屋台
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
屋台(やたい)は、移動式の簡易店舗。多くの場合、飲食店を指すが、その他玩具などを売る場合もあり、その場合露店とも呼ばれる。
世界各地に様々な形態の屋台がある。初期の形態としては、天秤棒で担いで売り歩いた形態があったが商品を多く運べないのが欠点。リヤカーのように可動式の店舗部分を人力、自転車、オートバイで牽引するものや、テントのように組み立て型の骨組みをもとに店舗を設置する場合もある。また小型トラックの荷台の部分を改造したものなど、特種用途自動車の例示のなかの食堂自動車を屋台と捉えることもできる。車内に机と椅子が必要であるので、加工車の方が屋台に近いと思われる。
目次 |
[編集] 東アジアの屋台
[編集] 日本の屋台
[編集] 概要
正月の寺社や縁日など大きな行事の場所にはたこ焼き、焼きそば、綿菓子、磯辺焼などが様々な屋台が出店する。屋台店とも呼ばれる。このような祭りの縁日等大きなイベントに出店する屋台は的屋と呼ばれる人たちに営まれている場合が多い。
移動式の屋台ではラーメン屋が商われる。江戸時代の夜鳴きそばに起源を発し、チャルメラをならしながら夜の街を流すため、別名チャルメラと呼ばれることもある。
夜間にのみ営業し、酒類とともにおでん、焼き鳥やどて焼きなど様々な料理を出して営業する屋台もある。屋台特有の雰囲気に誘われるファンは今も多い。営業には食品衛生法に基づく保健所の営業許可や道路交通法に基づく警察署の道路使用許可が必要。水道の確保が難しく、衛生面に問題がある場合や道路を占拠するなどの問題もあり、最近でこの種の屋台は減ってきている。常設的に屋台を開設するには向いていない日本の気象条件の制約等がある。広い敷地に水道を引き多くの屋台を集めた「屋台村」と呼ばれる常設の施設が一時現れたこともあるが、最近は下火になっている。
大阪市の天王寺公園にはカラオケ屋台がある。行政側の撤去の方針に業者側が反対している。
近年東京丸の内近郊をはじめ各地では、ネオ屋台と呼ばれるこれまでの屋台とはスタイルの違う屋台が特に女性に人気である。 基本的に東南アジアの屋台のスタイルを模倣し、
- 弁当販売が主である。
- エスニック料理が多い。
- 昼間だけ出店する。
- これまでの屋台と比較して清潔感を全面に押し出している、というような特徴がある。
[編集] 福岡の屋台
福岡市の中洲・天神・中央区長浜地区など、屋台街と呼ばれる屋台が集合して商売する場所もある。福岡の屋台は移動販売ではなく、場所を固定して営業する。昼は月極駐車場においてあり、「引き屋」と呼ばれる人が引いて決まった場所へ移動し、固定する。電気は屋台を営業する場所に専用の電源を持ち、水道は近くのビルと契約している。自前のプロパンガスを屋台内に取り付けてある。ラジオやテレビを流す店は多い。特に地元球団である福岡ソフトバンクホークスのファンが多いことで野球を話題にしたり野球選手がひいきにする例もある。連絡用に携帯電話を持っている店主が多い。天気が悪い日などは休業するため、ガイドブックに電話番号を公開してある場合はこの携帯電話に営業するか否かを問い合わせることができる。
メニューは豊富で、ラーメンのほかおでん、焼き鳥、鉄板焼き、天ぷらといったメニューを掲げる店が多い。これらのメニューをつまみに酒を飲み、最後にラーメンを食べるパターンになることが多い。店によってはカクテル専門・西洋料理専門・沖縄料理専門の店などもある。また、最近は店主の好みによって独自メニューの開発を行なって新たな形態を打ち出す例もあり、一方で従来のメニューを伝統的に守る主義の店も多い。ラーメンなど福岡での定番商品は多くの店にはあるが、おかない主義の店もある。衛生上、生の食品は置いてはならないことになっているので、ルール違反の屋台には注意したい。また、金額の表示は義務化されており、金額のトラブルは減っている。
北九州市小倉の屋台は、アルコール類を一切置かない。おにぎりとお茶を片手におでんを食べるといった感じである。規模も小さい。
[編集] 行政による規制
