてもらう。これは戦前の海軍兵学校当時から、モールス信号を利用して行われていた手口である。挙動不審になりやすく、正確に伝えることは難しい。
[編集] 処罰
カンニングは不正行為であり、公平な試験に反するため、発覚した場合は厳しい処罰が下る。下される処罰としては、次のような例がある。
- 高等学校や大学などの入学試験においては、答案即時回収、失格となるのが一般的である。受験料などは返還されない。また、以後の受験(次年度以降の受験など)も認められないことがある。
- 中学校や高等学校の定期考査(定期試験)などにおいては、当該教科・科目、もしくはそれまでに受験した教科・科目のすべて、または(不正行為発覚以降に受検する教科・科目も含め)考査期間中における全試験の点数が0点(無得点)とされる。大学の試験では、当該科目の単位が不認定となるのはもちろん、当該科目以外の取得予定だった単位のすべてが不認定になることもある。結果として、原級留置(留年)となることもあるが、授業料などの返還は行われない。大学によっては「試験不正行為取締規則」なる規程を設け、これに基づいて処罰を決定するところもある。
- 一般的に校長(学長)から訓告以上の懲戒処分がなされる。これは、法的な効果をもたらす処分であり、原則として、それ以後の推薦状の発行、調査書や人物証明書の記載内容などに影響がある。
- 日本では、懲戒として停学処分を行うことが増えている。また一部には、原則として退学処分を行う大学などもある。欧米では、大学などは学問を行う場として重んじられており、カンニングは、自分から学んでよく考えることを否定する行為とされている。このため処分も厳しく、カンニングに対しては、退学処分(強制退学)が比較的多い。
[編集] 歴史
カンニングは中国の科挙においても行われていた。科挙は中国で最も権威ある登用試験であるため、厳重な身体検査が行われるが、受験生はさまざまな手法を駆使して不正に挑んだ。科挙に受かるには四書五経を丸暗記しなければならないため、豆本テキストの持ち込み、替え玉受験、賄賂などは当然のこととして、襦袢全面に細かい文字でテキストを書き込んだものまで残っている。このカンニングシャツは京都府岡崎の藤井有隣館(私設の中国文物館)で展示されている。その罪は相応に厳しく、カンニングが発覚して一家全員死刑になった者もいる。
[編集] カンニングを扱った作品
- 小説
- コナン・ドイル シャーロック・ホームズシリーズ「三人の学生」
- 谷俊彦 『東京都大学の人びと』(下記『That's カンニング! 史上最大の作戦』の原作)
- 黒田研二 『カンニング少女』
- 漫画
- 映画
- 『ザ・カンニング (IQ=0)』
- 『That's カンニング! 史上最大の作戦?』(『ザ・カンニング』の盗作の疑いあり)
- 『海の若大将』
- 『南太平洋の若大将』
[編集] 参考文献
- 宮崎市定 『科挙 中国の試験地獄』、中央公論新社、1963年、ISBN 4121000153
[編集] 関連語
- カンニング・ブレス - 合唱や金管楽器、木管楽器の演奏などにおいて、本来息を継ぐべきでないフレーズの中途などで行う呼吸のこと。一息では発音できない長いフレーズが切れずに繋がって聞こえるように、同じパートの演奏者が少しずつ場所をずらしてブレスをするなどの方法によっておこなわれる。
[編集] リンク
- StrongBluebook ─レッツ・カンニング─ [1]