リヤカー
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道路交通法では軽車両に分類され、人や自転車(原動機付自転車を含む)の人力によって牽引することを主目的としている。
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[編集] 概要
1921年頃、海外からサイドカーが日本に輸入された時に、サイドカーとそれまでの荷車の主流だった大八車の利点を融合して日本人が発明した。
Sidecarに倣ってRear-Carと命名したため和製英語である。
1923年9月1日に発生した関東大震災、燃料不足だった太平洋戦争の戦中・戦後などの時期に人力によるリヤカーは、戦中には空襲などによる負傷者の搬送にも利用され、戦後復興期の物流に大きな地位を占めたなど効率的な荷車として大活躍したが、自動車が普及するにつれてオート三輪・軽トラック・オートバイ等に取って代わられ、次第に衰退していった。
[編集] 2000年代に於ける利用
リヤカーの利点を生かして段ボール・空き缶などの廃品回収業やラーメン屋・たこ焼き屋などの屋台のベースとして等、効率的に活用されている。また地域の防災面では、自治会などによる自主防災組織にて消火用のリアカー積載型消防ポンプを備える地域も多く、震災などで道路が分断された際にもマンパワーの導入で活躍できる事が期待され、旧来のものや組み立て式のものが防災倉庫に大抵は用意されている。
ただ日本の一般社会では、専ら軽トラにその役目を譲っているのが現状である。その一方では人力調達が容易で荷物運搬が多い自衛隊では実質的基本装備として、全国津々浦々今でも大活躍している。詳細はリヤカー (陸上自衛隊用)を参照のこと。また、運転免許を持たない子供でも大道具や落ち葉等を運搬することのできる道具として、あるいは地域奉仕活動の延長で行われる廃品回収運動の際の運搬器具として、小中学校など学校施設にも標準的に装備されている。
この他、2006年6月に道路交通法が改正され、駐車違反に関する違反確認手続きの簡略化で短時間駐車でも罰せられるといった事情に絡み、ヤマト運輸はリヤカーの利点を考慮して、住宅地の小荷物配送などで特製の小型リヤカーを電動アシスト自転車で牽引しての活用を開始した。他の宅配便業者でも佐川急便では小型自動車の導入と運転手を二人組みとして片方を運転席に残すなどをの対応を図っているが、業界内では同法改正に伴い都市中心部や住宅街での個別配送における人力運搬の重要性が再認識されている様子も見て取れる。
[編集] リヤカーの利点と欠点
[編集] 利点
- 人力によるため燃料代などの経費が掛からない。修理・整備も簡便で維持費も掛からない。
- 道交法上、軽車両の扱いを受けるため自動車などと比較して移動可能な場所が多い。(小回りが利く)
- 頑丈な作りのリヤカーで平坦な舗装道路上であれば、最大約1トンの荷物が運搬可能である。(通常のリヤカーの積載荷重は350kg)
[編集] 欠点
- 坂道の移動が困難である。
- 自動車などの往来が激しい場所の移動では、機動性の違いによる交通事故が懸念される。
[編集] 海外進出
日本の戦後復興期にはおおいに活用されたリヤカーだが、1960年代頃より日本でモータリゼーションによる自動車の普及(→大衆車)に伴い、道路の広い面積を占有してのろのろとしか移動できないこともあって、次第に街中からその姿を消していった。
しかし1980年代頃より次第に日本人の目が海外(日本国外)に向けられるに従って、貧困地域や紛争地帯において、その荒廃した社会の復興や援助といった活動の中で、次第にリヤカーや七輪・かまどのようなローテク日本製品の活躍の場を見出す人も出ている。これらでは民間のボランティア団体など非政府組織(NGO)の活動が主体となっているが、NGO「難民を助ける会」の金属加工ワークショップでは、町工場のリヤカー製作技術を現地の人間に学ばせた上で製造機械を手配、現地生産でリヤカー普及に務めているという。
この他中国をはじめとするアジア諸国では一般にリヤカーが浸透しており、自転車と同程度の技術で製造できるリヤカーは、庶民レベルの物流の一端を担っている。これらでは日本製オートバイとセットで現地社会に根付き、市場へ農作物を運搬したり、あるいは移動販売の店舗に利用されたりといった活動も見られる。
リヤカーは整備も自転車と同程度の技術力しか必要としないため、日本政府の政府開発援助(ODA)が現地にトラックやトラクターなどの機械装置を導入するも、現地に修理技術が無いために援助終了後に破損して放置されるなど「空回りのODA」が問題視される中、リヤカーによる地域支援では現地で修理も製造も賄えるため、地域振興にも役立っているという。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- リヤカー博物館
- 難民を助ける会・ザンビアでの活動
- ムラマツ車両:リヤカーの博物館(ヤマト運輸の小型リヤカーも手掛けたメーカー)