ローカル局
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ローカル局(-きょく)とは一定の地域を放送エリアとする放送局を指す。
「ローカル」とは、国全体に対する「一部の地域」であって、都会に対する「田舎」ではない。
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[編集] 定義
[編集] 全ての地上波放送局
地上波の特性・地形・出力・投資コストなどの面で、1本の電波塔が網羅できる地域は限られている。又、電波の混信を防ぐため、各国は電波行政を行って、それぞれの電波塔に周波数の割り当てを行っている。各国ともこのような電波塔の設置権利は、地方ごとに存在する放送局(会社)に付与される。即ち、全ての放送局は放送エリアが限られている「ローカル局」である(都市国家を除く)。この場合の対義語は「全国局」。
日本では、旧郵政省(現総務省)によって、放送局の放送エリアを基本的に都道府県内に限ることにし、そのエリア内にある全ての世帯で視聴できる事を義務化している。但し、都市圏(地域圏)が都府県境を越えている場合、県ごとの単位では経済的に成り立たない場合、県の面積が大き過ぎたり小さ過ぎたりする場合などについて、例外的に都府県境を越えた放送を認めている。
※ 放送エリアの割り当ての詳細は「放送局」のページを参照せよ。
[編集] 小売を行う放送局
この意味での「ローカル局」とは、情報流通において主に「下流」に位置する放送局を指す(「上流」「下流」は、ヒト・モノ・カネ・情報の流れを川の流れに例える流通用語であり、「下流」は「格下」を意味しない)。上流にはキー局、番組制作会社、通信社などがある。この場合、「キー局」が対義語とされる例が多いが、厳密には対義語ではない。
各地の放送局は、取材能力、番組制作能力、その他経済的な理由(番組制作費など)から、早朝から深夜まで(放送局によっては24時間)の全ての時間帯で、自局制作の番組を流す事は困難である。その為、キー局となる放送局を中心としたニュースネットワークや、その他の番組配信ネットワークを形成し、キー局から「情報」を卸してもらい、各地で放送している。この場合、番組の小売の位置にある局を「ローカル局」、卸売をする局を「キー局」という。
日本においては、キー局はローカル放送圏域を持っているので「小売」も行っているが、海外ではケーブルテレビのニュースチャンネルから発生した卸売専門のキー局も存在する。
キー局は、ニュースネットワークにおいては通信社・新聞社から情報を受け取る一方、自局で取材をしてニュースの「卸売り」を行い、番組配信ネットワークにおいては、番組制作会社や映画社から番組を購入する一方、自局制作番組を「卸売り」している。
小売を行うローカル局には、上流から流れて来る情報や番組の内、どれを放送するかを選ぶ権限を持つ為、キー局のローカル放送とは番組編成が異なる事が多い。民放では、提供する会社(CMを流す会社)の意向や支払い額に応じて、小売の範囲が異なることが多い。そのような経済的事由や文化圏的な理由により、番組配信ネットワーク(ある番組が放送されるエリア)には、全国規模、地方ごと(ブロックネット)、県ごと、など様々ある。ブロックネットにおいては、その地方におけるキー局とローカル局という役割分担がなされた情報流通となることもある。ブロックネットや個別の放送局といった、特定の地域でのみ放送される番組は「ローカル番組」と言われる。
[編集] ローカル局が存在しない放送
- 全国放送を行いながらもローカル局が存在しないもの
- 衛星放送の場合は、国全体に放送を行うことが出来るので、ローカル局は存在しない。ケーブルテレビの場合は、チャンネルの番組配信内容を取捨選択する権限がないため、ローカル局は存在しない。
- 全国放送を行わないもの
- 独立UHF放送局と呼ばれるキー局を持たない独立系のテレビ放送局もある。これは、関東・近畿・中京地区(愛知・岐阜・三重)の広域放送を行っている地方に存在し、基本的に都府県ごとに放送を行っている。キー局は存在しないが、地方紙を上層に位置させた情報流通(ニュース配信)を行っている。そのため、「ローカル局」と見ることもできる。なお、上層に位置する地方紙が経営母体となっている局が大半である。
- コミュニティFMの場合は、東京・大阪・海外の番組を番販形式で放送している傾向が強くなってきているので、それを「ネットワーク化されている」と見ればローカル局とみなすことが出来るが、基本的に番販形式であるためローカル局とは言わない。
