ベストアルバム
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ベストアルバム (和製英語:Best album) とは、音楽CDアルバムのひとつの形態である。ベスト盤(-ばん)。
なおアメリカでは"(the) Best Album"とはよばれず、グレイテスト・ヒッツまたはアンソロジーと呼ばれることが多い。
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[編集] 概要
通常のアルバム(オリジナルアルバム)は、先行発売のシングル曲を数曲を収録することが多いが、楽曲のほとんどが未発表曲である。対してベストアルバムは、アーティストによってはボーナストラックとして未発表曲を収録することもあるが、殆どのベストアルバムでは収録曲における既発のシングル曲の占める割合が高く、基本的には過去の代表曲を集めたアルバムであった。しかし近年では非公式ベスト(後述)が乱発することもあり、あえて新曲や未発表曲を初回盤などの特典をつけることで公式であることを強調することが通例となっている。また、近年ではシングルA面(つまり売れた曲)だけを網羅しただけの「シングルコレクション」という形態も確実に増えてきており、これらはファンからは「アーティストのアルバム作品に対する冒涜」とも言われる。
ベストアルバムはテレビやラジオ等で耳慣れた楽曲ばかりが収録されているので、特定のコアなファン以外の購買意欲もそそり、一般的にオリジナルアルバムより売上枚数は伸びる物が多い。レコード会社にとって人気アーティストのベストアルバムは新録の費用がかからず、確実な売上が見込める商品のため、思うように会社の売上が伸びない場合に決算対策として自社の契約アーティストのベストアルバムを急遽リリースし、売上をカバーするといった例もしばしば見られる。ただし、このような安易なベストアルバムの発表はオリジナル作品の購買を控えさせ、結果的にシーンの首を絞めることになる、とする意見もリスナーの一部にはある。
また、アーティストの意向ではなく、本人たちの知らぬ間にレコード会社や音楽プロデューサーの独断でリリースされる事もあり、本人達はディスコグラフィーに認めないなど、アーティストとレコード会社の軋轢の原因となる事もある(例:スピッツ『RECYCLE Greatest Hits of SPITZ』、B'z『Flash Back-B'z Early Special Titles-』)。特に近年アーティストがレコード会社を移籍する際には、それまで所属していたレコード会社が自らが原盤権を持つ音源を利用し、アーティストに半ば無断でベストアルバムを制作・発売することが恒例化しており、これに反発するアーティスト側が、ホームページやファンクラブなどを通じてファンに当該アルバムの購入を控えるように呼びかけるケースも多く起こっている(例:YMO商法、ドリームズ・カム・トゥルー『BEST OF DREAMS COME TRUE』など)。
日本では、ヘッドフォンステレオやカーオーディオが普及した1980年代前半にカセットテープのみで発売されたカセットベストアルバムが存在した (サザンオールスターズや長渕剛など)。中でもサザンオールスターズの「バラッド '77~'82」はCD化もされている。
[編集] ベストアルバムブーム
CDが普及されて以降、1992年~1993年と、1997年~1999年にかけてと大きく2つの時期に相次いで著名アーティストによるベストアルバムのリリースが重なったことがある。
- まず前者は1992年3月25日に発売されたCHAGE and ASKAの『SUPER BEST II』が1992年オリコン年間チャート1位を記録し、累計売上は269.7万枚を達成したことの余波が波及したと思われるものである。徳永英明の『INTRO.II』等があるが、当時の売れゆきであるオリジナルアルバムやシングルと対比して非常に売れたものとしては、竹内まりやの『Impressions』が代表的である。
- 後者は1997年10月1日に発売されたGLAYのベストアルバム『REVIEW』が約488万枚の大ヒットを記録。これに感化されたかのように、1998年~1999年にはB'z、globe、ZARD、ELT、松任谷由実、サザン、SPEEDといった、当時の日本のヒットチャートを代表するアーティストがこぞってベストアルバムをリリースし、ベスト盤ブームが起こった。かつては、12月にベストアルバムのリリースが集中したが、2000年前後から日本企業の多くの決算期にあたる3月 (オリコンの集計の関係で3月の最終水曜日) にJ-POPアーティストのベストアルバムを発売するケースが多くなっている。
- また2001年には、SMAP、Mr.children、浜崎あゆみ、L'Arc~en~Ciel、GLAY、モーニング娘。などの数多くの著名アーティストがベストアルバムを連発して発売した。アルバム全体の売り上げは減少傾向にあったものの、ベストアルバムの売り上げはまだ衰えていなかった。
- ここ近年の2005年~2007年では、平井堅、B'z、中島美嘉、V6、コブクロ、ZARD、CHEMISTRY、倖田來未、浜崎あゆみ、SOUL'd OUTなど再びベストアルバムが連続して発売されるようになった。ただ1990年代ほど売り上げが伸びず、ダブルミリオンが限界の状態が続いている。これはCDによる音楽の視聴という時代が「配信される音楽を買う」という時代へと移行したことを意味しており、わざわざ高いアルバムを買わずとも配信で1曲150~200円前後の自分の気に入った楽曲を手に入れれば後はレンタルなどで自分の好きなようにベストアルバムが作成できるという技術の進歩がもたらした皮肉とも言える。
また、かつては大滝詠一のように『B-EACH TIME L-ONG』と『SNOW TIME』という対を成すとはいえ、ベストアルバムを半年で2枚も出すのはいけないというような考えから2枚組みとして発売したり、一方を発売しないといった配慮がなされていたが、価値観の変化により倖田來未のように半年に1度程度のペースでベストアルバムを出すミュージシャンも増えている。現在のところ、最もベストアルバム発売の間隔が短いミュージシャンの一人として倖田の名前はよく挙げられている。
世界で歴代最高売上のベストアルバムはイーグルスの『グレイテスト・ヒッツ1971-1975』であり約4,100万枚(歴代最高売上のオリジナルアルバムはマイケル・ジャクソンの『スリラー』で約1億400万枚)(2007年現在)。
日本において歴代最高売上のベストアルバムはB'zの『B'z The Best "Pleasure"』であり約513万枚(歴代最高売上のオリジナルアルバムは宇多田ヒカルの『First Love』で約765万枚)(2005年現在)。
[編集] 代表的なベストアルバム (売上枚数上位3作品)
(『作品名』/アーティスト/売上枚・組数)
[編集] 日本
[編集] 1枚もの
- 『B'z The Best "Pleasure"』 B'z 約513万枚
- 『REVIEW-BEST OF GLAY』 GLAY 約488万枚
- 『B'z The Best "Treasure"』 B'z 約443万枚
[編集] 2枚組以上
- 『海のYeah!!』 サザンオールスターズ 約331万枚
- 『Neue Musik』 松任谷由実 約325万枚
- 『CRUISE RECORD 1995-2000』 globe 約276万枚
売上枚・組数は、すべてオリコン調べ
[編集] 全世界
- 『グレイテスト・ヒッツ 1971-1975』 イーグルス 約4,100万枚
- 『ザ・ビートルズ1』 ビートルズ 約2,700万枚
- 『ABBA GOLD-GREATEST HITS』 ABBA 約2,300万枚