モグラ
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?モグラ科 Talpidae | ||||||||||||
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分類 | ||||||||||||
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モグラ(土龍)は、モグラ目・モグラ科(Talpidae)に属する哺乳類の総称である。
地下にトンネルを掘り、その中で生活している。とがった鼻をもち、眼は退化して小さく視力はほとんどない。四肢は短く、前足には鋭い爪がある。ヨーロッパ、アジア、北アメリカに生息している。地中に棲むミミズや昆虫の幼虫を主な食物としている。
目次 |
[編集] 主なモグラ
モグラ科には12属が含まれる。主な属・種を以下に記す。
[編集] 日本のモグラ
日本には4属7種のモグラ類が棲息し、さらに複数の亜種に分けられるが、分類には異説もある。7種のうち、コウベモグラを除く6種が日本固有種である。
7種のうち、ヒミズとヒメヒミズは森林の落ち葉や腐食層の下で暮らすが、動きが素早く、しばしば地上にも現れる半地下生活者である。日本のモグラ類は、“あまりモグラらしくないモグラ”であるこれらヒミズ(日不見)類と、その他の真性モグラ類とに大別される。
2属5種の真性モグラ類のうち、コウベモグラは西日本に、アズマモグラは主に東日本に広く分布し、北海道を除くほぼ全国で、都市部以外では人家周辺でも普通に「モグラ塚」が見られる。たとえば、都心の孤立した緑地である皇居でも、吹上御所にアズマモグラが棲息している。一生地面から出ないイメージがあるが実は泳ぎが上手く、移動中やむなく水辺に当たった場合などは泳いで移動をする。北海道には固有種のトウキョウトガリネズミが生息している。
一方、他の3種は分布域が限られ、程度の差はあるものの、それぞれに絶滅が危惧されている。
- Dymecodon 属
- ヒメヒミズ Dymecodon pilirostris 【本州・四国・九州、日本固有種】
- 頭胴長70~84ミリと、非常に小型。外形はモグラとトガリネズミの中間。ヒミズと競合し、より標高の高い山地に棲息。はっきりしたトンネルは掘らず、落ち葉の下などで単独で生活する。
- Urotrichus 属
- ヒミズ Urotrichus talpoides 【本州・四国・九州・淡路島・小豆島・対馬・隱岐など、日本固有種】
- 落ち葉や腐食層に浅いトンネルを掘り、夜間には地表も歩き回る、半地下性の生活を営む。対馬の個体群を亜種として U.t.adversus とすることもある。
- Euroscaptor 属
- ミズラモグラ Euroscaptor mizura 【本州(青森県~広島県)、日本固有種】
- 本州からしか発見されておらず、棲息数は少ない。棲息域によってヒワミズラモグラ、フジミズラモグラ、シナノミズラモグラの3亜種に分ける説もあり、これらがそれぞれ 準絶滅危惧(NT)(環境省レッドリスト)
に指定されている。
- Mogera 属
- アズマモグラ Mogera imaizumii (Mogera wogura) 【本州(中部以北のほか、紀伊半島、広島県などに孤立小個体群)・四国(剣山・石鎚山)・小豆島・粟島(新潟県)、日本固有種】
- 主に東日本に分布する日本固有種。山地に棲む小型のものがコモグラ M.i.minor として亜種とされることもある。
- コウベモグラ Mogera wogura 【本州(中部以南)・対馬・種子島・屋久島・隱岐など】
- 西日本に棲息する大型種で、アジア大陸にも分布。屋久島と種子島に棲息する小型のものをヤクシマモグラ M.w.kanai として亜種とする説もある。
- サドモグラ Mogera tokudae 【本州(越後平野)・佐渡島、日本固有種】
- 越後平野の個体群は、佐渡島のものよりやや大型で、エチゴモグラ M.etigo として別種とする説もあるが、サドモグラの亜種 M.t.etigo とされることが多い。農業基盤整備事業等による環境の改変のため、越後平野の主要な棲息地が大型モグラの棲息に不利な環境となり、小型種のアズマモグラが侵入するとともに、エチゴモグラは分布域を縮小しつつある。エチゴモグラは絶滅危惧II類(VU)(環境省レッドリスト)
に指定されている。
- Nesoscaptor 属
- センカクモグラ Nesoscaptor uchidai 【尖閣諸島、日本固有種、絶滅危惧IA類(CR)(環境省レッドリスト)
】
[編集] 日本以外のモグラ
- Condylura属
- ホシバナモグラ C.cristata
- (英名 star-nosed mole) 北アメリカに生息。鼻の先端に左右あわせ22本の突起が放射状に配置している。大脳新皮質の一次体性感覚野には左右それぞれ11本の鼻の突起に対応した体性感覚地図がある。Catania, K.C., Kaas, J.H. (1995). "Organization of the somatosensory cortex of the star-nosed mole.". J Comp Neurol 351 (4): 549-67. PMID 7721983.