これらの屋台の営業は、保健所の食品衛生法に基づく許可や福岡県警の道路交通法に基づく道路使用許可が必要で、また、使用許可手数料も徴収される。営業できるのは間口3メートル、奥行き2.5メートルまで。店外にテーブルやビールケースを出したり、歩道を占拠する営業は違法となるなど、厳しい規制がある。
福岡県、福岡市、県警とも衛生面などの問題から元々屋台の存在を快くは思っておらず、戦後直後から屋台の完全排除を目的として厳しい規制を行ってきた。これに対して屋台側も県議会議員や厚生省(当時)を巻き込んだ熾烈な抵抗運動を行った。
1962年には、営業許可基準、道路使用許可制度、道路使用取扱要綱などが決定された。1973年には懸案だった名義変更問題も一応の決着を見た。しかし、1981年8月ごろから道路使用許可問題が再燃し、さらに市の屋台に対する基本認識問題も検討継続となった。
1994年10月には、道路使用許可の名義に関して「屋台に関しては営業者一代限り、生計を共にする親族以外へは使用許可を受けた屋台の譲渡を認めない。また、親族であっても屋台以外に収入のある者へは譲渡を認めない」との方針を打ち出し、これ以降の屋台の売買譲渡は不可能となった。2000年5月18日には福岡市も「福岡市屋台指導要綱」を告示し、同様の規制を明示している。
1996年から福岡市は「屋台問題検討会」を発足させ、基本方針を検討している。
[編集] 韓国の屋台
[編集] 台湾の屋台
台湾では、早朝から粥、麺類、魯肉飯、米加工品、サンドイッチ、フレンチトースト、おにぎりなどの軽食と豆乳、牛乳、コーヒーなどを売る屋台が、駅や市場の周辺、商店街などで営業を始め、朝食を取る人が訪れる。昼も同じような場所で、昼食に適した麺類などを売る屋台が出る。
夕方以降になると、多くの都市で、「夜市(中国語 イエシー)(中国語版の記事)」と呼ばれる、道路の両側を利用した、あるいは、歩行者天国にした状態の道路の一区画に、多くの屋台が並ぶ地域がある。これらの屋台では、麺類、揚げ物、炒め物、たこ焼き、かき氷、カットフルーツ、刺身、寿司など、多様な食品を作って出し、衣料品や雑貨を売る店も並ぶため、地元の市民だけでなく、観光客にも人気が高い。
[編集] 中国の屋台
中国の本土でも、台湾に似た形態の屋台が見られるが、売る食品は地域ごとに異なる。たとえば、北京でみかける食品では、天津煎餅、焼き芋、ゆでトウモロコシ、甘栗などが多い。
地域によっては、夕方以降、歩道や広場を使って衣料品、雑貨類を販売する大規模な市場が現れたり、歩行者天国状態にした、食品の屋台街が現れる場所もある。
[編集] 香港の屋台
香港では、「大牌檔(広東語 ダーイパーイドン)(中国語版の記事)」と呼ばれる屋台が、麺類、粥、炒め物などの中華料理(広東料理が中心)を出すが、1980年代以降路上での営業は禁止される地域が増え、基本的に公園の一角のような定められた場所に集められて営業している。ほかに、自動車を利用した移動販売店舗も認められるが、許可取得に要する費用が高く、営業できる場所も制限を受けるため、日本のように一般的ではない。
これ以外に、プロパンガスコンロを仕込んだカートを使って、煮込み料理、揚げ物などを売る業者が街角に現れることがあるが、基本的に無資格販売であり、警官がパトロールに現れると、カートを押しながらクモの子を散らすように逃げる姿が見られる。
夜に道路を利用して店舗を出す例では、廟街(男人街)や西洋菜街(女人街)が有名であるが、衣料品や雑貨の販売に限られる。
[編集] 東南アジアの屋台
日本では屋台は祭りの軽食や、あるいは夜の簡易酒場といった位置づけになりがちなのに対し、東南アジアでは屋台は庶民の生活により密着した存在である。昼食から営業し、持ち帰り用、あるいはその場で簡単な椅子とテーブルを備え本格的な料理を供する場合が多い。お互いの店舗で厳しい生存競争にさらされていることが多いため、一般的に値段が安く、味も満足のいく場合が多い。(en:Mamak stall)
[編集] シンガポールの屋台
ホーカーセンター
[編集] アメリカの屋台
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 石丸紀興「7355 都市における屋台の分布と屋台政策に関する研究:その2 呉市と福岡市での政策比較」学術講演梗概集. F-1, 都市計画, 建築経済・住宅問題、709-710頁、社団法人日本建築学会、1996年。