[編集] 傾向
ビジネスモデルとして、小売も製作・製造も行う卸売企業(販売経路の上流から下流まで行い、卸しに当たる企業がブランド力を持っている企業体)が、支配的な小売ネットワークを持っている例は限定的である。高級百貨店、オイルメジャー、大手自動車会社、大手高級ブランド企業体など、寡占が起きた企業ではこの傾向が見られる。
日本のテレビ放送においては、放送行政上では寡占を認めている為、同様な状況が起きており、卸売企業に当たるキー局(東京キー局、ブロックネットのキー局)のブランド力や集金能力が高い。
ただし、寡占ネットワークを認めていても、ある局が他局の発行株式の過半数を持って子会社化し、傘下に入れる行為は禁止されている。これは、情報の寡占が情報統制に繋がって言論の自由(民主主義)が侵害されると考えるからである。
しかし、ローカル局は、放送圏域における視聴者数の多寡によって財政基盤が弱い場合があり、キー局からの卸し商品(コンテンツ)に頼ってしまっている現状は否めず、建前化してしまっている。実際、東京キー局放送会社やその親会社の全国紙新聞社が、合計してローカル局の株式取得制限を越えて取得してしまい、実質的な子会社化をしてしまった例が続出して問題になった(→マスメディア集中排除原則)。結局、株式の放出をさせられて、子会社化を解消させられた。ローカル局の財政基盤や経営の系列化の問題は、ときどき問題になっている。〔例:テレビ金沢=親会社が北國新聞=日本テレビ・読売新聞の傘下。テレビせとうち(岡山)=親会社が山陽新聞=テレビ東京・日本経済新聞の傘下〕
経営基盤が強いローカル局、又は強力なコンテンツを持つローカル局は、東京キー局の番組配信ネットワークに対して、半独立的な傾向を示す場合もある。近畿広域圏の放送局や、地元のプロスポーツチームの株主となったり、又はその放映権を半独占的に持っている局は、この傾向が大きい。プロスポーツにおけるこの傾向を持つ局は、テレビ静岡(清水エスパルス)、中国放送(広島東洋カープ)、TVQ九州放送(福岡ソフトバンクホークス)などがある。
一方、独立系の局は、テレビジョン放送局においては、関東地方では水戸(茨城県)を除く各地域に一局存在する(とちぎテレビ、群馬テレビ、テレビ埼玉、千葉テレビ、東京MXテレビ、テレビ神奈川)。近畿地方ではびわ湖放送、KBS京都、サンテレビ、奈良テレビ、テレビ和歌山;東海地方では三重テレビや岐阜放送が在る。独立UHF放送局にも半独占的に地元プロスポーツを放送する局がある。
ラジオ放送局の場合は、番組制作費がテレビと比べて格段に安いため、テレビ放送と比べると自局制作比率が高い。そのため、東京キー局のネットワークに属さない独立系の局も多く存在する。ただし、自局制作をする場合、制作費やノウハウの問題で、キー局から番組配信を受けた方が収益が上がる事も多く、東京キー局のネットワークに入っているローカル局も少なからず存在する。
[編集] 特に4大ネットワークのローカル局の今後
平成に入ってから、開局に次ぐ開局でテレビ東京系を除く4大ネットは日本テレビ系、フジテレビ系、TBS系の28局とテレビ朝日系の26局までになった。しかし、これらの開局は、自民党の地方の有力者と地元企業、そして県庁の密接な関係が指摘されており、「地元新聞社-ローカル局-筆頭株主企業(県が所持している場合もあり)」という鉄の組織で成り立っている。また、これらに加えてキー局と準キー局が株式の大半を所有しており、「事実上のキー局の出張所」と化しているローカル局もある。
経営の規模があまり大きくないところは、ローカル番組はほとんどニュースだけで、東京発の放送を垂れ流しにするだけで利益がそこそこ上がる(つまり、広告収入を筆頭株主や系列会社のみに依存しているところもある)。地方局の中には事実上「県営」に近いところも見られ、視聴率争いなどの過当競争はあるにしても、「共存共栄」が不文律ながらあるので、歪んだ経営(キー局に「おんぶにだっこ」の経営、創業者一族の私物化、県や教育行政、地元有力企業の介入、放漫な経営)も見られる局があるという。
しかし、2011年から「地上デジタル放送」(地デジ)に完全に移行するに当たり、淘汰される地方局も出てくるのでは、という声も上がってきているという。上記のような利益がほとんど労せずに転がり込むようなことが地デジではなくなるからである。
[編集] 関連項目
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