- Desmana属
- ロシアデスマン D.moschata
- 水生生活に適応したモグラ。体長18~21.5cmとモグラ科で最も大きい。
- Scapanus属
- トウブモグラ S.aquaticus、セイブモグラ S.townsendi など
- 北アメリカに生息する。
- Neurotrichus属
- アメリカヒミズ S.gibbsii など
- 北アメリカに生息する。
[編集] モグラの種間競争
日本本土に7種のモグラが生息している。中でも最も一般的なのが、中部地方以北に分布するアズマモグラと、中部地方以南に分布するコウベモグラである。この2種の生息域の境界線は中部地方にあるが、アズマモグラよりも大型であるコウベモグラが少しずつ東側に生息域を広げつつある。また、北海道には固有種であるトウキョウトガリネズミが生息している。名前はネズミになっているがモグラである。また世界最小の哺乳類であり、発見時、大英博物館の研究員が命名のさい、蝦夷とすべきところを江戸と書き間違えて学芸名になってしまっている。
これは、先に大陸から移入したアズマモグラが日本全土に生息域を広げたあとに、新たに大陸から移入してきたコウベモグラが東進しているためともいわれる。ちなみに、アズマモグラ以前の先住者といわれるコモグラ、ミズラモグラなどは、生息域が減少しつつあり、山地などに隔離分布するようになってきている。
[編集] 雑学
アリストテレスは著書『動物誌』にて、モグラは胎生動物で唯一眼を持たない動物としている。ただし、皮膚の下には退化した眼があるとも記述している。
『処女膜はモグラと人間にしか存在しない』と言うのは、週間明星に連載された三島由紀夫の「不道徳教育」が出典。
西洋ではモグラは盲目の象徴とされる。キリスト教では神の光に盲目な、キリスト教に改宗しない者の隠喩として用いられる。この寓意においてモグラと対置されるのは、何でも見通す眼力を有すると考えられたリンクス(オオヤマネコ)である。
モグラの毛は柔らかく光沢があるため、20世紀初頭まではモグラの毛皮は乗馬用ズボンやコートなどに用いられた。
日本では、古くはモグラのことを「うころもち」(宇古呂毛知:『本草和名』)と呼んでいた。また、江戸時代あたりでは「むくらもち」もしくは「もぐらもち」と呼んでいた。モグラを漢字で「土龍」と記すが、江戸時代に中国から渡来した博物学書『本草綱目』ではミミズのことを「土龍」としており、誤用した漢字が定着してしまったと考えられる。
モグラの黒焼きは土龍霜と呼ばれ、日本でも民間薬として使われてきた。強壮作用、興奮作用、排膿作用があるとされる。『大和本草』の鼴鼠(ウクロモチ、モグラのこと)の項に、「肉ヲ焼テ癰疽諸瘻ヲ治スト云ウ」、つまりはオデキや痔などの化膿したものを治すと、本草綱目から引用している。また、中外医薬生産株式会社(中外製薬とは別)から、土龍霜を配合した「ユリアン」という夜尿症の治療薬が発売されている。
なお、地下道やトンネルのことを「モグラ」と揶揄することもあり、地下鉄は「モグラ電車」だと呼ばれたこともあった。他に、上越線の土合駅はトンネル内にあるため「日本一のモグラ駅」、トンネルの多い新幹線は「モグラ新幹線」などとも言われている。
[編集] モグラをモチーフとした作品
モグラは童話・漫画・アニメ・絵本・テレビ番組などにおいてよくキャラクター化される。地下にトンネルを掘るその習性から、シャベルやドリルを手にしているなど、掘削作業員になぞらえたデザインをされることも多い。
[編集] キャラクター
- モゲラ(『地球防衛軍』『ゴジラVSスペースゴジラ』に登場する巨大ロボット)
- キラースコップ、いたずらもぐら(ドラゴンクエストシリーズ)
- クルテク(もぐらくん)(クルテク ~もぐらくんと森の仲間たち~)
- ゼンダモグラ(ゼンダマン)
- ディグダ・ダグトリオ(ポケットモンスター)
- ドリモーグ(爆闘宣言ダイガンダー)
- ドリモグ兄妹(ドリモグだァ!!)
- ナタッカー(頭脳戦艦ガル)
- ホリディ(Oh!FM)
- ホルト・モングラー(月桂冠のコマーシャル)
- モグネチュードン(スペクトルマン)
- モグラーニャ(モグラ~ニャ)
- もぐらシスターズ(ロスリン・シュワルツの絵本シリーズ)
- モグラ獣人(仮面ライダーアマゾン)
- モングラー(ウルトラQ、モグラ型怪獣)
- フランマール・ザ・モルロイド(ロックマンゼクス)
- リセットさん、ラケットさん(どうぶつの森)
[編集] 文学
- うんちしたのはだれよ!(ヴェルナー・ホルツヴァルト(文)、ヴォルフ・エールブルッフ(絵)の絵本)
- ぼく、おつきさまがほしいんだ(ジョナサン・エメット(文)、ヴァネッサ・キャバン(絵)の絵本)
- 二分割幽霊綺譚(新井素子)
[編集] 歌
- シャベルでホイ(サトウハチロー(作詞)、中田喜直(作曲)の童謡、1953年発表)
- もぐらトンネル(『おかあさんといっしょ』で発表された楽曲)
- もぐらのおじさん/しろねずみのうた(Pinkish)
- モグラライク/モグラ(歌:PUFFY、作詞・作曲:奥田民生/甲本ヒロト 2006年4月12日発表)